ザ・グレート・展開予測ショー


投稿者名:蒼空
投稿日時:(04/ 9/16)

夕焼けを見つめる彼に問う。


「もういいの?」
「ああ、もう十分だ」

男は答えながら笑顔で振り返る。愛しい彼女に。





「この馬鹿横島〜!」
「ッグハ〜」

今日も美神の鉄拳制裁で横島は物言わぬ屍と化す。


「依頼人に手を出すなってなんど言ってるでしょうが!」
「堪忍や〜!美人やったからしかたなかったんや〜!!」

美神の言葉に復活を果たした横島が言い分けをする。その様子を見ながら私は、

相変わらず人間離れしてるわね。



と、思う。いつもなら止めに入るおキヌも事情が事情なのでキッチンで夕飯の準備をしている。
シロも美神を止められるはずがなく


「先生!不甲斐ない拙者を許してくだされ!」

と、黙って見ている。
あらかた横島へのお仕置きが終わったころおキヌの声が入る。


「みなさ〜ん!ご飯できましたよ〜!」
「ふ〜、それじゃあご飯にしましょうか」
「は〜いでござる!お肉♪お肉♪」
「うぅ〜・・・飯や〜」

シロは元気に返事する。思考はすでに食卓にあるであろう肉でいっぱいである。
横島もボロボロでありながら食卓に進む。



本当に不死身ね。いまさらだけど。ま、そんなことより油揚げあるかな〜♪





食事が終わり、おキヌがみんなにお茶を出す。


「相変わらずよく食べるわね〜。給料上げたんだからそんなに貧乏じゃないでしょ?食費とるわよ?」
美神が笑いながら横島に話し掛ける。
「いや〜一人で食べるよりおキヌちゃんが作った料理をみんなと食べるほうが100倍おいしんですよ。」
「そうでござる!?拙者も先生といっしょに食べたほうがおいしいでござる!」
「あんたは肉さえあればみんな同じでしょ?」
「そんなことないでござるよ!?」

美神の言葉にみんな笑う。シロも文句を言いながら笑っている。



まったく。単純なんだから。



そんなことを思う私も笑顔になっているのがわかる。
でも、気になることがある。
それは、夕日を見つめているときの横島の無表情だけどどこか悲しそうな顔。
そして、それを見たときの美神とおキヌちゃんの悲しそうなつらそうな複雑な顔。
私は生まれてすぐに人間に殺されそうになった。そのとき横島に助けられた。
人間不信になってた(というか憎んでた)私は横島にひどいことした。
それなのにあいつは再びあったときあいつは笑って話し掛けてくれた。
そして、常識を学ぶということで美神のところで居候することになってから
いろいろ教えてくれた。ひどい人間ばかりではないということ。
少なくても事務所の仲間は信じてる。



私横島のこと横島のことすきなのかなぁ?



そんなことを考えたら顔が熱くなってきた。
そんな私にあいつが話し掛けてきた。
「どうしたタマモ?顔赤いぞ?風邪か?」


そういって手をおでこにあてる。


「ッなんでもないわよ!?」

そういって私は横島の手を払う。
横島はまだ少し心配そうに、

「そうか?風邪なら早く寝ろよ」

そういってまたみんなとの話に戻っていく。



はあ、もうやめやめ。



そう考え私は先ほどの考えを忘れようとして思考を中断した。




ー数日後ー

まただ。またあの顔。わたしの嫌いな横島の表情。



どうしてそんな顔するの?



いくら考えてもわからないので今日は意を決して聞いてみた。


「ねぇ横島?なんであんた夕日を見るときそんなに悲しそうな顔するの?」
「!!・・・タマモ?」
横島は私が話し掛けたことに驚いた顔をしたけどすぐに笑顔になった。
でも、その笑顔もどこか・・・泣いてるようだった。
そして、横島は語ってくれた。横島と美神の前世から始まる、世界の、そして横島の命運を分ける魔神大戦を。
そして、ルシオラという女性のことを。
その話は私の想像以上だった。
魔神アシュタロスの苦悩や絶望。そして希望。
どうしてそんなことまでわかるのか聞きたくなったが、
横島の顔があまりにも真剣だったので聞くに聞けなかった。
(後で聞いた話だと横島は「模」の文殊でアシュタロスの記憶を読んだ時に
いっしょにそういう感情が流れ込んできたらしい。)
そして、話がルシオラのところまでくると横島は一瞬つらそうな顔になり少しの沈黙。
だが、すぐに元の表情に戻りまた語りだした。
ルシオラとの初めての出会い、強くなると誓いルシオラとの約束、少しの別れ、南極での再会とアシュタロスとの戦い、
短い間だったが幸せを感じた日常、いっしょに夕日を見た東京タワー、べスパとの戦い、
ルシオラの東京タワーでの最後。
そして、ルシオラを取るか世界を取るかという
最後の、そして究極の選択。
横島は世界を取った。そして、ルシオラを失った。


「でもな?ルシオラは俺の子供として生まれてくる可能性もあるんだ」

これで俺の終わりと、横島は笑顔で言う。



横島の話を聞いて私は思った。



横島はまだルシオラのことで傷ついてる。



そして、同時にこうも思う。



私が、横島の傷を癒してあげたい。


この二つの想いが私を動かす。
「横島!私が横島を癒してあげる!そんな横島、私・・・見たくないよ」
「タマモ・・・」

抱きつき俯いた私を横島は優しく抱き返してくれた。


そして、静かに話し掛ける。


「ありがとう、タマモ。ルシオラを忘れられないけど、今からは、タマモを愛して絶対守り抜くよ」

うんうんと、タマモは頷き、二人は抱き合った。そして、しばらくして横島が口を開く。


「タマモ。ルシオラに報告しに行こう」
「うん」

その言葉にタマモは笑顔で頷く。




ー東京タワーー

「ルシオラ、こいつはタマモだ。俺はこれからこいつを愛していく。でも、おまえのことも絶対忘れないからな」

しばらくしてタマモが横島に、


「もういいの?」
「ああ、もう十分だ」

横島は答えながら笑顔で振り返る。愛しいタマモに。




ー完ー



後書き
今回はタマモ視点で。
こんなタマモもかわいくていいんじゃないかと思い、
書いちゃいました。

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