ザ・グレート・展開予測ショー

私が夕焼けを嫌いな理由。


投稿者名:龍鬼
投稿日時:(04/ 9/15)


――屋根の上でのお昼寝が、好き。
そりゃあ、同じ部屋に住んでるバカ犬に「猫みたいでござるなぁ」って笑われたのは腹が立ったけど。
それも、少しばかり燃やしてあげたから、気も晴れた。



でも、気持ちいいんだもん。狐に戻ってすやすやと、ぐっすりと。
それも、いつもって訳じゃない。
現に、ソファーで寝ることの方が多いくらい。

たまに、空が綺麗な日に。

気が向いた時に、屋根に登りたくなる。
金色のふさふさした自慢の毛並みが、太陽の匂いをお腹一杯に吸い込む。
鳥たちが優しい歌をさえずって、夢の世界に連れて行ってくれる。


あの日も、そんな感じだった。
空が特別澄んでいて、大きな入道雲が彩りを添えていた。
いつものように、狐の姿になってお気に入りの場所で丸くなる。
九つのシッポを枕にすると、いつもより気持ち良かった。

 だからかなぁ。

いつもより目が覚めるのが遅くて、気が付くと西の空が真っ赤だった。

――今日の夕飯、おキヌちゃんのきつねうどんだっけ……
そんな事を思い出しながら、からっぽのお腹をシッポでさする。

屋根から下りようとした時だった。


 アイツが、そこに居たんだ。


ベランダから、沈んでいく夕焼けを惜しむかのように見つめながら。

「……何してんのよ?」

「ん…あぁ、スマン。もうすぐ晩飯だから呼びに来たんだけどさ……
 ホラ、綺麗だろ?夕焼け……見とれちまって……」

「ふぅん…」
そう言いながら、ベランダに飛び降りて人の姿に戻る。

「それは別にいいけどさ…感傷に浸るなら、他所でやってくれない?」

アイツは、少し驚いたような表情を見せた。
構わず言葉を、続けた。
「イライラすんのよ、アンタがそんな顔してると」

――そんな、悲しい顔してると……

「悪ぃな………」
心底済まなそうな顔に、苛立ちばかりが募った。
――何でこんなに、コイツは……っ!

「何があったかは知らないわよ……でも、生意気なのよっ、アンタがそんな…」





「そんな……そんなんじゃなくてっ、アンタはもっと馬鹿やって、殴られて…」

目は、もう潤んでいたかもしれない。
理由も分かんないし、只かっこ悪いってだけだけど。

そんな私を、アイツはじっと見ていた。
今までに見たことのない、優しい目で。

「……似合わない、でしょ……」

それだけ絞り出すのがやっとで、目を背けた。
言いたいことはまだたくさんあった。でも、言葉に出来なくて。



……沈黙は、階下からの声によって途切れた。

「おっそーいっ!!さっさと戻ってこんか―――ッ!!」

「すんませーん!ただ今戻ります――っ!!」

「あ〜あ、また殴られるかなぁ…」
アイツはそんな事を呟いて、わざとらしい苦笑を浮かべて。
階段の方へ歩き出していった。




――私の耳元に、一言囁いて。

























―――ありがと、な………


結局、その日のきつねうどんはあまり美味しいと思わなかった。






で、あの日から、夕焼けが少しキライになった。

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