ザ・グレート・展開予測ショー

GS美神 EP2 迷走


投稿者名:純米酒
投稿日時:(04/ 9/13)

あたり一面真っ暗な闇。
そして、広い世界なのに自分の周囲にのみ不自然に響く声。

横島はじぶんが夢を見ているのだろうと、なんとなく理解していた。


【敵を倒して皆を守れる『力』が欲しい・・・か。まだ自分を偽る気か?】

(嘘じゃない・・・俺は・・・)

【お前が守りたかったのは「アイツ」だろう?他人に「アイツ」をダブらせるのは止めろ・・・】

(・・・・・・・・・・・・)

【まぁ、いいさ・・・勝手に苦労するのはお前だ。
 だが、「アイツ」の存在を知っている癖に、触れようともしない奴等に同じ事をするなよ?
 そんな事をした時は「俺」が「お前」を許さない】

最後の言葉と同時に、闇にうっすらと横島に背を向けている人影が浮かび上がる。

(お前にとやかく言われる筋合いは・・・・)

カチンときた横島が怒鳴ろうとしたその時、

【いいや「俺」は「お前」を許さない!・・・絶対にな・・・】

何処からか浮かび上がって来た人影は、不意に横島の方に振り返った。

(・・・・・俺!?)

そこには、よく見知った自分の姿が浮かび上がっていた。





「うぅ・・・・・くはぁっ、はぁ・・・ふぅ〜・・・変な夢だったな・・・
 クソッ、俺ならもっと俺を労わってゆっくり寝かせるかとかせんかい!



 ・・・・・・・ってなんじゃこらぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!???」

肌に触れる感触から、自分がまだ布団の中にいることは間違いなかった。

だが体全体で感じる浮遊感と、目に飛び込んでくる、すさまじい勢いで下から上に流れる景色。
さらには耳を劈く風切り音が、自分が自由落下の最中で有る事を告げている。

よくよく見ると、布団の上からロープで縛られていて身動き一つ取れない状況だった。


(なんでだ?何でこんな事に??まさか雪之丞が○野家の代わりに松○に連れて行った事を怒ってるのか?
 いや、そんなはずは無い!雪之丞だって大盛り二つと卵で満足したって言ってたじゃないか!
 ・・・あ、地面がドンドン近づいてくる。い、嫌だーーーーーーまだ死にたくねぇーーーーーーー!!!)


ズズゥゥゥゥ・・・・・ン



「落下衝撃耐久テスト完了・・・・なのねー♪」

激しい轟音をと共に大量の砂塵が舞い上がるのを見て、おおきなトランクを開いて何やらカタカタとキーボードを叩きだす人物がいた。






「それにしてもアンタってば相変わらずデタラメな体してんのねぇ・・・」

令子が呆れとも感心とも取れるような表情を浮かべる。
いくら布団がクッション代わりになったとは言え、命綱無しのバンジージャンプで軽い捻挫ですんだ横島の体へ対しての感想だ。

「あんなことして置いて言う事はそれだけッスか?乳の一つや二つ揉ませて貰わにゃ割りにあわな・・・うぎゃ」

いつもの様に振る舞い、これまたいつもの様に鉄拳での制裁を貰う。
美神除霊事務所の当たり前の光景だ。

「ほら、おキヌちゃんもシロも・・・何時もの横島クンじゃない・・・
 何を心配してるのか解んないけどヒャクメだって一応神様なんだから、
 こんなくだらない事の為に呼ぶ必要なんかないのよ」

さらっと酷い事を口にしながらも、つぶれたヒキガエルの様に床に這いつくばっている横島を指差して、
令子はおキヌとシロに向き直る。

「一応って・・・ひどいのね〜」と涙を流すヒャクメは無視されていた。

おキヌとシロはまだ何処か納得の行かない様子だが、令子にこう言われてしまっては引き下がるしかなかった。

だが、

「・・・ん〜・・・体のほうはともかく、霊力とか霊基構造のほうはちょっと変わってきてるのは確かなのね〜」

涙目でディスプレイを見ていたヒャクメがポロっともらすと、

「横島さんはどんな風に変わってるんですか?」
「先生はどのように変わっているのでござるか?」

と、おキヌとシロが物凄い剣幕で詰め寄ってくる。

「え、え〜っと・・・詳しく調べてみないと解らないけど、今までの霊力とは違う力の波形が・・・」

ヒャクメがそこまで口にしたとき、おキヌはヒャクメに詰め寄るのをやめ、令子はヒャクメとシロの間に割って入った。

「仕事前だって言うのに、いつまで喋ってんの!?
 ヒャクメ・・・依頼に遅れてギャラが減った時の損害賠償金全額払えるかしら?
 シロ・・・一ヶ月肉無し生活したいのなら思う存分そこで話し込んでなさい!」

「え、えーと・・・私ってば薄給だし、祭ってもらってる社も無いからお賽銭とかの収入もないしぃ〜」

「・・・・・・・に、肉ぬきイヤでござる・・・」

無理やり過ぎる理由と理不尽な脅し文句で、露骨に話を終わらせる。

普段なら令子の暴走をいさめるおキヌが、何もしない事にタマモは疑問を感じた。
だが、事務所の最高権力者の令子に、余計なことを言わないほうが良い事を十分に理解しているで
胸の奥から湧き上がる疑問を、口に出すような真似はしなかった。

横島はというと、床に這いつくばったまま物憂げな表情をしていた。
だがそんな表情をしている事を事務所にいる皆は知る事ができなかった。






依頼にはまだまだ余裕のある時間だが、自分から切り出した手前、出かけなくてはならなくなった令子は、おキヌとシロとタマモを引き連れて行ってしまった。



事務所に残ったヒャクメは暇を持て余していた。
呼び出された用事は済んだものの、久しぶりに来た下界でのんびりして行こうという魂胆だ。

一方の横島はというと、先日の一件を報告書にまとめようと書類と難しい顔で向き合っていた。

しばらくの間お互いが無言だったが、沈黙に耐え切れずヒャクメが横島のほうに歩み寄り、話かける。

「さっきからウンウン唸ってるけど、どうしたのね〜?」

すると横島は書類からヒャクメに視線を移す。

「ん〜・・・どうやって除霊したのか報告しなきゃいけないんだけど・・・
 まさか『気を失ってて、気が付いたら相手を倒してました』・・・なーんて書けないからな」

そういって心底困ったような表情でため息をつく。

「そういうことなら、私が横島さんの記憶を探って見てみるのね〜」

ヒャクメの申し出は有りがたかったが、横島は一抹の不安を感じてしまった。

「そんな事出来るのか、ヒャクメ?自分でも覚えてないような事なんだぞ?」

「うーん・・・意図的に記憶を封印させられていたりしない限り、大丈夫だと思うのね〜」

「そっか・・・じゃぁ頼むよ」

あいまいな答えを返すヒャクメに不安を拭い切れないものの、その気になれば人の前世まで見通すことの出来るその能力を
横島は信用してみる事にした。

「はーい・・・じゃぁ気分を楽にするのね〜」

虫眼鏡を片手に横島に対峙するヒャクメの目は真剣そのものだった。
横島はその真剣な目つきに気圧されて、ただじっと座っている事しか出来なかった。



しばらくして数回のまばたきの後、ヒャクメは目をこすりながら大きく息を吐き出した。
そんなヒャクメの様子を見て、横島は緊張を解く。

「終わったのか?」

「一応はね〜・・・けど」

「けど?」

はっきりしないヒャクメに、横島は先を促すように相槌を打つ。


「コレは妙神山で詳しく調べたほうが良いかも知れないのね〜」


「何か問題でもあるのか?」

「ええ・・・さっきは言いかけて止められちゃったけど、横島さんの霊力と霊基構造に変化が出てきたのもそうだし、
 魔装術みたいな変身なんか私は知らないのね〜。
 老師辺りなら詳しいことを知ってそうだから何か解るかも知れないのね〜」

「・・・・・・・それは早いほうがいいのか、やっぱり?」

「私としては今すぐにでも妙神山に連れて行きたいのね〜」

「でもなぁ・・・なんの連絡も無しに居なくなったら後が怖いしなぁ・・・」 

横島は、無断で居なくなった時、雇い主がどの様な行動を取るのか想像して身体を振るわせた。
ヒャクメも彼女の性格を知っているので、横島の言葉につられて背筋に悪寒を感じてしまう。

二人が想像の中の恐怖に震えているその時、おずおずと声を掛けてくる存在があった。

<あのー・・・私が伝言を預かりましょうか?>

天井から響く声に、横島は『彼』の存在を思い出した。

「・・・頼めるか、人工幽霊壱号?」

<任せてください・・・ただ、伝言を聞いたオーナーがどのような行動に出るかまでは責任持てませんが・・・>

「ああ、そこまでは無理だろうな。伝言だけ頼むよ」

<了解しました>

これで一応は無断で居なくなった事にはならないと一安心した横島だが、まだ報告書を完成させて居ない事に気がつく。

「あっちゃー・・・どうしようかな・・・?」
おもわず頭を抱える横島。

「その事件関係のこともこれから調べにいくんですから、書類も一緒にもっていけばいいのね〜」

「提出期限が今日までなんだけど・・・妙神山での調べ物したあとでも間に合うかな?」

「・・・・・・・多分というか絶対に無理なのね〜。
 横島さんの今の状態はかなり特殊な状態だから、調査だけでも数日はかかるのね〜」

ヒャクメの言葉に頭を悩ませる横島。

「文珠で退治したってことにすればいいとおもうのね〜。そんな書類どうせ細かく目を通されないハズなのね〜」

ヒャクメの言葉に横島は「こいつ本当に、神様か?」などという思いが一瞬頭をよぎったものの、
さりとて名案が浮かんでくる訳でもなかったので、ヒャクメの言う通りにした。





「それじゃぁ行ってくるよ、伝言よろしくな」
横島は手の中にある二つの文珠に念を込める。

<いってらっしゃい、横島さん>

「お邪魔しました、なのね〜」
ヒャクメも神通力を駆使してテレポートの準備を整える。

<またいつでも来てください、ヒャクメさま>



その言葉が言い終わると同時に、二人の姿は事務所から消えていた。

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