ザ・グレート・展開予測ショー

最終話予想(絶対可憐チルドレン)


投稿者名:s-cachi
投稿日時:(04/ 9/12)

「中尉、顔を見せて頂けませんか?」
動くものの影とてない大海原に向けて、皆本はごく穏やかな口調で語りかける。

程なくして、海面に1つの影が浮上した。
イルカである。
太平洋戦争中に日本帝国軍が生み出したエスパー・ドルフィン。超度7の予知能力を有する伊−九号中尉だ。

「よく私の居場所がわかったね、皆本二尉」
中尉が語りかけてくる。テレパシーを介してのものだ。
「わかったというのとは少し違いますね。中尉は私の手が届く範囲内にいなければならなかったのですよ。私に殺されるために」

いきなり物騒な台詞を吐く皆本だが、中尉は気にした風もない。

「いい加減生きることにも疲れていた身だ。
どうしても、と君が言うのなら、今更抵抗するつもりはないが、せめて自分が死ぬ理由くらいは知っておきたい。
話してもらえるかね?」

「桐壺長官から聞きました」

皆本も中尉の問いに穏やかな声音で応える。

「中尉はこれまでに3000件以上の予知を行い、そして、それが外れたことは一回もなかったと...」

「...」

中尉は無言のまま続きを促す。

「しかし、それはあまりにも不自然です。
3000件の予知の中には人命に関わるものもあったでしょうし、その当事者に対して事前に忠告が行われたこともあったはずです。
それなのに、1回もはずれがない、というのは...
それでは時間の流れというものは始まりから終わりまで既に決められていて、人間には真の意味での自由意志などはない、ということになってしまいます。
それで、私なりに別の解釈を捻り出したのですが...
もしかして、中尉の能力は単なる未来予知などではなく、「自分が予知した未来を確定したものとして固定する」というとんでもない側面を持っているのではありませんか。
一旦固定した歴史が脇道に逸れようとしたら、無意識のうちにも無理やり本筋に引き戻す、というような...」

「その可能性を否定しきることはできないな...」

「もしも私の推測が正しければ、それは神にも等しい力だと思います。
もっとも、ご自分にとって望ましい未来が具現化されるわけではないようなので中尉にとっては幸せでも何でもないでしょうが...
多分、「いくつもある未来の可能性のうちで一番最初に予知能力のアンテナに引っかかったものが自動的に固定化の対象に選ばれる」という具合なのではないでしょうか」

「つまりは、それが君が私を殺しに来た理由なのだね?」

「はい。
未来を固定化しているのが中尉の能力によるものだとすれば、中尉に死んで頂くことで固定化は解除されるかもしれません。
そうすれば、ヴィジョンで見せられた悲惨な未来を回避することも出来るかもしれない...
本当に済みません。
中尉自身は何も悪いことはしていないし、私に迷惑をかけたわけでもない。
ですが、私はあの子達が可愛いのです。
こまっしゃくれたマセガキどもですが、それでも、しかし...」

やや間があった後、浜辺に数発の銃声が轟いた。

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