ザ・グレート・展開予測ショー

幸せ


投稿者名:SooMighty
投稿日時:(04/ 9/12)








written by SooMighty


幸せ









ボロアパートの1室。
俺はルシオラと向かいあっていった。



「私たちもう無理ね・・・限界だわ。」

「・・・そうだな。」
もはや予感していた別れの時
遂にこの日が来た。

「結局私たちがこうなったのは男と女じゃなくて・・・
 お前と私だったからね。」

「そうかもしれないな。」

今この瞬間こそ「ああ、やっぱりな」なんて思っている俺だが
付き合い始めた頃は互いにうまくやる自信はあった。




俺とルシオラは非常にドラマチックな出会いをした。
神に選ばれし2人・・・なんていうと白痴と思われそうだが、
決してそれすら言いすぎで無いほどの出会いだったのだ。

そんな出会いで結ばれた2人だ。
根拠が無い自信に振り回されてもしょうがなかった。
あん時は2人とも若くて無防備だ。

お互いに別れるような原因を作らないようにする事を最初に決めた。
スマートな恋愛こそがうまくいく秘訣なんて思い込んでいた。

恋人同士とはいえプライバシーは尊重する。

浮気の原因になるような事は避ける。

家事はキッチリ互いに交代にやる。

まとまった金ができるまでは避妊を心がける。


そんな風にマニュアル通りの形式を重視した生活をしていた。
互いが傷つく事さえ無ければ、ずっと一緒に歩いていけるなんて思ってた。




だが、今になって思えば、本当はただ2人とも傷ついたり傷つけたり
する事がおっくうなだけだったのかもしれない。

いい面ばかりを見せようと、バランスばかりをとろうとしていた2人。


次第に理想の同棲生活は音も無く徐々に崩れていき、
気まずいムードが漂う。
それに反比例するかのようにまたバランスをとろうとする。
バランスをとればとるほどおかしくなっていくのに気づいている癖に
やってしまう。


そんな恋愛が続くはずも無く今やこんな状況に陥ってしまった。
もはやいくら情熱的な愛の言葉を吐こうが戯言にしかならない。
裸になって抱き合ったって決して氷解する事は無い。
出会った日のトキメキなんてとうに忘れちまってる。


「今さらさぁ、こんな事いってもどうにもならないんだけどね。
 最初は本当にうまくやっていく自信はあったのよ。」

ふと声をかけられ我に返った。
どうやらルシオラも全く同じ事を考えていたみたいだ。

「それがなんでこんな事になっちゃんたんだろうね?
 途中までは全てがうまくいってるように思ってたのに。」

「・・・さあな。」
ルシオラがわからない事を俺に聞かれても答えられる筈は無い。
ただ2人とも無理して形ばかりに捕らわれていたからこうなった
ってのだけは理解できる。

「幸せってさあぁ、手を・・・伸ばす所にあるなんて思ってたけ・・・ど、
 そうもうまくはいかないみたい・・・だね。」
話しながら涙を流していた。
声もうわずっている。

俺もその姿を見て、つられて涙腺が緩んだ。

「ゴメン、ちょっといいかな。」
そう言い、俺はルシオラからは見えない位置に行き、・・・泣いた。




別々の道を歩むと既に決めた2人。
だけど愛し合った時間も確かにあったのだ。

それを思うとやはり・・・辛い。


不思議だよな・・・
別れの言葉を言うまではあいつの嫌な所ばかり目に付いたのに、
いざ別れようとすると今度はいい所しか思い浮かばないなんて。

虫がいいにも程がある。


きっと別れた後もしばらくはあいつの事ばかり思い出すんだろう。
それも今と同じように美点ばかりを。




こんなに苦しい思いをしているがヨリを戻そうなんて気は
これっぽちも起きなかった。
どうせ話し合ったりしようが、これから先無理して続けようが、何一つ分かりあえはしない
んだ。



「このマンションからは俺が出て行くか? それともお前が出て行くか?」
2人で共働きをし、結構なマンションを購入できた。
それも今や2人の愛の墓標に過ぎなくなってしまったが。


「私が出て行く。ここに居ると色んな事を思い出しちゃうから。」

「そうか。」
俺は別にどっちでもよかった。
どうせさっきもいったように楽しかった思い出や
ルシオラのいい所しか思い出せなくなるんだから。

「じゃあ私は荷物をまとめて明日にでもここを発つわ。」

「ああ、わかった。俺も朝早いからもう寝るよ。」























朝、目覚めたら既にあいつはいなかった。
今現在の時間は朝の7時頃。

よっぽどここを速く出たかったんだな。
あいつもやっぱり俺と一緒は相当に辛かったんだな。


こんな事ばかり同じ気持ちになってしまうなんて
とことん俺らは子供で不器用だったんだな。
今更そんなことを思い知らされた。



俺もあいつもしばらくは恋愛には目を向けないだろう。
だたでさえ日常と仕事に忙殺されそうなんだ。



けど結局また誰かと別の人を見つけて共に歩む日が
くるんだろう。ルシオラも俺も。
なんとも締まらない話だが、誰しも独りで生きていく事なんてできやしない。
なんでそんな風になってしまうのかなんてわからない。



いつかまたそんな日が来るだろう。

その日が来るまで待ってみようか。





















そして4ヶ月後・・・

俺にもようやくまた好きな人ができた。
まだ付き合うとまではいえないけど、相手も俺に好意
を寄せているという確信はある。

俺の職場の後輩で、受付をやっている娘だ。

今日もその娘と話すのが楽しみだ。
忙しいだけの毎日にもようやく華が出てきた。




・・・そして





最近ようやく少しだけ解ってきたような気がする。

自分というものを理解するために人は愛を求めるんだ。
本当の自分なんて自分には絶対理解できない。
だからその謎が解けるように人は自分を分かってくれる人を、
映し出してくれる人を探すのだ。


そしてもう1つ。




やっぱり愛に形はなく途方もなく自由なものだ。
形式通りの恋愛も1つの恋愛。これは事実だ。
だけど時には傷つけたり、奪い合ったりする事が無いと
やっていけないのも事実だと思う。

本当にほんの少しだがそんな事が見えた気がしている。






きっとルシオラも今はそれがわかっているだろう。
どこで何をやっているのかわからない。
もう、隣には別の誰かがいて、幸せを見つけているのかもしれない。




俺はまだ幸せや愛ははっきりわからないけど、それでも
それを見つけるまで歩き続けるしかないんだよな。



その日まで1度は見失った幸せをまた探しに行くか。








END

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