ザ・グレート・展開予測ショー

オリンピックの余波。


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(04/ 9/12)

「老師!パピリオ、テレビゲームは・・あら、やってない」
食後二時間もハヌマンの部屋にいた二人である。
当然テレビゲームでもやってると思い、注意にいったら違う。
「わたちたちが、いーっつもゲームステーションやってると思ったら大間違いでちゅよーだ」
手にクレヨンを持って反論している。
「あ、あらゴメンナサイ、で何してるの?」
聞く前に良く見ぬかと言いたげなはヌマン。
「絵を描いていたのじゃよ、ほれ」
ハヌマンは墨を使う技術を熟知しているのか、水墨画を。
いくつかの硯には色の濃淡が違う水墨が用意されている。
「ほれ、どうじゃ小竜姫」
見事な花鳥風月絵を今完成させている。
「さすがですな。老師」
「じゃろう、じゃろう!」
と得意満面のハヌマン。
「一時期、牧谿(もっけい)と名乗って当地で活躍してたからのぉ」
「へ?老師が牧谿だったんですか!」
実は水墨画の歴史で最も有名な一人であったとは。
「しかしのぉ・・」
笑顔がしかめっつらになり、
「こやつには、わからんらしいぞぉ」
パピリオをあごでしゃくって見せる。
「あたりまででちゅ。黒一色の絵で、そこいらの景色じゃあ」
わたちは、納得できまちぇん、ときた。
子供じゃ、まだまだわからない世界かもしれない。
「はは、パピはまだまだ子供ですから、老師」
「子ども扱いしないでくだちゃい!」
怒る仕草が子供なので、小竜姫に老師は逆に笑ってしまう。
「で、そーゆ、貴方は何を書いてるの?パピリオ」
クレヨンで書いていた紙を覗き込む。
「あ、観ないでくだちゃいよぉ、途中なんでちゅってば!」
止めるのも聞かず、手に取る。
「・・??運動会の絵?」
どうやらトラックらしき線とハードルのような物がかかれている。
と言っても「らしき」物という程度。
遠近法やら、人の書き方など丸で判ってないパピリオの絵、まさしく幼稚園児の絵だ。
「あぁ、オリンピックの絵ね、パピリオ」
「そうでちゅ!さすがは小竜姫様、猿爺とは違いまちゅね」
理解してくれたのが嬉しいとでも言うようなパピリオである。
どうやらハヌマンは判らなかったようだ。
ごまかしでぽりぽりと頭を掻いていた。
「オリンピックね、終っちゃったら夢みたいだったわね」
「そうじゃのぉ」
小竜姫とハヌマンはそう感じる。
この二人、近代オリンピックの時代から見ているので、恒例行事に近い。
ところが、パピリオはそれこそ生まれて二回目か、三回目の事、
毎夜の興奮の為、おねぼうの日々が続いていた。
「そうだ、小竜姫様は一番面白かったのはどれでちゅか?」
「私?」
小竜姫の事だ、本命は格闘系、次点で迫力のある陸上かと思われたが。
「実は新体操のファンなのよ」
「本当か?」
意外な答えに目を丸くした老師である。
「好ききらいは個人の勝手じゃが、そうであったのか」
「だから、今年は日本人が活躍できなくて残念でしたわ、ロシアは強いわね」
「そうじゃったのぉ」
そこに口を挟んだのがパピリオ。
「??新体操ってなんでちゅか?」
「なんじゃ、パピリオお主、知らんのか」
「はいでちゅ」
確かに今年はハイライトは開催地との時差で夜半から明朝であった。
全部を観るにパピリオの年齢じゃあ難しい。
「うむ。新体操というのはのぉ、ヒモや棍棒を使った体操じゃ」
「ひもや棍棒でちゅか?これはかなり強そうな競技でちゅ」
思わずぷっと、零した小竜姫。
オリンピック競技は様々あれど「強」を強調する競技ではない。
「老師の説明も駄目ですよ。えっと新体操っていうのはね」
自分の好きな競技とはいえ、確かに全く知らない者に説明するのは口では難しい。
なら。
「パピリオ画帳と、クレヨンかしてくれる」
「はい、でち」
クレヨンで即興で絵を描いてみせる。
「こんな感じね」
ここでパピリオと老師の見た絵は。
リボンと棍棒とボールの三競技の絵なのではあるが。
旨く、可愛くデフォルメされた、アニメチックの絵が目に飛び込む。
加え絵心で余計な「耳」まで書いているから。
「へー、新体操は「猫さん耳」をしてやる競技でちゅか、おもしろーい」
あはは、と笑う小竜姫であったが、
「これ、説明するに余計なものを書き込むでない」
と、老師の一喝が飛んだ。
次の日、小竜姫の絵を見よう見真似で、
リボンで遊ぶパピリオがいるのだが。
「ぶーぅーう!」
何度遣っても体にからまりついて、ご機嫌斜めになりそうに、
なっていた。


FIN

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