ザ・グレート・展開予測ショー

こんな未来はいかが?(絶対可憐チルドレン)


投稿者名:よりみち
投稿日時:(04/ 9/11)

こんな未来はいかが

 伊−九号は、皆本と特務エスパーたちの活躍で最悪の事態には至らず、一命を取り留めた。そして、超度7の予知能力も絶対でないことが証明された皆本は、あのビジョン−未来を変えてみせると心に誓ったのであった。




十年後




 皆本は十年前のビジョンと同じ光景の中に身を置いていた。目の前で薫の体が宙に舞う。それは、あれ以来、何度も悪夢の中で見せられた光景だ。




「カーーット!!」監督の声が響いた。

 声と同時に、体を力を抜く皆本。同じく空中に自らのサイコキネシスで体を浮かせていた薫も”力”をゆるめ着地する。

「ご苦労さまー 最終のカット取りは1時間後に行いますので。それまで休憩していてください。」
アシスタントがコーヒーの入った紙コップを皆本に差しだしながらスケジュールを告げる。

その横では、薫が、お気に入りのスタミナドリンクをあおっている。
「‥‥ったく、何が『愛してる。』だ! 何で俺がこんな恥ずかしい台詞をいわなきゃならないんだよ!」

「そ〜お、けっこう真剣に言ってたような気がするんだけどな〜」
「ほんま、気合い、はいっとったで。」

薫が振り返ると、そこにはニヤニヤ顔の紫穂と葵がいる。もちろん、テレポートで現れたのだ。

 薫は威嚇するように、「うるさい、黙れ、殺すぞ。」

 他の者ならともかく、そんな言葉に怯む二人ではない。
「いいんじゃない〜 私なんか、最初に殺されて、後は回想シーンだけなんだから。」
「ウチだって、このクライマックスは声だけやで。前の脚本じゃ、皆本はんと濃厚なラブシーンがあったのに、いつのまにか消えとるし。」

「まっ、ヒロインをはれるのが俺だけだってことさ。」

「そう〜 脚本の人の心を読んだら、ストーリーを考えてると、突然、落下物がかすめたり、赤毛の女性に迫られたとかの記憶があったんだけどなぁ。」
‘ネタは上がってるわよ!’と微笑む紫穂。

「ハハ‥‥ きっと、脚本家が見た白昼夢の記憶なんだろ、それは。」
空虚な笑いで誤魔化す薫。

「しかし、何で今頃、エスパーとノーマルが戦うちゅう陳腐な映画を創るんや、それもウチらまで引っ張り出して。平和になって”バベル”も予算が余っとんのちゃうか。」

皆本は表情を引き締め、
「こんな可能性があったってことを社会のみんなに知ってもらうのは悪い話じゃない。十年前に比べるとマシになったとはいえ、まだ、エスパー排斥の訴えに共感する連中も多い。エスパーも普通の人と同じように、人を愛し痛みを感じることを、絶えず示していかなければならないんだ。」

「パンフの棒読みはさておいて、残るカットは夕方前には終わるんだろ。終わったら、約束通り、飲みに連れて行けよ。」
「もちろん、世界征服をあきらめた代わりに全額、皆本はんのおごりやで。」
「今日は、みんな勝負する気で下着を選んでるから、期待してるわよ〜」

 三人の言葉に、皆本は、最近、めっきりつかわなくなった言葉を内心でつぶやく。
‘このクソガキども〜!’

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