ザ・グレート・展開予測ショー

大好きな人の、隣で……


投稿者名:龍鬼
投稿日時:(04/ 9/11)


――少女が、駆けていた。

自慢の銀髪を朝日に煌めかせて、心地よい風と並んで。

その足取りは、重力の存在を忘れさせる程に軽く。



 急げ、急げ。



少女は全身の筋肉を急かして、只目的地を目指した。


 大好きな人の、居る場所へ。




――「大好きな人の、隣で……」――



「せんせぇっ!!サンポに行くでござるっ!!」

元気いっぱいに老朽化した扉を開け放つシロ。

「あれ…せんせぇ?」

お目当ての彼は、布団を引っ被ってまだ寝ていた。
そういえば、昨日は仕事が多かったんだっけ。

「でも…約束したのに、非道いでござるっ……!」
言葉とは裏腹に、笑っている自分がいた。
布団の端から覗く彼の笑顔が、とっても無邪気だったから。

「全く、しょーがないでござるなぁ……」
苦笑するシロ。
叩き起こしてやろうか、それとも―――

 ふと、思いついた。

「約束破った罰でござる……これぐらいは、許してもらわねば♪」
そう呟いて布団を横からそっとめくった。
横を向いて寝ている彼の寝顔が、ちょうど正面に見える。

「それでは……失礼するでござるよ……」
布団の隙間に自分の身体をゆっくり忍ばせていく。

決して広くはなかったけど、暖かくて気持ちいい。


  せんせぇの、あったかさだ。

  

考えるだけで、すごく幸せ。

この瞬間、シロの世界には、只二人が存在するだけ。

  幸せでたまらなかった。

ふっと顔を上げれば彼の顔がとても近くに。

  少し、ほんの少し。

首をもたげれば唇が触れ合う距離。

――やってみようかな……












でも、止めておいた。

奪うには、余りにも無防備過ぎる獲物だったから。
「今回は、勘弁してあげるでござるよ……」

自分の、大好きな人。
明るくて、楽しくて。

でも、時々悲しそうな眼をしていて。



過去に何があったかは知らない。
無理に聞こうとも思わない。



――多分、大事な人を失くしたんだ。


かつての自分みたいに。
なんとなく、それが分かった。

大丈夫。
この人は、強いから。
きっと乗り越えていける。



だから、自分は傍にいよう。
いっぱいいっぱい笑ってあげよう。

自分が出来るのは、今は只それだけだから―――


布団の中で、そっと掌を触れ合わせる。
大きくて、あたたかな掌。



――せんせぇ…大好き………


シロも、眠ってしまった。
大好きな人の匂いに包まれて、心底幸せそうな寝顔で………。



























―――それから何時間か後、美神除霊事務所。


「……で?いったいどこまでサンポに行ってたわけ?こんだけ遅れるからには相当遠出したみたいねぇ…」
かなり機嫌が悪そうである。まぁ上司として当然ではあるが。

「え〜っと、その…」
「サンポには行かなかったでござる!せんせぇと一緒に寝たでござるよっ!!」



   ぴしっ。



その言葉に凍りつく美神さんとおキヌちゃん。別の意味で固まる横島。
タマモは面白そうな顔で事態の推移を見守っている。

「ちょ……ちょと待てシロ……」
「いやぁ、すんごく気持ち良かったでござるよ〜♪」

横島の静止も聞かず、きっぱり言い切った。


既に二人からはドス黒いオーラが発散されていた。

「へぇ…ついにそっちにまで手ぇ出すようになったんだぁ………」
「是非詳しくお話を聞きたいですねぇ、横島さん?」

「あ、あの〜、ね?二人とも、取り敢えず一旦落ち着いて、話を聞いて…」


「「問答無用♪」」


「俺がいったい何をしたと――――――ッ!?」


例によって普通なら致死量のお仕置きを受ける横島。


――ちょっと、やり過ぎたかなぁ……


「この悪女」
にやにやしながらタマモが言う。
恐らく、コトの次第はだいたい予想がつくのだろう。

てへっ、と舌を出して笑ってみせた。
「だいじょーぶでござるっ。せんせぇは後で拙者が膝枕してあげるでござるからっ♪」

はいはい、とばかりに肩をすくめてみせるタマモ。
苦笑いもしているように見えた。


既に鮮血で真っ赤になっている横島を見やりながら、わざと聞こえないように呟いてみる。



「今度は約束破っちゃめぇ、でござるよ、せんせぇっ!(はぁと)」




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