ザ・グレート・展開予測ショー

百貨店パーティー☆7F


投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(04/ 9/ 4)

☆2Fと5Fのおさらい☆
『乱破S.S.』の女忍者・氷雅の陰謀(?)で、『零式といっしょ。』の中島とケンカ別れした千鶴。 その後―――


1、喫茶香山(少女編)

よく晴れた休日の朝、準備中の札がかかった扉を開けて千鶴が入ってきた。

カランカラン‥
「 おはよーございまーす! 」
「 おはよう千鶴ちゃん。 」

彼女は最近、この喫茶店でウエィトレスのアルバイトをするようになった。
千鶴はいつものように店の奥でエプロンを身につけていると、
この店のマスターである香山の母が、カウンターで開店の準備をしながら千鶴に話しかけてきた。

「 千鶴ちゃーん。 」
「 なんですか? 」
「 彼氏……中島くん? 浮気したって本当? しかも相手が氷雅ちゃんって? 」
「 な なんで知ってるんですか!? 」

思いがけないマスターの質問に戸惑う千鶴。
彼氏がいることまではマスターに話していたが、それ以上のことは話していなかった。

「 この前ね、千鶴ちゃんの高校の男の子たちが店に来てあなたたちのこと話してたわよ。
  特にメガネをかけた男の子なんか、
  『 実は俺も赤城のこと好きだったんだぞー 』なーんて、グチをもらしてたわよ♪ 」
「 そ そうなの…… 」

千鶴はまんざらでもないのか、顔を赤らめる。

「 よかったら詳しいこと話してみない? おねえさん相談にのっちゃうわ♪ 」
「 ……… 」


―――カウンターの席に座った千鶴は、ちょっとワクワク気味のマスターに中島や氷雅のことを話した。


「 ―――そうねー、氷雅ちゃんはたまにせいこう君たちと店に来るから知ってるけど、
  忍者っていうのもちょっと変わってて面白いし、彼女もそんなに悪い子じゃないからねー 」
「 マスターはあの女の真実を知らないんですよ! 」
「 まあまあ、恋敵(ライバル)は余計憎く感じちゃうものだしね。 」
「 そういうレベルじゃないんですよ〜 」

意外と氷雅に好意的なマスターに苦悩する千鶴。 

「 せいこうくんもね、はじめは妖岩くんとすごく仲が悪かったのよ。 」
「 そうなんですか? 」
「 私、忍者の世界ってよくわからないけど、規則とかかなり厳しかったと思うの。
  そんな世界で育った子と普通に育ってきた子たちが出会えば、最初はどうしても
  ケンカしちゃうものなのよね。 」
「 だからって、私と氷雅さんが仲良くなることなんかありえません! 」

千鶴はゼロや中島、自分から大切なものを奪おうとする氷雅のことを好きにはなれなかった。

「 つまりそれだけ彼を取られたくないのね? 」
「 ……そんなんじゃ…… 」

千鶴は顔を赤らめて言葉を詰まらせていた。

「 私は千鶴ちゃんも氷雅ちゃんも2人のいい所知ってるし、どっちかを応援っていう
  わけにはいかないけど、要は2人がどれだけ彼に対して熱い想いをもっているかよね。
  あとは彼の気持ち次第かしら? 」
「 ……… 」
「 ただこのままグズグズしているだけなら、彼、とられちゃうかも。
  一度彼とちゃんと話し合ったほうがいいと思うわ。 」
「 ……そうですね……そうしてみます。 」

ようやく決心がついた千鶴。 今晩中島に電話でもかけてみようと思っていると、マスターが―――

「 でも、2人をを魅了する中島くんっていったいどんな子なのかしら?
  きっとジャニーズ系で凄くかっこいい男の子なんでしょうね〜一度会ってみたいわ〜♪ 」
「 あは……はは…… 」

カラ笑いする千鶴。 素直にうんと言えない自分がつらいらしい。
マスターは微笑み、時計を見ると―――

「 あらもうこんな時間、千鶴ちゃんお店開けるわよ、今日は忙しくなるからがんばってね! 」
「 はい! 」

千鶴は店の入口の扉の札を“準備中”から“営業中”に変えた。
彼女がバイト生活にいそしもうとしていた頃、渦中の彼氏は………



2、駄菓子屋(少年編)

住宅街の中に位置するどこの町にもあるような駄菓子屋、竹同商店。
そこに、暗い顔して瓶詰めのコーラを買う中島の姿があった。

はあ〜〜〜っ
( 俺はどうしたらいいんだ…… )

少年は悩んでいた。
自分を好いてくれる氷雅に対し、そのアプローチがまんざらでもない自分。
千鶴と仲直りしたいのに、話すきっかけがつかめない自分。
優柔不断な性格を情けなく思いつつも、氷雅にはっきりと断ることができない意志の弱さをきらっていた。

( 氷雅さんを傷つけるわけにはいかないからなあ〜 )

ちなみに、氷雅の性格をかなり間違った方向で捉えていることが、中島を余計に悩ませている原因の一つでもあった。

「 はい、おつり。 」
「 ども。 」
「 ……ム! 」

コーラを手渡した店のおばさんが、中島の顔に注目する。

「 あんた………彼女とケンカ中だね? 」

ドンガラガッシャァアアン!

コーラをぶちまけながら盛大にコケる中島。

「 浮気がらみだね。 彼女と仲直りしたい……違うかい? 」
「 な…なぜそれを……!? 」
「 ここに店をかまえて50年、無数の中高生を見てきたあたしにゃピンときたね。 」
( いろんな人生があるなあ…… )
「 駄菓子屋は青春の交差点なんだよ。 」

そのとき、駄菓子屋の前をせいこうと妖岩が通りかかった。

「 あ、中島のお兄ちゃん、こんにちはー。 」
「 あれ? キミたちは確か、氷雅さんといっしょにいた、え〜と……… 」
「 伊能せいこうです、で こっちが妖岩。 」
「 あ そうそう、そうだったね〜ははっ……そうだ、キミたちもコーラ飲むかい? 」
「 えっ? 」
「 おばちゃーん、コーラ2本くださーい! 」
「 あいよー 」

中島はせいこうと妖岩にコーラを渡した。

「 ほら、俺のおごりだ。 」
「 悪いですよ、ちゃんとお金払って――― 」
「 子供が遠慮すんなって! とっさに名前思いださなかったお詫びだ。 」
「 はあ……じゃあいただきます。 」
こくっ
「 ……… 」

中島に一礼する妖岩。 3人は駄菓子屋の前に置いてある古びた木製の長イスに座り、コーラを飲んでいた。


「 キミたちこれからどこか行くつもりだったのかい? 」
「 はい、新しいTVゲーム買ったから、友達の香山んちにいく所です。 」
「 香山って……確かこの前せいこう君といっしょに帰ってた女の子のこと? 」
「 うん。 」
「 そのコとよく遊んでるのか? 」
「 うん、時どきかな? 家近いし昔からのつきあいだし…… 」

中島はコーラを飲みながら、少し考えると―――

「 ……ひょっとして彼女? 」
「 違います! 」

ちょっとニヤつき気味の中島に、間髪いれず否定するせいこう。

「 あはは 照れんなって! 別に小学生に彼女いたって悪くないんだぞ。 」
「 ホントに香山はただの友達ですってば! 」

少しムキになってるせいこう。
人生の(一応)センパイとして、悩める少年にアドバイスしてあげようと考えた中島は―――

「 まーなんだ、恋の悩みならこの中島お兄さんにドーンと話してみろ、
  こう見えても俺には赤城というサイコーの彼女が――― 」


              ―――『 バカ――――ッ!!!!! 』―――


「 ……… 」ガクッ
「 ……どうしたんです? 急に暗くなって…… 」
「 いや、なんでも……( 人のコトどうこう言える立場じゃないじゃん、俺…… ) 」

中島の脳裏に、彼女との破局の瞬間のセリフが思い浮かんでいた。

「 ……ハァッ、でもいいよなー小学生は、気軽に女の子の部屋に遊びに行けて。 」
「 中島のお兄ちゃんは、千鶴お姉ちゃんの部屋にいかないんですか? 」
「 うっ……なにげにサラッとすごいこと言うなーキミ。 」

思わず飲みかけたコーラを吹きだしそうになる中島。
小学生と高校生で、異性の家に遊びにいく感覚が大きく違うのも仕方のないことだろう。

「 ちょっと遊びに行くぐらいならいいんじゃないですか? 」
「 まあーそりゃそうなんだが……高校生にもなったら状況がちょっと違ってくるんだよ。 」
「 そうなんですか? 」
「 ああ、キミも大人になったらわかるさ。 」
「 ふ〜ん…… 」

遠くを見つめて語る中島に、せいこうはなんとなく頷いた。 

「 氷雅さんのこともあるからなあ〜はっきりさせないといけないとは思うんだけど…… 」
「 はっきりって……? 」
「 好いてくれるのはいいんだけど、氷雅さん積極的だし
  学校でもまとわりついてくるから、ヤロー共からえらい目に……
  いや、それがイヤだって言うわけじゃないんだ、むしろ気持ちいいし嬉しい――― 」
「 ちょ ちょっと待って! 」

かなり本音がもれていた中島だったが、そこをせいこうがあわてて止めた。

「 なに? 」
「 氷雅さん、高校いってるの!? 」
「 ああ、俺と同じクラスに…… 」
( 妖岩に続いて氷雅さんも……!? )

姉弟そろって知り合いとクラスメイト、せいこうは明らかに仕組まれたものだと感じたのだろう。

「 ……で、氷雅さんは、中島のお兄ちゃんに彼女がいること知っててまとわりついて、
  そのせいで千鶴お姉ちゃんと仲が悪くなったってこと? 」
「 まあーそうなんだけど、氷雅さんも悪気があるわけじゃないし…… 」

中島の発言に、せいこうは深くため息をついた。 そして中島の顔をまっすぐ見ると―――

「 絶対騙されています! 」

―――キッパリと言った。

「 悪気があったに決まってるじゃないですか!
  氷雅さんは面白いコトのためならなんだってする人なんですよ!
  ボクが言うのもなんだけど、氷雅さんはやめておいたほうがいいです! 」

ゼロと出会う前、過剰な護衛・悪ふざけにより、いちばん被害を受けていたのは彼である。
だからこそせいこうは氷雅の人格を把握しており、氷雅と付きあうことがどんなに恐ろしいことか知っていた。
………だが、中島の考えは違っていた。

「 ……せいこう君、キミは氷雅さんのこと誤解してるよ。 」
「 は? 」
「 氷雅さん、本当は寂しい人なんだよ、だからあんなに積極的に人と関われるんだ。
  もし俺に今、彼女がいなかったら、俺は喜んで氷雅さんと付きあいたいと思ってる! 」
「 あ あの〜……(汗) 」
「 氷雅さんは優しいし美人だし、充分魅力的な人だ!
  サイボーグ犬をペットにしているこの世界、美人忍者を恋人にしたっていいじゃないか! 」

中島のあつい想いに、せいこうはかなり引いていた。
しかし妖岩は中島の両手を取ると、目を潤ませながらなにかを伝えようとした。

「 ―――――! 」
「 え? 」
「 よ 妖岩まで……! 」
「 えっ、この子なんて言ってるの?? 」

せいこうはひとつ、ため息をつくと―――

「 『 姉をこんなに好意的に理解してくれる人は初めてだ 』って言ってます…… 」


【妖岩の法則(仮説) 妖岩とのつきあいが一定以上なら彼の言葉が理解できるらしい。】


「 ―――――! 」
「 ………えーと、『 姉のことよろしくお願いします 』って言ってますが…… 」

せいこうはこのままでいいのか迷いながら、妖岩の言葉をとりあえず訳した。
しかし中島は、妖岩の方をおさえると―――

「 ありがとう……氷雅さんは俺にはもったいぐらい素敵な人だ、
  やっぱりこのまま中途半端なままじゃいけないよな…… 」
「 ……… 」
「 ……俺、どっちかっつーと、赤城と仲直りして元の関係に戻りたいんだ、
  そう、ケジメつけたいと思ってるんだけど……思ってるんだけどね〜〜〜!! 」
「 ……… 」
「 中島お兄ちゃん…… 」

頭を抱え込んで苦悩する中島に、せいこうは―――

「 香山んちの店に行きましょう! 」



3、喫茶香山(少年少女編)

「 ありがとうございました〜! 」

私生活のことも忘れ、明るくバイトにいそしむ千鶴。
午後1時50分、ピーク時には満席だった昼のラッシュもようやく落ち着きかけていた。

「 千鶴ちゃん、遅くなったけどお昼にしましょう、カレーでいい? 」
「 はい、マスター! 」

店には客1人とマスターが残り、千鶴は店の奥にある香山家の居間で昼食をとりにいった。
そして数分後―――

カランカラン‥
「 いらっしゃい……あら、せいこうくん。 」
「 こんにちはー 」
「 夏子ー、せいこうくんが来てるわよー 」
「 わかったーすぐいくー 」

店の奥にいる娘の夏子を呼んだ後、マスターはせいこうの後ろにいる男子高校生らしき男に注目した。
中島とせいこうはは店内をキョロキョロしているが、千鶴の姿が見えない。

「 お姉ちゃんいないなー、せっかく中島のお兄ちゃん連れてきたんだけどー 」
「 ひょっとして千鶴ちゃんの彼氏!? 」
「 はい、そうですが…… 」
「 やだー 思ったより普通じゃない、仲直りしに来たの? 」
「 は? 」

事情を理解しており、いきなり主題に入ってくるマスターに戸惑う中島。
そうこうしているうちに、夏子が店のほうに出てきた。

「 伊能くんいらっしゃい、部屋に上がってよ。 」
「 うん、ちょっと待ってて……おばさん知ってるなら話が早いや、千鶴お姉ちゃん来てないの? 」
「 いるわよ、千鶴ちゃーん、中島くん来てるわよー 」
ドキドキドキドキ…
( 今度こそ赤城に謝って仲直りするんだ……そして俺の気持ちを…… )カランカラン‥

カチコチになって緊張してる中島の背後で、扉が開いたときに鳴る鈴の音がした。
その直後、千鶴が気まずそうな顔して店内のほうに出てきた。

「 ……… 」

千鶴は半目でじっと中島のほうを見つめていた。

「 赤城っ、俺さー、本当にお前のこと――― 」
「 ―――よーくわかったわ、そーまで見せびらかして私と別れたいわけね! 」
「 は? 赤城なにを言って………? 」

怒りに震えながら言葉を発する千鶴。
そのとき中島の後ろから、すーっと両手が伸びてきて、彼を背中から抱きよせた。

「 中島クン見いーつけたっ! 」
         「 のわあああああひょっ、氷雅さん!? 」

あ然とする一同、大汗流しながらうろたえる中島。

「 どうしてここに?て、この前と同じパターンじゃないですか!! 」
「 うふっ 中島クンがここに入るトコ偶然見かけましたの、わたくしたちって縁があるのかも! 」
( 怪しすぎる、タイミングよすぎだ! )
( 氷雅ちゃん……やるわね! )

心の中でつっこむせいこうとマスター。

「 あら、千鶴さんこんなとこでなにやってますの? 」
ぷちっ
「 ………! 」
「 なにやってるかはこっちのセリフだよ! 氷雅さん悪ふざけにもほどがあるよ! 」

キレかけた千鶴の代わりに、せいこうが怒った。

「 若、あんまりですわ、わたくしこんなにも中島クンのことお慕いしてるというのに……! 」
「 どー見ても悪ふざけとしか思えないんだよ! 」
「 伊能くん、ちょっと氷雅さんに言いすぎじゃない? 」
「 な なんだよー、香山は氷雅さんの味方なのかよ!? 」
「 女心がわかってないって言ってるのよ! 」
「 じゃあ千鶴お姉ちゃんと仲直りしなくていいっていうのかよ!? 」
「 そうは言ってないけど、伊能くんが口を挟むことじゃないっていうのよ! 」

当の本人たちを差し置いて、喧喧とするせいこうと夏子。 見かねたマスターは―――

「 はいはい、あなたたちがケンカしてどうするの、黙って見ていなさい……今後のためにね。 」

……意外に侮れない母親である。 そして中島は氷雅からそっと離れると―――

「 赤城! 氷雅さん! おっ、お 俺は……… 」

中島は考えていた。
いかにして氷雅を傷つけず、赤城とやり直せるのかどうか……

「 俺は――― 」

ためにため、そして彼が発言した言葉は―――



「 俺は2人とも愛してるんだ――――――っ!!!!!!! 」



し―――――――――ん

暗転する空間
キョトンとする氷雅
あきれ顔の千鶴

せいこう・夏子・妖岩・客1名―――フリーズ状態。
そんな凍りついた空気を、最初に動かしたのはマスターだった。

「 え〜と中島くん、ここは『愛してる』より『好きだー』のほうが適切だと思うわ。 」
「 そういう問題じゃないでしょマスター!
  中島くんの気持ちはよーくわかった、これでキレイさっぱり別れることができるわ! 」

口もとをヒクヒクさせながら今にもキレそうな千鶴を、中島はあわててフォローする。

「 ま 待ってくれ赤城! 続きがあるんだっ! 」
「 出てって! ここでこれ以上騒がれたら営業妨害よ! 」

すると再び氷雅が中島に絡みつき―――

「 中島クン、もちろんわたくしが1号さんよね? で、千鶴さんが――― 」
「 だれが2号よっ!! 」
「 あら? よくおわかりですわね。 」
「 あんたの性格、だいたい掴めてきたからね! 」

外野は―――

「 ママー 」
「 なに? 」
「 恋愛って難しいね。 」
「 そうねー、でも夏子にはまだ早いかな? 」

マスターは、隣にいるせいこうを見ながら思った。

「 氷雅さん!! 」

突然氷雅の名を叫んだ中島は、彼女の両肩を押さえて離すと―――

「 ごめんなさい!! 」

深々と頭を下げた。

「 こんなバカでスケベで平凡で優柔不断でどーしようにもない俺なんかに
  あなたみたいな美人が俺に惚れてくれるのはすっごい嬉しいっすホント嬉しいっす!
  でも俺の彼女は赤城なんです!! はじめての彼女を裏切ることなんかできません!! 」

中島は千鶴のほうに振り返ると―――

「 赤城、愛してる!! 浮気なんかもう絶対しないから俺を許してくれ!! 頼む!! 」
「 ……… 」

中島は頭を下げたまま千鶴の答えを待つ。
周囲の者たちも、返答に悩んでる千鶴の顔色をうかがっている。

「 …………中島君。 」
「 はいっ! 」
「 今回だけよ、許してあげるのは。 」

中島の真意が伝わったのか、千鶴は照れくさそうに言った。

「 赤城……うん! 愛してる!! 愛してるから!! 」
「 だからそういう恥ずかしい言葉を人前で連発しないでほしいんだけど…… 」
「 俺もう毎日この店に通っちゃうから! 」
「 ……営業妨害になりそうだからそれはやめて。 」

そこでハッと気づいた中島は後ろを振り返ると、背を向けた氷雅が両手で顔を伏せ、肩を震わせていた。

「 ……ひどいですわ、わたくしがこんなにもお慕い申し上げているというのに…… 」
「 氷雅さん…… 」

泣いている様子の氷雅を見て切なさを感じた中島は、彼女に近づこうとする……
しかし中島の服を千鶴がつかんでおり、同情はいけないという視線を中島に送った。

「 うっ……うっ…… 」

そのまま床に座りこんでしまった氷雅に、せいこうが歩み寄り―――

「 あっ! 」

指に挟んでいたものを取りあげ、ジト目で氷雅を見た。

「 やっぱり目薬…… 」
「 ひどいですわ若! 最後の手段でしたのに! 」
「 あんたねー……(汗) 」

千鶴はあきれてそれ以上言葉もでない。 開き直った氷雅は―――

「 フッ バレてしまっては仕方ありませんわね。 せっかく面白い暇つぶしができたと思いましたのに〜 」
「 ついに本性現したわね! 」
「 まあいいでしょう、ここんとこ放っておいたゼロもいることですし…… 」
「 て、あんたまだゼロのこと――― 」
「 うふふっ 千鶴さん、次回の対決を楽しみにしておりますわ♪ 」カランカラン‥

氷雅は怪しく笑いながら、店の入口から出ていった。

「 まったく、あの人はホントに…… 」
「 すみません、帰ったら僕がよく言っときますから…… 」
「 いいのよ、せいこう君が悪いわけじゃないんだから。 」
「 ……… 」

仲直りした千鶴たちを後ろに、妖岩は姉の出ていった扉を見つめていた―――





4、煙突の上(姉弟編)

夕方―――氷雅は銭湯の煙突の上で夕日を眺めながめていた。
誰も来るはずのない場所だが、背後に人影が現れる。

「 ……… 」
「 ……なんか用? 」

弟、妖岩はそのまま氷雅の隣に座った。

「 ……… 」
「 え? 姉さんが落ちこんでるんじゃないかって? ナマ言ってんじゃないの。 」
「 ……… 」
「 この程度のこと、あんたにまで心配されたら、乱破の氷雅もお終いね。 」
「 ……… 」

このあと2人は、夕日が沈むまで町の景色を眺めていた。
氷雅がどの程度本気で、どの程度ショックを受けていたのかは氷雅本人にしかわからない。
ただ言えることは……


「 あんたが来てくれて嬉しいわ。 」
「 ………♪ 」


この姉弟は仲が良い。


「 次はゼロを攻めるわよ、忍術用具の準備、おねがいね。 」
「 ―――!(汗) 」


………だがタチが悪い。
 

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