ザ・グレート・展開予測ショー

〜 『BOOK ぱにっく!!』 下巻 〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 9/ 3)




30分。
それがとりあえずタマモに残された時間だという・・。
いや、タマモが本に触れてからすでに20分以上が経過しているのだから、実質、10分弱といったところだろうか?
とにかく、そのリミットを過ぎれば・・タマモは問答無用で(いかがわしい)本の世界に閉じ込めてしまうらしく・・。

「じょ・・冗談じゃないわ。キャストが2人しかいないってことは・・当然、私に振り分けられる役って・・」
ワナワナと震えながら、タマモがチラっとページを開いてみる。
目に入った箇所に書かれた、ヒロインの台詞を一瞥し・・・・・

「な・・!わ・・私が・こんなこと言うはず・・」

思わず顔を赤らめたりして・・・

「ううむ・・本を燃やしたりするのは・・やっぱまずいよな・・。下手するとお前まで燃えちまうし・・
 こういうののセオリーは中から悪魔を引っ張り出すことなんだけど・・」

腕を組んでうなる横島へ、タマモがぼそっと口を開いた。

「燃やすのがダメなら・・焙り出すなんてどう?
《焚き木でも何でもして火をつくる→本をその火にかざす
 →すると悪魔が『あついよっ!あつくて死んじゃうよ!こりゃ今すぐにでも本から出なきゃ・・・ヒュ〜ドロドロ→ボコる》って段取りで」

すると横島が、
「うわ・・明らかにダメだろそれ。」
・・半眼で言う。

「じゃ・・じゃあ、どうするの?他にいい案でもある?」

「う〜ん・・これなんてどうだ? 
《冷蔵庫の中に本を突っ込む→そのまま制限時間まで放置
 →すると悪魔が『さむいよっ!!寒くて死んじゃうよ!こりゃ今すぐにでも本から出なきゃ・・・ヒュ〜ドロドロ→ボコる》みたいな感じでさ」

「・・・ってそれじゃ私のパクりじゃない!」

叫んだ。それはもう力いっぱいに。
はっきり言わなくても不毛としか言いようのないミーティングをしているうちに、時間の方は・・・

「げ・・あと3分じゃねえか・・本気で笑えなくなってきたな・・」
「・・・・。」

横島の顔に焦りの色が見え始める、それに対してタマモは無言。
しばらく何かを黙考していたかと思えば、急に意を決したように立ち上がり・・・・

「横島・・」

「ん?」

「・・・・パス。」

「は?ちょっと待て・・一体どういう・・・って、あああああああああ!?」

言葉どおり、つぶやきながらこちらに向かって本を投げてよこし・・・反射的に横島はそれを受け取ってしまう。
手の内にある、見るからに怪しげなハードカバーを・・彼は驚愕の面持ちで凝視して・・

「・・・ふぅ」

「『ふぅ』じゃねぇえええええええええええっ!!お前!どうすんだよこれ!」

「どう・・って私たち2人が役を最後まで演じきれば、外の世界に戻ってこれるって、さっき美神さんが言ってなかった?」

そう指摘してくる少女に向かって、横島は思いっきり眩暈を覚えた。
・・・今問題にしているのはそこではなくて・・

「いや・・そうじゃなくてさ。お前、さっき自分でキャストが2人だけって言ってたよな?ということは必然的にオレの役は・・」
「・・犯罪者ね。ハマリ役じゃない。」

「だからそうじゃねぇえええええええええええええええっ!!!!とか叫んでるうちに時間が進みまくってるのが、さらにヤバイ!?
 だ・・だからな。お前分かってんのか?つまりアレだぞ。本の中とはいえ、それはつまり・・オレとどうこうなることなんだぞ?」

・・と、横島がそう言ったところで・・・・
タマモは何故か頬を染めて・・・


「・・さっき・・合意ならいいって言った・・」
「へ?ご・・合意?何の話だそりゃ」

キョトンとする横島。すると、タマモがそれを誤魔化すようにまくし立てる。

「な・・何でもない。私も・・それは・・悪いとは思ったけど・・。でも見ず知らずの男が相手なんて・・・さすがに耐えられないし・・」

「う・・。う〜ん・・いや、でもなぁ・・オレがロリコンじゃないことはこの際、脇に置いとくとして・・
 お前、もっと自分の体を大切に・・・って、そんなこと話してる時間もねえし。も・・もういいや!
 とにかく、好きでもない奴とそういうことしちゃダメだよ〜って話でさ。あ〜!!くそっ!ヤバイな・・・」

「・・・・。」

もう、本当に時間がなかった。
なのに・・駄目もとで文珠を使おうとする横島を・・タマモが少し怒った様子でにらみつけ・・

どうやら『好きでもない奴』という言葉にカチンときたらしい。
彼女はそのまま、横島の袖を握り締める。

「・・よ・・横島。」

「な・・なんだよ。今度は何の悪だくみだよ・・」

たじろぐ横島に、タマモが・・・・

「私・・・」

消え入りそうな声で何かを口にしようとして・・・・

・・・・・。
・・・・・・・・・・。

だが・・・・・



―――――ざけんじゃねぇよっ!!俺様の目の前でカユいラブコメやらかしやがって、この馬鹿野郎どもがっ!?
     ブッ殺されてえのかコラァ!!!!!

・・タマモの言葉はこんな粗暴で・・なおかつ、イマイチ頭の悪そうな声によって中断させられてしまう。
野太い男の声。
テーブルに置かれた本の方を、横島たちが振り向くと・・・

「「・・・・・・。」」

そこには・・豆粒よりも貧弱な、黒い悪魔が立っていて・・・・
ポカンとする2人に悪魔が続ける。

―――――けっ!!ラブコメなんざぁクソくらえだっ!!!思わず外に出てきちまったじゃねぇかっ!?
     ギャハハハハハ!!もう10秒前だぜぇ!!

・・横島もタマモも・・どうしてか表情が見えなかった。無言のまま悪魔との距離を縮めていくが・・それにすら悪魔は気づこうとせず・・

―――――ほうら・・10・・9・・8・・7・・6・・ご・・ってあれ?な・・何だお前ら!!近づくな!恐い顔するな!
     え?ちょ・・ちょっと?何そのお札は?俺様ってば悪魔の中でも最弱に属する部類なのに・・・
     ま・・まさか、吸引したりしないよね・・ってちょっと!ちょっとぉおおおおおおおおおおお!?

・・・。

その後、一冊の本と悪魔が封印され・・バチカンの牢獄に奉納されたり、されなかったりという噂もあるが・・・
真相は闇の中である。

 
                                ◇


〜エピローグ〜


「ひ・・ひどい目にあった・・」

その日の夕方。タマモはヘロヘロになりながら、事務所のソファーに突っ伏していた。
あらゆる意味で、今日は本当に運がない。
本のことももちろんだが、さらに、他にも・・・・

「・・はぁ」

「?どうした?疲れてるだろうし、横になってていいぞ?」
イスに座ってテレビを見ながら、横島がそんなことを言ってくる。

・・・今日はせっかくのチャンスだったというのに・・結局、機会を逃がしてしまった。
(騒動の原因も・・全部私にあるわけだし・・)
・・・これでは沈むな、と言う方が無理というものだ。



「しっかし・・今日はあれだな、ちょっと惜しかったかもな。何だかんだで、けっこう紙一重だったしさ・・」

「・・・え?」

瞬間、肩をすくめて苦笑する横島の言葉に、タマモの心臓が跳ね上がる。
・・今のは・・冗談だろうか・・?それとも・・


「そ・・それって・・」


弾かれるように起き上がり、タマモがそう尋ねようとした・・・またまたまた(本当にな(笑))その刹那だった。

バターーーーーン!!!!

・・もの凄い勢いでドアが開け放たれる。そして・・・

―――――ここかぁっ!?横島忠夫のいる事務所というのは!?
     私の名は『女豹狩り2・快楽のメリーゴーランド 創世編』!!弟が世話になったようだなぁっ!!

―――――・・同じく!!『女豹狩り3・秘密の花園 死闘編』!!我が一族の借りを返しに来た!!


・・・。

・・何故かさっきと似たような悪魔が2匹・・・ヅカヅカと部屋に入り込んできて・・・

「お・・・おい!待て・・お前ら何勝手なこと言って・・・」
「う・・うそ!まだ後ろに何匹か控えて・・・」

・・・もう完全に悪夢だった。
何秒か絶句したタイムラグの後、横島とタマモは・・・全速力で事務所の外へと飛び出して・・・

―――――お・・おのれえええ!!!逃げるな卑怯者!!

―――――ああっ!?男の方が女をお姫様だっこしやがったっ!!またラブコメかよ(本当にな(笑))!!つぶせ!!つぶせえ!!

街に罵声が飛び交ったりして・・・

「も・・もういやあああああああ!」
「・・って今までないオチだなこれ・・・この後どうなんだオレら・・」

2人の災難はまだまだ終わりそうそうにない(爆)


〜おしまい〜

『あとがき』

少年誌の王道ネタです(汗)GS 美神でも似たようなネタがあったので一度やってみたかったのですが・・
こんなもん書くヒマがあるなら、さっさと連載の続き書け>オレ(笑)
見掛け倒しなだけで、お色気もぜんぜんありませんし・・うう。
それにしても会話が多いこと多いこと・・。狙っていたとはいえ、凄いですねコレは・・(笑

何はともあれここまで読んでくださってありがとうございました〜 
次回は連載の続きです〜火曜日くらいにはお送りできるかと思います。それでは〜

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa