ザ・グレート・展開予測ショー

悪魔の気の長い恋愛模様


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(04/ 9/ 2)

-こんこん-
「誰じゃ?」
転寝を楽しんでいたカオス宅に来客のようだ。
「私です。ジークフリートです」
一瞬考え込むが、あの悪魔かと直ぐに思い出す。
奇跡だ。
「なんじゃい?悪魔が」
ドアをあけると其処にはタキシードに花かごを持ったジークフリート。
「あの、マリアさんのお見舞いにきました」
そう、あの月でのバトルでマリアはかなりの破損があったのだ。
「これ、つまらないものですが、お納めください」
「ふむ。ありがたく頂戴しよう」
部屋というよりラボラトリーと言った方が近いカオス宅である。
「で、マリアさんはご在宅ですか?」
「今ちょっと出かけておる、厄珍堂という所にな」
「厄珍堂ですか、それは何処ですか?」
直ぐ近くじゃよと簡単な地図を渡しておいた。
「しかし、あやつ何お召かししとるのじゃ?」
気にはなったが、聞くほどではないと思ったのか、転寝の続きを始めた。

「いらっしゃいアル・・ゥ?」
ここはいんちきテイスト満載の厄珍堂である。
稀に人間以外の存在も来ないでもないが、名の有る悪魔、ジークフリートのご来店とは。
「あの、厄珍さんですね。マリアさんはいらっしゃいますか?」
「いるアルが、あんた誰のコト?」
申し送れましたと名刺を出した。
「はー、魔界の軍人さんアルか。今度不用品を寄こすアル、良い値で買うのコト」
商魂たくましいとはこのことか。
「マリアは今倉庫にいるのコトよ、もうすぐ・・」
話し込んでいると、直ぐに戻ってきたのがマリア。
「Mr厄珍・品物をいれて・おきました・仕事は・これで・終わり」
報告する横では見かけた男がいる。
『Mrジークフリート?・の可能性・98%・現世に・何かの用・ですか?』
マリアの記憶力は折り紙付きだ。
「あ、覚えていてくださったのですか?はいジークです。この前のお見舞いに来ました」
『お見舞い?・Why』
「えっと、地球帰還時はかなり怪我をされていったからですよ、もう大丈夫なのですか?」
「・・、お見舞い・感謝・します・マリア・のボディー・完治・してます」
「それはよかったです」
ほっと胸を撫で下ろした。
「あ、あのそれでですね、マリアさん」
『WHAT?Mrジークフリート』
「お詫びにお茶でも行きませんか?」
ぶっと、飲んでいた物を吐き出した厄珍がそこにいた。

『NO!マリアお茶・飲めません』
「其処をなんとか、ね、マリアさん」
『NO!NO!』
用事が終われば即帰宅とカオス宅へと足を向けるマリアの周りを虫が集る如くのジーク。
何度マリアもNOと言ったことか。
「じゃあ、マリアさん、どこか行って見たいところ、ありませんか?」
『ありません・マリア・家・帰る』
「そ、其処をなんとか、マリアさん!」
ジーク、前に出たと思ったら土下座である。
マリアもびっくりで。
『立って・下さい・Mr・ジークフリート』
だが、「うん」といわない限り立つ様子もなさそうである。
『・・OK。Mrジークフリート・マリア・少しだけ・付き合います』
悪魔、満面の笑みというのは、見たくても見られるものではない。
「マリアさん、何処に行きますか?」
『マリア・パソコン喫茶・行きます』
先ほどの顔から少しだけ、かげりが見えた。

どうやら。
魔界のテクノロジーは地上とは違った歴史の過程を経ている。
つまり機械の動かし方一つに『魔力』が関わっているようだ。
中には意思を持つ機械もある。
土具羅魔具羅(ドグラマグラ)などが顕著な例である。
「僕はあまり、パソコンに詳しくないんですけど」
隣で無料サービスの紅茶を二つ持ってきているが、マリアが飲むはずない。
そのマリアは、
『データ採取中・某ST先生の短期集中漫画・好評・好感』
と、様々なデータを取得中のようだ。
「はぁー、人間界も進んだもんだ。そうだよなぁ、機械で月にいけたんだからな」
結局二つとも自分で飲んでしまったようだ。
数分でマリアも欲しい情報を取得したようで、
『Mr・ジークフリートは・パソコン・出来ない・ですか?』
「マリアさん、Mrはいらないです。僕のことはジークと呼んでください」
『了解・しました・で、ジーク・パソコン・出来ないですか?』
はは、と少しはにかんでから、
「恥ずかしながら。人間界の機械はちょっと難しいですよ、妙神山にいた時、老師の『ゲーム機』をセットするのがやっとです」
笑顔は笑顔だが、マリアは表情からある程度対峙する人間(彼は悪魔だが)の気持ちを察することが出来る。
『マリア・ジークに・パソコン・教えま・しょうか?』
すると。
「ぜ、是非お願いしますっ!」
『では・最初は・電源の入れ方と・きり方を・・』
ジークも決して能力の低い存在ではない。
マリアも機械ゆえか、システムの説明はもってこいである。
『マウスを・二回押す・これが『だぶるくりっく』』
と、ここまでは順調だったが、緊張の所為か、ジーク旨く出来ない。
「あれ、あれー」
大きい音でカチカチとなるだけだる。
『こう・です』
と、マウス上のジークの手にかぶさる形でマリアが手をおいた。
「あ、で、できましたっ!」
浅黒い顔が真っ赤になっていた。

「それにしても、マリアさんはすごいですね、機械にお詳しい」
『そうでも・ありません』
一通りパソコン講習が終わり家路に向かう二人である。
さして問題もなくカオス宅に到着した。
「おぉ、マリア帰ったか。そういえばおぬしに会いに着ていた奴が・・」
「あ、直ぐに会えましたです」
ひょっこりと、マリアの後ろから顔を出したジークフリートである。
「そうかそうか、問題なくあえて良かったの、そうそう、この花束はな」
お見舞いの品だそうだとマリアに説明する。
『ありがとう・です・ジーク』
ぺこりと、機械的な仕草で頭を下げた。
さて。
ここまでくれば諸兄もお分かりだと思う。
ジークフリートの気持ちが、である。
なかなかしたたかと言うか、一直線な男なのだ。
「あの、カオスさん」
「なんじゃ?」
「マリアさんを・・下さい!僕は悪魔ですが絶対幸せにします!」
カオスもマリアも肩が下がった。

「ば、馬鹿モン!どうして貴様にマリアをやらねばならんのじゃ!」
一瞬息の止まったカオスであるが、気を取り直した発言。
「そうおっしゃらず!義父様!」
「だ、誰がおとうさまじゃ。マリアは娘では・・」
娘ではない、言おうとしたが、何故か当のマリアからの視線が痛い。
こほんと咳をしてから。
「マリアは娘みたいな物じゃ。それにワシにとってのライフラインじゃ、駄目じゃ駄目じゃ、マリアはやれん!」
「いえ、若しよければ僕は養子に入ってもいいです!経済的にも援助します!」
「ジークよ、どうあってもマリアはやれんぞぃ。まぁ、望むならアンドロイドをお主用に作っても良いが」
「いや!マリアさんがいいんです!お願いします、カオス様、義父様!」
両の手を合わせて懇願している。
「駄目駄目駄目!!!No,NO,No」
「そこをなんとかっ!」
本日二回目の土下座をするジーク。
あきれ果てたカオスが、
「マリアも何とかいったらどうじゃ?」
と言うと。
『マリア・ジークの気持ち・うれしい・です』
「そうですよね!だから、カオスさん、私の義父様に」
マリアなら直ぐ断ると思っていたカオスなだけに驚いた。
『でも・駄目・マリア・治せるの・カオスだけ』
そうである。メンテナンスが難しいマリアを治せるのはカオスだけだ。
そこは愛でカバーすると、陳腐な台詞を吐こうとしたが、
流石にそれは止めておいた。
「そ、そうですか・・」
土下座を止めて涙を隠したジーク。おとなしくカオス宅から出ようとすると。
「ま、待てジーク。これからしばしワシの所で勉強せい」
「・・・え?」
まぁ、涙を拭けとタオルを渡してから。
「前々から考えていてはいたのじゃ。ワシも不老不死と言われとるが、何れ死ぬ。
 そのときマリアをどうするか、とな。じゃからな、今はマリアはやれん。
  なんと言われようともじゃ。だがその後、おぬしにマリアを託そうではないか
   マリアもこれで依存あるまい?」
『Yes・Drカオス』
「私もです!10年だろうが、100年だろうが、待たせて頂きます!」
「じゃがのぉ。ワシもまだまだあちらの世界に行く気はないからな」
「そうですとも!長生きしてください。義父様」
「じゃから、おとうさまと呼ぶでない!、こそばゆいではないか・・」
一応の解決はできたようだ。

その後、2000年も後期になり、幸い人間もまだ文明を築いている。
アンドロイドを技術的を持つその会社の社長はまだまだ現役のカオス。
その下、専務職にはジークが付いている。
彼の指に光る指輪の対にあたる指輪は、マリアがしているのであろうか。
其処まで先の未来は作者にもわからない。
ラプラスにでも聞いてください。

FIN

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