ザ・グレート・展開予測ショー

花取り物語


投稿者名:浪速のペガサス
投稿日時:(04/ 8/30)



女華姫は、自分よりも高い位置にある、自分の眼前にある、小さな花をじっと見ていた。

特に心惹かれたわけではない。

第一、別段その花が特別気に入ったわけでもないし、誰かに命じればすむことだ。

だが、女華姫は自分の力でそれをとりたかった。


最近になって彼女は友人を一人得た。

その頃から家臣の人間は彼女を少しばかりあわてた様子で見るようになる。

友人は、捨て子の一人だった。だが本当に心が清らかな人で。

彼女はその頃から自分の境遇、力に疑問を持ち、家臣は姫に対し焦りを募らせた。

もっとも、彼女自身の選択は間違いではなく、家臣の心配も杞憂に過ぎないと分かるのは後の話。


「ふん!」


なるべく高いところにある花を取ろうと、女華姫は跳んだ。

何度も何度も飛び跳ねる。

しかし、いつまでたっても届かない。

苛立ち、しゃがみこむ。


―バキャァ!―


目の前にあって石ころをおもむろに掴んで砕いた。

やはり自分は、自分一人だけでは無力なのか?

自分は、結局何も出来ないのか?

元々逆境に弱い姫だったが、泣きそうになった時に、ふと人の気配を背中に感じた。


「姫、どうしましたか?」


聞きなれた声に振り返れば、そこには友人のキヌが立っていた。

自分を変えた人、自分の数少ない友人。

少しばかり顔を綻ばせ、すぐにそれを止め。

顔をうつむかせて姫は答えた。


「……花」


花を指差し、姫は短く答えた。

キヌは、そうですか、と一言答えただけ。にこにこしながら。

姫はそれを見ると、意地でも花を取りたくなって、キヌを背にした。

刹那、体が浮いた。

正確には、後ろにいる友人に持ち上げられた。


「お、おキヌ!?」

「これなら、届くでしょう姫様?」

「あ、ああ。」


少し戸惑いつつも手を伸ばし、姫は花を摘んだ。


「取れたぞ、おキヌ。」


それを聞きおキヌは肩車を止め、姫を地面につけた。

姫は、摘んだばかりの花をおキヌに渡す。笑顔で受け取るキヌ。


「ありがとうございます姫様。」


少し恥ずかしそうに、姫は頬を赤らめた。そして手を掴まれる。

驚く姫。優しく微笑むキヌ。


「姫、ご立派ですね。ご自分の力で取るなんて。」

「…うん。」

「姫、私はいつでも貴女様の友達ですよ。」


いつでも私はあなたを助けますから、そう言って再び微笑むキヌ。

姫は、こみ上げるものをごまかそうとする。

が、涙が止まらなかった。

強く、強くキヌは手を握った。


「私たちは、心の友ですから。」


泣きながら、姫は、満面の笑顔で笑った。

花が風に揺れ、笑顔が嬉しくて、繋がった手が、暖かかった。










                          ―――――了

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