ザ・グレート・展開予測ショー

あのバスを追いかけて


投稿者名:ハルカ
投稿日時:(04/ 8/28)


「ようやく海の季節が終わったね〜。
 あれってプロポーションがもろに出るから結構気を使うんだよなー。」

「あら、これからの季節の方が何かと気を使いますわよ?
 セーターやカーデガンをとってみても、やはり体型がよい方が似合うわけですし…
 服のバリエーションが多い分これからの季節の方にこそ気を使うべきではなくて?」


学校帰りの仲良し3人組の魔理さんと弓さんとおキヌちゃんです。
でもおキヌちゃんに元気がないようで………

(魔理さんも弓さんもポロモーションいいんだもん。自信なくしちゃうなぁ…)

舞台は変わっていつもの事務所の昼下がり、
今夜の徹夜になるだろう公園の池に現れるというワニの幽霊の除霊の準備のため大忙しの横島クン。
おキヌちゃんの部屋の前を通りかかったときにドアが少し開いてるじゃありませんか。
そして部屋の中から声がもれ出てきます。

聞いちゃいけないと思いながらも聞いてしまうのが人のサガ。
ましてや横島クンに我慢などと高度なことを要求するのは無理というものでしょう。

『自信なくしちゃうなぁ…』

そのときに聞いた言葉がこの言葉。
ドアの隙間から中の様子を覗いてみるとおキヌちゃんが少し悲しそうにうなだれています。
これにびっくりした横島クン。何をどうしてよいか分かりません。
まさか『さっきドアの隙間からおキヌちゃんの部屋を覗いていたんだけど』
などとは口がさけても言えるはずがなく…



(うーん、おキヌちゃん何か悩んでるみたいだ…
 今夜の仕事が終わったらそれとなく聞いてみようかな?
 いやっ、そのそれとなくっていうのが難しいんだよなー。)

などと考えながら横島クンは仕事へ。

☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  


仕事自体は横島クン一人で任されるほど簡単なものなのでなんの滞りもなく済んだのですが
その日の夜の天気は雨。しかも間の悪いことに記録的な豪雨になったのでした。
仕事とお金に厳しい美神さんのこと、当然仕事の期日を延ばしてくれるはずもなく……
ようやく仕事が終わって帰ってきた横島クン、びしょ濡れのボトボトです。

「美神さは――――――んっ、仕事終わりました〜…
 ってゆーか何ですか今日の仕事は!?9月の頭といっても明け方は冷えるんですよ!?
 『暖』の文珠がなかったら今ごろ凍死してたわ―――――っ!!
 この見返りは美神さんの体で――――――――――っっ!!!!」

ドカンと勢いよく美神さんの部屋のドアを開けた横島クンに待っていたものは
美神さんのカウンターパンチではなく…

「ちょっと、アンタうるさいわよっ!!
 電話してるんだから静かにしなさい。こっちは真面目な話してるのっ!!
 
 ……うん。できればおキヌちゃんにはやってほしい仕事がいくつかあったんだけど……
 そういうことなら仕方がないわね……わかったわ……」

かちゃ


「………?
 おキヌちゃんどうかしたんですか?」

電話を終えて受話器を置いたことを確認して美神さんに話しかけ横島クン。
このとき横島クンの心の中にはなにやら嫌な予感がしていたのです。

「………うん。おキヌちゃん田舎に帰っちゃうんだって。
 もう少し早く相談してくれればよかったのに。」



………え?
おキヌちゃんが田舎に帰る?いなくなる?
なんで?どうして?そういえば昨日何か悩んでるみたいだった。
どうしてその場で相談にのろうって思わなかったんだろう?
どうしてどうしてどうしてどうして…………そんなの――――――――――イヤだっ!!!!

「美神さん…おキヌちゃんは……
 どこから電話かけてるっていってましたか………?」

「○○駅のバス停からって。
 そのまま東京駅の新幹線で帰るみたい――――――って!?どこ行くのっ!!??」

美神さんから行き先だけ聞くとその言葉が終わるのも待たずに
階段を駆け下りて一階のガレージにおいてあるマウンテンバイクに飛び乗った。
自転車でバスに追いつくなんてできるか分からないけど……

「す、すいません!今日はこ、これで早退します―――――っ!!」

自転車のペダルを踏みしめながら二階にいる美神さんに届くように声を張り上げる。
色んな事がおきた所為で頭の中がぐっちゃぐちゃに混乱してて
上手くいえたかどうかも分からないけれど。
ただ、ただひたすらにペダルを踏み込んでバスを追いかけた。




はっ…………はっ………

まだ15分も経ってないのに脚が痛い、腕が痛い。
昨日文珠を使っちゃった自分が恨めしい。昨日は徹夜の仕事で全く寝ていないんだ。
だけど、だけどここで諦めたりしたら一生後悔することになると思う。
おキヌちゃんがいなくなるなんて、
たとえおキヌちゃんが自分で決めたことでも俺がそんなの嫌なんだ………っっ!!!!



はぁ……はぁ……はぁ……

30分全力でこいでるのにバスはちっとも見えてこない。
少しだけスピードを緩めて息をたっぷり吸いたい。酸素が欲しい。
でも………っ、でも………っ!こんなところで休んでる余裕はないんだ…………っ!!
既にいっぱいいっぱいの体に鞭をいれて更にペダルを強く踏み込む。




はっ…げはぁ……うっぷ……

目の前が……だんだん暗くなってきた……
自分がどれくらいのスピードで追いかけてるのかさえ分からない。
手の先、足の先はすでに感覚がないけど、諦めたくない………



……………?

――――――――――っっ!!!!
あれじゃないのかっ!?あのバスじゃないのかっっ!!??

必死でバスを追いかける。
必死でペダルを踏んでるのに差が縮まらない…………っ!!
こんなときに動かない自分の脚が憎い!震える脚と腕、今だけは………止まってくれっっ!!




きききききっ

バ、バスが止まった!?
ちょ、スト―――――ップ!!ぶつかる―――――っ!!

☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  

なんとかバスに追いついた横島クン。
とゆーより周りを見渡してみるとすでに東京駅のバスターミナルだったのですね。
それどころじゃない横島クン、降りてくる乗客の中におキヌちゃんを見つけます。


「おキヌちゃん、おキヌちゃん、おキヌちゃん………っっ!!」

ようやく追いついた横島クン。人混みをかき分けおキヌちゃんに声をかけます。
汗でボトボトなのは当然、涙で顔もぐしゃぐしゃです。
横島クンの姿を見て周りからは『……ヒッ』と軽く悲鳴が上がるくらいに。

「おキヌちゃん、行っちゃぁ嫌なんだっ!!
 おキヌちゃんがいなくなったら俺…………っ、俺………っ!!」

感情の高ぶりから涙が溢れて止められない横島クンとキョトンとした表情のおキヌちゃん。
そんなこともお構いなし横島クンは止まりません。

「本当は俺………っ!
 昨日からおキヌちゃんが何かに悩んでることに気付いてたんだ………っ
 でもでもっ!おキヌちゃんがGS辞めるほど悩んでたなんて知らなくて………っ!!」

ざわざわと周りに人垣ができはじめます。
なにやら『フラれた男が泣いて謝ってるらしいよ?』とか『青春だね〜。』とか聞こえます。

「ちょ………っ!?横島さん!?!?」

「でもっ!嫌なんだ!!
 おキヌちゃんが何処かに行っちゃうなんてっ!!!!
 例えおキヌちゃんが自分で決めたことでも俺が嫌なんだっ!!!!」

汗と涙と鼻水でぐしょぐしょの横島クン。
恥も外聞も殴り捨てておキヌちゃんに本心をぶつけたのですが……

「あのー……
 私、GS辞めたりしませんよ?」

☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  

「イ、イタイっ!体が全身イタイっ!!」

「もー、大丈夫ですか横島さん。あんな無茶するからですよ?
 自転車でバスに追いつくなんて………」

なんのかんの言いながら幸せそうな表情のおキヌちゃん。
あとあとから美神さんに聞いてみるとちょっと遅めのお盆休みをもらって田舎に帰る予定だったとのことです。
結局そこへたまたまタイミング悪く横島クンがその電話を聞いて勘違いしたというわけだったりします。


「私は絶対に辞めたりしませんっ!
 横島さんこそ二度とこんな無茶はしないで下さいね?(はあと)」

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