ザ・グレート・展開予測ショー

〜 『キツネと羽根と混沌と 』第8話後編 〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 8/23)




〜appendix.7  『ただいま』



風のような手刀が一閃した。

次々に霊体を切り裂きながら、スズノが青い瞳を走らせる。
コンマ一秒にも満たない時間で、一斉に霧散していく赤い球体。

常人ならば・・いや、例え闘いに身を置くものであったとしても、彼女の姿を視界に映すことすらままならない・・。
何人にも捉えることのできない銀の閃光。

・・それがスズノだった。
圧倒的な身体能力に支えられたその強さは、霊力差を凌駕し・・状況の如何によっては最上位の魔神にも比肩する。
周囲から人の気配が消えたことで、逆に、スズノの動きを阻むものは何一つとして無くなっていた。

(・・・いける・・・)

すでに全体の半数近くを破壊したろうか?
床に着地したスズノが大きく息を吐き出した。

予想に反して、敵はこちらが手に余るほどの出鱈目な攻撃を仕掛けてはこない。
一度に起爆する爆雷の数は十数個程度のもので、そのタイミングもどこか散発的だった。

事件発生からすでに30分以上。
パピリオの誘導でこの場を去った住人たちも、ほぼ避難を完了しいている。

(あとは・・私が生き残れるかどうか・・・)

自分も離脱できれば、それに越したことはないが・・・
ここまで計画を狂わされたのだ、爆弾魔は意地でも自分を殺そうとしてくるだろう。

初めから覚悟はしていたが・・・状況はあまり芳しくない。
どんなに風船を破壊しようと当然、敵本体へのダメージはゼロ。しかも、破裂する一歩手前まで、こちらは爆弾の霊体に触れることが出来ない。
これではまるで、たちの悪いモグラたたきだ。


「・・・・くっ!」


間髪入れずに発光を再開する風船。スズノはそこで思考を中断した。

・・無駄に考えを巡らす必要はない。要は、自分の脚力がどこまで爆発に追いつけるか、だ。
風船をすべて破壊してしまえば、自動的に敵の攻撃手段は消滅する。

「・・・・。」

発光の限界に合わせ、スズノが再び跳躍した。
視界から標的以外の事物を排除し、切り裂く。油断さえしなければ、それは決して見切れないタイミングではない・・そのはずだった。

1つ、2つ、3つ・・・破散する球体を確認して、また次の標的へ・・・

・・・・そんな、単調ともいえる動作の繰り返し・・・・。


・・・。


しかし、次の瞬間、それは起こった。







「え?」






突然、視界一面に紅い華が咲く。

同時に全身を・・・・弾けるような衝撃が突き抜けて・・・・・・


「か・・・は・・っ・・・」

スズノの口元から、血が滴り落ちた。
体をのけ反らせるスズノの目の前で、今しがた破壊するはずだった風船が・・限界近くまで膨張し・・・

「ぁ・・ぅ!」

広がる爆炎。
かろうじてそれをかわした後、彼女は力無く地面へと崩れ落ちる。

(・・こ・・れは・・・)

朦朧とする意識の中で、わき腹に走る激痛だけが奇妙な現実味を帯びていた。
夕焼けをさえぎる黒い影・・・・人の気配に気づき、スズノが弱々しく顔を上げる。


「お前が・・・爆弾魔・・・か?」

・・・。

苦しげな彼女の声に、人影はうっすらと唇を歪めた。よく通る・・しかし、低い声でのどを震わす。


「名推理・・と言いたいところだが、残念ながらハズレだ。俺はあそこまで不細工じゃないんでね。」

場違いな・・少し軽薄な口調。
男は見下ろすようにスズノの顔を覗き込むと、それから、おびただしい出血を続ける彼女の腹部へと目を移す。

「・・霊波を腕に集中しすぎたな・・。普段、お前を守ってるあの化け物みたいな障壁が・・ボコボコの穴だらけだったぜ?」

「・・・。」

肩をすくめて、つまらなそうに吐き捨てた。
何とか顔を確認しようと、スズノは鋭く目を細めるが・・かすむ視界がそれを許さない。

「まだ、あの妖魔に捕まってもらっちゃ困る・・。久しぶりに『混沌』の奴らがこっちで暴れまわるみたいだからな・・。
 見物したいじゃないか。」

揶揄するようなその台詞からは期待とも、恐れともつかない・・得たいの知れない感情が見え隠れしている。

・・おそらく、この男は強い・・。
思考はままならないが・・・・それだけは、はっきりと感じられる。


「何・・者だ・・・お前は・・・」

ヨロヨロと立ち上がろうとするスズノに、男は軽く目を見張り・・・

「・・おいおい・・まだ動けるのかよ。言っとくがお前みたいな怪物を殴り合う気はないぜ?
 いくら俺でも、まともにぶつかったら瞬殺されるのがオチだからな・・。」

言いながら、指を打ち鳴らす。

すると、みるみるうちに・・スズノの頭上の風船が赤い光を発散し・・・

「く・・ぅぅ!!」

爆風が彼女を吹き飛ばした。

・・アスファルトに転がる少女の姿を一瞥し、男が不意にきびすを返す。

「じゃあな。無理だとは思うが、少しぐらい足掻いてみたら?ひょっとすると活路が開けるかもよ?」

「ま・・待て・・!・・お前は・・一体・・・・」

なおも追ってこようとするスズノに、男は一つ嘆息する。

そして・・薄笑みを湛えて振り向きながら・・・・


「そうそう・・生きて帰れたら、西条のヤツにこう伝えてくれないか?」


彼は一言、つぶやいた。




















「I’m home ♪」


















―――――!?

瞬間、スズノは何かを問い正そうとして・・・しかし、それも広場を包む爆音によってかき消されてしまう。


血のように紅い炎。

灼熱に覆われたその公園は・・・文字通り、跡形もなく崩壊したのだった。



〜続きます〜


『あとがき』

う・・あ・・え〜と・・とりあえず、更新が遅れてしまって申し訳ありません(泣
諸事情+ゲーム(爆)でご迷惑をおかけてしまい、なんとお詫びしてよいやら・・次回はもっと早く更新します〜
(それにしても「ファナティック」は重いゲームですね(謎))

さてさて、ここまで読んでくださった方・・本当にありがとうございました〜

このお話から、西条の最大の敵?が登場します。
彼のイメージは「ダーク」「キザ」「狩人」の3つだったりしまして(笑
力ではドゥルジさまやスズノには敵わないけど、人間が獣を狩るように、様々な手段で自分より強いやつらを追い詰めて・・
そして最後には勝っちゃうという・・(汗)結構恐いタイプの人ですね。

それと、彼にはとある特殊能力があったりします・・それはまた2、3話後で、でしょうか・・。
ここから、西条のヘビーな過去がじょじょに明かされていきます。
もう「西条ってこんなキャラだったのか!!!」とスタッフが口を揃えて叫ぶほどの、暗さで・・

色々と盛り上がる予定なので今後ともよろしくお願いします〜。それでは次回にまたお会いしましょう。

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