ザ・グレート・展開予測ショー

奥様は狐 六日目


投稿者名:純米酒
投稿日時:(04/ 8/11)


旦那様の名前は 忠夫

奥様の名前は タマモ

ごく普通の二人が

ごく普通に恋をし

ごく普通の結婚をしました

――――――・・・が

ただ一つ違ったのは、奥様は

『狐』

だったのです

(あーハイハイ私は狐ですよーだ・・・・)

―――――――――――――――

「なぁタマモ・・・俺も腹減ったよ〜〜〜。そろそろ戻って飯にしようぜ」

膝の上で寛いでいる子狐に問いかけるものの、反応は無い。
九つに分かれた柔らかい尾や、大き目の耳の後あたりを撫でると申し訳程度に反応を示すが
顔はこちらに向けてくれないので、撫でられたという刺激に対して反射的反応しているだけのようだ。

グゥ〜〜〜〜・・・・

「はぁ・・・・・」

自分の耳にもはっきりと聞こえる胃の収縮する音にやるせなさを感じ、ため息を漏らす横島だった。




「・・・・・・・なーんか哀愁が漂ってるわねぇ・・・」

ひのめを抱き、おキヌとシロの仲裁を美智恵に押し付けた令子がポツリと漏らした
公園の一画で子狐を膝にだいて車椅子に座る横島を見ての感想だ。

「あら、ホント。てっきり病室の続きやってると思ってのに、意外ねぇ・・・」

娘の呟きに、何事も無かったかの様に参加する美智恵。

「ちょっとママ、おキヌちゃんとシロはどうしたの?」

腕の中で寝息をたてる妹を起こしてしまわないよう小さめの声だが、語気は鋭い。
しかし、美智恵は無言で砂煙を上げて車椅子に突進する二人を指差す。

『恋は盲目』とはだれが言ったことやら。
今のおキヌとシロを表すのにこれ以上が無い言葉だ。
そんな二人をみて冷や汗を流す令子だった。



地面をえぐるように力強く蹴り、人狼の身体能力を生かして走るシロ。
霊団を従えて、幽霊だった頃も真っ青のスピードで飛行するおキヌ。

そんな二人の殺気を感じ取る横島と狐姿のタマモ。

「追いつかれちまったか・・・ま、いつまでも逃げられないしなぁ」

「そうね・・・でもなんでバカ犬とおキヌちゃんが来るのかしら?美神さんは向こうで頭抱えてるし・・・」
その場で人の姿に戻るタマモ。
元に戻ってほっと胸をなでおろす横島だが
「俺に解るか・・・それよりタマモ、なんで俺の膝の上に座ってるんだ?」

「べつにいいじゃない、重いとは言わせないわよ」

「あのなぁ、俺は一応怪我人なんだぞ?」

「じゃぁこれならいいでしょ?」
そういって小学生位の容姿に変化する。

「いや、そういう意味でもないんだが・・・まぁいいか・・・」

笑顔につられて許してしまう横島だった。


全速力で突進してきた二人が車椅子の前で急停止すると、間髪居れずにまくし立てる。

「2号は私の物ですよねっ!そうですよねっ!!?
 ・・・って横島さんのお子さんですね!!私の事はお母さんと呼んでいいのよ!!!」
「先生の口からハッキリと仰ってくだされ!2号は拙者のものであるという事実を!
 ・・・ハッ、拙者先生のご息女の前でなんと言うはしたないことを・・・
 ゴホン、拙者は先生の妾のシロと申す、遠慮なく『母上』と呼んでくだされ!」

二人の言動に『?』マークを浮かべる横島とタマモ。

「・・・なぁ、話がサッパリ飲み込めないんだが」
膝の上に座るタマモに聞いてみる横島。

「私に解るわけないじゃない・・・」
首だけ振り返り、冷や汗混じりに困惑の表情を浮かべるタマモ。

「取り合えず、その姿に混乱してる事だけは確かだ。という訳で、元に戻った方が解りやすいと思うんだが・・・」

「そうね、バカ犬を母上とは呼びたくないし・・・」
変化を解くタマモだが、話はさらにややこしくなった。




「えぇぇぇぇっ!タ、タマモちゃん?なんでそんな格好に・・・もしかして『擬似親娘プレイ』?
 そ、それは倫理的にも道徳的にもかなりイケナイ事・・・・・・キャー!!
 そうじゃなかったら、横島さんの妹役になって『擬似兄妹プレイ』ですかっ!?
 横島さんの事を『兄上』とか『お兄さま』とか『お兄ちゃん』とか『お兄ちゃま』とか・・・イヤー!!」

「先生、若い女性に憧れるのは解らなくもないですが、そこまで若いと犯罪でござるよ。たしかロリ○ンとかいう・・・
 でも先生がどんな趣味を持っていても拙者はついていくでござる、安心してくだされ」

「だぁぁぁっ!二人とも何か勘違いしてるぞっ!!!落ち着いてくれーーー!!」

よからぬ想像を膨らませる二人と、噴水のように涙を流す横島。

――――――本題に入れるのはもうしばらく先になりそうだ。



取り合えず『擬似親娘、兄妹プレイ』と『横島ロ○コン疑惑』の誤解を置いておき、
2号の座について二人が話しを始めたのは、たっぷり30分たった後だった。


「横島さん、タマモちゃん!シロちゃんに『2号でいいなら』って言ったのは本当ですかっ!?」
おキヌはいつになく真剣な表情で二人に問い詰める。

「え?まぁ言ったけど・・・何かまずかったかな?」
膝の上に座るタマモを軽く抱きしめながら、穏やかな表情で答える。

横島の口から答えを聞いて、絶望を感じて落ち込むおキヌとその側らで満面の笑みを浮かべるシロ。

「そんな・・・私だって『2号』がいいです!」

「でもねぇ・・・こればっかりは順番だし・・・」

おキヌの悲壮な叫びにも似た言葉をあっさりと切り返すタマモ。
タマモの言葉を聞き、おキヌはさらに落ち込む。

「まぁ『2号』と『3号』の待遇に差は無いから・・・・」
そんな落ち込み具合をまずいと感じた横島がフォローをいれる。

「でも、でも・・・私は・・・」
横島のフォローに少しばかり救われた気持ちになったおキヌだが、まだ釈然としていない。

そんなおキヌをよそに、考え事をして唸るタマモと横島。

「どうしようか?おキヌちゃんが来てくれるとすごく助かるのは確かよね・・・」

「そうだなぁ・・・でも美神さんが許してくれるかどうか・・・」

「?・・・どうして美神殿の許可が必要なのでござるか?」
今まで黙っていたシロが話しに参加する。

「いや、だって。おキヌちゃんはお前と違って美神さんに雇われてるんだから、俺の所に来るんだったら当然の事だろ?」

「先生のお妾になるのに美神殿に雇われている事が関係あるのでござるか?」
可愛らしく首をかしげるシロ。

「ねぇ・・・あんたさっきも言ってたけど『妾』って何のこと?」
タマモも首をかしげてシロにたずねる。

「『妾』の意味も知らないとは・・・タマモもまだまだ子供でござるなぁ♪」

「そんな事を聞いてるんじゃないわよ!『従業員』の話がなんでいつの間に『愛人』の話に変わってるのよ!」

どうやら話がかみ合っていないようだ。

横島とタマモは独立して事務所を開く際の『従業員2号』として話をしていた。
もちろん横島が所長で従業員1号はタマモである。

シロとおキヌは『横島の女2号』と解釈して話していたようだ。

その事に気が付いたおキヌとシロ。
おキヌはホッとしたような、それでいて何処か残念そうな表情をしている。
対照的にシロは悔しさと怒りの混じった表情をして顔を上気させている。

「騙したな女狐ーーーーーーーー!!!!!」
霊波刀を構えて飛び掛る。

「何よ!!勝手にカン違いしたのはアンタでしょうが、このバカ犬!!!」
横島の膝の上から飛び降り、狐火を浮かべてシロを睨む。



喧嘩を始めた二人を余所に横島はおキヌに話しかける。

「ごめんなおキヌちゃん、紛らわしい事言ったばっかりに・・・」
何時ものように苦笑いを浮かべて謝る。

「いいんですよ、それよりも今のお話ですと『横島さんの2号』はまだ空いてるんですよね?」
悪戯っぽい笑みを浮かべて横島に顔を近づける。

「おキヌちゃん・・・俺、今はタマモしか見えないんだ。精一杯、力の限りタマモを愛したいんだ・・・だから・・・」
今までの横島なら『ハーレムは男のロマン』『両手に花』などと言ってしまっていただろうが、
キッパリとタマモだけを選んだ事を告げる。

「そうですか・・・なんだかホッとしちゃいました♪」
フラれたというのにその表情は柔らかい笑顔だ。

そんな彼女の笑顔に少しばかり心を痛める横島だった。







四人のやり取りを遠くで眺めていた令子と美智恵は、シロとタマモが喧嘩を始めた事で事態の決着が付いた事を理解していた。

「ああなったらもう心配は無いわね。おキヌちゃんと横島君も普通に話ししてるみたいだし・・・」

「そうね、さっきまでの刺々しい雰囲気は無くなってるしね」

そういうと美智恵は無線で部下に引き上げの命令を出す。
すると公園の茂みや並木の上からオカルトGメンのスタッフがぞろぞろと、まさしく『湧いて』出てきた。

「あら?西条君の姿がみえないけど・・・まっいっか♪ みなさんご苦労様でした、もう帰ってもいいわよ」

美智恵の言葉をきっかけに公園からオカルトGメンのスタッフが居なくなる。


「さーて、どんな話だったか聞いてやろうじゃない。」

「そうね、どっちが2号さんになったのかしら?令子、貴方はどっちだと思う?」

そう言いながら車椅子に近づく二人。
その表情は新しい玩具を見つけた子供のように輝いていた。

〜つづく〜

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