ザ・グレート・展開予測ショー

〜 『家庭訪問協奏曲!』 まえ 〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 7/30)





〜『ぷろろ〜ぐ』〜




「頼む!この通りだっ!!」

「絶対いや!」


家族とは・・居なくなって初めて、そのありがたみが理解できるもの。
そんなことを実感してしまう今日この頃。

その日、横島忠夫は・・同僚の、まだ年端の行かない少女に向かって、深々と頭を下げていた。

場所は彼にしては珍しく、割とオシャレなティーラウンジ。
1時間に及ぶ説得の末、ついに無理だと判断したのだろう。しびれを切らして、拝み倒す作戦に踏み切ったらしい。

「・・どうして私がそんなことしなくちゃいけないの?」

陽光に透ける金色の髪を押さえながら、タマモが不満気に声をもらす。
普段、9つに束ねられたその髪も、今はカモフラージュのため、長いロングヘアーに下ろされている。
・・まったく・・仕事中に事務所を抜け出すのも楽ではない。

「だ〜からっ!もう説明するのは何度目だよ!?ホレ、まずはこれを見ろって!」

頭を抱えて、横島は懐から一枚のプリントを取り出した。
ペラペラとした、ざら版紙のプリント。

その文面には簡潔に次のようなことが書かれていて・・・


<7月30日(金)に家庭訪問を実施します。
 保護者の皆さま、お忙しい中ご手数ですが、ぜひとも生徒さんご同席の上、ご参加ください。

                    なお、日程は以下の通り・・・・・・・>




・・・・。

「・・・今日ね。」

「そうなんだよ!信じられるかっ!?高校生相手に家庭訪問だぞ?かんべんして欲しいぜ・・。」

「・・よく分からないけど・・・そういうものなの?」

「そうなんだ!だからお前に一つ協力してもらいたいことがある。」

「聞くだけなら聞くけど・・何?」

「一日だけオレの妹になってください。」

「いや。」


・・・即答だった。

同様の説得が、これですでに13回目。いい加減、驚く気も失せてくる。

ディスプレイの前で口をあんぐりと開けているそこの貴方!
『ふざけんな!!かぜあめ!!!』とウィンドウを消そうとしているそこの貴方!!(笑)
・・後生なのでもう少し話を聞いていただきたい。

「お前は当然知らないだろうけどな・・前にお袋が一度こっちに戻ってきて、学校に顔出したことがあるんだよ。
 それ以降、何故かオレは書類上では一人暮らしをやめたことになってる・・。今さら嘘がバレてみろ、本気の本気でシャレにならん」

なんてことを顔面蒼白で言ってくる横島に対して・・

「・・妹が一人増えたって大して状況は変わらないでしょ?他を当たって。」

タマモが半眼で会話を打ち切り・・・

「いや・・社会人の兄役は別に一人見つけてるんだけどな。要するに頭数なんだよ。兄弟2人より、妹と3人って方がなんか、らしいだろ。」

さらに横島が食い下がる。

・・そうだろうか?

全然そんなことはない気もするし、その通りだという気がしなくもない。
首をひねりつつ、黙考を続けるタマモに横島がぼそっと・・・・

「・・それに、成功すれば報酬は望みのままだぞ?」

そうつぶやいて・・・

「・・・・。」

タマモの気持ちが大きく揺らいだ。望みのまま・・・なんて素晴らしい響きだろう。

「ば・・買収する気?」

「だって・・お前ってば、揚げ物系の食い物をチラつかせると必ず食いついてくるからな。
 ・・それともオレと一日デートでもするか?いいなそれ・・安上がりで。」

冗談めかしてそう提案すると、何故かタマモが頬を染める。
突然、下を向き、少し拗ねたような口調で・・・

「ば・・馬鹿じゃないの?」

「?・・お前ってときどき変だよな。ま、いいや。で、どうする?やっぱり引き受けてもらえないか?」


プリントによると、担任が横島のアパートを訪れるまで・・もう2時間程度の有余しかない。
そろそろ部屋に戻って、お茶をいれるなり、掃除を始めるなりしなけなばならないのだが・・・・

・・・と。

「・・わかった・・。」

不意に・・
しぶしぶながら、タマモがゆっくり顔を上げる。恨めしげにこちらを睨みつけてくる2つの目。
ちょっと恐いが・・意外にもあっさり承諾してくれたことに、横島は思わず目を剥いて・・・・・・

「おお!ほんとか!?んじゃ・・試しにちょっとオレの呼び方を変えてみてくれないか?」

「・・なんて・・呼べばいいの?」

「ん?まぁ・・適当に・・」

投げやりに横島がそう言うと、タマモは難しい顔で腕を組み・・・

そして・・・


「じゃ・・じゃあ・・その・・・。」







「お・・・お兄ちゃん?」









間。






「ぶっ・・!!プハハハハハハハッ!!!!!何だそりゃあ!!ちょっと・・今の面白すぎるぞ?もっかいやれ、もっかい!」

「う・・うるさい!あんたがやれって言ったんでしょ!?な・・何?そのテープレコーダーは・・。早くしまって!」


・・・あまりの騒がしさのため、2人が店を追い出されたのは・・それから1分後のことだった。


               ◇



〜『そのいち』〜


「ねぇ・・横島?」

じーーーーーーーっ。

「お・・お兄ちゃん、それで・・家に着く前に聞いておきたいんだけど、もう一人いる兄役っていうのは誰のこと?」

アパート前。
階段を昇る横島に向かって、タマモが小さく口を開いた。横島はちょうど、部屋のドアノブに手をかけたところで・・・
・・ため息まじりにこちらを振り向く。

「説明しなくても、もうすぐ分かると思うぞ?」

「もうすぐ?」

「ん・・。オレが扉を開けたその瞬間。」

「?」

言っているそばからノブを回し、玄関に足を踏み入れた。

カチャリ・・。
自分の家へ入るしにしては偉く控えめな開錠音に、タマモが眉をひそめたのも一瞬。

視界に映った下足入れが・・突然、何の前触れもなく一刀のもとに両断される。

「な・・・・」

言葉を失う少女をよそに、横島が霊波刀を作り出した。
無言のまま一歩踏み出すと、素早い動作で腕を縦薙ぎに振るい・・・

次の刹那。

2つの刀身が、火花を散らし、肉薄する。


「くっ・・今のタイミングで仕留めきれないとは・・やるね、忠夫。」

「いや・・・それはいいんだけどな・・。人が家に入ろうとするたびに攻撃してくるのは止めようぜ、『輝彦兄さん』」

「そうはいかない・・。いい加減、往生したまえ忠夫ぉ・・・・!!!」

「・・そりゃこっちの台詞だよ、輝彦兄さん・・・!!!!!」

・・・そんなやりとり。

無駄に高度な戦闘スキルを連発する2人を見つめ・・それにタマモは・・

「・・・・。」

もう、言葉もなかった。
軽い眩暈を感じながら、疲れたように口を開き・・

「何か横島に弱みでも握られてるの?西条さん」

「・・あれ?君は・・。いつからそこに・・というより、どうしてここに・・」

今に至るまで全く気づかなかったのか・・西条が驚きとともの刀を下げる。
しばらく、タマモと横島の顔を交互に目をやり・・そして、世も末だ、と言わんばかりに首を振り・・

「・・タマモくん。一時の気の迷いとはいえ、こんな色欲の化け物についていくのは感心しないな。事務所まで送ろうか?」

「な・・?ち・・・違・・」

「いや・・・ってか、どうでもいいけど誰も色欲の化け物ってとこには突っ込まないのかよ・・。」

家庭訪問開始まで・・あと1時間半。

何はともあれ、気まぐれと即興で誕生した横島家3兄妹が・・今ここに集結したのだった、まる。


――――――・・。


「さて・・」


居間に集まった3人。
ちゃぶ台を囲み、神妙な様子で互いの顔を見合わせる横島、タマモ、西条は・・・それぞれ、やる気なさげに息を吐き出し・・

「念のため設定確認な?

  長男 横島輝彦 (二十ピ―――――歳)
  次男 横島忠夫 (17歳)
  長女 横島タマモ (14歳)

 基本的な経歴はそのままで、西条は当然Gメン勤務。オレとタマモは美神さんの事務所でバイトしてるって感じで行こう。」

「一度、リハーサルをしておいた方がいいんじゃないのか?全部アドリブで通すというのは流石にまずい。」

あごに手をやる西条へ、横島は重々しく頷いて・・・

「・・だな。まぁ、タマモの場合はお茶を運んでさり気なく存在をアピールすればそれでいいから。
 演技が必要なのはオレと西条か・・」

「・・芸が細かいわね。」

やや舌を巻いた調子でつぶやくタマモ。
この機転がどうして日常生活に少しでも発揮されないのか・・・それが彼女には不思議でならなかった。

「んじゃ、タマモ。ちょっと先生役やってみてくれないか?そこに座ってそれっぽいこと言うだけでいいから。」

「わかった。」


―――― Take 1 ―――――(ここからは会話のみでお楽しみください)


「・・こんにちは。」

「いやあ・・先生、暑い中よく我が家にお出でくださいました。汚いでしょう?ここ。これでも大分、掃除したんですがねぇ・・。
 全く人の住む環境じゃありませんよここは・・なぁ?忠夫」

「・・・ケンカでも売ってるのかい?輝彦兄さん・・・。」

「ハハッ。まさか・・勝敗の見えた喧嘩なんて・・僕はしない主義でね。」

「・・て・・・てめぇ・・。上等だ!!このロン毛中年!!一瞬で叩き潰してヤるぁ!!?」

「くっ・・言わせておけば・・。このジャスティスの錆にしてくれ・・・」

「・・カット。」


――――― 反省会 1 ―――――


「どうして挨拶もそこそこに殺し合いが始まるの?」

呆れた調子でタマモがつぶやく。
その声に、バツが悪そうに頬をかく2人。

凄まじかった。今のやりとりが本番で展開されていたかと思うと・・・恐怖で体の震えが止まらなくなる。

「いい?2人とも。いくら腹が立っても、お互いに手を出すのは禁止。短い間なんだから我慢して。」

「「・・はい。」」


――――― Take 2 ―――――(ここからは会話と効果音のみでお楽しみください)


「いやあ・・先生。暑い中、よくお越しくださいました。散らかってますが、どうかくつろいで下さい。」

「『兄さんと一緒に先生と話すなんて・・なんだか緊張しちゃうなぁ・・』」(← 棒読み)

「ははっ。心配いらないさ、忠夫。普段どおり『仲良く』していればいいんだからね。」 (← 棒読み)

「で・・では横島君の学校での話を・・」

「・・ほう・・仲良く・・ねぇ。そいつはいつもいつも刀を振り回してオレを殺そうとしてることを言ってるのかい?輝彦兄さん」

「・・・。あぁ・・そうさ。ついでに言えば、君が3日前、僕のオフィスに爆の文殊を投げ入れたのも含めてね・・。」

「・・・・。」

「・・・・・。」

「ふ・・2人とも。」

「おぉっと!!ごめんよ、兄さん。手が滑ったぁっ!!!!!!」

ガゴォッ!!!!!

「悪いな、忠夫。足がもつれてしまったよっ!!!!」

ドガァッ!!!!!!


「こ・・この・・。てめぇ、西条!!今ここで決着をつけてヤるぁっ!!!??」

「望むところだっ!!横島くん!!!」

「・・・。」

・・・カット。


――――― 反省会 2 ―――――


「横島・・?西条さん・・」

・・正座したまま、硬直する2人。
その正面には禍々しいオーラを身に纏った少女が一人、鎮座している。

「は・・ハハッ。横島くん・・ぼ・・僕はちょっとそこでタバコを買ってくるよ。時間までには戻るから・・じゃ。」

口早にそう言った後、逃げるように去っていく西条に向かって・・・

「なっ!?き・・汚いぞ、西条!!どうしてオレばっかり・・って、タマモさん、タイム!!ターーーーイム!!」

必死に叫ばれる横島の咆哮は・・・

「ぎゃあああああああああああああ!!!!!!!」

途中から悲鳴へと変質したのだった。


〜続きまくり〜

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