ザ・グレート・展開予測ショー

極楽大作戦 de 時代劇 第参幕  巻之壱


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(04/ 7/27)

「箱根にゃ飽いた、伊豆にも慣れた、次に向かうは美神里」
内藤新宿から甲州街道抜け、三目の門に有るのが江戸っ子の軽い旅行先として名高い、
関東八州小京都と言われる美神藩も秋の日差しが深くなってきた。
それは藩の北の古刹唐巣寺も同様であるようだ。
「むぅ、掃除をしても限がないのぉ」
寺男権三郎爺(92)も匙を投げている。これも通年行事といった所か。
「所為がでるのぉ」
ぬらりとやってきたのが、この藩は筆頭家老毒田薫栖である。
それに連なるは横島数馬、かの忠夫の従兄弟にあたる人物である。
「おや、ご家老お久しぶりで御座いますなぁ」
「うむ。御坊はご在宅かな?」
「そんだ。いつもどおりなんか、うなっておりやすぞ」
経文をとなえているようだ。
「そうか、実は離れを借りたいのじゃが、よろしいかな」
「へぇ、どうぞ」
了解を取り、二人そろって離れに向かう。
紅葉が奥で降り手前の白岩も朱色かがっている。
「ささ、どうぞ、数馬様」
では失礼と、足を崩して家老薫栖と対峙する。
「へーいいところやな、で、さっきのが姫んかい?」
今朝方この藩の姫であるところの令子姫にばったりと出くわしている。
「はは、元気である事は保障いたしますぞ」
扇子を仰ぎつつの対応である。
「でだ、ご家老殿、いったいこの国(藩)では何がおこっとるんや?」
そう、この美神藩は今年に入り物の怪に狙われている、これは決定している。
「数馬様、確かにわが藩の懸念であります」
先には次席家老の風呂濡瑠(プロフェッサーヌル)の内乱を手始めに騒動が起こっている。
「その他には辻斬りが出たり、今は大人を子供にする魔物もいる始末で御座います」
数馬がふむ、と顔をもたげ、
「なるほど、このご時世や、下手にお上(江戸幕府)に知られると」
「左様、なんとしても近いうちに決着をつけねば」
この時代、不祥事は即藩取り潰しは免れないのだ。薫栖も暗に江戸表に手を回しているようだ。
そこにすり足でやってくる音がする。
「これはご家老様、粗茶で御座います」
「御坊、新茶で御座るな」
「こちらもお勤めもめどが立ちましてな、してこちらは?」
数馬の事を伺う。
「うむ。こちらは横島数馬殿と申してな、実は」
少しこごもってから。
「令子姫様のお見合い相手として御呼びした次第じゃ」
御坊も最初は固まりつつあったが、
「確かに姫様も妙齢では御座いますが、してどちらの家ですか?」
「京都所司代(京都警備)の次男や、家柄はな」
成るほど、この美神藩は京都の文化が濃い。申し分はないという所か。
「それで驚く無かれじゃ、今わが藩に逗留されてる氷室様がご亭主、忠夫様のご兄弟なのじゃ」
「ほほぉ」
かの忠夫の妻氷室オキヌは皇室に繋がる御仁である。
江戸時代での財力はともかく権力は計り知れない。
「あぁ、そうやったな、忠夫もきておるんやったな、時に家老はん」
「はい?なんで御座いますかな?」
「あやつ、今はなんといっておるんや?」
今の身分はと聞かれている。
「はい、あまり知られたくないという事で「呉服問屋氷室屋夫妻」と名乗って降りますが」
壱幕、弐幕でもそれで通している。
「ふーん・・教えておこか、忠夫の親父さんは関白様や、奴も従二位についてるんやで」
これを聞いた薫栖に唐巣、一瞬力が抜ける。
「か、関白様で御座いますか?」
よもすれば将軍家よりも地位がある。
「そのような御仁で御座いましたか・・いや驚きました」
しどろもどろで家老が答えた。
「せやけど、忠夫の奴は気にしてへんようやけどな、そんなことより家老はん」
「何で御座いますか?」
「姫さん(令子姫)にゃ、見合いのことを教えてないんか?」
黙ってもしょうがないと観念したか、
「はい、なかなか切り出せなくて、で御座いますが、これも近いうちに」
領主に跡継ぎたる男子がいない、これは大問題である。
よもすれば、徳川一族からの養子ともなれば藩の根底が変わる。避けたいのだ。
「数馬様のお国入りは江戸家老の働きで暗に認められております故、そこは」
問題ないと言う所か。
江戸家老とは、常時江戸城にて儀式を執り行う重要な役職である。
当然熾烈な藩単位での争いも有る。
この争いに負けてお取り潰しの憂き目にあうことすらあるのだ。
美神藩の江戸家老、葉沼悟空(ハヌマン)である。
「一大事じゃ・・すぐに国へお知らせせねば」
なにやら重要な事件を持って美神藩に向かっている。
お供にすべてを見れるという百目を伴って。

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