ザ・グレート・展開予測ショー

奥様は狐 二日目


投稿者名:純米酒
投稿日時:(04/ 7/21)

旦那様の名前は 忠夫

奥様の名前は タマモ

ごく普通の二人が

ごく普通に恋をし

ごく普通の結婚をしました

――――――・・・が

ただ一つ違ったのは、奥様は

『狐』

だったのです

(だーかーらーっ!私は普通の狐じゃないってばっ!)

―――――――――――――――

けたたましい電話の呼び出し音に起こされ
寝ぼけ眼の横島が受話器を取る

「〜〜〜もしもし、横島っすけど・・・」

あくびをかみ殺してなんとか応対する

「なんだ忠夫、寝てたのか?だらしねーなー、そんなんじゃぁいつまでたっても彼女はできないぞ」

「こちらに忠夫という人はいません、番号をお間違えのようですね」

即座に電話を切る
が、すぐにまた電話がなる

仕方なく受話器を取る横島

「忠夫〜〜。お前面白い冗談を言うようになったなぁ・・・」

「ウルセークソ親父!こちとら寝不足なんじゃー!たまの休みくらいゆっくり寝かせろーーーー!!」

「お前の休みなんか知った事か!」

受話器越しに大声で口論する親子

部屋に響く大声に、気だるそうに眠っていたタマモが不機嫌な声で抗議する

「・・・なにようるっさいわねぇ〜」

そんなタマモを見て、空いた手を顔の前に持っていき、「ゴメン」とジェスチャーで謝る横島

しかし電話の向こうの人物は、かすかに聞こえてきた女神のような声を聞き逃さなかった

「おいっ!説明しろ忠夫!!なんでお前の部屋に女性がいるんだ?」

相変わらず女性の事となると鋭くなる父親に、恐怖にも似た感情を覚える

「・・・・・・・・・テレビの音だ」

「そーかそーか、そういう事にしておいてやろう」

父親の何か思わせぶりな声に横島は冷や汗を流す

「テメー・・・何考えてやがる?」

「いやなに、親に報告出来ないような女性なら俺が寝取っても問題はないだろうなぁ・・・と」

「問題ありまくじゃボケーー!」

さっきの口論より大きな声を出してしまいタマモから枕を投げつけられる
飛んできた枕を背中で受け止めて受話器から聞こえてくる声に耳を澄ました

「冗談だ、せいぜい逃げられんように努力しろよ」

「・・・ったく冗談に聞こえねーっつーの」

息子の真剣な声を聞き彼が本気である事を悟った父親は、先ほどとうってかわって真面目な声で語りかける
その声は女性にだらしない軟派な中年ではなく、息子を心配する父親の声だった

「いいか忠夫、大事な女性は悲しませるなよ。それだけは男として絶っっ対にやっちゃイカン」

「・・・わかってるよ」

「・・・・・・・そうか、お前も成長したな。今度の帰国の時は義娘の顔を見れるのか・・・
 あぁ孫はまだいいぞ!おじいちゃんと呼ばれるのはマダマダ遠慮したいからな!」
高笑いの後にそっけなく「じゃぁな」と別れの言葉を告げ、電話を切る

「いってろ・・・」
受話器を置きながらひとりごちる横島

「・・・電話の相手、誰?」
二回も耳に飛び込んできた大声ですっかり機嫌の悪くなったタマモが、軽く睨みながら横島に尋ねる
パジャマの胸元をだらしなくはだけさせて、手を突っ込んでポリポリと胸の辺りを掻いている

「親父だ・・・」

足元に転がっている枕を拾い押入れに投込む

「ふーん・・・ま、いいわ。でも朝っぱらから怒鳴り声聞かせないでよね」

「悪かった、お詫びに今日はタマモの言う事なんでも聞くからさ」

まだ不機嫌だったタマモの表情が、横島の一言で一瞬にして笑顔になる

「なんでもいいの?後悔しない?」

「あぁ、俺が出来る事ならなんでも言う事を聞くぞ!」

力強く宣言した横島だが、タマモの言葉を聴いて彼は激しく後悔することになった





「なぁ・・・頼むから勘弁してくれないか?」

「約束破るつもり?」

「いやだから・・・俺に出来る事ならな・・・」

「何よ!出来ないとは言わせないわよ」

「わかった、わかったから落ち着けって・・・」

「最初からそう言えばいいのよ♪」

そういって横島の腕に自分の腕を絡ませるタマモ
ぴったりと身体を寄せ、半ば横島に体を預けるような形だ

「ねぇ・・・私たちってどんな風にみられてるかな?」
上目遣いで横島を覗き込む

「ん〜〜、同じ学校に通う仲のいい兄妹か・・・・・・つ、付き合ってる二人かな・・・」
照れているのだろうか、かすかに頬を染めながら、タマモの顔から視線を外す
横島が言った「付き合ってる二人」という言葉に満足げな表情のタマモ

タマモの願いは「横島とデート」だった
最近、仕事と学校でタマモを構ってやれなかった横島は「なんだそんなことか」と二つ返事で引き受けた
だが、いざ出かける段階になってセーラー服姿のタマモが「横島も制服を着てね♪」と笑顔で付け加えてきたのだ

学生服でデートしている自分を想像して横島は恥ずかしがっていたが
涙を湛えて上目遣いで覗き込まれた日には断る事など出来るはずもなかった
そして学生服姿で商店街に繰り出してきたのだが、周囲の視線に耐え切れずに二度目の泣き言を漏らすのだった

タマモは終始上機嫌だった

道行く人の視線、買い物の度に掛けられる冷やかし交じりの言葉
どれもがタマモの心を満たしてゆくのだ

(そうよ、私は横島のモノ、横島は私のモノよ・・・)

そして、駄目押しといわんばかりにタマモは横島に告げた

「ねぇ、キスしよっか?」

「いきなり何いうんじゃーーーーー!!い、いくら何でも人前じゃぁ・・・」
爆弾発言にうろたえる横島だが、タマモの顔を見て気がついた

(無理をしている?いや焦ってるのか?)

普段鈍感な分、ここ一番の所で鋭くなる横島だった

「なぁタマモ・・・何が不安なんだ?」
穏やかな、怖がる子供を勇気付けるような声でたずねる

「・・・・・・・私、この国に居る限りはどんな事があっても横島と結婚できないから・・・
 だから・・・国が私たち二人を認めないなら、せめて・・・せめて周りの人に見せ付けてやろうと思って・・・
 わざわざ目立つ服装選んで、人の多い所に出かけて・・・ゴメンね、横島。恥ずかしかったでしょ」
涙こそ流していないものの、タマモは泣いていた

タマモの心の奥底にあった不安に気が付き、横島は自分の不甲斐無さを恥じる

タマモは金毛白面九尾の狐だ
政府は今でも『傾国の妖怪』として目の仇にしている
いつも不安だったのだ「この幸せが壊されるかもしれない」と

「俺のほうこそ・・・ゴメンな、鈍感な所為で・・・タマモはずっと不安だったんだな」

「いいのよ、横島の所為じゃないわ・・・んんっ・・・」

タマモの言葉は途中で途切れた
横島が強引にキスをしてタマモの口を塞いだからだ

横島の突然の行動に驚いて目を見開くタマモだったが、すぐに横島の首に腕をまわし、積極的に横島の唇を求める

二人の行動は周囲の視線を集めていた

「人前じゃぁしないんじゃなかったの?」

艶っぽく笑うタマモに横島は精一杯真面目な表情で応える

「俺はお前を絶対に悲しませない、どんなことがあろうとも必ず守る。
 お前は俺のモノだ・・・だから皆に見せ付けてやろうぜ!」

力強く宣言する横島を見て、タマモは思う

(横島・・・ううん、忠夫に会えてよかった)

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