ザ・グレート・展開予測ショー

夏の攪乱


投稿者名:逢川 桐至
投稿日時:(04/ 7/21)




 むぅ…

 あまりの暑さに目が覚めた。
 つつつーっと額を伝う汗が気持ち悪い。 俺の部屋にゃ、エアコンなんか無いからなぁ… 寝ぼけ眼で窓を見れば、全開になったソコにぽっかりと青い空。

 うぅむ、今日もいい天気だ。





 夏の攪乱





 って、ちょっとマテっ!

 今日は泊り掛けの仕事が入ってるのだ。 それも、ここんとこじゃ珍しい温泉地。 んな機会を逃せるか〜 湯上がりの火照った肌は、事務所でのとは違ってまた別の色っぽさが…

 と、ボーっとしてる場合ではない、とっとと起きて美神さんのトコに行かねば。
 勢いを付けて起き上が……らん?!

 なにゆえ?

 まるでナニカが身体の上に乗っている様な… 力が入らん、もしやこれが有名な金縛りか?
 誰だ? 俺を恨む様なヤツなんか……こないだ貰った弁当だと喜んでいたのを横から俺につままれたタイガーとか、神父んトコとの協同作業の時に『美神さんの攻撃』用の盾にしちまったピートとか、おキヌちゃん経由で俺に有る事有る事かおりちゃんにぶちまけられちまった雪之丞とか、美神さんや魔鈴さんに最近の女遊びを俺にバラされた西条とか、全く居ない事も無い様な気もしないでもないが……心当たりは全く無いぞ。

 いや、俺を羨む有象無象なら…
 むぅ、なめるなっ!
 俺の煩悩に掛ればンなもん、こうやって意識をあつ… あつ… 熱いっつんじゃあっ!!

「あら、起きたの?」

 気が付けば何やらボヤけてる視界に、知ってるような顔が。
 と、額に何かが乗る。

 あ〜、気持ちえぇなぁ…

 ひんやりとした感触が、ひどく心地好い。

「まだ結構 熱が有りそうね」

 遠のくひんやりとしたナニカは、白っぽい肌色をしていた。

 そっか… 熱か…

 自覚すると、何だか視界がどんどんボヤけて行く。
 今気が付いたが、頭もなんかずきずきと痛い。

「もうちょっと大人しく寝てなさい」

 うむ…

 再び額に冷たい感触。 さっきと違って湿っぽい。
 その冷たさが気持ちよくて…

 すぅっと落ちていく。

 ・

 ・

 ・

 で、なんでおまえが?

「随分ね」

 目に入ったきったない天井の端に、意外な、けれど知ってる顔を見付けて、思わず呟いちまった言葉に即座に返事が返る。

 いや、ここ俺ンちだろ?

「ミカミのトコに、こんな汚い部屋が有る訳ないじゃない」

 なるほど…
 って、いや、そうじゃなく。

「何よ?」

 なんでタマモがここに居んのかなぁって…

 じろりと睨まれて、思わず言葉が小さくなる。

「あんたが遅いから、迎えに来させられたのよ。
 そしたら、いぎたなく寝てるし。 蹴り起こそうかと思ったら、なんか調子悪そうじゃない」

 じゃ、美神さん達は?

「もうとっくに出掛けたわよ。 私にアンタを連れて電車で来なさいって」

 まだ少し熱ぼったい頭で考える。
 つまり、俺が予定の時間に来なかったから、後からひっぱって来いとタマモが言われて来たと。
 で、美神さん達はとっとと行ってしまったから、仕方なくタマモが看病してくれていた、って事か?

 ってちょっと待て。 じゃ、もう温泉に…

「とっくに着いてるわよ。 もう夕方よ、当然でしょ。 向こうじゃシロが帰るって駄々捏ねてるらしいけど、明日明後日中に終えないと違約金だからって、ミカミに怒られてたみたい」

 がぁ〜ん
 がぁ〜ん
 がぁ〜ん…

 ちょいとショックで頭が真っ白になる。
 折角の… 折角の泊り掛け仕事が…

 ぅおぉ俺の、お宝映像を返せぇ〜〜! …ごふっ

 ぬぉおぉぉ… 頭が割れて痛い。 

「何いきなり叫んでんのよ」

 いやほら、一応 俺、病人なんだけど…

「だから?」

 下手人である所のタマモと言えば、一欠けらの疑問も無いマジな顔で聞き返す。

 いやその、拳はですねぇ…

「で?」

 なんでもないっす。

 どーせ俺なんか…

 思わず目をそらすと、小さな一人用の土鍋と、水の入ってるらしい洗面器。

 あー、その、なんだ。

「今度は何よ?」

 いや、ありがとな。

「な、何よ?」

 おまえが看ててくれたんだろ?

「だって、そりゃ…
 ミチエも見に来てくれたし、別に私だけってんじゃないし…」

 照れてるのか、慌ててそう言うタマモは、普段のクールっぽさが無くなって可愛らしかった。

 隊長も来てくれたんか。

「私一人でどうしろってのよ」

 おめぇにゃあ、すっかり迷惑ばかり掛けさせるなぁ…

「時代劇がしたいなら、シロとでもすれば?」

 むぅ、そうくるか。
 ってか、知っていたとは、やるなおぬし。

「あぁ、はいはい。 バカな事言う気力があるならもう大丈夫よね。
 さっさとコレでも食べて、とっとと薬飲んで寝なさい」

 開けられた鍋には予想通りのおじや。

 おまえが作ってくれたんか?

「見よう見まねだから、味は保証しないわよ」

 油揚げとシラスに、三つ葉かなんかか…

「水菜って言うのらしいわ。
 材料とレシピはミチエが用意してくれたから、私もよく知らないし」

 そか。

 とにかく目につく具はそれだけだけど、思いの外きちんと刻まれてて、匂いは判らんが見た感じ美味そうだ。
 軽く湯気は立ってるが、食べ易そうな位には冷めているな。 横に置かれたスプーンを手に取る。

 いただきます。

 思っていた以上に腹が減ってて、食べる手が止められん。
 ふと、感じるタマモの視線。

 ん?

「…なんでもないわよ」

 美味いぞ。

「…そ」

 そっぽを向いて、また照れる。
 こいつと一緒にいる事って多くないから気付かなかったけど、結構感情が表に出るヤツだったんだなぁ。 なんか新鮮だ。

 まんざらでも無さそうな視線の下、一気におじやを喰いきった。

「おかわりどうする?」

 美味かったけど、取り敢えず今はいいや。

 頷くなり鍋を片付け始める。
 結構手慣れた感じなのは、おキヌちゃんの手伝いでもしているからなのか。
 用意されていた薬を飲み終えると、手持ちぶさたにそんな様子をただ眺める。

 俺の視線が追ってるのに気付いてか、タマモは首を傾げた。

「ん? 何よ?」

 んにゃ、何でもない。 わりぃけど、も少し寝させて貰うわ。

「いいんじゃない? その方が私もラクだし」

 タマモ。

「何よ?」

 ホントありがとな。 おまえがいてくれて助かった。

 誰かが居るって事がどれ程ありがたいか、こんな時だけに強く実感出来る。
 だから、似合わん気もするけど、本心から感謝して俺は眠りに就いた。

 ほわっと眠りに吸い込まれる感覚の中、わたわたと赤くなって何やら口走っているタマモが霞んで行く。

 ・

 ・

 ・

 翌々日。
 病み上がりだってのに、美神さん達に責められしばかれた。

 いやさ。
 なんか知らんけど、タマモが居着いちゃったからなんだが。 機嫌良さそうにしてるし、世話になりまくったもんで、俺としても強く言い出せないのだ。 何より自身、こう言うのも悪くないかと思えちゃったりしてるし。

 こう言うのを、お約束って言んだよな…

 事務所の床で血に塗れながら、霞む視界の中に騒いでいる美神さん達を捉えて、ぼんやりとそんな事を思ったり。





 【おわれ】



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……ぽすとすくりぷつ……

 とら・くろ、鋭意停滞中(爆) 集中連載開始までに何とかしたかったんだけど、難しそうです、すいません。 夏の事もあるし…(^^;オィ

 それはそれとして。
 いや、また病院のお世話になってたりってのもあって、なんとなくこんなモノを(^^;
 巧くオチてない上に、筋そのものはベタベタ。 もっとちゃんとプロット立てて書かなあきまへんな。 一応、存在証明って事で(__)

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