ザ・グレート・展開予測ショー

奥様は狐


投稿者名:純米酒
投稿日時:(04/ 7/19)

旦那様の名前は 忠夫

奥様の名前は タマモ

ごく普通の二人が

ごく普通に恋をし

ごく普通の結婚をしました

――――――・・・が

ただ一つ違ったのは、奥様は

『狐』

だったのです

(ちょっと!!普通の狐ごときと間違われるような言い方しないでよねっ!)

―――――――――――――――

小汚いアパートの一室
布団を跳ね除けだらしない寝相で寝ている男がいた
「・・・もう食べられないっすよ魔鈴さん・・・ムニャムニャ・・・」

どんな夢を見ているのだろうか?
余りにもベタな寝言をこぼし、寝返りをうつ

だが、彼の寝言を聞いた途端に隣で寝ていたタマモは額に青筋を浮かべる
(今日こそは優しく起こしてあげようと思ったのに・・・)

立ち上がると、だらしなく寝ている男の鳩尾目掛けて体重の乗った右足を下ろす

「グハッ・・・痛いっすよ美神さ・・・」

男の言葉が止まる
顔には滝の様に流れる汗がとめどなくあふれていた

「ふ〜〜〜ん・・・この期に及んでまだ他の女の名前を言うわけ?」

腕組みをし、半眼で睨みつけながら男の腹を踏んでいる足に力を込める

「あ、いや・・・その・・・まさかタマモがこんな乱暴な起こし方する訳無いだろうと思って・・・」

泣き笑いのような表情で失言の言い訳をつむぎだす

「・・・まぁそれは良いとして、どんな夢を見ていたのか気になるのよね。教えてくれない?」

笑顔だが目は笑っていなかった、右足に更に力を込める

「うグッ・・・いやぁ起きたら忘れちゃって、アハハハ・・・」

精一杯の愛想笑いを浮かべる

「横島・・・こんがり小麦肌とアフロヘアー、どっちがいい?」

左手の人差し指の先には、除霊の時でも見たことの無い位おおきな狐火が浮かんでいた

(アカン・・・俺はもうだめだ・・・ルシオラ、お前を転生させらない俺を許してくれ・・・)

涙を湛えて虚空を見つめる横島
だが、そんな目を見てタマモは更に狐火を大きくする

「今もまた他の女の事考えてたわね・・・決定、小麦肌とアフロ両方共ね♪」

「かんにんやーーーー!!俺が悪かった!!アフロも小麦肌もイヤやーー!!俺は日本人を辞めたくないーーーー!!」

意味不明の絶叫と共に炎に包まれる



しばらくして、ボロボロになった横島を放置して台所に向うタマモ

鍋いっぱいにお湯を沸かすと、うどんを放り込む
うどんを茹でている間にドンブリに出汁を入れ
冷蔵庫から取り出したタッパーから甘く炊き上げた味つきの油揚げを数枚取り出しておき出汁を染み込ませておく

茹で上がったうどんを冷水で洗う
ぬめりをとると同時に、うどんにシャッキリとしたコシを与えるために欠かせない作業だ
洗い終わったうどんをもう一度熱湯に通しあたためる

その手つきは慣れたものだった

お盆に二つのきつねうどんを乗っけて戻ってきた時には、横島は既に復活していた
しかも、肌は小麦色に焼けておらず、髪もいつものようにボサボサでアフロになっていなかった

「・・・毎度毎度の事ながら、アンタの体って一体どういう構造してるのかしら?」
呆れ顔にため息が混じっている

まがりなりにも狐火の直撃を食らっているはずなのだ
台所に立っているほんのわずかな時間で完全復活を遂げている横島の非常識さは
結婚前から重々承知していたが、一緒に暮らすようになってから更になぞを深めていた

「ほっとけ、それよりも今朝もきつねうどんか?」
あれほど酷い仕打ちを受けたにも関わらず、何故か笑顔だ

「何よ・・・きつねうどんは食べちゃいけない物なの?」
呆れ顔だった表情が一瞬で険しくなる

「いーや、タマモの作るきつねうどんは美味しいからな。毎回楽しみにしてるんだよ」

今度は一瞬で耳まで赤くなる

「・・・おだてたって何もでないわよ」

「おだてたつもりじゃないんだけどな・・・さ、冷めないうちに喰おうぜ」

タマモは横島に促されて座卓の前に座ると、箸と一緒にドンブリを横島に渡し、すぐさま自分のうどんをすすり始める
横島は「いただきます」と手を合わせてからうどんを口にする

しばらくはうどんをすする音だけが部屋の中で聞こえていた

静寂を破ったのは、最後に残した油揚げを箸でつまみあげているタマモだった

「今日って仕事あったっけ?」
油揚げをじっと見つめながら横島に尋ねる

「ん〜〜今日は休みだったはず・・・」
横島もうどんをすすりながら答える

二人とも視線を合わせていないが険悪な雰囲気というものでは無かった
お互いがマイペースに振舞っている。たぶんいつもこうなのだろう

「じゃぁ学校に行くの?」
油揚げを頬張り、空になったドンブリを名残惜しそうに見つめている

「学校か・・・行きたくねぇなぁ」
どんぶりに口をつけてつゆをすすっていた横島が、何処か寂しそうな表情をしているタマモを見ていぶかしむ
そして自分の油揚げがまだ余っているのを確認すると「いるか?」と油揚げをタマモに差し出す

無言で頷くタマモを見て、油揚げをタマモのドンブリに移そうとした時
タマモは目を閉じて、可愛らしく口を開けた

「・・・何やってんだ、タマモ?」

「・・・・・・あーん」

「はずかしくないか?」

「・・・・・・・・・あーーん」

うろたえる横島をよそに、身を乗り出して横島に迫るタマモ

観念したのか、苦笑してため息をつく横島

(箸じゃ食べさせづらいからな・・・)

たっぷりと出汁を吸った油揚げを指でつまみ、タマモの口許に持っていく
空いている手でタマモの顔を軽く上に向かせて、その状態を維持させようとタマモの顎に手を添える

油揚げを軽く押し込むと、タマモの可愛らしい口が閉じられる

油揚げと一緒に咥えられた人差し指を口から離す時に横島は軽い痛みを感じた
見ると指先からは、うっすらと血が滲んでいた

(タマモの犬歯で切っちまったんだろうな)

血の滲む指を眺め、怪我した原因を思い浮かべるとあふれ出す血を舐め取る

タマモが横島に食べさせて貰った油揚げを飲み込み、ようやく開いた目で横島を見ると
傷ついた指に絆創膏を張ろうとしている最中だった

(血?そういえばさっき軽く血の味がしたような・・・)

驚く横島をよそに、タマモは横島の手を取ると傷ついた指を口に含み丹念に舐め始める

「あ、おい。もう血もとまってるから・・・」

止めさせようとする横島に構わず、タマモは一心不乱に指を舐め回す

その光景はあまりにも淫靡で、横島に淫らな行為を連想させるのに十分過ぎるものだった

湧き上がる欲望を必死で押さえる横島だが、彼の持っている『理性』という名のブレーキは有って無いような物だ


「もーー、ガマンできん!!!タマモォォォッ!!!」


必殺のル○ンダイブ炸裂


こうなったらもう誰にも止められない

「あ、ちょ、ちょっとまって・・・」














結局この日一日はお互いの愛を確かめるために費やされたのでした

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