ザ・グレート・展開予測ショー

〜 『キツネと羽根と混沌と』 第6話後編 〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 7/14)



「あのさ・・・オレたちって一体、何やってんだろうな〜」

飛び交う霊弾。
敵の攻撃をかわしながら、横島が半眼でそう言った。
先ほどから、まるで変なクスリでも決まってしまったかのように奇声を上げ、ヒキガエルの如く跳ね回る妖魔を見つめ・・ため息をつく。
(これで結構強いのだから始末に負えない)

「・・除霊作業の真っ最中・・ってことにしたら?そう考えないと泣けてくるわ。」

横で答えるタマモは・・びくびくと、余裕のない表情を浮かべていて・・・

あかずの間での戦闘が始まってから・・すでに10分近く。
・・だというのに両者の優劣は全く定まらず、今も膠着状態が続いている。(認めたくないが)実力は互角。五分と五分・・と言ってよかった(認めたくないが)。


「・・わけ分かんねえな・・いくらなんでも強すぎんだろーが・・。なんでこんなつまらねえ学校でドロボウなんてやってんだ、お前?」

「下着が大好きだからだっ!!!」

「・・・そか。ちょっぴり共感できる自分が悲しいよ・・。」


絶叫する妖魔に横島はなんだか絶望的な顔でうめいたりして・・・・
・・と、そこで・・・

「何を隠そう・・私が手に入れたこの強力な力も、下着ドロの実績の一つなのです!!」

・・なんてことを突然、(ほんとに唐突に)変た・・・もとい、妖魔が言い出した。

「は?何の話だそりゃ?」
思わず聞き返してしまう横島。

「まあ聞け!私が最近、茶道部を荒らしていたの知っているだろう?そう・・あの学園一の美少女、神薙美冬が在籍することで有名な茶道部をだ!!」

ここまで誇らしげに、自らの変態的行為を自慢する輩も珍しい気がするが・・ピンク色の魔物はさらに、続ける。

「彼女の下着をかすめ取り、あとで色んなことをして楽しもうと思い手を触れたのだが・・・・
 すると、どうだ!?接触しただけで何故か、私の体に大量の霊気が雪崩れ込み、浮遊霊にも劣るであろう貧弱な力しか持ち合わせていなかった
 この私が・・中級魔族(ガルーダ相当(笑))にも匹敵する魔力を手に入れたのだっ!!」


「って・・つっこまれるのが嫌だからって一気に捲くし立ててんじゃねえよっ!!!!!!?」


さすがに疲れてきたのか・・今の一言で横島は完全にキレてしまったらしい・・。
半笑いで顔をヒクヒクさせると、懐から3つの文殊を取り出して・・・

「・・やりたくなかったけど、もう本気でいくぞ?なんかお前を見てると、一歩踏み外した未来のオレの姿が目に浮かんできて怖いし・・」

瞬間。

横島の体が強烈な光を放ち・・・そして一気にその速さを増していく。
そばに控えていたタマモも、思わずその様子に足を止めて・・

(・・・・・。)

何度見ても、超加速を使った横島の動きは圧倒的だった。
例え、自分より格上の相手が現れようと、多少の霊力の差なら簡単にそれを覆してしまう。
彼女がこの力を初めて目にしたのは7ヶ月前。とある事件で、ウェディングの真似事をさせられ、危うく殺されかけた・・あの時なのだが・・。

(前よりも速い・・。それに精度も比べものにならないほど上がってる・・・。)

横島は・・どんどん強くなっている。見ているこちらが不思議になるぐらい、必死になって強くなろうとする。

(なんで?)

聞いて、答えてくれたことなど一度も無かったが・・・
しかし一つだけ。タマモの意識を縛るように捕らえ・・どうしても忘れることのできない単語があった。

『横島の霊体に中に眠っている・・女の人』

スズノが以前、口にした・・あの台詞。聞き返すこともできず、その時は結局、うやむやになってしまった・・あの言葉。

誰なのかは知らない。何があったのかも・・よく分からない。ただ「一つだけ」直感的に理解できたことは・・・


(・・・横島はきっと・・・・まだその人のことが好きなんだ・・)


強くなることも、仲間を守ろうとするのも・・全て、過去の悲しい出来事と、恋人との思い出の延長線上・・。
その意味では、横島は現時点で誰のことも・・それが、美神やおキヌであろうと・・決して、異性としては見ていないのかもしれない。

無論、それは自分も同じで・・・・
近づけば近づくほど・・・それが分かって・・・・・

・・・だから・・・・・・




「―――――!?馬鹿!!タマモ・・何やって・・・」



「え?」


不意に、誰かに名前を呼ばれた。
思わず顔を上げたタマモは・・たった今まで・・自分が我知らず、半ば自分の世界に入り込んでいたと気づく。

「あ・・私一体・・・・・・・・・っ!?」

驚いている暇は無かった。
空を切る音。目の前に迫る拳を反射的にかわし、その場を飛び退く。

・・・すぐそばに、ピンク色の体躯がちらついた。

横島の目を盗んだ妖魔が、自分へと間合いをつめてきたと・・そう認識できたのはさらにその数秒後のことだった。

「戦闘中にぼ〜っとしてちゃあいかんな〜、お嬢さん。あまり甘く見ないでくれたまえ。」

「・・・。」

・・言う通りだった。相手にも問題があるとはいえ(失礼)、こんな油断・・今日の自分はどうかしている。

「うわ・・シャレになんねぇ・・。待ちやがれ!」

慌てて引き返そうとする横島を妖魔が笑い・・

「もう遅いわ!!そこで大人しく見ているがいい!!」

距離を取ろうとするタマモに向かってタックルをかける。

・・・。

「タマモっ!!」

「くっ・・・かわせない・・?」

「フハハハハハハハハハッ!!?だから大人しくしてろと言ったらろうっ!?さぁ!?お嬢さん貴方の下着を献上していただきましょうかっ!?」

「「って・・狙いはそっちかいっ!!」」

・・・なんかあんまりピンチでもないっぽいが・・・・・
微妙な緊迫感を保ちつつ、次回へ続く。


                             
                             ◇



〜appendix.6『パーティータイム』


「いいでちか?女の魅力をほぼ8割がた決定するのは、胸の大きさでち。胸が大きくなければ幸せを掴むことなんてまず不可能でち。」

・・・そんな力説。

公園のベンチに腰をかけ、アイスキャンディーをくわえながら・・何故かパピリオがそんな偏った(偏るにも程があるが)意見を主張していた。
その横には・・同じようにアイスを口にしているスズノの姿。
聞いているのかいないのか・・相変わらずぼんやりと空を眺め・・・

「・・今の話を総合すると・・・」

不意にスズノが口を開く。

「なんでち?」

「私とパピリオは・・ランク付けで言うと、女の中で最底辺に位置づけられる存在だ、という結論になると思うのだけれど・・」

「う゛・・。否定できないのがくやしいでちね・・。でも心配無用でち、スズノはともかくパピリオには未来があるでち。」

胸を張りながら、そんなことを言うパピリオに、スズノは小さく首をかしげて・・・・
じーーーーっと・・・パピリオの胸あたりを見つめた後、今度は自分の胸をぽふっぽふっと触って・・・


「・・・?私のほうが・・・少し・・・大っきい・・?」


なんて、命知らずもいいところな発言をする。

・・・間。

「喧嘩でも売ってるんでちか〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

「・・・いたい・・いたい・・・」

数秒後、『パピリオにフロントネックロックをかけられ、苦しむスズノの図』が出来上がっていたりして・・
なんだかここ数話ほど、スズノはいじめられっぱなしのような気もするが・・・きっと気のせいだろう(笑)

窒息のせいで顔を赤くするスズノは・・なんとか呼吸を続けようと、金魚のように口をパクパクさせて・・・・

・・・そこで・・・

「あ・・・」

時計を見つけ、声を上げた。
P.M 3:20 。スズノたちが事務所を出てから、すでに5時間が経過している。

「どうしたんでち?」

「ん・・・もう街に出てから随分になるから。そろそろ戻らないとみんな心配する。」

淡々とそう告げるスズノに・・パピリオはつまらなそうに顔をしかめて・・・

「えぇ〜〜〜!?まだ大丈夫でちよぉ。」

「まだ歩くにしても、一度、おキヌたちに知らせておかないと・・」

言い聞かせるようにスズノが後ろを振り向いた・・・・

・・・その時。

――――・・。


「お嬢ちゃんたち・・仲がいいね・・。ホラ・・どうぞ。」


商店街の中央・・・人々の行き交う児童公園の内では、特に目立つことのない、客よせ用の風船配り。
クマの着ぐるみをかぶった男が・・・急に近づいてきたかと思うと、スズノに赤い風船を差し出してくる。

血のように、真っ赤な風船。

「?・・あ・・ありがとう・・。」

目を丸くして、スズノがぺこりとお辞儀をすると・・・・・

「な・・なんでちか?あのクマ?トイレにでも行きたくなったんでちかね・・」

何故か彼は・・・・逃げるようにその場から駆け出していて・・・・

「・・・・・。」

スズノが異変に気づくのに・・・さして時間はかからなかった。

まず第一に、男の走り方。速さも、身のこなしも・・人間というよりは、どこか獣じみていた。
無理やり2足で歩いているような・・奇妙な動作。
そして、何よりスズノの体を震わせたのは・・・・・・


「――――・・パピリオ・・・」


カチッ・・・カチッ・・・と。

風船から漏れ出す、時計の秒針にも似た・・・規則正しい機械音で・・


「パピリオっ!!早く・・・私から離れて・・・!!」

「へ?急に何を・・・・・わわっ!」

顔面を蒼白にしたスズノが・・必死の形相でパピリオを突き飛ばす。
加減している余裕がなかったのか・・パピリオの体はゴロゴロと、とんでもない勢いで回転し、そのまま・・

「な・・ななな・・・わぷっ!?」

数十メートル先のしげみへと、頭からつっこんでしまう。

「な・・何するんでちか!次はどんなプロレス技を・・って・・・?」

怒鳴りながら、パピリオは草むらの中から飛び出して・・・・
だが、そこでようやく、彼女も事態を飲み込んだ。

・・カチッ・・・カチッ・・・

公園一面に、秒針が響く。
一つではなく、幾つも幾つも・・・。まわりに集まる子供たちの声を掻き消すように・・何度も何度も鳴り続ける。

「・・スズノ?」

少し遠く見えたのは、見知った少女の姿ではなく、自分より大分、年上に見える・・銀髪を持つ美しい妖狐。
霊波からスズノ本人であることは理解できたが、放たれる雰囲気はまるで別人だった。
何よりもその霊力。下手をすればこれは・・彼女のかつての主、アシュタロスにも比肩するかもしれない。

――――・・。

(一つ・・・じゃない・・?まさか、あれ全部が・・)

数十ではきかない。
子供たちが一つ一つ・・それぞれの手に持つ風船を目にしながら、スズノの額を汗が伝っていく。
もう時間など有りはしなかった。
頭上で鳴り止まない・・どころか、際限なく音量を増していく、赤い風船を睨みつけ・・・

一つ、つぶやく。

「まずは・・私から、ということか・・・」

彼女が静かに口にした・・その後、半瞬にも満たない時間。風船の破裂音とともに、四散する閃光。

公園を赤い爆風が飲み込んだ・・―――――――


〜続きます〜

『あとがき その2』

大人バージョンのスズノの胸はCカップ!!!ってパピリオどころか姉貴を上回っとるがな・・(笑)

と、ここまで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました〜
爆弾魔登場でなんだかシリアスじゃないのは、横島だけになってますね(笑
『不死王編』のラストでタマモに絶対告らせる!!という野望を抱きつつ、一生懸命お話を書いてる今日このごろです。

未だヴェールに包まれている西条の敵も、もうすぐ登場です。『別件』というのがなんなのか・・明かされるのは次の次のお話で・・
久しぶりにスズノも本気モードに変化しました。でもやっぱり次回もパピリオにいじめられます(笑)

この間、アドバイザーたちと話してて、一番このシリーズで人気のあるオリキャラは誰だろう?って話になったんですが・・
実際のところはどうなのでしょうか?

妹曰く、「ユミールじゃないことは確かだよ」らしいのですが(汗)

それでは、本当にありがとうございました〜また次回お会いしましょう。

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