ザ・グレート・展開予測ショー

百貨店パーティー☆6F


投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(04/ 7/12)


【1】カラスの生物兵器

《 くあ〜〜〜〜〜っ 》

赤城家の庭。 自分専用の枕でゴロゴロしているグータラなこの犬は、軍用サイボーグ犬のゼロ。

どきどきどき‥
「 …………… 」

そして庭の外の電柱の影には、グルグルメガネのあやしい男がいた。
彼こそゼロと関わりの深い、日須持桐子教授(今は小学校の保健医)……の、名も無き助手である。

( 教授の初期の動物実験体・零式……
  そして生物専攻の教授か関わった、数少ないサイボーグアニマル……
  現在政府の軍用犬であり、階級は犬佐……今は休暇中として飼い主の家に戻っている。
  その零式の飼い主、赤城千鶴、17歳。 7歳の時に零式が交通事故に遭い、一度は死別。
  その後ワリとたくましく成長し、現在某高校に通学中、
  彼氏アリ、身長159センチ、上から―――≪ぽかっ≫ あだっ!! 」 

日須持に殴られる助手。
ちなみにここは日須持邸……助手はゼロを確認したあと、報告のため日須持邸に戻ってきていた。

「 あんたなにを調べてきてるんだい! 見つけたらとっとと捕まえて連れてこんかい!! 」
「 で ですが相手は戦闘用の軍用兵器ですよ! ‎一般市民のボクにどうしろっていうんですか!? 」
「 それもそうさね……【ヨシカネ】! 」

バサバサバサッ
《 何か用ですかい、日須持女史。 》

日須持にヨシカネと呼ばれたこのカラス、黒い頭で目立ちにくいが、額にはムラマサと同じ▼逆三角マークがある。
彼もムラマサと同じく、日須持に生物兵器として開発された実験体のひとつである。

「 肝心のムラマサは見つかったのかい? 」
《 それがさっぱり……もうこの町から逃げてったんじゃないすか? 》
「 どうかね、私はまだあの小学校の誰かがかくまっている可能性が高いと思うけどね。 」
《 どうしてですかい? 》
「 ムラマサはずっと実験体として人間に育てられたんだ。
  今さらそう簡単に野良ネズミとして生きていけないんだよ。 」

そう言いながら戸棚からなにかを探している日須持に、助手の男が聞いた。

「 でもムラマサをを探すより、零式を捕獲することのほうが難しくないですか? 」
「 逆だよ、零式を捕まえるほうがよっぽどカンタンなんだよ。 」
「 えっ? 」
「 ふっふっふ 居場所さえわかればこっちのもんだってことさ。 」

不気味に笑う日須持。
彼女が手に取ったファイルには、カセットテープほどの大きさの小型の機械が入っていた………



【2】音楽室

「 わざわざごめんね妖岩くん、呼び出したりしてー 」

小学校の音楽室に、妖岩とあゆみの2人がいた。
あゆみは窓の外や廊下に誰もいないことを確かめると、音楽室の扉を閉めた。

「 妖岩くん、お姉さんの氷雅さんは今日ここには来てないよね? 」
こくっ
「 ……… 」

頷く妖岩。 今ごろ氷雅は、千鶴たちの通う高校にいってるはずである。
以前は氷雅もこの小学校にたまに来ていたため、あゆみも彼女のことをある程度は知っている。
あゆみはピアノのイスに座っている妖岩のもとに行き、小さな声で話しだした。

「 あのね妖岩くん、用っていうのはこの前の保健室の事なの。
  保健室で見たこと、誰にもしゃべらないでって言ったこと覚えてる? 」
こくっ
「 ……… 」

あのとき(4F後半で)保健室を出たあと、2人はそういう約束をしていた。
日須持がゼロを目撃(正確には助手が)したことを、わざわざ手帳に書き残していたこと。
千鶴やゼロと親しくなったせいこうや香山が、ゼロを秘密にしていること。
これらのことを知り、日須持とゼロの正体を知っている唯一の小学生であるあゆみは、
日須持が何らかの行動に出ようとしていることを察知していたのだ。

「 ムラマサと相談したんだけど、ゼロと飼い主の人に教えてあげたほうがいいと思うの。
  日須持先生のこと知っているかどうかはわからないけどね。 」
「 ……… 」
「 え? ムラマサって……あ そうか、この子の紹介が先だったね、ムラマサー 」

あゆみは自分の腰のあたりを見て声をかけたが、何の反応もない。

「 ムラマサ? 」

あゆみはスカートのポケットを広げてみるが、中にはハンカチしか入っていない。

「 あれっ!? おかしいなー前の授業まではいたのに…… 」
「 ……… 」

あせっているあゆみの姿を不思議そうに見つめる妖岩。

「 もーどこいったのよー こんな所で迷子になったら――― 」



【3】ムラマサ奮戦!

《 ……ごくっ。 》

給食室。 クリームシチューの入った容器の影に、背中にフォーク(彼の武器)を装備してる白ネズミがいた。
彼こそあゆみが日須持からかくまっている生物兵器、(といっても人と会話ができる程度の知能があるネズミ)ムラマサである。

《 今朝からなにも食ってなかったからなー、ちょっとぐらいいいよな。 》

ムラマサは、容器の近くの小皿に置いてある“おたま”に近づいた。
シチューをかきまぜたばかりのおたまには、ジャガイモの小片入りのシチューが残っている。

《 いただきま〜〜〜す♪ 》

ペロペロとナメはじめるムラマサ。 しかしその背後に、白い大きな影がせまっていた。
背後の殺気に気づいたムラマサは、恐る恐る振り返ると―――


「 いやあああああああ〜ネズミよおおおおおおお〜〜〜!!!!!!!! 」


給食室に響き渡るおばさんの悲鳴。 同時におばさんは右手に持っていたおたまを振り下ろした!

《 ぬおっ!! 》

かろうじてよけるムラマサ!

ガシャ―――――ン! ドガシャッ!
小皿を割り、近くにあった一クラス分のクリームシチューの入った容器を倒してしまう!

《 だーもったいねー!! 》
ずごごごごごご!
「 子供たちの健康を守って30と2年! 子供たちの未来を示唆する食生活!
  給食室のモットー 清潔!衛生!清浄!滅菌! 不浄な小動物は即駆除するべし! 」

熱く燃える給食のおばさん。
マスクとメガネ、割烹着を身につけた給食のおばさんにとって、給食室の清潔感を守ることは最優先事項である。

《 やば……(汗) 》
「 ネズミ駆除ォォォォォォォォ!!!!!!!! 」


               ◇

はっ はっ はっ はっ…
《 食の楽園には日須持並みに恐ろしいオバサンがいたもんだ。 》

後方の追っ手を気にしながら、学校の廊下を走って逃げてるムラマサ。

トッ!
《 うわっ! 》

人の足にぶつかるムラマサ。

《 ってーなぁ、ちゃんと前見て歩け…… 》

そう言いながらムラマサが見上げると―――

「 お前は!! 」
《 ゲッ! 日須持!! 》

日須持の細めのメガネが怪しく光る。 ヨシカネと対決した、体育館の一件以来の再会である。

「 ふっふっふ ムラマサ〜やっぱりこの学校にいたんだね〜 」
《 よ よおー、元気そうじゃねーか。 》
「 あんたとこうして話すのも久しいわね。 」
《 そ そうだな。 》
「 私がなんでこの学校にいるのか知りたい? 」
《 知ってるからいーや。 》
「 そう、なら話は早いわね。 」

ポケットから謎のスプレーを取りだす日須持。

《 なんだよそれは? 》
「 ……聞きたい? 」
《 ……やめとくぜ、なんとなく想像できるからな。 》
「 そう、残念ね……… 」
《 ……… 》
「 ……… 」
《 ……… 》
「 ……… 」
《 ……… 》スッ

一歩下がるムラマサ、そして次の瞬間―――

プシュ―――ッ!
「 待ちやがれムラマサ―――っ!!!! 」
《 怪しげな気体をまき散らしながら鬼の形相で追ってくる奴の言うことなんて聞けるかっ!! 》

ムラマサはスプレーを吹きかけながら追ってくる日須持から必死に逃げた!

《 ネズミ1匹にオトナ気ないと思わねえのか!? 》
「 そのネズミ1匹に人生メチャクチャにされた私はどうだっつんだい!? 」
《 クッ! 》

ムラマサは廊下の角を曲がり、日須持の視界から一瞬消える。
そして日須持が角を曲がると、すでにそこには、ムラマサの姿はなかった。

はあっ はあっ はあっ…
「 ……やっぱりとっ捕まえるには、あの力(零式)を利用するより他ないわね。
  ふっふっふ 待ってなさいムラマサ〜 キサマの命運もあとわずかだからね〜! 」

怪しく笑う日須持に、周囲の小学校低学年の生徒たちは怯えていた……

「 わーん ママァー! 」
「 あのおばちゃんこわいよー! 」
                                 「 やかましいクソガキ!! 」


              ◇

―――再び音楽室。
トントントン
窓を叩く音に反応するあゆみと妖岩。 外にはムラマサがいた。

がらがらっ
「 ムラマサ! 」
《 ふー えらい目にあったぜ。 》

あゆみは窓を開けて、ムラマサを中に入れた。

「 あんたどこいってたのよ! 」
《 この学校の2大悪魔と戦ってた……フッ 》
「 遠くを見つめてんじゃないわよ。 」
「 ……… 」
「 あ 妖岩くん、紹介するわね。 この子がムラマサ、ゼロと同じ生物兵器よ、一応。 」
《 一応ってなんだよ。 》


あゆみは、ムラマサが日須持に追われていることや日須持の正体など、これまでのことを妖岩に話した。


「 ―――というわけで放課後、ゼロと飼い主さんの所に案内してくれないかな? 」
「 ……… 」
「 え? 伊能くんと香山さんにも話していいかって? 」

あゆみはピアノの上に乗ったムラマサを見た。 するとムラマサは―――

《 なるべくなら一般小学生をよけいな事に巻き込みたくないんだけどな…… 》
「 ……… 」
「 伊能くんの護衛を離れるわけにはいかないって? 」
こくこくっ
「 ……… 」
「 まあ伊能くんならムラマサのこと黙っててくれるだろうけど、どうして香山さんまで? 」
「 ……… 」
「 え? 飼い主さんが? 」



【4】喫茶香山

どこの町にもありそうな、ごく普通の喫茶店“香山”。 
そのフロアには、アルバイトの女子高生がオーダーを受けていた。

「 マスター、コーヒー2つとショートケーキ2つお願いしまーす! 」

胸元に“COFFEE 香山”の文字が入ったエプロンを着た千鶴。
実は彼女、(2Fで)面接をうけた後、週3日ここでウエィトレスのアルバイトをするようになったのである。

「 コーヒー4つ、3番テーブルにお願いね。 」
「 はーい よろこんでー! 」
「 千鶴ちゃん、それちょっと違う…… 」

笑顔で元気よく応える千鶴。
彼女は、ここ最近のイヤな出来事を忘れようとしているのかのように、バイトに勤しんでいた。

( 元気があるのはいいんだけど、……彼氏とケンカでもしたのかしら? )

意外にするどいこのマスター。 30過ぎてるようだが、とても10歳の娘がいるとは思えないほど若く見える。

「 あら、嬉しい自己紹介ね〜♪ 」


カランカラン‥

「 いらっしゃいませー …って夏子ちゃん、おかえりなさい。 」
「 ただいまー千鶴お姉ちゃん、お姉ちゃんにお客さんよ。 」
「 私に? 」

ランドセルをしょって帰宅してきた夏子の後ろから、せいこうと妖岩、そしてあゆみが入ってきた。

「 こんにちは千鶴さん。 」
「 せいこう君 妖岩君ひさしぶりねー 元気だったー? 」

千鶴は2人に挨拶したあと、後ろにいたあゆみに目をやった。

( このコは……… )

雰囲気が昔の自分に似ているせいか、あゆみを気にする千鶴。
すると夏子は、あゆみの肩を押さえながら―――

「 千鶴お姉ちゃん、この子あたしたちと同じクラスの小田切さん。
  ちょっとお姉ちゃんに話があるんだけど…… 」
「 はじめまして、小田切あゆみです。 」

一礼するあゆみ。

「 あ はじめましてあゆみちゃん、赤城千鶴です……で、私に用って? 」
「 あのーここ(飲食店)じゃちょっと……はす向かいの空き地でお話したいんですけどー 」
「 あー…… 今ちょっとバイト中だからー 」
「 いいわよ。 」

カウンターで話を聞いていたマスターが言った。

「 お客さんも途切れた所だし、あとは1人で大丈夫だから今のうちに休憩してらっしゃい。 」
「 ……はい! 」

            ◇

喫茶香山のはす向かいの空き地に千鶴とあゆみ、せいこう、妖岩、夏子の5人が集まった。
そこで千鶴とあゆみは改めて自己紹介をした後、あゆみは本題に入る。

「 ―――それで私に話って? 」
「 ムラマサー 」
「 !? 」

あゆみが下を向いて呼びかけると、スカートのポケットからムラマサがヒュッと飛び出し、体をつたってあゆみの肩に止まった。

「 やだっ、ネズミっ!? 」
《 よお あんたがゼロの飼い主だな、俺はムラマサってんだ、よろしくな! 》
「 しかもなんかししゃべってるし!? 」

当然のごとく驚く千鶴。

「 あたしたちと同じ反応だ。 」
「 そりゃまーゼロのこと知ってるとはいえ、普通驚くよな。 」

夏子とせいこうは、下校前にあゆみからムラマサのことを聞いており、千鶴と同じようなリアクションをとっていた。

「 まさかあなたも政府の軍用サイボーグ犬……じゃなくてサイボーグネズミとか? 」
《 俺の体には機械的なものはなんも組み込まれてねえよ、純粋な有機物だ。
  ……まあ政府の生物兵器として造られたのは確かなんだけどよー 》
「 政府の? じゃあサングラスかけた防衛隊の人があゆみちゃんの所に来たの? 」
《 そんなのは来ちゃいないが、あんた“日須持桐子”って女知ってるか? 》
「 誰それ? 」
《 ……… 》
「 ……… 」
《 ……やっぱり情報の交換が必要だな、まずあんた、ゼロと政府とのこと話してくれ。 》
「 いいけど、ゼロがどうやって造られたかなんて知らないわよ、軍事機密らしいから。 」


とりあえず千鶴は、自分が知っていることをムラマサに話した。
そしてあゆみは妖岩たちに話したことと同じように、ムラマサや日須持のこと、これまでの経緯を千鶴に話した。


「 ―――で、あのメモ書きだけじゃあなんともいえなかったんだけど、
  ムラマサが研究所にいたときはもう、ゼロは防衛隊のほうに送られた後みたいだし、
  日須持先生は最近ゼロを見かけて調べなおしてたことは確かみたい。 」

あゆみが一通り説明したあと、ムラマサが千鶴に尋ねた。

《 それでゼロは? 》
「 今は休暇中だから家にいるけど…… 」
《 日須持は多分政府とはもう繋がってねえだろうが、一応気をつけたほうがいいぜ。
  ゼロにも何をするかわからねえ、
  あいつ執念深いし、目的のためならどんな手段でも使う奴だからな。 》
「 ムラマサ捕まえるために、わざわざうちの小学校の先生になるぐらいだからね。 」

ムラマサたちの忠告に千鶴は―――

「 わかった、教えてくれてありがとうあゆみちゃん、でも大丈夫よ。 」
「 えっ? 」
「 あれでも一応佐官なんだし、兵器を内蔵したゼロがそう簡単に捕まるわけが――― 」


                          ―――『 おーっほほほほほほ♪ 』―――

「 ……… 」ガクッ
《 どうしたおめえ、急に暗くなって。 》
「 いや、なんでも……( ゼロ、一度あの女に拉致られてたんだっけ…… ) 」

千鶴の脳裏に、初めて氷雅に会ったときの彼女の高笑いが思い浮かんでいた。

「 ……ハッ! ま まさかこのこと、氷雅さんに話してないわよね!? 」
《 話せるかよ、あの女がヤバイってことは俺も知ってるからな、日須持といい勝負だ。 》

(( 氷雅さんと同じぐらいヤバイ日須持先生っていったい…… ))

氷雅の直接的な被害者である千鶴とせいこうは、日須持が本当に危険人物なんだと、この時改めて思った。 

「 でも伊能くん、氷雅さん最近あまり学校にこないけど、どうしたの? 」
「 さあ、どっかで遊んでるんじゃないかなー?
  普段何してるかは詮索するの怖いから、あまり深く聞いてないんだけど…… 」

( ウチの高校で高校生やってるってこと……せいこう君知らないのかな? )

家族にも秘密にしている氷雅の高校生活。 千鶴は話すべきなのか迷ったが……

「 ハァーッ ……まあ人様に迷惑かけてなかったらいいんだけどね。 」
( 充分迷惑被(こうむ)ってる人間が、ここに1人いるんだけど。 )

……千鶴は彼の心配事を増やさぬよう、ここは黙っておくことにした。
そして千鶴はムラマサに目をやると―――

「 ……でもこうして見ると、ムラマサって結構かわいいよね? 」
「 あ、それあたしもちょっと思ったー 」

千鶴の意見に同意する夏子。

「 ちゃんと毎日お風呂で洗ってあげているから、さわっても大丈夫よ。 」
《 おい、あゆみっ! 》
「 ホント? じゃあさわらせてー 」
《 おい! こらっ! あんまりベタベタすんじゃねえっ! 》

千鶴と夏子は慣れてきたのか、ムラマサを撫でて可愛がりはじめた。
キャイキャイ騒ぐ女性陣を前に、せいこうは……

「 ………お風呂………………………ハッ! 」

ちょっとだけ想像してしまった自分に落ち込んでいた。 どうやら彼、思春期が近いらしい。

「 ハムスターみたいでかわいいー♪ 」
「 この子甘いものが好きなんだよー 」
「 ほんと、うちのゼロとは大違いだわ♪ 」
ぶちっ
《 おまえらいい加減にしろ―――っ!! 》

今まで人間の仲間があゆみしかいなかったムラマサ。
一気に4人も人間の友達ができたことは、彼にとって大きな進展であった事には違いない。

こうして、生物兵器ムラマサとゼロの秘密を共有した、少年少女たちのささやかなパーティーが結成されたのであった。



【5】千鶴帰宅

「 ただいまー 」
「 おかえり、千鶴。 」

バイト帰りの夜8時。
階段を上がって自分の部屋に行こうとした千鶴を、台所で料理していた母親が呼びとめた。

「 なにお母さん? 」
「 さっきゼロ、防衛隊のほうに戻っていったから。 」
「 えっ? 今週はずっと自宅休暇とってたはずなんじゃ…… 」
「 急な任務が入ったみたい。 また次の休みに戻ってくるでしょ。 」
「 そう……
    ( 防衛隊に戻ったのなら安心かな……
      いや、任務内容によっては心配するべきなんだろうけど…… )

ゼロが防衛隊でどんな仕事をしているのか、千鶴は知らない。
知っているのはゼロが軍用兵器であり、海外にも派遣されてるということ。
体内にあれだけの武器を内蔵されてることを考えると、危険な任務を行っているのは容易に想像できていた。

    ( ………いなくなったりしないよね? ゼロ……… )


―――不安感を募(つの)らせる千鶴。 その頃ゼロは………


「 ―――零式捕獲、成功しました。 」
《 チョロイもんでしたぜ、カアー 》

日須持邸にて、助手とヨシカネの報告に日須持は怪しく笑った。

ふっふっふっ 
「 これで作戦の第一段階は成功ね。 名づけて『生物兵器ムラマサ・捕獲大作戦』!! 」
( また微妙な作戦名を…… )
キランッ☆
「 なにか言った!? 」
「 いえっ、なにも! ( たまにエスパーかと思うよこの人は…… ) 」

日須持はヨシカネの首に巻かれた小型の機械を取ると、床に横たわっているゼロを見た。

「 ……とにかく、10年前に使ってた零式制御装置がまだ有効ってことは、
  零式のパスワードは書き換えられていなかったわけね。 」
「 ですが制御というより機能を停滞させただけのようですが…… 」

制御装置を使用して以来、ゼロは意識がないかのようにぼーっとしていた。

「 昔もらった機械工学のデータを利用して本格的に制御できるようにすれば、
  零式の探査装置でムラマサの居所なんて一発で発見できるわ!
  ムラマサ〜あんたの命運もあと数日よ〜……ふっふっふっ……ぐふふふふっ…… 」

( ひょっとして、このデンジャーな性格が大学や政府に見限られた原因なんじゃ…… )


ついにゼロを手中にした日須持教授、そして出合った、千鶴とあゆみの両ヒロイン。
日須持とムラマサ、両者の対決の日は近づいていた………
 

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