ザ・グレート・展開予測ショー

沈黙の山羊達(A面)


投稿者名:伊三郎
投稿日時:(04/ 7/12)


『決めろ、それを壊してなにもかも台無しにするか』
『いいか、これからそっちにゆっくり向くからおかしな真似をするんじゃないぞ』

 その時、俺は「動くな!!」と叫んだはずなのに、声が出ない。

 振り返った奴の顔を見ると・・・・それは俺自身だった。




ガバッ!? 跳ね起きる横島。

(ゆ、夢か)  



ここ久しく見ることのなかった夢。。。。

全身が冷や汗でびっしょり濡れているのを感じる。息も荒い。
両手には、あの時握っていた結晶と文珠の感触が残っている。

(ここは?) 
ようやく、辺りを見渡す余裕が出てくる。ほとんど闇に近いわずかな明かり。

3方向はむき出しのコンクリートで窓も無い壁。残りは結界を張られた鉄格子。

(牢屋か。。上で騒ぎを起こしたんで、ぶち込まれたんだよな。)

監獄内の反対側には横島の上司の美神令子が寝ている。
「いいこと、この線からこっちに入ったら殺すからね!?」
ご丁寧に二重に結界を張り、横島が結界に触れたらすぐに殴れるよう拳を握ったまま寝ている。

(この状態で寝れるてーのは、ある意味凄いな。ま、俺も寝てたけど。)

隣の独房から、人で無いものの気配がする。(やつも起きてるのか?)

『おとなりさん、目が覚めたかね。』

「ああ。。。。。おい、今の夢はお前のせいか?」

『私の顔が馬に見えるかね?』

(違うってことか。)

「で、何か用か?」

『言っただろう、私はヒマだって。おまえの来るのを楽しみにしていた。』

「俺か?」

『100年前の予知が最後のはずだった。おまえが髪の毛一筋の可能性を繋げ、
 この世界を選んだ。』

「なんとなく、言いたいことは分かる。」 
(でも、できれば思い出したくなかった。。。今は。。)

『で、おまえは迷っている、今も。』 (ああ、迷ってるよ。)

『誰かに言って欲しいんだろ。自分は間違ってなかったと。』 
(違う!!そんなことは望んでない!?)

『どうかね、おまえの未来を見せてくれないかね。』 (・・・・・)

『見たい未来があるはずだ、おまえには』 (たしかにある。俺は。。。。)

まさに、悪魔の囁きであった。

『さっきも言ったように、聞きたくなければ、私は話さない。』 
(どうする。。所詮こいつも悪魔!)




『そうだな、おまえの文珠を一つこっちに投げ入れろ。日記にも触ってここの連中
 の予知もしてやろう。それで、おまえたちの仕事も終わりだ。』

「今は無いぞ。ここにぶち込まれた時に、全部取り上げられた。
 それに、この結界の中では文珠は作れない。」 

(俺は今、悪魔と取引しようとしている。。)

『上着の左のポケットに一つある。』 

(あれ、確かにある。入る前にボディチェックされたのに?)

『一緒にいた巫女さんかな。彼女はなかなか頭がいい。よろけた振りをして、
 そこに滑り込ましたようだな。』

『防』と書かれた文珠が、確かに横島の手にあった。

(そうか、最初に来た時におキヌちゃんが怖がったので御守りがわりに渡したやつ か。)

『キイイイイッ、人間喰わせろ』と叫んでいた悪魔の檻には 
「ベリアル 近づくと咬みます 注意」
 と看板が立っていた。

『文字は書き換えてもらおう。結界の中を通せるように。』

横島の頭の中に送られてきた字のイメージは彼の知らないものだった。

「何の字だ、これは?」

『古の結界解除用の文字だ。覚えておくといい。なかなか便利だ。』

横島は文珠に念を込め、鉄格子の隙間から手を出して隣の独房にスナップを効かせて投げ入れる。

最強だった筈の結界をすんなりとすり抜けて、隣の悪魔のもとに文珠が届く。

『これでいい。しばらく待て。』 
(これで悪魔に魂を売ったことになるのか。。しかし。。)




空白の時間が流れる。。。。



「おい。」 『・・・・・・・・・』

「まさか、おまえ。。。。」 『・・・・・・・・』

「泣いてるのか?」

『ああ。』

「泣くほど酷いのか、俺の未来は?」

『違う。』「じゃ、何だ?」







『私は、私は、おまえ達の未来に、モーレツに感動しているのだぁ〜〜〜〜〜〜
 〜!!!』

(こいつ、本当はこうゆうキャラだったのか!?)

『ネタが古いわよ、オトナリサン。』 

(おう、ナイス突っ込み!! でもこの元ネタ知ってるてことは。。歳ごまかして
 ないか?)


頭を抱えて、隣のやつの見た目と中身のギャップにあきれていた横島。 

(ん、ちょい待ち!)

「あの〜〜」

『なんだね?』 泣いていて、鼻水を啜り上げながら悪魔が答える。

「今ですね〜。おまえ達って、言いませんでした?」

自分のやらかした、大チョンボを否定したくて、敬語になってしまう横島。

『そうだ。お・ま・え・た・ち だ!!』

「その〜、あなたは触った物に触った人の人生が見れるんですよね?」

『そのとーり!!』

「で、ですね、文珠に触って念を込めたりしたのは?」

『もーちろん、よく分かる!』

「文字を上書きされる前に文珠に念を入れた人の運命とかも?」

『ま〜かせて! 一度、念を込めていれば上書きされても残留思念は残る!』

「・・・・・・・・!」



(やってもーた!! 俺だけでなくおキヌちゃんもまきこんだーーー!?)

そう、横島がおキヌに文珠を渡した時は、文字はなし。
『防』の念を込めたのは彼女。







『では、いくぞ、おまえ達の未来は「言わんでいい〜。」』

『ま〜そう言わずに、お客さん。』

「か、かんにんや〜。」

『聞いてください、横島さん。』 「小竜姫さまのまねをしても駄目っ!」

『聞きなさい、横島クン。』   「美神さんのまねも駄目っ!」

『聞くんだ、横島!』      「ワルキューレでも駄目は駄目っ!」

『聞いてくれないの、ヨコ「やめろっ!!」』

「あいつのまねをするな!!」

『すまん。ちょっと調子にのりすぎた。』 

(あれっ、なかなか素直だな。ひょっとして、わりといいやつかも。)





『・・・・・・・』
「・・・・・・・」


「なあ。」
『・・・・・・・』

「拗ねちゃった?」

『うん。』
(子供かこいつは。)

独房の隅に蹲って、床に「の」の字を書いている悪魔。
アンソニー・ホプキンスが見たら泣くぞ。きっと。



「しょがない、一つだけなら聞いてやるよ。」

『ほんとに? 嘘じゃない?』 (ガキだ、やっぱりこいつ)

「ああ、俺が一番聞きたいことは分かってるよな?」


『じゃあ、一つだけ。おまえの一番強く念じていることの未来は・・・・』






(なんか、死刑判決を受ける被告の気分だな〜。俺はあいつに。。。)






『ハーレムはあきらめろ!!』

「・・・・・・・は?」

『だ〜か〜ら〜ハーレムは諦めろ!?』

「俺の聞きたいのは、そんなことじゃ無いぞ。」

『おまえの一番強い念の答えがこれだが?』

「でも、俺が知りたいのは。。。」

『おまえの深層意識にある一番強い念だから間違いない』


「じゃ、もう一個いい?」

『いや。』

「ま〜そう言わずに、お客さん。」

さっきと完全に立場が入れ替わっている。

「ねえー。」

『やだもんね〜♪』

「おねがい〜。」

『おやすみ〜♪、おとなりさん。』

「お〜い。」



(寝ちまいやがった。こいつ!)

結局、からかわれていたことに気付いた横島。でも、もう手遅れ。
(どーせこんなこったろーと思ったよ、どちくしょー!)


そして、翌日の昼前にようやく開放された美神と横島。
あいつは約束だけは守り、日記に触って仕事は無事終了。

しかし、二人を引き取りにきた、おキヌの顔色は冴えない。

「どうしたの、おキヌちゃん。よく眠れなかったの?」
 と聞く、今は50億儲けてご機嫌の美神令子。

「はぁ〜、ちょっと夢見が悪くて。」なぜか、横島を見てため息をつく。

(まさか、あいつ。。。 あかん、ばれたら殺されるだけじゃすまん。。。
 かんにんや〜〜!! しかたなかったんや〜〜〜〜〜!!)

心の中でいくら謝っても、ほんとにもう手遅れ。






これは実在しないはずの、国と団体と人物の所であった物語。


















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