ザ・グレート・展開予測ショー

絶体絶命大ピンチ1 プロローグ


投稿者名:純米酒
投稿日時:(04/ 7/ 8)

横島忠夫の食生活はとても特殊な状況だ

両親からの仕送りとアルバイトによる収入をやりくりして何とか生活しているのだが、そこは若い男子の悲しい性(サガ)
ついつい『ちち』や『しり』や『ふともも』があらわな本やビデオ等に浪費されている為、食費は少なくなる
また横島自身が購入している食料も、インスタントやファーストフードに代表されるに出来合いの物に偏りがちだった
そういったものは割高な傾向にあるが、慣れない炊事で食材を無駄にするよりは・・・等と自分に言い訳をして
カップ麺を大量に買い込んでいる。しかし、不意の来客によって消費される事が多く自分で口にする事は少ない

おかげで毎日が栄養失調寸前の食生活かと言うと、意外とそうでもない

仕事の前後、事務所に居るときはなんだかんだ言ってもみんなで食事を共にしている
学校での昼食は、クラスメイトのピートの善意によってまかなわれる
休日ともなると、おキヌが通い妻よろしく食材をもって参上し、頼んでもいない掃除や洗濯までしてくれる
更に最近は、新しいメニューの味見という事で魔鈴の所でも世話になっているのだ

横島はこのような事態が特殊であるという事を全く理解していなかった
ピートは例外として、女性陣は横島に対して明らかに好意を持った上で行動である

そんな恋する乙女達の暴走が今始まる・・・・








珍しくアルバイトも学校も無い一日

横島は布団の中で起きるか寝るかの半分意識のとんだ状況を維持しつつ、日常の煩わしさから解放された時間を満喫していた

(バイトも無い、学校もいかんでいい。ゆっくり出来るって幸せやな〜〜)

瞼の向こうが暗くはないのですでに夜は明けているのだろう
というかすでに日は昇り、家の外ではさんさんと太陽の光が降り注いでいた
カーテンのおかげでまぶしくは無いものの、普通では目覚めてもおかしくない明るさだった

(最近はハードな除霊が続いたからな〜、あともうちょっと寝てても罰はあたらんだろう)

まどろみに身を任せ、惰眠を貪ろうとした刹那

シャッ

「うおっ眩しい!」

「それは当然でござるよ、せ〜んせぇ♪もうこんなに高くお天道様が昇ってるでござるよ」

目の眩む光と共に目に飛び込んできたのは

「・・・尻尾?・・・あぁシロか」

「おはようでござるよ、先生♪」

カーテンに手を掛け、パタパタと尻尾を振る弟子の姿を確認すると
至福のひと時を邪魔された事に文句を言ってやろうかとも思ったが
窓から差し込む光にも負けない位の眩しい笑顔を前にすると、そんな気分も何処かに行ってしまう

「なんだ・・・散歩ならいかねぇぞ」

目覚めたものの、布団の温もりが名残おしいのか
寝転がりながら会話しようとする

「え〜〜〜〜、つまんないでござる・・・」

勢い良く振られていた尾が途端に元気をなくすと同時に笑顔にかげりがさす

まだ寝ている師匠の横に座り込み瞳を潤ませながら、顔を覗き込む

(う・・・いかん、こんな顔をされては・・・って相手は弟子だろー!正気になれ、俺ぇー!!)
「わ、悪いなシロ、今日はちょっと用事があってな。それに疲れが溜まってるからな、ゆっくりしたいんだよ」

「じゃぁ拙者がヒーリングするでござるよ♪師匠の疲れを癒すのも弟子の務めでござる♪」
言うが早いか、するすると布団の中に潜り込んで体を密着させる

「どーして布団の中に入ってくるんじゃーー!こんな所を見られたらヤバイだろーが!!」

「拙者は全然かまわないでござるよ♪さぁさぁ遠慮なさらずに」

「おまえが良くても、俺が良くないんじゃぁーーー!!」

一方は寄ってくる身体を引き離そうと、もう一方は身体を寄せようと必死である

狭い一室での、しかも布団の中で師匠と弟子の取っ組み合いが始まっているその頃


横島の部屋の前でニ人の女性がばったりと出会ってしまっていた

一人は食材の入った紙袋を抱え、低空をゆっくりと飛行する箒に腰かけている
もう一人の方はスーパーのビニール袋を手に提げ、頭の上に豊かな尾を持つ妖狐を乗せていた

「こんにちは魔鈴さん、今日はお仕事の方はお休みなんですか?」
(なんで魔鈴さんが横島さんの家の前に居るの?まさか横島さんに用事がある訳じゃぁ・・・)

「あら、こんにちはおキヌちゃん。今お店が改装工事で休業中なんですよ」
(どうしておキヌちゃんがここに居るのかしら?まさか忠夫さんがお休みの日だということを知って・・・)

表面上は和気藹々とした会話がなされているものの
心中では相手に対する警戒心で一杯だった

二人が(一応)穏やかに話しをしていると横島の部屋が何だか騒がしいのに気が付く

「なんだか騒がしくないですか?」
「何かあったのでしょうか?」

お互い、相手が何故ここに居るのかという疑問を一旦置いておいて、横島に何が起こっているのか確かめる事にした

扉を開けて目にした光景は二人にとってショッキングな物だった




布団の上で横島がシロを押し倒していたのである

実際にはシロが下から横島を引き倒そうとしていたのだが
前後の流れを知らない二人にはそうとしか見えなかったのだ

いきなり開いたドアの方向に顔を向けると、横島の表情は一瞬で青ざめる
そして超加速をも超える速さでシロから離れる

「ちっ、違う!俺は何もしていない!!誤解だ、誤解なんだーーー!!」

涙を流しながらドアの向こうにいる怒れる二人の女性に必死に命乞いを始める

おキヌの頭上に陣取っていた妖狐が何やら楽しい物を見つけた子供のように目を輝かせる

(面白くなりそうね、おキヌちゃんに付いてきて正解だったわ)

「シロちゃんには手を出さないと思ってたんですが私の考えが甘かったようですね。横島さん・・・覚悟は良いですか?」
おキヌはスカートをたくし上げ、太腿に隠し着けていた鞘からシメサバ丸を抜き放つ

「私との約束、覚えて無かったと言う事ですか・・・
 今度からは忘れられないようにキチンと『お薬』を使わないといけませんねぇ」
魔鈴は胸元に手を入れたかと思うと、何やら怪しい液体の入った小瓶を取り出す

(こ、これはアカン!!このままではヤバイ!!何とかしなければ折角の休日がーーーー!!!!)

横島がこれから展開されるであろう事態をありありと思い浮かべて涙を流していると
いつの間にか人型に戻ったタマモが

「ねぇ、魔鈴の言ってた約束ってなんなの?」
と、修羅場一歩手前の状況に水をさす

「そういえば先生、用事があると言っていたでござるな」

とりあえず話題が逸れたことに横島は感謝する

(ううっ!ありがたいぜタマモ!あとで『ごん兵衛 きつねうどん』やるからなっ!
 シロッ!お前も後で散歩に付き合ってやるぜ!!)

しかし事態は好転せず、かえって泥沼に向って加速してしまった

「今日は『忠夫さんと二人きり』で新しいメニューについて話し合う約束してたんですよ」

魔鈴の言葉で一気に不機嫌になるおキヌ
特に『二人きり』という単語が彼女の神経を逆撫でしたようだ

「なんで『横島さんと二人きり』で話し合う必要があるんですか?西条さんでもいいんじゃないですか?」

西条の名前を出されて今度は魔鈴が不機嫌になる

「気取って料理の講釈したがるような西条先輩なんかあてに出来ないんですよ。
 その点、『私の忠夫さん』みたいに食べてくれる人の方が信用できるんです♪」

「『私の横島さん』は優しいですからね♪魔鈴さんは勘違いしてるんですよ」

お互い、表情と言葉は穏やかだが声には刺々しいものがある

「そんなことありえません!プロの私がそう思ってるんですから」

「美神さんに負けたことを忘れたんですかぁ?魔鈴さん♪」

ついには睨み合いに突入してしまう
そんな二人に気おされた横島とシロが小声で話し合う

「なぁシロ、クーラーも無いこの部屋にしては、涼しいと思わないか?それは俺の気のせいか?」

「た、たぶん気のせいではないと思うでござるよ・・・おキヌ殿と魔鈴殿・・・コワイでござる」
それまで元気一杯だったシロの尻尾は力なく垂れていた

そんな二人とは対照的に・・・いや、この状況を一人楽しんでいるタマモは更なる爆弾を投下する

「睨み合ってても埒が明かないわよ?勝負して決着つければ良いじゃない」

「んなっ!タマモ!!お前はなんちゅーことを言うんじゃぁあ!!」

「いいですねぇ♪この際だからどちらが忠夫さんに相応しいかも含めて勝負しましょう」
「そうですね♪まぁどうせ横島さんは私を選ぶと思いますけど」

「・・・・ということは先生が審判をするのでござるか?」

無言でうなずく『ヤル気』の二人と楽しそうな妖狐

(俺が何をしたっていうんじゃぁーーー!!!タマモのバカーーー!!!神様のアホーーーーーー!!)


こうして恋する乙女達の暴走により「横島忠夫争奪料理バトル」が始まった

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