ザ・グレート・展開予測ショー

百貨店パーティー☆5F


投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(04/ 7/ 5)


【1】千鶴・中島の高校―――2年2組の教室―――

「 はぁ〜っ…… 」

自分の机に寝そべり、ため息をつく中島。
とそこに、中島のクラスメイト、通称【メガネ】とよばれているメガネをかけた男子生徒が声をかけてきた。

「 どうした中島、おまえここんとこ暗いなー 」
「 ほっといてくれよー…… 」

中島は寝たまま、力なさげに言った。

「 ったく不景気な顔しやがってー お前にはちゃんと彼女がいるだろ、慰めてもらえよ。 」
「 ……別れたんだよ俺たち。 」

ざわっ‥‥ 先ほどまでざわついてたクラスメイトたちの会話が止まる………

「 別れたって赤城さんと……マジで!? 」
「 ああ おもいっきり嫌われたんだ…… 」

するとメガネは、うれしそうに中島の背中をたたいた。

わははははは!
「 そうかそうかー! やっぱ破局しちゃったんだなおまえらー! 」
「 ………… 」
「 まー最初からこうなることはわかってたんだがな―――! 」



    ―――数ヶ月前―――


 「 なに―――っ!? 」
 「 中島に彼女ができた―――!? 」
 「 しかも相手は5組の赤城千鶴さんだと!? 」

 騒然とする2年2組のクラスメイトたち。 中島はおもいっきりニコニコしながら―――

 「 うん、おまえの言うとおり思いきって告白したら、なんだかOKもらっちゃって。 」

 メガネは中島に相談され、確かにダメモトで告白しろとは言った……が、
 顔良し、性格良し、スタイル良し、学年成績も常に上位に位置し男子学生からの人気も高い赤城が、まさか中島を彼氏にするとは思わなかったのだ。

 「 俺、結構狙ってたのに……! 」
 「 なんでこんな何のとりえもない、冴えないヤツなんかが……! 」
 「 赤城さんって男を見る目がないのか? 」

 悔しがる男子生徒たち。 するとメガネは……

 「 心配するな、相手はコイツだ。 どーせすぐにフラレるに決まってる。 」
 「 そ、そーだなー、中島だもんなー! 」
 「 何日で別れるか賭けねーか? 」
 「 いいねー! 」
 「 10日で別れるに500円! 」
 「 あ、俺1週間でフラレるほうに200円! 」
 「 なんとなくOKして、実はもうフラレているに1000円。 」

 「 ……おまえらなー(怒) 」

 言いたい放題の友人たちにちょっと切れ気味の中島であった。 するとそこに―――

 「 中島くーん! 」

 廊下から千鶴が呼んでいた。 ざわめく教室。 中島はクラスメイトの注目を浴びながら廊下に出る。

 「 な、なに? 」
 「 お昼よかったらいっしょに食べない? お弁当作ってきたの。 」
 「 え? う うん、もちろん! 」
 「 じゃあお昼、校庭の庭木の所で! 」
 「 うん、わかった! 」

 照れながら自分の教室に戻っていく千鶴。
 中島はニコニコしながら自分の席に戻ろうとすると、教室内からただならぬ気配を感じていた。
 それは“嫉妬”という名の殺気。
 男子生徒たちは怒りに満ちながら中島をとり囲んだ。

 「 え? な ナニ!? 」

 オロオロする中島に対し、メガネは中指でメガネを上げながら―――

 「 おまえ、我が校のオキテしってるよな? 」
 「 えっ!? 」
 「 不幸はわかちあうが、幸福は殴打をもって祝福するのが我が高校の鉄則。 」
 「 知らねえ!! そんな鉄則知らねえぞ!! 」 
 「 フッ‥ 受けとれ中島、これが我らの祝福だ。 ……やれ。 」

 メガネの合図と共に、いっせいに中島に殴りかかる男たち。
 この時中島は、ボコボコにされながらも内心は幸せに満ちていたのであった……[再び現代]



「 まー元気だせ、お前にはすぎた女だったんだ。 夢見られただけ幸せだと思え。 」
「 うう…… 」

メガネは中島の肩に手を乗せると―――

「 で 何が原因だったんだ? 」
「 ほかの女とキスしているとこ、赤城に見られちゃったんだよー…… 」

ざわっ‥ メガネのメガネが白く曇り、教室の空気が変わる。

「 キ、キスー!? 誰とだ!? 」
「 ひとつ年上の人。 そしたら『バカー』って言われて、それ以来口きいてくれないんだよー 」

中島もバカ正直に話さなければいいものを……
周囲はすでに、彼女のいない男子生徒たちの殺気で満ち満ちていた。
メガネを白くくもらせたメガネは、中指でメガネを上げながら―――

「 ナァカジマァー、親友として忠告したはずだ。 赤城さんを泣かせるなと。
  しかも、こともあろうにほかの女と接吻するとは言語道断。
  ……受けるがいい中島、これが我らの鉄の制裁(オキテ)だ。 ……やれ。 」



キ〜ン コ〜ン カ〜ン コ〜ン



がらがらっ
4時間目の授業のチャイムが鳴り、担任の先生が扉を開け教室に入ろうとすると、足もとにズタボロになって倒れている中島がいた。

「 そんな所で寝てると風邪ひくぞ、中島。 」
「 そうじゃないっしょ、せんせ〜 」

泣きながらそう言った中島の頭の上で、聞き覚えのある女性の声が聞こえた。

「 あらあら、こんなに傷ついちゃってー 」
「 ひょっ 氷雅さん!? 」

そう言いながら中島を抱きかかえたのは、この高校の制服を着た氷雅だった。

「 どっどーしてここにいるんですか!? それにその格好は――― 」
「 うふっ 私、この高校に編入しましたの。 」



【2】2年5組

4時間目の授業終了後、昼休み―――

「 ビックニュース、ビックニュース!! 」

中島の彼女、千鶴が友人3人と昼食を食べようとしたとき、クラスの男子があわてて入ってきた。

「 さっき2組にいったらよ、女が転校してきてるんだよ! 」
「 マジ!? 美人か!? 」
「 もち! もう2組のヤローどもに囲まれて昼飯食ってんだぜ! 」

「 や〜ねえ男子って、美人に弱いんだからー 」
「 ……そうね。 」はむっ

千鶴はそっけなくサンドイッチを食べだした。

「 そういえば2組って、彼のクラスじゃない? 」
「 彼って? 」
「 ほらー、千鶴のカレシの中島クン。 」
「 ああ あのいつもヘラヘラしている犬みたいな子ね! 」
ピクッ‥ 
「 ……犬みたいで悪かったわね。 」
「 ゴ、ゴメンちづるーおこんないでよー 」

友人の“犬”発言に少しカチンときたのか、ジト目で友人を見た千鶴は、再びそっけなくサンドイッチを食べだした。

「 ……… 」
「 ……なんか千鶴、最近機嫌悪くない? どうかした? 」
「 ……べつに 」もぐもぐ

明らかに不機嫌そうにサンドイッチを食べる千鶴を見た友人のひとりが―――

「 千鶴、おぬし彼氏とケンカしたな? 」
「 ! 」

紙パックのコーヒー牛乳を飲もうとしたまま、千鶴の動きが止まる。

「 えっマジ!? 」
「 あんたたち結構うまくいってたじゃない、何が原因? 」


―――中島と氷雅のあのシーンを思いだす千鶴―――


「 実はこの前――― 」
「 2組に入った“氷雅”さんって美人だったな〜♪ 」
「 俺マジファンになっちゃいそ〜 」
「 あのていねいな口調はどこかのお嬢様と見た! 」
「 でも中島と知り合いってーのは意外だよなー 」

ぶしゅっ… だらだらだら………

「 ち ちづる……? 」

千鶴が原因を話そうとしたとき、周囲の男子生徒たちの会話が耳に入り、言葉が止まる。
おそるおそる千鶴の顔をうかがう友人たち。
千鶴は中身の入ったコーヒー牛乳のパックを、無意識のうちに握りつぶしていた。



(((((  な……… なんですって〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!  )))))



【3】2年2組

教室の中央の席では、氷雅が男子生徒たちにに囲まれながら中島と昼食をとっていた。
氷雅は手製の弁当の玉子焼きをハシでつまむと―――

「 はい、中島クン、あ〜〜〜ん☆ 」
「 あ あの〜氷雅さん(汗) 」
「 はい? 」
「 氷雅さんは確か18歳で高校3年生のはずじゃ…… 」
「 わたくし、2年のときに高校中退しましたの。 だから中島クンと同級生ですのよ♪ 」
「 オレには彼女がいるんですけど…… 」
「 知ってるわ♪ 」
「 ………(汗) 」

にこやかに答える氷雅。 中島は周囲の男子生徒たちの殺気で、終始冷汗流しっぱなしである。

ドタドタドタドタ がらがらっ!
誰かが廊下を走る音が聞こえ、そして教室の扉が思いっきり開かれる。

「 あら 千鶴さんではありませんか〜♪ 」
「 乱破の氷雅――― 」

千鶴と氷雅の視線が交じり合い、教室の空気が変わった。

「 氷雅さん、ちょっといいですか? お話があります。 」
「 ふふっ かまいませんわよ。 」

ムリっぽく笑っている千鶴に対し、自然ににっこりと微笑み返す氷雅。
そのとき中島には見えた。
ズゴゴゴと音を立てながら、千鶴の背後に犬のオーラが。 氷雅の背後に狐のオーラが。
龍と虎でないあたり、中島にとっては千鶴に犬(ゼロ)のイメージが大きいらしい。

「 あ あの赤城…… 」

中島はオドオドした声で何かを言おうとしたが、千鶴にキッとにらまれて黙りこむ。
その状況を見ていたメガネは………

( こ、これは、ドラマや小説やマンガやアニメ等等でよく見かけられるお約束の展開…… )


       中島
     /    \
    氷雅 ― 千鶴


メガネのメガネがキラリと光る!

( 三角関係!!!!! 修羅場というヤツなのか!?
  しかもその頂点が中島だと!? ありえない! 不可能だ! インポッシブル!! )

苦悩しているメガネをよそに、千鶴と氷雅は教室を出ていった。 残された中島は―――

( うわあああっ……俺どうしたらいいんだ〜〜〜
  氷雅さんも美人だし色っぽいし、悪い人じゃないし(←間違った認識)、
  なにより俺のこと好きになってるみたいだし………
  でも赤城、妬いててくれてたんだ………アハッ☆ 俺って結構イケるかも……ハッ!! )

横……じゃなくて中島は、思っていたことを口には出していなかったが、表情にはでていたようだ。
困りながらもニヤけてしまってる中島に対し、彼女のいない男子生徒たちの殺気は再びヒートアップ!
そんな中、千鶴と氷雅が教室から出ていくと……

「 ナカジマァー、我が校の鉄則――― 」

滝のように汗を流す中島。
このあと2組の教室からは、ひとりの男子生徒による叫び声が―――(以下省略・シーン転換)



【4】屋上バトル

ヒュオォォォォ―――――ッ
一陣の風が吹き、2人の女子高生の短めのスカートがなびく。

「 いったいどーいうつもりよ! 」
「 なにがですの? 」

制服を着た2人の女子高生、千鶴と氷雅。

「 なんでこの時期にこの高校に入ってくるのよ! あからさまにヘンじゃない!! 」
「 わたくしだって人並みに高校生活送りたいものですわ。 」
「 それに4時間目に編入してくるなんて…… 」
「 先ほどまで弟の小学校にいってましたの、だから遅れたのですわ。 」
「 そんなことはいいの! 何よりおかしいのは――― 」

千鶴は氷雅に指をさすと………

「 あなたが中島君と同じクラスに入ってるってことよ! 」
「 まあ♪ 偶然ってコワイですわね、でもこれも運命なのかしら? それとも――― 」
「 ふざけないで! どーせ忍術かなにかで先生達になにかしたんでしょ!? 」
「 ……… 」
「 ……… 」

一時の間。

「 やだわー千鶴さんったら、カワイイのにそんなにヒステリックな顔になっちゃダメよ♪ 」
「 なにかしたのね! したんでしょ!? 」

なにかしていなければありえない展開ではあるが、氷雅は開き直る。

「 でもー よくよく考えてみれば、わたくしがどのように編入してどのクラスに入ろうと、千鶴さんには関係ないことじゃありませんの? 」
「 そっ、そーかもしれないけど、なんでわざわざそんなことするのよ! 」
「 うふっ♪ どうせなら好きな殿方と同じクラスになれたほうがステキでしょ? 」
「 ………! 」

頬を赤く染める氷雅。
だが感情的になった千鶴は、更に顔が赤くなり、若干泣き声になりかけていた。

「 ……最初ゼロを狙って、次は中島君……あなた私になにか恨みでもあるの? 」
「 別に千鶴さんに恨みはありませんことよ。
  わたくしはただ、興味がわいたものと親密になりたいだけですわ、それに…… 」
「 ……それに? 」

氷雅は頬に手をあててにっこりと笑うと―――

「 あなたみたいな純な娘見ると、無性に可愛がりたくなりますの。 」

( いじめっ子だ! この人は典型的ないじめっ子タイプだわ! )

この人だけには負けてはいけない!と改めて思う千鶴だった………

  ・
  ・
  ・

【5】放課後

千鶴は帰り支度を終え、友人たちと教室の外にでた。
すると廊下には、たび重なる友人達からの仕打ちにより、痛々しい中島姿があった。

「 赤城っ! 」
「 中島君……私、バイトあるから――― 」
「 あ あの赤城っ、氷雅さんのことはごっ 誤解なんだよ!
  この前のことは不意をつかれて……だから俺が愛しているのは赤城だけなんだよ!! 」

周囲の視線を気にすることなく力説する中島。
こういったストレートな所は彼の長所なのかもしれない。
千鶴は友人も含め周囲の視線が気になり、顔を赤くしている。

「 だからその、今までどおり俺と…… 」
「 ……… 」

氷雅のこれまでの言動からして、中島のほうから氷雅に手を出したとは考えにくかった。
このまま彼とギクシャクしたままでは、ますますあの女の思うツボだと感じ、ここで彼を許そうと思ったのだが……

「 ……わかったわ、中島く… 」
           「 中島クーン、いっしょに帰りましょ♪ 」
                      「 うわあああああああっ!!!!! 」

背後からいきなり中島抱きつく氷雅。
千鶴はパクパクさせたままあっけにとられ、中島は背中に感じる柔らかな感触に動転していた。

「 中島クン、これからお茶でもしませんこと? 」 ふうっ

耳元で妖艶な声をあげる氷雅のささやきに、中島の理性は一気に吹っ飛びかけていた。

( ああっ、耳に息がっ、せっ背中にむっむむむ胸が……アハァーッ………………はっ!! )
ずごごごごご!
「 …………! 」

口には出さなかったものの、彼のその一瞬の幸せそうな表情は、全てをぶち壊しにした。
彼にとっては不可抗力かもしれないが、彼女の怒りを買うには事足りている。
千鶴は反転し、無言のままその場を去っていく……

「 ま 待ってくれ赤城―――!! 」

氷雅に抱きつかれたまま叫ぶ中島。 その横を千鶴の友人たちが通り過ぎる。

「 サイッテー 」
「 ケダモノ 」
「 ……犬っころ。 」

千鶴の友人たちの捨てゼリフに追いうちをかけられる中島。
背中の幸福とは裏腹に、胸にぽっかり風穴が開いたような、そんな感じだった。

ひゅうぅぅぅぅぅぅぅっ
「 ……俺は駄犬だ、ゼロ以下だ…… 」




【6】出番無き犬

―――ところで、中島が比較していた軍用サイボーグ犬、ゼロは……

《 ふあ〜〜〜〜〜っ……… なんだか自分、出番少ないでありますなー 》

赤城家の庭で寝転んでいたゼロ。
その庭の向こうでは、グルグルメガネのいかにも怪しげな男、日須持の助手が立っていた。


( やっと見つけた!! 零式!! )
 

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