百貨店パーティー☆4F
投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(04/ 6/28)
【1】妖岩の年齢って?
「 妖岩を学校に通わせるって!? 」
朝、伊能家の食卓。
せいこうは父から、今日から妖岩を彼と同じ学校に通わせることを告げられていた。
「 もうクラスメイトと打ち解けてるそうじゃないか。
妖岩くんだけ授業中ずっと隠れてるんじゃかわいそうだろ? 」
「 そりゃそうだけど、突然すぎるよー これから学校に行こうって時に・・・ 」
せいこうは隣の部屋で、いそいそと筆記用具やノートをフロシキにつめている妖岩を見た。
「 あっはっはっ、ムリ言うな、編入を決めたのは昨日の夜だからな。 」
「 ? 昨日の夜決めて、どうして今日から編入できるんだよ。 」
すると父は、タバコに火をつけて一服すると
「 フッ‥ おまえも大人になればわかるさ 」
「 答えになってないよ(汗) 」
平凡な生活を望んでたせいこうにとって、氷雅と妖岩のボディガードを最初は嫌がっていた。
だが今は、妖岩とは友達のような関係になりつつあり、非日常的な彼らとの生活もある程度慣れてきていた。
まあ、せいこうが半ばあきらめている部分もあるのだが……
「 妖岩、たとえご学友になろうとも、お勤めはきちんと果たすのですよ。 」
こくこくっ
「 ………! 」
氷雅のいいつけに、力強くうなづく妖岩。
「 ん? ちょっとまてよ? 」
せいこうは、溶岩を見ながら父に聞いた。
「 ぼくの護衛をしながら授業受けるってことは………妖岩って年いくつ? 」
「 なに言っとる、おまえと同い年じゃないか 」
「 ……………マジ?(汗) 」
◇
【2】妖岩編入
「 ―――というわけで、みんなも知ってるでしょうけど、
今日からキミたちと机を並べて勉強することになった妖岩くんです、みんな仲良くねー 」
学校の教室―――
担任の女性教師・桜井啓子が、いつもの忍の服を着ている妖岩のことを紹介していた。
彼は3頭身にも満たないその体で、勉強道具の入ったフロシキを首に巻いている。
「 妖岩くーん☆ 」「 キャーかわいー☆ 」
その愛くるしい姿が、クラスの女子の大多数のハートに大ヒット、更なる人気を集めていた。
「 それじゃあ1時間目は体育だから、みんな着替えて校庭に集合すること。
おくれた子にはコツンしちゃうぞー 」
「 だから先生、ぼくらもう5年生なんだから、それ相応の応対を……(汗) 」
なにはともあれ、こうして新たに、せいこうのクラスメイトとして編入した妖岩。
次の体育の授業のサッカー紅白試合では、人並みはずれたパワーとスピードで大活躍。
低い身長を利用した細かなドリブル、蹴れば強烈なシュートを決められるそのキック力。
その活躍ぶりは、一躍クラスの注目の的となっていた。
「 すっごーい! 」「 妖岩くんカッコイイー☆ 」
体操服姿の女子の黄色い声援に、黙して顔を赤くする妖岩。
そんな前方で奮闘する妖岩とは対照的に、彼の主人であるせいこうは、自軍のゴール近くにいた。
「 ……普通の小学生が本物の忍者にかなうわけないだろ 」
苦笑しながら言うせいこうの所に、同級生の香山夏子が近づいてきた。
「 ほらー伊能くんもちゃんと攻撃に参加したらー 妖岩くんあんなに頑張ってるんじゃない。 」
「 あいつといっしょにすんなよ(汗) 」
このゲーム、男女合同で行われており、現在せいこう・妖岩は赤組、香山は白組である。
「 あー ひょっとして妖岩くんがモテてるからひがんでるんでしょ? 」
「 ちがうよ、僕が運動苦手なの知っててわざと言ってるだろ、香山。 」
「 あ、ほらボール来たわよ! 」
「 え!? 」
せいこうの目の前に、体格いい丸太町がドリブルで迫ってきていた!
うおおおおおおお!
「 オレ様の丸太ドリブルがせいこうごときに止められるかーっ! 」
いたって普通のドリブルではあるが、丸太町の言葉にせいこうはちょっとだけムカッとする。
そして真正面からボールをカットしようとするが―――
どごっ!
「 うわあっ! 」
せいこうははじき飛ばされた!
「 イタタタ……だからイヤなんだよ〜 」
「 そんなことない、うん、よくがんばったわ! 」
「 うれしくない……!(汗) 」
地面に倒れこむせいこうをはげます香山。
少し前の彼なら目立つことを嫌い、ボールを取りにいこうとはしなかったであろう。
乱破の姉弟がボディガードになって、彼のなかで何かが少しずつ変わっているのかもしれない。
「 わはははは! このままシュート決めてやるぜ! 」
ゴール前、丸太町がシュート体勢に入り、ボールを蹴ろうとするが―――
すかっ
「 あれっ!? 」
「 いっただきー♪ 」
体勢を低くしてしゃがみこんだ小田切あゆみが、丸太町の後ろナナメから素早くボールをカットしていた!
「 小田切っ!? 」
あゆみはすかさず、髪の短い男子にパスをだす!
ぼんっ
「 岸上くーん! 」
ぱしっ
「 ナイスパス小田切! いくぞ妖岩! 」
コクッ
「 ………! 」
前方では再び赤組が攻撃に移る。
「 さすが小田切さんねー 」
「 どーせ僕より女子のほうがサッカー上手いよ。 」
いまだ地面に座っているせいこうの所に、あゆみが心配そうな顔で近づいてきた。
「 伊能くん、ケガない? 」
「 た 大したことないよこれぐらい、あはははは! 」
あわてて立ちあがるせいこうを見たあゆみは、くすっと笑みを浮かべると―――
「 がんばったね、かっこよかったよ。 」
「 えっ? 」
「 ……うれしそうね。 」
なんとなく、面白くなさそうな顔してつぶやく香山。 一方で前線では―――
「 妖岩決めろーっ! 」
「 ………! 」
岸上が妖岩に高いパスだす! 妖岩は空中で数回転すると―――
バシュン!
オーバーヘッドキックでゴールを決めた! そんな妖岩たちの様子を、校舎の上から氷雅が見物していた。
『 妖岩、妖岩……! 』
『 ―――! 』
遠くの人の声を聞くことができる、乱破忍術“てれぱしぃの術”を持ってる氷雅と妖岩。
2人はそれを応用し、氷雅の声は妖岩に聞こえるよう話しかけていた。
『 妖岩、あんたを編入させたのは若の護衛をよりカンペキにするのと同時に、若に天下をとってもらうためでもあるのよ。
仕える身であるあんたが若より活躍してどーするの? 』
『 ………! 』
妖岩はせいこうたちと、こうして授業を受けられることがうれしかったらしく、少しだけ失念していたようだ。
『 あんたの役目は若の信望を集めるよう工作すること、よろしくて? 』
『 ―――! 』
『 え? 若に忍術でズルして裏工作すること止められている? 』
こくこくっ
うなづく妖岩。 氷雅は少し考えると―――
『 別に忍術を使う必要はなくてよ。
若にボールをお渡しして、さりげなくサポートすることは決してルール違反じゃないわ。
むしろそれはチームプレイとして高評価に値することなのよ! 』
『 ………! 』
『 いいこと妖岩! 「サッカー」というのはね、古代アステカ王国で「友情」という意味なのです! 』
妖岩のバックに稲妻が走る!
『 ワンフォアオール・オールフォアワン、家臣は若のために・みんなは若のために、
主君と家臣が対等のルールの中で、いかに主君に活躍の場を与えられるかを競う球技!
家臣としての能力が試されているものなのよ。 いわば家臣のセキュリティ能力試験! 』
言っていることはムチャクチャだが、妖岩は姉の言うことを純粋に信じているらしい。
『 我ら乱破の忠誠心というものを、より深く感じていただけるはずよ。
若もみんなの前で活躍できたら、さぞお喜びのことでしょうねー… 』
『 ……… 』
妖岩が氷雅とてれぱしぃ交信中、白組の男子たちが桜井先生に抗議していた。
「 せんせー、妖岩がすごすぎて勝負にならないよー 」
「 これじゃあ白組の大負け目に見えてるしー 」
『 ………! 』
『 ほらみなさい、ご学友からもあんなに不満が出ているではありませんか。 』
「 そうねー、それじゃあ後半は妖岩くんを白組にしましょう、
せっかく編入したばっかなんだしね、みんなーそれでいいかなー? 」
白組の男子たちは了承したが、妖岩は先生のジャージの裾をつかむと、ブンブンと首をふった。
「 え? イヤなの? 」
「 ―――! 」
「 えっ 伊能くんといっしょのチームがいいって? 」
「 ! 」
驚くせいこう、うなづく妖岩。 そしてなぜか言葉が通じる桜井先生。
「 わかったわ、じゃあ伊能くんと妖岩くんは白組でいいわね? 」
「 えー 伊能がくんのかよー 戦力ダウンじゃねーか。 」
「 でも妖岩くんが来てくれるんなら、充分カバーできるぜ。 」
「 おお、そうだな! 」
「 ……おまえらなー(汗) 」
……というわけで、
白組―――せいこう 妖岩 香山 丸太町 他
赤組―――あゆみ 岸上 他
くしくも乱破メンバーとポケナイメンバーに別れての後半戦である―――
【3】後半戦
「 伊能くん、いっしょのチームだね! 」
「 妖岩のオマケだけどな。 」
香山は喜んでいるようだが、せいこうの心は複雑であった。
「 それじゃあ後半戦、はじめっ! 」ピ―――ッ
先生のホイッスルの合図と同時に、後半戦が始まった。
校舎の上にいた氷雅はしばらく試合を眺めていた……
「 ………………………楽しそうねえ。 」
順調に試合が行われていくのを見た氷雅は、ふと町のほうを見る。
するとその先に、千鶴たちの通う高校の校舎が少しだけ見えていた。
「 ……………… 」
氷雅は少しだけ青い空を見上げて考えると―――
「 ♪ 」ニヤッ
怪しく笑ってる ……なにか(楽しいことを)思いついたらしい。
ヒュッ
消える氷雅。 この話の続きは次回持ち越しとする。
そして紅白試合、5・6人の男子がボールを奪い合ってる中、妖岩が参入して素早くボールを蹴り上げる!
するとそのボールはせいこうのほうに飛んできた。
「 え? 」
「 伊能くん、攻撃のチャンスよ! 」
「 ま またか!? 3度目だぞ! 」
せいこうは、妖岩から連続してパスをもらっていた。
戸惑いながらも敵陣に向かってドリブルをはじめるせいこうであったが、赤組の岸田が近づいてくる!
「 もらったあー! 」
「 うわああっ、丸太町! 」
慌てたせいこうは、すぐさま前方にいた丸太町にパスを出そうとボールを蹴ったが……
ぱしっ
「 ラッキー♪ 」
そのボールは、まったく別方向にいたあゆみの正面に転がっていった……
「 なにやってんだ伊能! 」「 敵にパスしてどーすんだ! 」
非難轟々。
「 どーせ僕は……! 」「 ………! 」
落ちこむせいこうを見た妖岩は、あゆみからボールを奪い取りにかかる!
「 渡さないよ、妖岩くん! 」
妖岩の接近に気づいたあゆみはパスを出そうとするが………
「 きゃっ! 」
自分の足もとに強引に飛びこんできた妖岩につまづき、あゆみは両手をついて倒れた!
その妖岩はあゆみに目もくれず、無理な体勢からせいこうにパスを出した。
( 妖岩……… )キッ
せいこうは飛んできたボールを無視して、妖岩のほうにツカツカと歩いてきた。
「 ………? 」
せいこうの反応にとまどう妖岩。 その後ろでは―――
「 いったぁー…… 」
倒れたあゆみの手の平からは、血がにじんでいた。
グラウンドの砂でこすれたその両手は、見るからに痛そうである。
「 ………! 」
うろたえる妖岩。 そこに先生や香山が近づく。
「 小田切さんケガしたの!? 」
「 血が出てるじゃない! 」
「 イタタ……すりむいちゃった…… 」
「 保健室にいったほうがいいんじゃない? 」
「 ! 」
香山の言葉に驚いた表情をするあゆみ。 彼女の額からはなぜか大量の汗が流れだす。
「 だ だいじょうぶ! こんなのかすり傷だから!(汗) 」
素早く立ち上がり、大丈夫そうに振る舞うあゆみ。
そして妖岩の背後で、せいこうの怒りの低い声が響き渡る。
「 よ〜う〜が〜〜〜ん! 」
「 ………!! 」
びくっとした妖岩は、あゆみをひょいっと担ぎ上げると――――
「 ちょ ちょっと……! 」
「 ………! 」
どびゅ――――――ん!
一直線に校舎のほうへ向かった。
【4】禁断の保健室
がらがらっ
「 妖岩くん、ちょっとここは……! 」
部屋には誰もいない。 保健の先生も席をはずしているようである。
ボフッ
妖岩は担いでたあゆみをベットに座らせ、戸棚の中を探りはじめた。
あゆみは落ち着かない様子でソワソワしている。
( なにビクビクしてるのよ、おちつけば怪しまれることないわ。 )
周囲をキョロキョロ見回すあゆみ。 机の棚はきれいに本が整頓されている。
その本の背表紙には“東都大学”“生物と心理”“動物辞典”など、心当たりのある言葉がいくつか見られた。
( 日須持(ひすもち)先生、まだムラマサのこと狙ってるんだよね…… )
その中に、“DIARY”と書かれていたものを見つけた。
( ……(ごくっ)なんか怖いけど、すごく見たい気がする…… )
「 ………! 」
妖岩はバンドエイドを見つけた。
焦っていた妖岩はそれを取ろうとすると、手前に置かれてあった手帳のようなものを床に落としてしまう。
あわてて拾おうとするが、中にはさんであった1枚の写真に目がとまる。
「 ……… 」
「 ……? どうしたの? 」
妖岩の動きが止まったのが気になったあゆみは、妖岩が見ていた手帳を覗きこんだ。
そこに写っていたのは、研究室のような機械仕掛けの部屋で、丸々と太っていた犬が寝ている姿だった。
下には、“サンプル・零式”と書かれており、日付は10年前のものになっている。
「 これって確か“ぜろしき”って読むのよねー、この犬がどうかした………ってまさか! 」
途中でハッと気づいたあゆみは、改めて写真のほうに注目した。
「 まさかこの犬が……ゼロ? 」
こくこくっ
妖岩はうなづいた。
はさんであった手帳のページには、“○月×日、零式・助手が目撃”
“零式資料・ファイルA−12に詳細記載”など、部分的なことが端的に書かれていた。
( ムラマサの言ったとおり、日須持先生とゼロってやっぱり関わりがあったんだ。
しかも日付はごく最近のものだし……それにファイルってなんのことだろう…… )
保健室の中を見回してみるが、ファイル番号が書かれていたものは見当たらなかった。
ぱらぱらっとページをめくっていたあゆみは、その中に大きく書かれていた見覚えのある名前に手がとまった。
そのページには………
『 憎っくきムラマサ! 絶対とっ捕まえて解剖してホルマリン漬け! 』
………2ページ分に渡り、その言葉が大きくなぶり書きされていた。
( うっわー 怒ってる、怒ってるよムラマサ……(汗) )
あゆみが飼っている(あゆみを守っている)白ネズミ・ムラマサが研究所に火を放ったせいで
大学から追放され、小学校の保健医を勤めることになった日須持桐子教授。
そのことを知っている唯一の小学生あゆみは、ムラマサに対する日須持の憎しみを再確認していた。
「 ! 」
妖岩は廊下から何かの気配を感じた。
そしてすばやくあゆみから手帳を奪い、写真をはさみなおして元の位置に戻すと、あゆみをベットの上に座らせる。
あゆみはわけがわからないまま、妖岩のすばやい動きにとまどっていた。
この間、約3秒。 すると―――
がらがらっ
突然扉が開いて、40代後半のメガネをかけた女性、保健医である日須持が中に入ってきた。
日須持が室内を見渡すと、べットの上で背の低い少年が、体操服を着た女生徒の手にバンドエイドをはっていた。
「 どうかしたの? 」
「 あ、て、手をちょっとケガしちゃってー 」
いきなりの日須持登場に焦るあゆみ。
微妙にオドオドしていたあゆみが気になったのか、白衣のポケットに手を入れたまま、つかつかとあゆみに近づき彼女を見下ろした。
あゆみの額に汗が流れる。 そして日須持は、あゆみの手をとると―――
びりっ!
「 はうわっ! 」 「 ………! 」
妖岩にはってもらったばかりのバンドエイドを、思いっきりはがされてしまった!
妖岩は戸惑い、あゆみの目には瞬間的な痛みで涙が浮かんでいた。
「 な、なにするんですか! 」
「 ちゃんと消毒しないとバイキンが入るでしょ、小田切さん。 」
「 えっ!? 」
日須持は、やや冷たい感じでそう言いながら、棚から消毒薬と包帯を取りだしていた。
「 な なんであたしの名前、知ってるんですか? 」
「 なんでって、体操服にあんたのクラスと名前書いてあるじゃない。 」
「 あ…… 」
体育の授業中だったことを忘れていたあゆみ。
彼女は日須持のことを知っているが、日須持にとっては数百人いる生徒の中のひとりにすぎない。
よくよく考えてみれば、あゆみが日須持と会話したのはこれがはじめてだったのだ。
「 手をだして。 」
日須持は消毒薬をガーゼに湿らせると、あゆみの手をとり、血がにじんだ手の平に塗りつけた。
「 いっ! ……しみる〜〜〜! 」
「 ガマンなさい! 」
一喝されたあゆみは、黙って日須持の治療をうける。
日須持は消毒薬を塗ったあと、包帯をぐるぐるっと巻いて手当てを終えた。
「 あの〜これちょっとオーバーじゃ…… 」
傷の割には、包帯は必要以上に巻かれていた。
「 サービスだよ、ったくよけいな仕事増やすんじゃないよ。 」
道具を片付けながらグチを言う日須持。
あゆみと妖岩は、ウワサどおりの人だということを改めて思った。
「 小田切さん、あなた最近白いネズミを見かけたことない? 」
唐突にストライクな質問。 日須持はじっとあゆみを観察している。
「 ( きたきた〜 )―――ねずみって、小さくてチョロチョロしたやつのことですか? 」
「 そうよ、ほかにどんなネズミがいるっていうの? 」
冷静に対応するあゆみ。
クラスメイトから、日須持が生徒に白いネズミ(ムラマサ)のことを聞いてまわっていることは知っていた。
あゆみは自分が聞かれたときのことを考え、前もって用意していた言葉を話していたのだ。
「 知らないです、家でもネズミって見かけたことないですしー、妖岩くん知ってる? 」
ブンブンと首を振る妖岩。
「 あっ、確か生物クラブがハツカネズミ飼っていましたけど、それがどうかしたんですか? 」
「 そのネズミは衛生的にすごく悪いんだよ、病気なんかが移ったら困るだろ? 」
「 そ そうなんですか……( ムラマサが聞いたら怒るだろうなあ〜 ) 」
苦笑するあゆみ。 日須持は自分の机のイスに座った。
「 ……知らなかったらいいの、忘れてちょうだい。 」
「 はあ……( よっし、かわした! ) 」
心の中でガッツポーズをするあゆみ。
「 それじゃああたしたち授業に戻ります。 妖岩くんいこっ! 」
「 小田切さん 」
日須持は保健室を出ようとするあゆみを呼び止めた。
「 なっ なんですか? 」
「 あなた家で生き物何か飼ってる? 」
「 ……ネコを1匹飼ってますけど…… 」
「 そう…… 」
「 ……じゃあ失礼します。 」
あゆみと妖岩は保健室を出て扉を閉めた。
「 ……ネコ、ねえ〜…… 」
日須持はじっと、あゆみが出ていった保健室の扉を眺めて考えていた―――
【5】放課後
せいこう、妖岩、香山はいっしょに帰っていた。
「 妖岩、ムリに僕を持ち上げようとするなよ、小田切さんにケガまでさせてー 」
「 ……… 」
「 ふーん、小田切さんのこと心配してるんだー 」
「 ……なんだよその引っかかる言い方は。 」
「 べっつにー 」
「 ……… 」
ちょっと沈黙。
「 と とにかく、お前や氷雅さんが動いたらロクなことが起きないんだから。 」
「 ……… 」
「 そんな言い方ないでしょ、妖岩くんも伊能くんといっしょにサッカーしたかったのよねー 」
「 ……… 」///ポッ
「 顔を赤くするな! 」
せいこうは妖岩から顔をそむけると………
「 ……明日からは普通にしてればいいんだよ、じゃなきゃ同級生って感じがしないだろ…… 」
じわっ‥
「 ―――! 」
感極まった妖岩は、せいこうの足に抱きついて泣いていた。
せいこうが主従関係としてでなく、あくまでも“友達”として望んでいることに感激したらしい。
こうして、妖岩の編入初日は幕を閉じたのである―――
今までの
コメント:
- 今回は一応妖岩が主役なのですが、一言もしゃべらない主人公とはいかがなものか。
というわけで、もう一回小学生メインの話です。
両作品とも、短編にしては珍しく数話続いていますし、もし続きがあって『乱破S.S.7』『ポケットナイト4』などがあったら、妖岩がクラスメイトに、あゆみが日須持のいる保健室へという展開もあったのではないでしょうか? 今回はその2つの展開をひとつにして、ゼロの話も少し含めたお話にしてみました。 (ヴァージニア)
- 何やら悪巧みをしているらしい氷雅さんが楽しみです。
日須持教授も……相変わらずアレですね。
わたしも以前、「乱破」の短編を書きましたが、妖岩は辛かったですね。
喋らないキャラってのは文章だけになると存在感が薄くなりがちですから。
描写にかなり技術が要ると思います。 (林原悠)
- 必殺技名(?)に臆面もなく自分の名前を冠する丸田町君が何故か印象に残りました。こんな男の子、実際にいますよね(^^;
あと、桜井先生の「コツンしちゃうぞー」にもつい笑ってしまいました。流石にこんな先生はあまりいなさそうですけど(笑)。
そして、本格的に友達への道を歩み始めた妖岩とせいこう君には、某机妖怪の台詞を送りたいです。
…お父さんも、若い頃は乱破絡みで色々と苦労していそうな気がしてきました(ノД`)→大人になればわかる (dry)
- いーやぁーー!! 消毒の前に流水洗浄してぇー!!
>「 えー 伊能がくんのかよー 戦力ダウンじゃねーか。 」
>「 でも妖岩くんが来てくれるんなら、充分カバーできるぜ。 」
子供の世界は残酷やなぁ、と。せいこう君、拗ねないだけ立派です。
しかし日須持先生、ムラマサはともかくとして、ゼロ式(軍属であり機密)をどーにかするとゆー事は軍に喧嘩を売るのと同じだとゆー事に、いつか気づく日は来るのでしょうか?(笑) (黒犬)
- 読んでくださった皆様ありがとうございますm(__)m
日須持教授が保健医だったら、あゆみじゃなくても保健室に行くのためらうかも(汗)
◇林原悠さんへ
「乱破」の短編覚えていますよ♪
いかにして主張させるべきか、動作と周囲の人物の台詞でしか表現できないため、喋らない妖岩は本当に難しいです。
◇dryさんへ
丸田町も桜井先生も、原作ではほぼレギュラーでしたが、この話の中ではゲストキャラに近い存在です。
某机妖怪の有名な台詞は次回も確実に送れるというか、さらりと出演させることもできそうなのですが………
◇黒犬さんへ
水洗いは必須だ!!
>ゼロ式をどーにかするとゆー事は軍に喧嘩を売るのと同じ〜
するどいです、そこがこれからのポイントだったりします。
なにしろゼロのバックにはあの人が……… (ヴァージニア)
- コメントするには遅すぎるかもしれませんが(汗)
面白かったですっ。
キャラがいきいきしていると思いましたっ、特にようがんの姉っ!(笑)
>「サッカー」というのはね、古代アステカ王国で「友情」という意味なのです!
それにやっぱりようがん!(笑)
>妖岩のバックに稲妻が走る!
くすっ、と来てしまいました! 読んでて嬉しくなる話って凄いっ!
>じわっ‥
と、私まできちゃったじゃないですか(笑)
>///ポッ
や、これはあれですか。伏線ですか?せいこーとようがんの主従関係とほかいろいろを越えた以下略。ある意味ただのお友達じゃ終われないわ的な以下略
や、とにかくっ、面白かったんです(笑) (veld)
- ◇veldさんへ
妖岩の過剰な忠誠心を表してみたら、思った以上に“そっち”方面に引っぱられてしまったかも(笑)
でも楽しんでいただけたようでよかったです。
古代アステカ云々の話は、もちろん原作2話めのドッジボールから引用しました。
やりたい放題の妖岩の姉を止められる人って、誰かいるのでしょうか……… (ヴァージニア)
- 妖岩、せいこうと同い年だったのか
姉の言葉を全部信じる妖岩って純粋すぎて良い(笑
怪我から保健室への流れは自然でした。
原作続いてたら有り得そう。 (秋風)
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa