ザ・グレート・展開予測ショー

横島忠夫・修行の日々 4


投稿者名:純米酒
投稿日時:(04/ 6/25)

とある魔界の森の中

大きめのテントの中で、毛布を頭からかぶり自分自身を抱きしめるようにうずくまり、ガタガタと震える竜神の女性と
焦点の定まらない目で虚空を見つめ、なにやらうわ言を呟き怪しく笑う魔族の幼女が正気に戻ったのは
別のテントで一人黙々と作業をこなしていた彼の一言だった


「小竜姫様!パピリオちゃん!横島さんの所属部隊がわかりましたよ!」
通信鬼を片手に、なにやら作業をしていたジークがそう告げると

「本当ですね!で、忠夫さんはどこにいるんですか!?」
「嘘だったら承知しないでちゅよ!!」
正気に戻った小竜姫とパピリオの目は、血走っていたが期待に満ちていた

「お、落ち着いてください。姉上からの情報ですし・・・所属部隊にも確認を取りました
 横島さんは『第9特殊部隊』で訓練生として・・・って二人共もういない!?」

横島に会いたくて仕方ない二人は、横島の居場所を聞きだしたとたんに行動に移っていた
物凄い勢いで遠ざかる二人の背中をみて一人頭を抱えるジーク

「あぁ、デタントが崩壊してしまう・・・」

落ち込むジークをよそに、暴走する二人は一路『第9特殊部隊』に向けて走り出していた



「小竜姫は『第9特殊部隊』がどこにあるかしってるんでちゅか?」
走り出した小竜姫に、とりあえず付いて来たパピリオが聞くと

「これでもデタント派の神族ですよ!魔界軍隊については一通り把握しています!」
自分の今の行動が、デタント崩壊の引き金になることを棚に上げて自慢気に答える小竜姫

下級魔獣を踏み越え、大木を根元から薙ぎ倒し、大岩を神剣で一閃し真っ二つに破壊して目標に向って一直線に爆走する二人
二人の通ったあとには雑草一つ生えない不毛な土地になったとかならなかったとか・・・

「あの部隊はヤバイんです、危険なんです、デンジャラスなんです!
 もはや一刻の猶予もありません、いきますよパピリオ!」

部隊について一通り説明した後、隣に着いてくるパピリオを小脇に抱えると

「え?ちょっ、ちょっと待つでちゅ!」
「超・加・速!!!!」
「にゃぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・」

悲鳴(?)を挙げるパピリオとギンギンに目が血走った小竜姫が、第9特殊部隊の基地に到着するのは時間の問題だった



慣れない超加速中の感覚に、ぐるぐると目を回しへたり込み、身体を休めていたパピリオのもとに
一人で基地のセキュリティを確かめに行った小竜姫が戻ってきた

「おかえりでちゅ。何かわかりまちたか?」
そう言いながら、どこからか取り出したオニギリとウーロン茶を小竜姫に差し出し、
自分はストローの刺さった蜂蜜入りのジュース瓶を手に取る
小竜姫は「ありがとう」と軽く礼を言い、差し出されたウーロン茶で喉を湿らせオニギリを頬張る

「・・・んっ、ふぅ・・・赤外線センサー、地雷原、監視塔にサーチライト、あとはよく解りません・・・
 はむ・・・モグモグ・・・だけど私の超加速の前にはどれも役には立ちません!
 んっ、んっ・・・はぁ・・・もう少しで忠夫さんと会えるのですね、嬉しい!嬉しすぎますわっ!」
オニギリを食べ、ウーロン茶を飲みながら報告し、一人で悦に入ってる小竜姫

「・・・・・・ほっぺにご飯粒付いてまちゅよ、小竜姫・・・」
ストローを咥えジュースを飲んでいたパピリオは、小竜姫の無作法さにに呆れていた



ひと時の休息を終えて。横島忠夫奪還作戦について話し始める

「私が超加速を使って先行します。パピリオ、貴方は私と反対側から侵入してください
 その時はなるべく静かに目立たないようにしてくださいね、私が囮になりますから貴方のマークは甘くなるはずです」

「わかったでちゅ!」
ジュースをちびちびと飲みながら意気揚々と答える

「忠夫さんを見つけたら貴方の眷属で知らせてください、忠夫さんに会えたら文珠で基地内全員の記憶を消去します
 あとは三人で妙神山まで帰ります。大まかな流れはこんな感じですね、戦闘はなるべく避けるようにしましょう
 あくまで忠夫さん奪還が目的です、やむ終えない場合は相手を行動不能にする程度にしてください」

「ラジャーでちゅ♪」
景気付けとばかりにストローを捨て、腰に手を当て胸をそらせて一気にジュースを飲み干す

「いざ!いきますよっ!!!」
「はいでちゅ!!!」
やる気に満ちたパピリオの手には『ザル』と『紐付きの棒』と『ボ○ィコンVS女子○生』と書かれたビデオがあった


「・・・・・・・・・・・パピリオ、念のために聞きますが
 その手に持っている『ザル』と『紐付きの棒』と『いかがわしいびでおてぇぷ』はなんですか!?」

半眼で睨みつける小竜姫に得意満面の笑みで答えるパピリオ

「これで罠を作りまちゅ!これならポチも必ず捕まえれるでちゅ!!」

小竜姫の額に青筋が浮かび上がると、硬く握られた拳がパピリオの後頭部に炸裂していた
地面に突っ伏してピクピクと震えているパピリオを尻目に、地面に散らばった『罠用物資』を回収、廃棄する小竜姫
『いかがわしいびでおてぇぷ』だけは跡形も無く燃やされ、灰すらも残らなかった


「私たちに失敗は許されません!さぁ、今度こそいきますよ!」
「はいでちゅ・・・」
涙目でたんこぶをさすりながら基地の裏側へ回るパピリオを見送り
超加速を発動させ、基地に突っ込む

横島忠夫奪還作戦が始まってしまった・・・





「なに!?侵入者だとぉ!!冗談にしては性質が悪いぞ、ベスパ!」
昼食のあと自室で銃の手入れをしていたワルキューレが叫ぶ

「冗談なんか言うもんか、現にスクランブルで出たチームはインターセプトに失敗して、気絶させられてるんだよ!」
自分のロッカーから装備を取り出し、素早く身に着ける

「クッ・・・侵入者はかなり強いようだな、セキュリティは何故働かなかった!」
つい今しがた手入れをしていた銃に弾を込めながらベスパと同じように装備を整える

横島も自室に駆け込んできた、軽く肩で息をしているものの、すぐさま自分のロッカーから銃を取り出す

「クソッ、まさか訓練期間中に実戦にあたるとはな!」
慣れない手つきで銃に弾を込めると、ホルスターに収めながらひとりごちる

「まぁ、ある意味幸運かもしれんぞ横島。百日の訓練よりも一日の実戦の方が、学ぶ事が多いからな」
ワルキューレが横島の準備を手伝いながら冷静に言い放つ
そこには完全に軍人としてのワルキューレが居た

「準備はいいな!いくぞ!!」
ワルキューレの号令とともに三人は駆け出す



銃声に混じり、小型通信鬼から戦況が逐一報告される

「侵入者は二名!十時の方向から一人、四時の方向から一人です!」
「侵入者、ロストしました原因は不明です」
「司令室のコンピュータが使い物にならない!お互いに連絡を交し合って状況の把握を最優先にしろ!!」

報告を聞いていたワルキューレとベスパは信じられないといった表情で顔を見合わせる

「バカな!一度補足した敵をロストするなんて・・・」
「落ち着けベスパ、司令室の機械が正常に起動しないのならジャミングされたかハッキングされているのだろう
 或いは目標が超高速で動いたのか・・・」

そこまで言うと二人は何か思い当たる事でもあるのか、足を止めて黙り込んでしまう

(そーいやパピリオの眷属って戦闘能力は高くないけど、色々と器用だったな・・・)
(まさか小竜姫の超加速ではあるまいな・・・・・・ジークに情報を漏らしたのがまずかったか?)

そんな二人を見て不審に思った横島も足を止める

「どうしたんだ?二人も?」

「「ちょっと確認する事がある」」

二人が同時に通信鬼に呼びかける

「司令室!蝶型の眷属を見た奴はいないか!?」
「術による時間への干渉が無かったか確認してくれ!!」


「こちら司令室、蝶型の眷属そのものは確認出来ていないが、魔力を帯びた鱗粉の確認はできた
 蝶型の眷属が司令室に居た可能性は高い!」
「メドーサとよく似た時間への干渉が見受けられました、超加速だと推測されます!」

程なくして返ってきた答えは二人の『嫌な予感』を肯定するのに十分過ぎた

「「あのバカは何を考えてるんだ!!!!!」」

呆れと怒りのない交ぜになった大声に、横島は思わず後ずさりする

「もしかして、侵入者に心あたりが・・・」

恐る恐る二人に尋ねる横島を見るて、複雑な顔をする二人

「はぁ・・・侵入者の狙いはお前だ横島」
「あんたの嫁さんとうちの妹が突っ込んで来たみたいだね・・・」
ワルキューレとベスパの言葉に、横島は凍りつく

「いくぞ、相手の正体が解った以上、いくらでも対策は立てられる」
固まったままの横島を引きずりながらワルキューレとベスパは『とある場所』に向っていた




一方、強襲した二人は
「くぅぅ〜〜〜〜見つからないでちゅ!やっぱり罠を使った方が絶対に早かったでちゅ!」
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・魔界で超加速はやっぱり辛いですね・・・
 でもこれくらい忠夫さんへの愛で乗り越えて見せます!!!」

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