ザ・グレート・展開予測ショー

百貨店パーティー☆3F


投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(04/ 6/21)


【1】5年2組

乱破の氷雅と妖岩がつかえる、メガネをかけた真面目っぽい少年、伊能せいこう。
背丈3頭身に満たない銀髪の少年、妖岩。
そして髪を三つ編みにし耳元で巻いている女の子、香山夏子。
昼休み、彼らが通う小学校の教室にて、この3人がおしゃべりをしていたときのこと―――

「 くっそ〜あの保健医のババア荒っぽい治療しやがって! 」

教室に入ってきたのは、乱破に登場した体格のいい少年、【丸太町】。
ジャイ●ン的性格で 昔はせいこうをいじめていたようだが、今はいい感じの友達である。

「 伊能聞いてくれよ〜、サッカーでひざすりむいて保健室に行ったらよー、
  あのババア、すりむいたトコをいきなり赤チンでグリグリやって
  しみるって言ったら 「 黙らんかクソガキ!男だろっ! 」 って言うんだぜ! 」

「 ! 」ピクッ!

せいこうに話しかける丸太町。 だがなぜか、せいこうの後ろの席に座っている少女が反応した。

「 ……それが? 」
「 仮にも先生がクソガキはねえだろ!? あのババア、なーんか態度が悪いんだよなー。 」
「 あ、それ私も感じたー! 」

近くで話を聞いていた、同じクラスの女子達が話に加わってきた。

「 あの先生ちょっと怖いのよねえ〜保健室行きづらいし。 」
「 どうみても子供好きそうには見えないのに、なんで校医になったんだろ? 」
「 たまにワケのわからないこと聞いてくるしねー。 」
「 あ、それってもしかして、しゃべるネズミ見なかったかってこと? 」
「 あ、それ私も聞かれたー! 」

ピクピクッ!
せいこうの後ろの席に座っている少女がまたも反応した。 なぜか彼女は冷汗をながしている。

「 しゃべるネズミねえ〜…… しゃべる犬なら知ってるんだけどねー。 」

香山がそう言うと、丸太町が聞き返してきた。

「 しゃべる犬ってなんだ? 」
「 うん、ゼロっていうコーギー犬なんだけど、軍用のサイボーグ犬で氷雅さんが――― 」
「 ちょっとちょっと香山! 」

香山の話を途止めるせいこう。 そしてせいこうは香山の腕をとると―――

「 ちょっとこい! 」
「 なによ伊能くん……! 」
「 …………! 」

香山をひっぱり、教室から出ていった。 妖岩も後を追う。
しばらくあ然としていたクラスの女の子たちは……

「 最近、伊能くんやけに積極的ねー 香山さんの手、ひっぱっていったわよ。 」
「 妖岩くんたちが護衛についてから、精神面にタフになった気がしない? 」
「 まーあの姉弟といっしょに生活してたらそりゃねー…… 」
「 ………… 」

がたっ
彼女たちがそんな話をしている中、せいこうの後ろの席に座っていた少女も席を立ち、教室を出ていった。



【2】秘密

―――屋上へ繋がる、ひとけのない階段にて。
香山は少し顔を赤くしながら、せいこうの腕を振り払った。

「 なによ伊能くん! 」
「 ゼロのこと話しちゃだめだって千鶴さんに言われてるだろ! 」

香山は千鶴に、ゼロのことを黙っておくようお願いされていたのを思いだした。

「 あ……でも忍者がいるぐらいなんだし、しゃべる動物のことぐらい…… 」
「 バカ、氷雅さんや妖岩は、護衛になった日からあっという間に学校中に知れ渡っちゃったし
  いつのまにか公認になってるけど、ゼロは防衛隊が秘密にしているぐらいなんだぞ。
  下手に話が広まったらゼロが街中を歩けなくなるかもしれないし、飼い主の千鶴さんにも迷惑がかかるんだぞ! 」
「 あ、そうか…… 」
「 まったく気をつけろよ、香山は口が軽いんだから! 」

むかっ… せいこうの言いかたに、幾分冷たさを感じた香山は……

「 なによ! そんなに怒鳴らなくたっていいじゃない! 」
「 なっ! 」
「 私だってしゃべっていい事と悪いことの区別ぐらいつくわよ!
  さっきはホントはちょっと忘れてただけなんだから! 」
「 ぎゃ、逆ギレかよ! 悪いのはそっちだろ! 」
「 そーかもしれないけど、伊能くんに怒鳴られる筋合いはないわよ! 」
カチン!
「 あーそうかい! じゃあ勝手にしろよ! なんなんだよまったく…… 」

ぶつぶつ文句を言いながら階段を下りてくせいこう。
2人の間をオロオロしていた妖岩も、せいこうの後を追う。 そして残された香山は……


「 伊能くんのバカ…… 」


少し泣いていた……



【3】放課後

せいこうがランドセルに荷物を入れて帰る準備をしていたときのこと―――

ちょんちょん
「 伊能くん 」
「 へ? 」

肩をたたいて声をかけたのは、彼の後ろの席に座る、黒髪でセミロングの女の子、【小田切あゆみ】であった。

「 なに、小田切さん? 」
「 よかったら今日、途中までいっしょに帰らない? 話したいことがあるんだ。 」
「 い、いいけど…… 」
「 ! 」

その声は香山にも聞こえていた。



そのあとランドセルを背負ったせいこうとあゆみ、そして妖岩の3人は一緒に帰っていた。
後ろからは、コソコソ電柱の影に隠れながら後を追う、香山の姿もあったり……

じ〜〜〜っ
( 学級委員の小田切さんが伊能くんを誘うなんて、いったいどーいうわけ!? )

なぜかあゆみに、敵対心の感情を抱く香山。

( なんで小田切さんが…… )

せいこうは幾分ドキドキしていた。
彼が香山以外の同級生の女の子といっしょに帰ることは無きに等しい。
彼女とは席が近かったが、特別親しい友人というわけではなく、単なるクラスメイトという程度のつきあいであった。
その彼女がはじめていっしょに帰ろうと誘ってくれたのである。

「 伊能くん。 」
「 え? なに!? 」

( ひょっとしてこれは愛の告白!? ) などと妄想をかきたてるせいこうであったが……

「 伊能くん、今日香山さんとケンカしてたでしょ。 」
「 え? 」

それはせいこうにとって、予想してなかった言葉だった。

「 だめだよ、女の子にはやさしくしなきゃ。 香山さん泣いてたよ。 」
「 ( 香山が泣いてた? )―――ひょっとしてー、見てた? 」
「 うん、ごめんね。 」
「 じゃあゼロのことは…… 」
「 あたし信じるよ。 」

あゆみは立ち止まって、せいこうを見た。

「 え? 」
「 しゃべる動物……実際いるんでしょ。 政府の生物兵器、ゼロって犬は。
  香山さんが口をすべらせていた、サイボーグ犬っていうのも多分本当のことよね。 」
「 あ〜、そ、それは…… 」

オロオロ戸惑うせいこう。 そんなせいこうを見て、あゆみは軽くほほえむ。

「 何も言わなくていいよ、あたし誰にも言わないから。 」
「 そ、そう…… 」

ほっとするせいこう。 するとあゆみは……

「 あ、ひとつだけ質問。 保健医の【日須持(ひすもち)】先生のことは知ってるの? 」
「 は? なにを? 」

せいこうは、あゆみの質問の意図がよくわからなかった。 

「 あ、知らなかったらいいの! それじゃああたしんち、こっちだから。 」
「 え? もう!? 」

あゆみがちらっと後ろに目をやると、香山はスッと電柱に隠れる。

「 じゃ 香山さんと仲良くねー。 伊能くーん、それじゃあまた明日ー! 」

あゆみは笑顔で手を振りながら、走っていってしまった。

「 な なんだったんだ……? 」
「 ………… 」



せいこうが半ばボーゼンとしている所に、ランドセルを背負った香山が、せいこうと目を合わせないようにつかつかと歩いてきた。

「 香山……! 」

昼休みのあとからずっと香山と目を合わせなかったせいこうは、この時はじめてまともに香山の顔を見た。
すると香山の目元が、少し赤くなっているのに気づく。
そして香山がせいこうに近づいてきたとき―――

「 ……なによ。 帰る方向いっしょなんだから仕方ないじゃない。 」
「 まだ何も言ってないぞ。(汗) 」
「 よかったじゃない、小田切さんに誘われていっしょに帰れて。
  彼女人望厚いし学級委員だし、かわいいし料理できるし、運動神経もいいし……… 」

言えば言うほど、どんどん落ち込んでしまう香山。 するとせいこうは―――

「 さっきは悪かったよ。 」
「 ……え? 」
「 僕も言いすぎた……ごめん。 」

せいこうは照れくさそうに言う。 香山は少し、戸惑うが……

「 あたしのほうこそ……今度から気をつける。 」

香山もうつむいて、照れくさそうに言った。

「 ……帰ろっか。 」
「 ……うん。 」

「 〜♪ 」

うれしそうな妖岩。


こうしていっしょに帰宅する、せいこうと香山、そして妖岩。
あゆみはその3人が並んで帰る姿を、離れた所からこっそり見届けていた。


「 ……うまくいったみたいね。 恋のキューピット、これにて任務完了ね♪ 」
がさごそっ
《 ハ! なーにが恋のキューピットだよ! 》

あゆみのスカートのポケットから、ひょこっと現れたのは、額に▼(逆三角)の赤マークが付いている白いネズミ【ムラマサ】。
“彼”がしゃべっていた。

《 だいたいなんで、ゼロとかいう犬のことについてもっと聞かなかったんだよ。
  俺と同種の奴かもしれねえのによ。 》

「 だってー 伊能くんたちも秘密にしたがってることだし、無理に聞くのもー 」

《 あまいなあ〜あゆみは。
  いいか、俺はもともと政府の生物兵器として造られたスーパーマウスだ。
  日須持は政府から開発援助をうけて俺たちの研究をやっていた。
  てことはその犬、サイボーグ化されたあと、日須持に言語処置を受けたかもしくは――― 》

「 そんなこと詮索してどーするのよ。
  あんたは日須持先生に見つからなければいいだけのことでしょ? 」

《 だから俺とゼロって犬が組めば、日須持の刺客からカンタンに身を守れるだろ。
  あわよくば日須持ごと、まるごとどかーんと! 》

「 コラコラ、何危ないこと考えてんのよ!
  ……あっ、スーパーのお肉の特売タイムが終わっちゃう! 急がないと! 」

《 おいこらあゆみっ! 人の話を聞けっ!! 》



ところで前回……

「 うっきゃ――――――っ!!!!!(泣) 」

中島はゼロにくわえられ、町の上空で8の字に飛び回わされていた。
実は、その光景を偶然にも、とある民家のベランダから見ていた男がいた。

「 なんだあれはー 」

背が低く、ちょっと小太りのその男。
年は20代とも30代とも思われるが、グルグルメガネをかけているせいで実際の所、年齢不詳である。
その男、気になって双眼鏡で覗いてみると―――

「 あれはまさか、教授の実験体動物、生物兵器の零式(ゼロ)!?
  あいつがなんでこの町に……こうしちゃおれん! 教授に報告だっ! 」
  
男は家の中へと入っていった。



【4】日須持邸

「 日須持教授―――! 」
「 なんだい騒々しい! はったおすよ! 」

すでにピリピリして苛立っているこのおばさ……もといこの女性は、せいこうたちの学校の保健医の、【日須持 桐子(きりこ)】女史。

彼女はかつて東都大学生物研究所の所長であり、ひそかに政府に援助を受けながら、生物兵器の開発に取り組んでいた。
……しかし、実験体のネズミ・ムラマサによって、研究所を丸ごと燃やされてしまう。
これを理由に政府は援助を打ち切り、大学も彼女とその助手の男を追放したのである。
そしてせいこうたちの小学校に、ムラマサの飼い主がいることをつきとめた彼女は、2学期の終業式から小学校の保健医として着任したのである。

「 いま空に零式が! 」
ぴくっ‥
「 零式……!? 」

―――ベランダに出た日須持教授は双眼鏡で覗いてみたが、それらしきものは飛んでいなかった。

「 どこにもいないじゃないか! 」
「 いや……さっきまでホントに飛んでたんですよ! 」
「 ………… 」

サイボーグ犬として奇跡的に蘇った生物兵器・零式。
ゼロは日須持の研究所と、別の機械工学系の研究機関と共同でつくりあげたものだった。
と同時に、開発最初期の生物兵器として、人間と言葉を話せるようになった最初の実験体でもある。
そのデータをもとに、彼女は生身の動物に知能と言葉を与えることに成功。
……しかし数年前に政府に引き取られ、それ以来ゼロには会ってなかったのだが……

「 零式を探してきなさい。 」
「 え? 」
「 とっとと探してこいっつってんだよ! あんた私の助手だろっ!! 」
ドガッ
「 うわっ!! 」

助手の男を蹴りあげる日須持。

ふっふっふ‥‥
「 あの忌まわしきムラマサを捕えるには零式はうってつけなのよ!
  零式には数々の高性能の兵器が内蔵されている。 利用しない手はないわ! 」

あぶなく笑う日須持を見て、助手は―――

( たかがネズミ1匹捕えるぐらいで……いい加減あきらめてくれないかなあ〜 )
ピクッ‥
「 今、何を考えていた!? え!? 言ってみなさい!! 」
「 か 考えてません、何も考えてませんっ!! 」

目をギラギラさせ、助手の男をにらむ日須持。
彼女はとても50歳になろうかという女性には思えないぐらいの、闘志と執念を燃やしていた。

「 待ってなさいムラマサ〜、必ず見つけだして、解剖してホルマリン風呂漬けにしてやるわ! 」


ゼロの存在を知ったムラサメとあゆみ。
零式の存在に気づいた日須持教授。

日須持とムラマサの対決に、ゼロや氷雅が参戦する日もそう遠くないかもしれない………
 

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