ザ・グレート・展開予測ショー

横島忠夫・修行の日々 2


投稿者名:純米酒
投稿日時:(04/ 6/21)

小奇麗な一室に横島とベスパが呼び出されたのは
装備課で受け取った荷物を横島に宛がわれたロッカーに入れようとしていた時だった

早足で『隊長室』と書かれたドアの前まで来ると
ベスパは軽くノックをした後、入室の許可を求める

「中尉 ベスパ、到着しました」

それだけをドアの向こうに居る人物に告げる
すると「入りたまえ」と静かに返答があった

「緊張しなくてもいいよ義兄さん」

すぐ横にいる横島にウィンク交じりに告げると、ドアを開けて部屋に入る

そんなベスパの後ろを緊張した横島がついてくる

部屋の中には大きな執務机につく女性魔族とその側らで、直立不動のワルキューレの二人がいた

ベスパが机の前で敬礼した後、ワルキューレ同様、直立不動の姿勢になる
横島はベスパの行動を見よう見真似で、ぎこちなく再現する

(緊張するなっちゅ〜方が無理だろうがっ!)

顔中に汗を浮かべ、恨みがましい視線をベスパ、ワルキューレの二人に向ける

横島の視線に気づいているのかいないのか、二人は横島に笑顔を向ける

「まぁ、楽にしたまえ。私の名前はカーリー、この部隊の隊長をしてる。君が訓練生の『横島忠夫』クンだね?
 君はこの部隊についてどの程度しっているかね?」

手に持った書類と、緊張の余り出来の悪いロボットのようにぎこちない動きの横島を見比べながら質問する
その言葉は軍隊のそれらしく簡潔であったが、声色は気安い物があった

「あ、えーと・・・戦闘能力の高い人の集まりで、危険な任務が優先的に回されて来るけれど
 デタントの影響で昇進の為の訓練施設みたいになってる・・・って事ぐらいは・・・・・・」

声色に気安さを感じ少し落ち着きを取り戻した横島が、ワルキューレの説明を思い返す

「ふむ、おおむね把握しているようだな。そうなのだ、神・魔族の両方の最高指導者の意向で
 我々は『仲良く喧嘩』と言う方針の元で活動している。しかしこの決定を良ししない派閥もいる
 敵となりうる奴等はそいつ等だが・・・今は殆どいない。かといって無視するわけにもいかんのだ。
 私が率いる『第9特殊部隊』通称アマゾネス部隊はそういったやからに対しての『抑止力』としても存在
 している事を一応理解しておいてくれたまえ」

そういって机の隅からヒュミドールを手元に寄せて葉巻を取り出す

「君も知っての通り、身体能力・戦闘技術が第一にこの部隊に求められる。
 報告書によると君の戦闘技術はもちろん、身体能力もこの部隊に所属するのに十分過ぎる
 そこで・・・君の主な訓練は銃火器の取り扱いの基本と、三人一組のチームでの演習になる
 チームのメンバーは、そこにいるワルキューレ大尉、ベスパ中尉、そして君の三人だ
 因みに、リーダーの大尉は指導教官も兼ねているから一応上官ということになる」

葉巻に火をくゆらせながらすました顔で言葉を切る

「解りました、よろしくお願いします」

これからの訓練に思いをはせ、表情を引き締めて答える横島
そんな横島を見て、カーリーは無邪気な子供のように微笑む

「あーそれからチームのメンバーは寝食を共にすることになる。24時間いつでもどこでも一緒だ、まぁ軍隊なら当然だな」
声色もからかうように砕け、面白そうに告げる

衝撃の告白を受けた横島は一気に慌てだす

「んなっ!ちょっと待ってください!俺にプライバシーはないんすか?」

その疑問には、机の側で控えていたワルキューレが答える

「軍隊にプライバシーというものは基本的に存在しない。上官は部下についての全てを知っている必要が有るからな。
 なぁに私達とおまえの仲ではないか、今更恥ずかしがる事も無いだろう」

さらにベスパが追い討ちをかける

「そーそー、気心知れてる方がやりやすいじゃない。
 それに、他の隊員だと義兄さんが迫られっぱなしで、とてもじゃないけど訓練してる暇がないよ」

「迫られるってなんじゃい!?女はともかく、男に迫られてもうれしくねーぞ!」
混乱の余り本音が出てしまう横島に、最高の笑顔でカーリーがとどめを刺す

「あー・・・この部隊の通称が『アマゾネス部隊』とさっき言ったな?
 この部隊の隊員は女性しか居ないのが現状だ。つまり男性隊員は横島クン、君しかいないんだよ。
 なぁに、一夫多妻は神・魔族ともに当たり前の事だ。君がここで『ナニ』をしようとも問題は全く無い!
 それに『軍事機密』という名の最終兵器がある、家族にバレる心配もしなくて良い」

ショックを受けている横島を、葉巻をふかしながら面白そうに眺めるカーリーはいじめっ子そのものだった
ベスパどころかワルキューレまで微笑みながら横島を見ている

そこには軍人ではなく悪女が三人いるだけだった

(小竜姫、蛍・・・俺はだめかもしれん)



かくして、横島忠夫の最も辛い(?)修行が始まった













「妻が夫の側に居るのは当たり前のことです!デタント?そんなものは『夫婦愛』の前には無意味な物です!」
「魔族が魔界に来ちゃいけない理由なんてないでちゅ!ポチの弟子で義妹のわたちが魔界に来るのは当然のことでちゅ!」

「いやーーーーーーー!!!おうち(妙神山)にかえるーーーーーーーーー!!!」


竜神の女性と幼い魔族の女の子にグルグルに縛られ、文字通り引きずられている哀れな魔族の絶叫は
誰の耳に届かなかった

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