ザ・グレート・展開予測ショー

横島忠夫・修行の日々 1


投稿者名:純米酒
投稿日時:(04/ 6/19)

はじめに
この話は(魔王と戦士〜回想録〜・妙神山の平凡な一日・空白の半年)の三話
で補足仕切れなかった「約160年間の修行期間」が題材です
上記の三話を読んでから、この話を読んでいただけると幸いです
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「ヤダヤダヤダーーーーーーーーーー!!
 忠夫さん行っちゃヤダーーーーーー!!」

「イヤでちゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

「あーっもう!往生際がわるいっ!この期に及んでダダこねるんじゃないっ!」

仰向けに倒れこんで手足をみっともなく振り回し、目には涙を浮かべて子供のようにダダをこねているのは
音に聞こえし神剣の達人・小竜姫とその弟子・パピリオだった

因みにダダをこねている二人を叱っているのは、横島と小竜姫の一人娘の蛍である

当の横島と両隣にいるワルキューレ、ベスパ達は目の前の光景に呆れるばかりである
ジーク、聖天大聖老師の二人は最初から見えないフリをしている

「ヨコシマ・・・お前ちゃんと説得したと言ってなかったか?」

「あ、いや・・・きちんと説得したんだけど・・・なんででしょう?」

「我が妹ながら情けない・・・はぁ・・・・・・」

小竜姫の行動が信じられず、冷や汗を浮かべるワルキューレ
妻とパピリオの行動に複雑な気分の横島
すでに100年は経過しているというのに、未だに成長の見られない妹に頭を抱えるベスパ


果たして小竜姫とパピリオは何を嫌がっているのだろうか
話は一ヶ月前にさかのぼる

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

妙神山の生活スペースの一角
ちゃぶ台を囲んでなにやら話しこんでいる様子である


「えぇっ!忠夫さんが魔界の軍隊で修行!?」
小竜姫の驚きの声が部屋一杯に響く、余りの衝撃に手に取った茶菓子を食べるでもなく持て余している

「あ、いや。魔界側からそういう案が出ているんですよ」
書類を広げながらジークが慌てた様子で付け足す

「面白そうではないか。横島がやる気ならばワシは止めん」
手にはしっかりとコントローラーを握り、TV画面から顔をそらさず老師はこともなげに言い放つ

「で、でも・・・管理人の仕事はどうするんですか?」

小竜姫の疑問に答えたのは意外な事に蛍だった

「ママと私で分担すればいいじゃない。いざとなったら老師もいるし、
 それでもたりなかったらパピちゃんとジークのおじさんに手伝ってもらえば問題ないでしょ?」

「お、おじさん・・・」「わたしは手伝わないでちゅよ」という呟きを無視して蛍は続ける

「パパが強くなりたいって言うんなら私は賛成よ。軍隊で訓練なんて滅多に無いチャンスじゃない」
そういってお茶を手に取り、すました顔で飲み干す

横島はこの100年間、老師と小竜姫、時には大竜姫を相手に霊力の強化やコントロール等
また剣術、体術などの武術。そして知識面では呪術や召喚術、式神について等、ありとあらゆるオカルトの知識を詰め込み
妙神山の管理人として相応しい実力を手に入れていた

だが、組織の中でどう行動するか、また部下や仲間との連携等も除霊作業には必要な事を痛いほど理解している横島は、やる気に満ちていた

「そうッスね・・・ただ強くなるだけならこのままでもいいかもしれないけど・・・
 軍隊っていう環境でしか学べない事もあるし・・・やってみたいッス」

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そう決心したのが一ヶ月前
訓練期間中、離れるのがイヤだと猛反対していた小竜姫とパピリオを、じっくりと時間をかけて説得したはずが・・・

「ヤダッて言ったらヤァーダー!絶対にヤダーーーー!!」

「イヤでちゅイヤでちゅイヤでちゅぅ〜〜〜〜〜〜〜!」

今現在目の前でジタバタと暴れるダダッ子と化している

「まったく・・・今生の別れでもあるまいに・・・」
そう言うと、ダダをこねる二人に近づき首筋に手を当てる蛍
「おとなしくしなさい!!」

その一言を最後に辺りに静寂が戻る

今まで大騒ぎしていた二人がぐったりと肢体を投げ出している

「ゴメンねパパ、あとで私からきっちり説明しておくから・・・」

「いや謝るのはこっちの方さ、面倒を押し付けてすまないな。蛍は良い子だなぁ・・・」
そういって娘を抱きしめて頬に軽く口付ける

「パパ、頑張ってね。強くなって帰ってこないと、承知しないゾ♪」
娘も愛する父親の頬に口付けを返す

「じゃぁな、頑張ってこいよ小僧」
「横島さん、姉上、いえ・・・ワルキューレ大尉。お元気で、また会いましょう」

「挨拶は済んだか?では行くとしよう!」


右腕をワルキューレが、左腕をベスパが抱きかかえるようにして横島と共に魔界へと転移する

「さて・・・この二人どうしよっか?」

「・・・気が付いたら一騒動はありますねぇ・・・」

「まぁ成る様にしか成らんじゃろ、とりあえずそれぞれの部屋に放り込んでおけ。
 それよりも腹が減ったワイ・・・昼飯は何じゃ蛍?」

部屋に戻る三人と引きずられていく二人





『魔界軍 第9特殊部隊』と書かれた門の前に三人が到着すると、ワルキューレが部隊の詳細の説明を始める

「この部隊は個人の戦闘能力が抜きんでている者の集まりだ。主な任務は護衛、強襲、少数による陽動等
 危険度の高い任務が多い。とは言っても、デタントの流れでそのような任務はほぼなくなってきている。
 今では尉官、佐官への昇進のための部隊と言っても良い」

「へぇ〜。だから俺みたいなやつでも訓練に参加できたりするんすね」

「そのとおりだ。平和で何よりなんだが・・・緊急の事態になれば訓練生も作戦に参加する事になる
 その事も頭の隅に入れておいてくれ。
 では私は隊長に報告に行ってくる。ベスパ中尉は訓練生・横島忠夫に装備を支給した後、基地内部の案内を」

「イエス・サー!」

(おぉ・・・急に軍隊っぽい雰囲気に・・・)
二人のやり取りに感動している横島

そんな横島に背を向け一人基地の奥に進むワルキューレと敬礼したまま見送るベスパ

しばらくして、ワルキューレの姿が見えなくなると

「じゃぁいこっか、義兄さん」

急に砕けた態度になる

「ちょっ、ちょっとまてー!!さっきのはなんだったんじゃー!つーか『義兄さん』ってなんじゃー!?」

態度が豹変したベスパにさっきまでの感動も吹っ飛ぶ

「そんな細かい事はいーから行こう♪色々と聞きたい事もあるし」

そう言うと、横島の腕をつかみ強引に歩き出し引きずるように横島と基地へと入ってゆく


装備課でトランクと大きめのショルダーバッグを受け取り、基地内部をあれこれと説明しながら寄宿舎へ向って歩いてる最中
急にベスパが声を潜めて横島に話しかけてきた

「ねぇ・・・パピリオと小竜姫を黙らせた、義兄さんの娘のアレってやっぱり・・・」

「ん?ああ、ルシオラのやってた奴と同じだと思う、幻術も使えるしな」

「ふぅん・・・姉さんの転生は成功したって言う事かな?」

「どっちだっていいさ、俺にとっては可愛い娘なんだ」

「へぇ、意外と親ばかなんだね」

「親ばかで悪いか?・・・今頃なにやってるのかなぁ・・・」



======妙神山=======

居間でお茶を飲んで寛ぐ蛍とジーク
部屋に引きこもって延々とTVゲームに没頭する老師
そして横島が居ない寂しさで、スネてやる気が出ずに居る小竜姫とパピリオ

小竜姫とパピリオは広い居間の端から端まで寝っ転がってゴロゴロと移動していた

「最近は修行者が減っていますねぇ・・・どうしてですかねぇ。ジークさん何か知ってます?」

ゴロゴロゴロゴロ・・・・・・・・・

「うーん・・・懸賞金がかけられるような強い悪魔とかが少なくなってきた所為ですかね」

ゴロゴロゴロゴロ・・・・・・・・・

二人はまさに全身を使ってやる気の無さを示していた

ゲームに一区切りがついたのか、老師が居間に戻ってくる

「なんじゃ・・・まだスネとるのか」

呆れかえった様子で、ゴロゴロと転がり続ける二人を見ている

「放っておきましょう老師。スネたい人はいつまでもスネさせておけばいいんです」
羊羹を一口大に切り分けて口に運ぶ蛍

「蛍ちゃん・・・それってちょっとひどいような・・・。お二人とも元気出してください、ねっ?」
冷めたお茶を一息で飲み干し、何とか二人を元気付けようとするジーク

「ふむ・・・蛍の言う事ももっともか・・・まぁいい。
 ワシは風呂に入ってくる。蛍、後で酒を持ってきてくれ。越○寒梅があったじゃろう、熱めに燗つけてな」

しばらく転がっている二人を見ていたものの、重傷と判断した老師は風呂場へと向う

「はーい」
蛍は返事と共に台所に向う

こんなやりとりの間も小竜姫、パピリオの二人はゴロゴロと転がっていた



「二人ともそろそろ機嫌直してください。僕に出来る事だったら何でもしますから・・・」

スネている二人を何とか元気付けようとジークが声をかけた途端

「本当ですか?」
「何でもしてくれるんでちゅか?」

いきなり瞳に『やる気』という輝きが戻ってくる

そんな二人を見てジークは心底後悔した

(僕はとんでもない事をいってしまったのかも・・・・)



数分後・・・

蛍が温泉に浸かっている老師に酒を届けたあと、居間に戻ってきた時には
三人の姿は妙神山のどこにも見当たらなくなっていた

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