ザ・グレート・展開予測ショー

空白の半年〜駆け落ち?愛の逃避行編〜


投稿者名:純米酒
投稿日時:(04/ 6/15)

愛の逃避行(?)の真っ最中の二人はとある建物の門前にいた

「・・・な、なんすか?この馬鹿でかい門は?」
横島は驚き混じりの声で、自分の腕に抱きつく小竜姫に尋ねる
「ここは竜神族を納める竜神王の城ですよ。ここなら絶対に安全です!さぁ入りましょう」
横島にぴったりと体を寄せながら、笑顔で答える小竜姫

門に向って歩こうとしたその時、重々しく開いた門扉の影から人影があらわれた
小竜姫と同じ神剣を脇に携えた妙齢の女性がこちらを見ていた

「なんだ、誰かと思ったら小竜姫ではないか」

「姉上、おひさしぶりです「ずっと前から愛していました」・・・って、何やってるんですかぁ!!」
姉の手を取り、いきなりナンパをする横島に小竜姫は拳骨で突っ込みをいれる

当のナンパされた側はというと、二人のやり取りを可笑しそうにみている

(小竜姫も変わったのう・・・それもこの男の影響か・・・)

小竜姫にド突かれ、頭から流血しても自分の手を離さない男をみると自然と笑みがこぼれる

「ふむ・・・ヒャクメの報告どおりの人物だな」

「いきなりナンパするなんていい度胸してますね、横島さん・・・」
「すんません、ほんの挨拶みたいなものですから。ねっねっ?カンベンしてくださいよ小竜姫さまぁー」

「あー、夫婦漫才はその辺にしてもらえぬか?竜神王にお目通りのあとゆっくりと続きをやってくれぬか」

姉の言葉に反応し、横島に対する不器用な愛情表現を止める小竜姫

「ハッ・・・すいません姉上。私ったら・・・」
真っ赤に染まった頬に手を当てて、身をくねらせる小竜姫
そんな妹の余りに激しい変わりっぷりを見て冷や汗をながす
(しょ、小竜姫もずいぶんと変わったのう・・・)

「ところで小竜姫様、あの美しい女性は誰ですか?」
小竜姫に尋ねるものの、『あっちの世界』へ行ってしまっている小竜姫から答えはもらえなかった

「そういえば自己紹介がまだであったな、小竜姫の姉にして竜神王近衛兵隊の長を務める大竜姫と申す、よろしくな横島殿」

「あ、はじめまして大竜姫さま、いやーそれにしてもお美しい・・・」

「さて、いいかげんそろそろお目通りせねばいかんな。案内しよう、ついてくるがよい」

「チクショー、どーせ俺なんかーー」

あっさりかとわされた横島が門に頭を打ちつけながら絶叫する
横島の魂の叫びを無視し、大竜姫が二人を城に招き入れると門扉はゆっくりと閉まった



思わずキョロキョロと周りを見渡す横島
自分がこの場所に居る事が場違いなのではないかと、あらためて思い知らされる

「ふふ♪緊張してるんですか、横島さん?」
見方によっては挙動不審者、または田舎から上京したばかりのおのぼりさんといったふうの横島に話しかける小竜姫

しかし横島は一切緊張等していなかった

建物の造りに戸惑っていたのである

(な、なんじゃこら・・・竜神族のセンスが全くわからん!妙神山は『銭湯』だったが・・・
 まさか『旅館』だなんて・・・あぁ・・・これから上手くやっていけるか自信が無くなって来たぁ・・・)

まさに『馬鹿でかい温泉宿』としか形容できなかった。「いらっしゃいませー」という声と共に、女将や仲居さんが現れても
全く違和感を感じさせない作りだった

そんな建物の中を何のためらいも無く歩く竜神の姉妹を尻目に
些細なことに(?)頭を悩ませ、頭をかかえる横島

そんな横島を見て小竜姫が心配した表情で話しかける

「大丈夫ですよ、竜神王は慈悲深いお方ですから、そんなに心配しなくてもいいですよ」

(そんなこと心配しとらーーーーん!ソレよりもあんたらのセンスが不思議でしょーがないんじゃー)
大声で叫んでしまいたかったが、かろうじて残った理性で押しとどめる


気が付いたら『竜神王の間』と書かれた部屋の前にいた

(うぉ・・・いざ会うとなったら急に不安になってきたぞ・・・こんなときは手のひらに「女」と書いて飲み込めば・・・)
緊張の余りおかしくなってる横島をよそに、大竜姫は扉に手を掛ける

「あ、大竜姫さまちょっとまって、まだ心の準備が・・・」

「竜神王近衛兵隊隊長、大竜姫、入ります」
横島の懇願を無視して、大竜姫は扉を開ける

「お〜〜、入れ入れ」
大宴会場のような部屋の中から酒の香りと共に陽気な声が返ってくる

声の主は宴会場のステージといえる場所で、肘を枕がわりに寝そべりながら酒を飲んでいた

「なんのようじゃ〜、大竜姫」
盃に酒を注ぎながら竜神王は大竜姫に用件を聞く

「は、妙神山の管理人とその後任の人物が参られたので・・・」

「おぉ、天竜のお気に入りが来たのか、案外早かったな。どれ・・・」

短い掛け声と共に横にしていた身体をおこしてあぐらをかく

「お主が横島か・・・」
「は、はい。そうですけど・・・(な、なんだ・・・ただの酔っ払いジジィじゃねーか緊張して損したぜ)」
「で、小竜姫と契りは済ませたのか?」
「いいいいいいいや、あのその・・・」

竜神王の言葉に赤面する小竜姫と、動揺の余り固まる横島

「竜神王さま、御戯れもそこまでに・・・」
「なんじゃ大竜姫・・・お主も気になるのではないか?」
「気にならないと言えば嘘になりますね・・・」
「しかし、あの慌てぶりだとまだのようじゃのう、つまらんなぁ。
 事が済んでおればすぐにでも祝言を挙げるんじゃがのう・・・」

竜神王の漏らした一言に小竜姫が食いつく

「本当ですか!?本当ですね!!?本当なら今すぐにでも!!!」

「なにを慌てている小竜姫」
暴走した妹を押さえつけながら尋ねる
放っておいたら何をするか解らないほど熱くなっている

「だって、だって・・・」

涙目になり切羽詰まった表情の小竜姫は天界に来た経緯を話す



「ふむ・・・結局美神殿達を説得できずに駆け落ちした・・・そういうことか?」

正しくは命の危機を感じた横島が小竜姫と一緒に、ほとぼりが冷めるまで逃げようとしただけであるが
小竜姫は上手く誤魔化したようだ

「そうなんです・・・美神さん達は説得して折れるような方では有りませんので・・・」

沈痛な面持ちで語る小竜姫の話に、盃を傾けながら話を聞いていた竜神王は怪しい笑みを浮かべた

「ふむ・・・ならばなお更だのう。すぐにでも契りをかわし、『既成事実』を作って説得するしかあるまい
 ついでに式も挙げてしまえばいいではないか、さすれば天界全体が説得の味方をしてくれるだろう」

「そ、その『式を挙げる』というのはつまり『人間と神様の禁断の恋』を認めて下さる訳ですか?」

今まで固まっていた横島が竜神王に問いかける
その問いかけに答えたのは、竜神王の隣で座っていた大竜姫が答えた
いつ間にやら手には酒を湛えた盃を持っていた

「何を言っておるのだ。有史以来、人間と神様、魔族が結婚した例はいくらでもある!おおいに励みたまえ、婿殿!!」

(結婚して励む・・・?といえば一つしかない!!夫婦の夜の営みしかないっ!!つまり俺と小竜姫様の仲はすでに
 公認ということに・・・お父さん、お母さん、忠夫は男になります!!」

「・・・・・・・・声に出てますよ、横島さん」
ため息まじりの呆れ顔の小竜姫だが何処か嬉しそうだ

「ようし、二人とも乗り気のようだな早速準備にかかるとしようかのぅ」

そう言って竜神王は手を叩くと女官らしき人物がどこからとも無く現れる
竜神王が女官に向って結婚式の準備についての話を始める

「ふむ、少し時間がかかりそうだな。小竜姫、お主は今夜の床の準備でもしておけ、それと婿殿を少し借りるぞ」

姉と横島が二人きりになる事に少し嫉妬したが『今夜の床の準備』という甘美な言葉に流される小竜姫

「解りました・・・横島さん、姉上に無礼を働くと仏罰を下しますので注意してくださいね♪」

笑顔で釘をさすことを忘れない小竜姫だった



大竜姫の後をついて旅館・・・もとい竜神王の城を歩く横島はとある妄想にふけっていた

(ふっふっふ・・・結婚前なら大竜姫さまともヤッても浮気にはならん!これはチャンスじゃぁ・・・
 このチャンスを活かさずして何が男かぁぁぁっ!!)

大竜姫と一緒に小さな部屋にはいり、横島はの妄想はさらにヒートアップしていた

(おぉぉぉぉコレは間違いない!大竜姫さまから誘われたのなら無礼でもなんでもない!!!)

そんな横島に向って大竜姫から発せられた

「とりあえず服を脱げ」
という衝撃的な言葉は横島を暴走させるには十分すぎた

「大竜姫さまぁぁぁぁぁっっ!!!!!」

叫ぶと同時に衣服を置き去りにして大竜姫にとびかかる

しかし抜き放たれた神剣をのど元に突きつけられては止まらざる終えなかった

「何を勘違いしておる、まさかわらわが婿殿を誘惑するとでも思ったのか?」
刺すような視線と極寒の地を吹く吹雪よりも冷たい声が横島に向けられる

「イイエ決シテソンナコトハ・・・」
殺気に怯えながら答える横島を見て、大竜姫はタンスから服を取り出し横島に放る
その服は小竜姫が普段妙神山で着ている、竜族の一般的な服であった

「え・・・これって・・・」
「婿殿も竜神族の一員になる事だしな、それに式を挙げるまではココが婿殿の家になる。
 一人だけ浮いた格好をさせる訳にいくまい」

大竜姫に言われてもまだピンとはこなかった

「まぁ詳しい話は追々話すとして今日はもう休みたまえ。着替えが済んだか?婿殿の部屋に案内するからついて参れ」
「あ、はい・・・終わりました」
「ふむ、なかなか似合うではないか。ではゆくぞ!」

大竜姫の後について行くと城から少し離れた場所に小さな庵が見えてきた

入り口には『天竜の戦士 横島忠夫 妙神山管理人 小竜姫』との表札が下げられていた

「あ・・・あのこれって・・・」
「ああ、これか一応婿殿にも役職に就任してもらった、まぁ肩書きだけみたいな物だから気にするな」
「いやそーじゃなくて、小竜姫様と一緒に・・・?」
「何をいまさら・・・ここには婿殿を邪魔するものは居ない。気兼ねせず小竜姫との生活を楽しみたまえ
 ちなみにバス、シャワー、トイレ、キッチン完備、専用露天風呂まで歩いて一分、防音も完璧だ」
「いや、そんなことはどーでもいいんです・・・」

「横島さん・・・私と一緒は嫌なんですか?」
いつの間にか庵から現れた小竜姫が横島に問いかける

エプロン姿で上目遣いに覗き込まれては横島は何も言えなかった

こうして『小竜姫と横島の甘い生活』が始まった


小竜姫と横島の甘い生活 3週間目

「はいあなた、あ〜〜ん」
「あ、あ〜〜ん・・・うん美味しいですよ、小竜姫様」

なぜか頬を膨らませる小竜姫
何が不満なのか解らない横島をジト目で睨むと
そっぽを向きながら呟く

「呼び捨てで読んでくれる約束じゃないですか・・・」

目にはうっすらと涙が浮かんでいる
こうなったら横島は何も出来なかった

「あぁ、ごめんごめん・・・小竜姫」

照れながらも呼び捨てにすると、途端に機嫌が良くなる小竜姫
そんな小竜姫を見て、横島は苦笑せざる終えなかった


小竜姫と横島の甘い生活 三ヶ月目

「おかえりなさい、あなた」
「ただいまぁ・・・ふぃー、疲れたぁ〜大竜姫様ももうちょっと手加減してくれればいいのに・・・
 無茶苦茶にシゴクからなぁ・・・」
もはや日課となってしまった『帰宅と同時に今日の出来事を愚痴る』横島
そんな横島を笑顔で迎える小竜姫は、これまたお決まりのセリフを言う

「お風呂にします?それともご飯にします?」
「今日はゆっくり露天風呂に浸かりたいから、ご飯から先にお願いできるかな?」
「はい♪すぐに出来ますのでちょっと待っててくださいね」

夕食を食べながらの話題は、身近に迫った結婚式のことがおおかった

「しっかし・・・殿下の戴冠と一緒になるとはなぁ・・・」
「神族も魔族も寿命が長いですからねぇ・・・こういった式典なんかは滅多に開かれないんですよ
 だからたまに開かれると、大げさにに祝ったりするんですよ」
「そんなもんかねぇ・・・」
「そうですよ、あ、おかわりいりますか?」
「いやもういいよ、ご馳走様。今日も美味しかったよ、小竜姫」
「はい、お粗末さまでした。食器の片付けが終わりましたら私も露天風呂に向いますのでゆっくり入っててくださいね」

「・・・・・・という事は今夜は・・・(ゴクリ)」
「・・・・・・(ポッ)」

どうやら長い夜になりそうである



小竜姫と横島の甘い生活 五ヵ月と半月目

二人は結婚式の準備でなかなか二人きりの時間がとれなかった
が、自分の結婚式のためである忙しさも二人きりの時間が少ないことも苦にはならなかった
むしろ嬉しくて仕方が無いといった様子で二人は働いていた

「よーし、招待状も配り終わったし・・・挨拶の言葉もバッチリだ!」
一仕事終えて帰宅するが今日はいつもと違い、小竜姫の出迎えが無かった

「ただいまー・・・・・・どうしたんだろ?小竜姫さまー、どこですかー?」
小竜姫を探し庵の中を歩いていると、洗面所でうずくまっている小竜姫をみつけた
慌てて駆け寄り抱き起こすと、ばつが悪そうに謝る

「おかえりなさい、あなた・・・」
「小竜姫、大丈夫か?しっかりしろ。具合が悪いのか?すぐに大竜姫様のところに連れて行ってやる」
「大丈夫・・・ちょっと気分が悪いだけだから、心配しないでください」
「そんな事いったって顔色わるいぞ、ほらしっかりつかまってろよ。」

そういって小竜姫を背負うと、大竜姫のもとへ向う横島

大竜姫の部屋で布団に横たわる小竜姫をみてただただ不安を募らせる横島
妹に二言三言質問し、なにやら考えている大竜姫

「ふむ・・・結論から言おう、当たったな」
「ちょっ・・・あたったって何にあたったんすか?昨日の夕食ですか?それとも・・・」

「何を勘違いしておるのだ婿殿・・・まぁ言葉がわるかったかもしれんな、平たく言えば『おめでた』だ」
「・・・へっ?」

「まだ解らんのか?小竜姫は妊娠しておるのだ。ふむ・・・もっと早くこういうことになると思っておったんだが
 婿殿もなかなか奥手よのう・・・なんじゃ呆けた面しおって」

「あ、いや・・・なんて言ったらいいか解らなくて・・・その・・・」
「ふふ・・・そういうときは素直になるのが一番だ」

「・・・小竜姫、ありがとうな」
はにかみながら顔を赤くしている愛しい人に向き直り、感謝の言葉をかける

「いいえ・・・こちらこそ、ありがとうございます」
嬉し涙で顔をぬらした小竜姫もこたえる

幸せなひと時が流れ始めたその時、大竜姫の部屋に女官が慌しく駆け込んでくる

「どうしたのだ?・・・ふむ・・・ヒャクメが人間を連れて来たとな?」
大竜姫の言葉に顔が引き攣る二人

(あっちゃー、美神さんに見つかったか・・・)

「ふむ・・・それで?小竜姫と婿殿に会わせろと・・・ふむ・・・小竜姫はこんなだしな・・・よし私が」
大竜姫が腰をあげかけたその時

「待ってください姉上、私が行きます」
と小竜姫が起き上がる

「無理をするな、今は安静にしておれ」
「大丈夫です、ずいぶん楽になりました。それに・・・いまここで逃げる訳には行かないのです」

その瞳には母としても強さが見え始めていた

「そうか・・・無理はするなよ。婿殿、妹をたのみましたぞ」

無言で頷き返す横島にも父としての自覚が見え隠れしていた

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