ザ・グレート・展開予測ショー

百貨店パーティー☆2F


投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(04/ 6/14)


【1】中島のゆううつ

―――翌日。

「 はあ〜〜〜っ 」

ため息をつく中島。 彼は今、彼女との関係に悩んでいた。

「 俺は彼氏としての役割をはたしているのだろうか……
  いっしょに帰ろうかと思って赤城の教室にいったら、もう先に帰っちゃってたし……
  今日までなんだぜ、ウチに誰もいないのは……… 」

家に誰もいないからなんだというのか。
そんな彼が銀行の前を通り過ぎようとしていた時、建物の中からオフィス服を着た女性に呼びかけられた。

「 あら 中島クンじゃない。 」
「 え? あ……氷雅さん。 」
「 うふっ 覚えてくれててうれしいですわ。 」

昨日会ったときと服装が違うため一瞬とまどったが、声をかけてきた女性は女忍者・氷雅だった。

「 仕事ですか? 」
「 ええ ここでちょっとアルバイトしてますの。 」
「 でもここって銀行ですよ、いったいなんの…… 」
「 女の秘密ですわ♪ 」

と、にこやかに言う氷雅。

( なんで秘密なんだ? )

疑問に思う中島であったが、ここはあまり深く追求しないほうがいいような気がした。

「 そうですわ。 もしよかったらお茶につきあってくれませんこと? 」
「 えっ!? 」
「 どうせ彼女に相手されなくてヒマなんでしょ? 」
「 よけいなお世話です! 」



【2】喫茶店

結局氷雅に誘われた中島は、いっしょに近くの喫茶店にはいった。

「 へえ〜 じゃあ中島クンも千鶴さんと同じ高校にー、では若の通う小学校と近いんですのね。 」
「 はあー まあー 」

一番窓際の席に座った2人の前には、コーヒーとケーキが置かれている。
氷雅はおいしそうに食べながら中島と会話していたが、中島はまだ一口も口にしていない。

「 あら食べないの? 」
「 あ いや……いただきます。 」

ようやくケーキを口にする中島。
どうやら女性に誘われることは滅多にないらしく、幾分緊張しているらしい。

「 中島クン年いくつ? 」
「 17ですけど…… 」
「 じゃあ私の1コ下ですわね。 」
「 え? 氷雅さん高校は? 」
「 乱破の里にいた頃は通ってましたけど、こちらにでてきたときにやめましたわ。 」
「 そうなんですか…… 」
「 ……あら? あごにクリームがー 」
「 え? 」

すっ‥
氷雅は手を伸ばし、中島のあごについたケーキのクリームを指先でぬぐうと―――

ペロッ‥
「 うん おいしい♪ 」 「 !! 」

舐めた。 すると中島は―――

どっどっどっどっどっどっどっどっどっどっ
( なめたなめたなめたなめられたられためられたらたれらなめたりらりら……! )

顔を真っ赤にして、おもいっきり動揺した。

「 ひょっひょひょっ 氷雅さん!?(大汗) 」 
「 あら? ひょっとして照れてるの? うふっ かわいー♪ 」

手を軽く口にあて、イタズラっぽく笑う氷雅に中島は……

ずきゅ−−−−−ん!

どっどっどっどっどっどっどっどっどっどっ
( か かわいいいいっ!!
  なぜだ!? なぜ俺は年上の女性にドキドキしてるんだ!?
  俺には赤城という最高の彼女がいるじゃないか―――っ!! )


……とりあえず落ちつけ。

―――そのあと2人はおしゃべりを楽しむ。
しかしその内容のほとんどは、中島の学校のことや私生活のことなどについてであり、
氷雅の巧みな話術のせいか、彼は聞かれたことに対し素直に答えていくだけであった。
しばらくして喫茶店を出た後、とある店の前で、上半身マッチョな男の彫刻を持った氷雅は―――


「 この彫刻ステキー! 中島クンもそう思わない? 」
「 そ そうだね…… 」
  ( 氷雅さんってちょっと変わってるけど、赤城が言うほど悪い人じゃないよな、それに…… )

ちらっ‥ 奇妙な置き物やアクセサリーを物色している氷雅を見た。

  ( 美人だ…… )

今日学校の休み時間に、千鶴から氷雅のことを改めて聞いた中島。
話で聞くのと実際にこうして話してみるのとでは、かなり印象が違ってくるもの。
“赤城はきっと氷雅さんのこと誤解してるんだ”とさえ思いはじめた。
このあと彼にとって、大きな事件がおこるとも知らずに……



【3】千鶴のアルバイト

その頃、中島より先に学校を出た千鶴はスーパーで買い物をした後、とある喫茶店へとやってきた。
ここは香山夏子の母が経営する喫茶店“喫茶香山”。
店の前ではうたた寝しているゼロの上に、小さな白い仔犬・シロがちょこんと乗っている。
千鶴が学校に行ってる間ゼロはシロと遊んでいたらしく、2匹はすっかり仲良くなったようだ。
扉に準備中と書かれた札を掲げられた店内の座席には、店の主人(以下マスター)である夏子の母と千鶴が向かい合って座っている。

「 じゃあ親御さんに了解取れたのね。 」
「 はい、お母さんも7時までならいいって言ってくれました。 」

実は今、アルバイトの面接の最中であり、マスターは千鶴の持ってきた履歴書に目を通していた。
前回、千鶴とゼロが、夏子の誘いでシロに会いに来たときのこと……
多くの客が入った店内を、忙しそうにひとりで駆け回るマスターの姿を見て、
千鶴が配膳の片付けを手伝った事がきっかけでこの話が持ちだされたのだ。

「 いいわ、ウェイトレスって立ち仕事だから結構大変なんだけど、頑張ってね。 」
「 はい、よろしくお願いします! 」

一礼する千鶴。

「 じゃあさっそくこれからやってみましょうか。 」
「 あっすみません、今日はちょっと用事があるんで…… 」

千鶴は隣の席にカバンといっしょに置いていたスーパーの袋を手にした。

「 夕食の買い物? 」
「 はい、友達のうちで作ろうかと…… 」
「 ……ひょっとして彼氏? 」
「 ええ、まあ…… 」

ここ最近、ゼロのことを優先して彼の誘いを断わっていたのを千鶴も気にかけていたようだ。
突然押しかけて料理を作ってあげようとフォローを入れるあたり、千鶴も中島の事を充分気にかけている。

「 ―――それじゃあ明日からよろしくお願いします。 」

マスターに一礼した千鶴は、扉を開けて外へ出る。
その様子に気づいたゼロは頭に乗せていたシロを下ろすと、シロは寂しそうな目をしながら鳴いた。

《 そんな顔をしないでほしいであります、自分には帰る所があるのであります。 》
《 キューン……… 》
《 ううっ 仕方ないであります、千鶴どのに頼んでもう少し…… 》

ゼロは、自宅の方向とは違う道に行こうとしていた千鶴に気づく。

《 千鶴どの、そっちは遠回りなのでは……? 》
「 あ 中島君のトコに寄って帰るから、あんたもう少しシロと遊んでていいわよ。 」
《 なっ…… なんですと―――!? 》

驚いたゼロはあわてて千鶴に駆け寄ると―――

《 千鶴どのは何故あのような不埒な男に付き纏おうとするのでありますか!? 》
「 い いいじゃない別にー! 」
《 シロどの、自分には千鶴どのをお守りするという大事な任務があるのです、これにて失礼! 》
《 キュ〜〜ン…… 》

寂しそうなシロを後ろに、ゼロは喫茶店を後にした。

《 お供します。 千鶴どのの身は自分がお守りします! 》
「 あんたいつからボディガードになったのよ、あの女じゃあるまいし…… 」



【4】中島、空へ

ふたたび中島サイド。 中島と“あの女”、氷雅の2人は住宅街に入っていた。

「 中島クンの家ってここから近いの? 」
「 ええ、もうすぐそこっス。 」
「 今日はつきあってくれてありがとね♪ 」

にっこり微笑む氷雅に対し、中島は頭をかきながら照れている。

「 いえこちらこそー、俺もデートしてるみたいで楽しかったですよー 」
「 あら? わたしは最初からそのつもりだったのですけど。 」
「 え? 」

頭をかく中島の腕が止まる。

「 わたくし、中島クンのこと結構好きですわよ。 」
「 えっ!? 」

氷雅は中島に近づくと <ぴとっ‥> 軽く抱きついてきた……

「 ななっ!? 」
「 年上はお嫌い? 」

見上げられた瞳、高まる鼓動―――

どっどっどっどっ‥
「 そ そんなことはないですが……で でも俺には彼女が…… 」
「 知ってるわ。 でも私って、意外と強引なんですの。 」
「 そんなに意外じゃないような…… 」

両手で巻きつくように中島の後頭部をおさえる氷雅。
中島の瞳には氷雅の顔がどんどん大きく映り、そして―――



―――♪―――



………唇が重なった。

「 ―――! 」

3秒‥‥ 4秒‥‥

2人は離れなかった……氷雅から離れる気配はなく、中島は硬直してて微動だに動かない。

7秒‥‥ 8秒‥‥ どさっ‥‥

抱きついている氷雅に対し、中島は行き場のない両手を震わせ、右手に持ってたカバンを落とす。

11秒‥‥ 12秒‥‥ ちりんちりん〜

自転車に乗ったおじいさんが、じろじろ見ながら横切っていく。

15秒‥‥ 16秒‥‥ BOOOON

車が1台通り過ぎる。

19秒‥‥ 20秒‥‥ ニャ〜〜〜

黒猫が横切った。

………ところで

こういったシーンは、知り合いに見られてしまうというパターンがよくあるのだが……ここでちょっと視点を引いてみよう。

抱き合ってる2人の姿が徐々に小さくなり、アスファルトの地面の上に短い靴下をはいた女性らしき足が見える。
もう少し視点を引いてみると、買い物袋を持った女子高生の後ろ姿、プラス犬の後ろ姿。
もうおわかりであろう。
中島の瞳にその女子高生の姿が映ったのは、それから数秒後のことだった。


「 !!!!!!!!! 」


にこっ‥ 微笑む女子高生。

ぷはあっ!
「 あ、ああぁああかっ、赤城ぃぃっ!!??/// 」

千鶴は穏やかな表情をして微笑んでいたが、決して内心穏やかとは言える雰囲気ではない。

「 ゼロー 」
《 はーいでありまーす! 》
「 …………(大汗) 」

顔を真っ赤にしながら大量の冷や汗を流す中島。

「 中島君と遊んでらっしゃい♪ 」
《 了解でありま―――す!! 》
「 うっきゃ――――――っ!!!!!(泣) 」

ゼロは中島の制服を口でくわえると、そのまま空高く飛行していく。
町の上空で8の字に飛び回るゼロ。
千鶴は完全に、サイボーグ犬・ゼロの存在が軍事機密だということを忘れていた。
実はこのことが後々問題に―――
        ばちっ‥‥ばちばちばちっ‥‥!
               ―――というより、千鶴にとってはすでに大問題なのだが―――

「 あ……あんたいったいどーいうつもりなのよ!! 」

当然のごとく、氷雅に対して怒りの表情をみせる千鶴。

「 あら? なにを怒ってるのかしら? 」
「 なにって…… 」

氷雅は指先を自分の唇にあてると―――

「 ひょっとして、あなたたちまだでしたの? ごめんなさいね〜 」

怒りで興奮気味の千鶴の顔が、さらに赤く染まる。

「 ふざけないで!! あなたゼロを狙ってるんじゃなかったの!?
  中島君からかってなにが楽しいのよ!! 私たちに嫌がらせでもして……!? 」

千鶴はハッと、あることに気づく。

「 ひょっとして私が近くにいるの知ってて、見られるのがわかっててわざと…… 」
「 あら? 私はあなたが見ていたなんて、ぜーんぜん気がつきませんでしたわ。
  だって! 中島クンしか見えてなかったんですもの! ウルウル。 」

明らかに芝居がかった行動をとる氷雅―――確信犯である。

「 あ あんたねー 」
「 中島クンもイヤならすぐに離してたはずですわ。 ……でも、離さなかった。 」
「 !! 」

そう言うと氷雅は、常人離れしたジャンプ力で塀の上・民家の屋根の上に飛び上がると、
空中で飛び回っているゼロが咥えている中島を素早く奪取し―――
《 あっ! 》
シュタッ!
中島をを抱えたまま地面に着地し、彼を下ろした。

「 ふふっ、今日の所はこれで失礼させていただきますわ。
  それじゃあ中島クン、今日は楽しかったわ♪ それではごきげんよう〜 」

手を振りながら去っていく氷雅。
地面にへたり込んでいた中島はボーゼンとしていた。
千鶴はつかつかと中島のほうに近づくと……

「 あ 赤城…… 」

「「「「「  バカ――――――ッ!!!!!  」」」」」

そう叫んだ千鶴は来た道を引き返していった。
そして地面に降り立ったゼロは、中島を見てニヤッと笑うと―――

《 ナカジマァ〜 残念だったでありますなあ〜
  せっかく千鶴どのが貴様のために、わざわざ夕食をつくりに来てやったというのに…… 》
「 !! 」

中島は千鶴が持っていた買い物袋を思いだした。

《 フッ‥さらばナカジマ、オヌシなかなか手強かったぞ。 どわははははははっ!!!! 》

嬉しそうに去っていくゼロ。 残された中島は……

ヒュウ―――−−‐ッ

冷たい風が吹きつけていた……



……その日の夜。

シクシクシクシク‥
「 赤城ぃ〜俺がバカだったんだよぉ〜っ…… 」

お湯の入ったカップラーメンを目の前に、テーブルに頬をつけてダラダラと泣いている中島。
すでに15分この状態が続き、ラーメンがいい感じに伸びきってしまっているが―――

「 だってしょうがないじゃないか〜〜〜〜〜!!!!! 」

中島の明日はどっちだ!?
 

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