魂の機械 独立編 幕
投稿者名:斑駒
投稿日時:(04/ 6/14)
全ての感覚が失われた真っ暗闇。
視覚や聴覚、触覚といったものはもちろん、時間や空間の感覚も無い。
完全な機能停止状態。
なんとなく、『死』という言葉が連想された。
そんなマリアの意識に、走馬灯のように様々なシーンが浮かび上がってくる。
暗転。
カオスと共にヴァンパイアを倒すため、地中海に行った時の映像。
カオスに新しい機能をつけてもらい、仲間と共に戦った記憶……
あの時、初めて使用したジェット・エンジンは、それ以降無くてはならないものになった。
暗転。
カオスに送り出され、魔族と戦うために月まで行った時の映像。
自らの身を投げ打ってでも、仲間を守りきった記憶……
あの時、カオスは報酬の全てを投げ打って、即座に自分を修理してくれた。
暗転。
世界の命運を賭けて魔神と戦った時の映像。
ただ夢中で駆けずり回り、結果として世界を守りきった記憶……
あの時、仲間と共に守った世界を、自分は守りきれただろうか。
暗転。
一転して色や線が鮮明になる映像。
『ならば……。あとのことはわしに任せろ。』
これは、直前に聞いセリフのリフレイン。
暗転。
ピートとパシリクスが除霊の仕事に臨んだ際の映像。
お互いがお互いを信じ合い、協力しあって生きる信頼の記憶。
その時の、背中を互いに預け合う二人の姿が強く印象に残る。
暗転。
マミーシーカーM・3がたくさんの子供に囲まれて、子守りをする際の映像。
子供の身を案じながら、その成長を温かく見守る慈愛の記憶。
その時の、子供にキスされて頭を撫でて返すといったやりとりが強く印象に残る。
暗転。
M7874-1182が家のお嬢様と一緒に編み物をする際の映像。
ただ一緒にいるだけで、傍に居るだけで寂しさを忘れさせる安らぎの記憶。
その時の、他愛ないおしゃべりと軽やかな笑い声が強く印象に残る。
暗転。暗転。暗転。
マリアの意思に関係なく、思わず胸が熱くなるような光景が、次々と展開される。
事故現場でMシリーズが身を挺して人命を助け、助けた人間に泣きながら感謝される映像。
営業を仕事とするMシリーズが、その成果を認められて社内で表彰され同僚全員から祝福される映像。
家庭用のMシリーズが、孤独な老人の世話をしてその最期を看取る映像。
マリアは自分の記憶では無いことをどこかで自覚しながら、流れ込む映像を自分のことのように実感していた。
『ああ。ドクター・カオス…ドクター・カオス…ドクター・カオス……!!』
ことに、最後の映像は他人事とは思えなかった。
自分の目の前で永きの眠りについてしまったカオス。
それがせっかく起きたのに、今度はカオスの目の前で永きの眠りについてしまった自分……
「おう。なんじゃ? そんなに呼ばんでも、わしはここにおるぞ」
突然聴覚に飛び込んできた声に、マリアはパチリッと目を開いた。
「!!! ドクター・カオス!!?」
開いた目の先には、横たわるマリアを見おろすカオスの顔があった。
「ここは………天国…」
「そのボケはもういいっ!」
未だ呆然とするマリアに、間髪を入れずにつっこむカオス。
「安心せい。おまえもわしも死んではおらん。それどころか世界中のMシリーズは一体たりとも機能停止なんぞしとらんわい!」
「きのうていし……」
マリアは半ばうわのそらで、カオスの話を聞き流していた。
見慣れた天井、見慣れたベッド。間違いなくこの場は自分が守り続けてきた木造アパートの一室で、自分が寝かされているのはカオスがずっと眠り続けていたベッドだった。
その事に思い至るや否や、次々と現実が思い起こされる。
「マリア・機能停止して…他のMシリーズも…? …ドクター・カオスは・眠ったままこのベッドに……理解不能!」
「落ち着け。まあ、混乱するのも無理はないがな。詳しくは、そっちのわしに聞くがよかろう」
マリアの様子に苦笑いしながら、傍らに目配せするカオス。
マリアがその方向に視線を移すと、そこには例の若カオスの映像が浮かんでいた。
しかしその姿はだいぶ薄れて見える。
「聞いたぞ。私がおまえに手渡したディスクを、Mシリーズ機能停止プログラムと勘違いしたらしいな」
若カオスはさも面白そうに、笑いながら話し掛けてきた。
「まったく早トチリも良いところだ。私はMシリーズを“止める”プログラムとは言ったが、それは“反逆を止める”という意味で、“機能を止める”プログラムと言った覚えは無い。まあ、今回は結果オーライだな。おまえもさっきエネルギー切れでスリープモードに入っていた間に、プログラムされた夢の内容は見ただろう?」
「ユメ………?」
言われてマリアは、状況を整理するために思い返した。
プログラム・ディスクを渡された時の言葉。
エネルギー不足で使えなくなったジェット・エンジン。
プログラムの実行と共に途切れた意識。
次々と流れ込んできた、自分のものだけでは無い記憶。
「Mシリーズたちが反逆したのと全く逆のプロセスだ。おまえのメモリーをベースに、人間とMシリーズが親愛の情を結んだ記憶を呼び起こすようなプログラムを組み、認識信号にのせて次々と伝播させた。これなら理論上、反逆していた機体は人間に協力的に戻るし、もともと人間に協力的だった機体――どうやら、特に人間と親密な関係を保っていた機体は、悪夢の影響を受けなかったようだがな――彼らには影響を及ぼさないというわけだ」
したり顔で解説する若カオス。
その姿が、また一段と薄れる。
「ドクター・カオス!?」
マリアは、思わず呼びかけた。
「ん? ああ、私がどうして寝たきりから解放されたか……か?」
若カオスは、自分が呼ばれたとは思わなかったらしい。
傍らに腰掛けて苦笑いしながら様子を見ているカオスの方にちらっと目をやり、説明を始めた。
「調べてみると、私がボケたのは頭の中の記憶が整理されずにゴチャゴチャに溜まり、もうこれ以上新しい記憶も入らないし、昔の記憶もバラバラになって呼び出せないし、もうにっちもさっちも行かなくなったせいらしくてな…」
マリアは、ふと、痴呆の症状を発しはじめたカオスの様子を思い返していた。
新しいことは全く覚えられず、やたらと昔のことを話すようになり、自分が昼食を食べたかどうかすら覚えていない状態だった。
だいぶ前にピートが訪ねて来た時も、記憶が混乱しているようで「おお、よく来たな小僧」などと言っていた。
「それまではトコロテン式に過去の記憶を忘れたりもしたらしいが、記憶の上書きを繰り返すうちに脳内の空き領域が細切れになり、ついには脳が全く機能できない状態に陥った。それで寝たきりになったわけだ」
脳の機能停止。
それは、普通の人間では死を意味する事態なのだろう。
しかし不老不死であるカオスの身体はそのままの状態で生き続け、自律神経系の働きによってあたかも眠ったような様子になっていたのだ。
「それで私はおまえにディスクを渡して送り出したあと、私を起こすために私の記憶の整理を始めた。脳内のデフラグ作業をしたと言った方が、おまえには通りが良いかだろうか。霊体であることを利用して、私自身に乗り移ってな」
「あっ……」
その作業をしていたのは、ちょうどマリアが、部屋の入り口に佇んだまま若カオスの言葉を待っていたときのことだ。
あのとき若カオスは、次の作業に忙しくてマリアにかまっていられなかっただけだったのだ。
「その作業が終わったら、今度はカオスフライヤーZの製作に取り掛かった。この廃墟では材料の調達が難点だったが、おまえのためだと言ったら、町の人間がずいぶん協力してくれたぞ。ホウキやら三輪車やら、住居の屋根材やらパイプやら色々とな。あとでおまえから礼を言っておいてくれ」
「町の…人たちが……」
マリアは、驚いた。
今までずっとMシリーズの襲撃から守っては来たが、何かをしてもらったことはなかったし、特に何かをしてもらおうとも思わなかった。
そんな彼らが、自分のために協力してくれたということに。
「あとはまあ、おまえも知っての通り、“私”を叩き起こしておまえのフォローに向かわせたわけだ。ともかくなんとか間に合って良かったよ」
間に合ったと言えば、まさにギリギリのタイミングだったろう。カオスの到着が少しでも遅れていたら、マリアは地面に衝突して大破していた。
若カオスは、頭の後ろをかくような仕草をしながら、苦笑いを漏らした。
そんな彼の体が、また少し薄れてゆく。
「ドクター・カオス! 体が……」
マリアにそこまで言われて、やっと自分の事に思い至ったらしく、若カオスは薄れ行く自分の体に目を移した。
「おお、そうだ。間に合ったというのは、私が消えるまでに間に合ったという意味もあってな。実は私の霊体は一日しか持たんように設計してしまっておったのだが。いやあ、焦った焦った。おかげでおまえの腕も、もげたままになってしまって、スマンかったな」
「………!!」
若カオスは、さも何でもないことのように、さらっと言ってのけたが、マリアは絶句してしまった。
今まで若カオスの命令や行動は、全てマリアのことなどお構い無しに為されていたように感じていた。
そう、あたかも身勝手で傲慢な人間であるかのように。
しかしそれは単に、時間制限に焦りを感じていただけだったのだ。
話を聞いてよくよく考えてみると、若カオスは人間のためや自分のためというより、ずっとマリアのためだけに全ての作業をしてくれていたように思われる。
「ドクター・カオス!!」
マリアは、思わず叫んだ。
「おいおい、紛らわしいな。私はもう消えるから、その呼びかけは本物の私だけにしてくれ」
紛らわしいといいつつも、若カオスは迷わず自ら返事をし、また老カオスの方も無言で腕組みをしたままだった。
『本物の』……と言うが、その二人は二人とも、まぎれもなくマリアがよく知るカオス本人に相違なかった。
はじめから分かっていたはずなのに、その事実を信じるのにずいぶん時間がかかってしまったような気がする。
「いいえ。ドクター・カオス! あなたは・ドクター・カオスです!!」
マリアは、確認するように若カオスに呼びかけた。
その反応に、若カオスと老カオスが思わず顔を見合わせて笑った。
「ありがとう。……さて、私はもう消えるが、最後に一言だけ言っておこう」
そう言って、若カオスは咳払いし、まっすぐにマリアの顔を見つめた。
マリアも、まっすぐに見つめ返す。
「おまえがまた私を必要としたときには、必ず現れてやる。良いか、忘れるな。私はいつでもおまえと共にあるということを……」
言いながら、若カオスの姿はどんどんフェードアウトして行き、虚空に消えた。
「イエス…ドクター・カオス………」
マリアは、若カオスの消えた方をずっと見つめながら、そっと呟いた。
「……ぅほんっ!」
静かな部屋の隅で、突如として咳払いが起こった。
マリアが思い出したように振り向き、叫ぶ。
「ドクター・カオス!」
「やれやれ。これではどちらが本物か分からんな。それとも、おまえは若いわしの方が好みだったかな?」
カオスが、皮肉な笑いを浮かべながら、椅子から立ち上がった。
そのカオスに向かって、マリアが思いっきり飛びつく。
「バカ! バカ・バカ・バカ! ドクター・カオスの・バカッッ!!」
カオスを壁にぐいぐいと押し付けながら、今まで言いたかったことを全て投げつけるつもりが、たった一つの単語しか出てこなかった。
「やれやれ。しばらく見ないうちに、とんだ不良娘になったものだ。しかしまあ、成長もしたかのう」
されるがままのカオスが、マリアの頭にそっと手を置きながら、ふっと呟いた。
「成長…? マリアが……?」
不思議そうな顔をして見上げるマリアの目の前で、カオスはかたわらの窓の外を指差した。
ふっとマリアがそちらに目を移すと。
「マリア〜〜〜! ひゅーひゅー!」
「よかったね。よかったね。マリア!」
「やったな!マリア!!」
アパートの下に集まった子供たちが、こちらを見上げて歓声をあげていた。
「マリアさま〜〜! ご無事でしたか!?」
「さっき数体のMシリーズが復興の手伝いをしたいって町に……!」
「もう、この世界は平和なんですね!!」
大人たちも、興奮した様子でこちらを見上げている。
その中には、つい最近助けた男の姿もあった。
「…………」
マリアは、そんな彼らの姿を、呆然と見つめたあと、カオスの方に向き直った。
「おまえは、成長した。わしが居なくても、自分で判断して何でもできるようになった。コイツがその結果じゃよ。ホレ、責任持ってなんか返事してやらんか」
「あっ……」
カオスが茶化すように言って、マリアの脇腹をつつく。
マリアは、ふらふらと窓際に歩み寄り、窓枠に手を着く。
眼下には、見上げる人々の笑顔、笑顔、笑顔。
マリアが全て独りで守り抜いた風景が、広がっていた。
「あ…さ、サンキュー! みんな・ありがとう・ございます!!」
マリアの言葉に、人々がまたワッと沸いた。
気恥ずかしくなったマリアは、窓から顔を引っ込める。
「命令されたから何かをするのではなく、自ら考え、自らの判断で行動し、その結果に責任を持つ。それが一人前の人間というものだ。今回の事件があって、わしはやっと、真に人間の似姿たるアンドロイドを完成させたと言えるのかもしれんな……」
マリアの傍から窓の外を見下ろしていたカオスが、人間と握手を交わすMシリーズの姿をまぶしそうに眺めながら、呟いた。
それから急に、マリアの方を振り向いて、おどけた調子で問う。
「……さて、ここで、一人前になったおまえに聞こう。これから、どうしたい?」
「え? ま、マリアは……」
唐突な質問に、マリアは目を見張る。
にやけながら顔を覗き込んでくるカオスは、そんなマリアの反応を純粋に楽しんでいるようでもあった。
しかし咄嗟に口には出なかったが、この質問の答えはずっと前から決まっている。……もしかしたら、1000年以上も前から。
マリアは軽く咳払いし、カオスの顔をまっすぐに見上げて、自信たっぷりに答えた。
「マリアは・ドクター・カオスと・共に居ます。これまでも・そして・これからも・ずっと……」
...the end
今までの
コメント:
- ここまで読んでくださったみなさん。長のお付き合い、ありがとうございました。
……と言うと、なんだかお別れのようですが、個人的には
「マリあんも私も、GTYと共に居ます。これまでも、そして、これからもずっと……」
…という気持ちです(爆)
……えぇと、ともかく、アレです。そのぅ……
今まで二年間、お世話になりました。そして、これからもGTY参加者の交流の場、『マリアのあんてな』をよろしくお願いします……と、ゆーことでっっ(汗っ) (斑駒)
- 全編をリアルタイムで読ませていただきました。
ロボットの暴走。科学の進捗に伴って発生してくるリスクですよね。人間の傲慢さによって発生するかもしれない。
かの手塚治虫先生もこれを題材にした漫画を描かれていて、非常に胸を締め付けられた記憶があります。
人間の傲慢さが呼び起こした悲劇ですが、「暴走」を起こすロボット側のほうを見てもなんだか同情してしまいます。
そしてマリアとカオスとの関係。
カオスが昏睡状態にあると見て、マリアは大丈夫なのだろうかと心配して読んでおりました。
最終的にカオスが復活して安心しましたが、ハラハラドキドキいたしました。
やはり、マリアにはカオスが必要だなとつくづく感じた独立編でした。 (弥三郎)
- そして、2周年おめでとうございます。
たった今気がつきました(汗)
ヘタレ全開な私、弥三郎ですが、今後ともよろしくお願いします。
なんだかお祝いしなくちゃなぁ。今更ながら(苦笑) (弥三郎)
- どうもはじめまして斑駒さん、2周年おめでとうございます。殿下と申します。
マリアが若カオスに「後回し……だ。そんなことより…今は……」と言われた時、そしてその後のスリープモードでの暗転で他のMシリーズの記憶が混ざり、人間に虐待などを受けている事を知り、一気にやるせない気持ちになりました。
でも実は若カオスがマリアにあのような事を言ったのも全てはマリアのためなのだとわかり、若カオスを嫌な感じだと思ってた自分がちょっと恥ずかしいです。
この後の二人の人生に何事も起こらず半永久的に一緒に暮らせる事を切に願います。
投稿お疲れ様でした。これからも頑張って下さい (殿下)
- 私も、殿下さんと同じく若カオスの言葉とMシリーズに対する人間の仕打ちに、マリアがとても可哀想でしたが、若カオスがマリアのことを思って行動していたことがわかり、とても良かったです〜v
この二人が何時までも仲良く幸せに暮らせる事を望みます〜。
そして、2周年本当におめでとうございます〜。 (紅蓮)
- 弥三郎さん。
リアルタイムでお読みになっていたのですか。それは……さぞかし続きの投稿が遅くてジリジリしたことでしょう(笑)
全編書き上げてから投稿してはいるものの、フォームにコピペしてから最終見直しする癖があるため、投稿にけっこう時間がかかっちゃうんですょね。
それはともかく、ハラハラドキドキしていただけたということで、書いた側としては甲斐がありました。
お祝いのお言葉、ありがとうございます。そして、これからもよしなに。 (斑駒)
- 殿下さん。
はじめまして。コメント&お祝いありがとうございます。
若カオスを『ヤナヤツ』に感じていただけたのであれば、描写がうまくいったということなので、ホッとします(爆)
以前にこれと同じ題材で書いた話では、幸の薄い最後になってしまったので、私としてもやっぱりこの後の二人には末永く幸せにあって欲しいと感じます。
紅蓮さん。
はじめまして。
自分で書いておいてアレですけど、“若カオス”って連呼してみると語感がちょっとヘンでしたね(違)
ともあれ、一番に表現したいと思った部分が、一番に伝わったみたいで、嬉しいです。
お祝いのお言葉、本当にありがとうございます。 (斑駒)
- 序での後書きでのお願いに気付かないで一話ごとのコメントを書いてしまったので、ここでまとめると少し長くなります(出来るだけ絞ってはみますが・・・すみません)。
―序―
いつ目覚めるとも知れぬ眠りについた主人。自分の分身Mシリーズの人間への総攻撃。
そんな中、たった一体の人間の味方として彼らの安全地帯を守り続けるマリア。
なぜ、そんな命令を受けてもいないのに行うのか・・・彼ならそう命令する“であろう”と判断したからなのか、あるいは誰の命令でもない奇蹟の様な内なる声なのか、彼女にも分からない事でしょう。
300年後の彼女は現代よりも更に言動も内面も人間的になっている様です。彼と過ごした千年がそうさせたのか目覚めない主人に縋って叫び、キスで目覚める事をも願う姿に驚かされました。 (フル・サークル)
- ―前―
メンテナンスに現れたのは千年前の若いカオス…の分身。彼であって彼でない、“それ”の態度の端々にマリアは彼と歩いて来た年月を全て否定された様な気持ちだったのではないでしょうか。
共存しようとも思わないが攻撃しようとも思わない、ただ静かに暮らしたいと言う(マリアに薦めてさえくれた)妹に瓜二つのMシリーズへ襲い掛かるマリア、彼女は腕の損傷よりもその心の痛みをカオスに伝えたかったのでは…そして、彼女のそばにいた彼ならきっと受け止めてくれていたのでは…そんな風に思えました。
失意の彼女へ訪れる悪夢…全てのMシリーズの見た憎悪の夢。Mシリーズ造反の謎を解く鍵でもあるでしょうが、彼女の人間を見る目がどう変化するのか不安にもさせられます。 (フル・サークル)
- ―後―
他人への情も見せず、自らの知的好奇心のままに悩み笑う姿は私達の知るドクターカオスのそれであったかもしれませんが、マリアの知る彼ではない…彼女のドクター・カオスは帰って来なくて「独り」のままだったマリア。
それでも、それだからエネルギー残量も停止プログラムの発動が自らの死を意味する事も省みず、東京タワーへと向かうマリアに運命の残酷さと悲壮な決意を感じます。
そんな彼女に降りかかる更なる試練、全世界に散らばる真の同胞―人間の味方となるMシリーズの存在。彼らのメッセージを受け、彼らに守られる人間達の事を思い葛藤するマリアが掴むのは更なる悲しい答え・・・任務半ばに倒れる事。
彼女の誤解を正せる唯一の者・・・“彼女の”ドクターカオスがその場に現れたのは正に間一髪であったと思われます。 (フル・サークル)
- ―幕―
憎しみと失望の記憶で人間と決別する事。親愛の記憶で人間と再び手を取り合う事。Mシリーズにとって本当に善い道はどちらだったのかを思うと私にも分かりかねます。人間達は再び彼らを使い捨ての奴隷や兵士としても扱う事でしょう…。
プログラムはどこから来たのかと言う謎も残ります。強い反抗心を持ったMシリーズ個体によるものか、何らかの意図を持った人間か、あるいは作為なく記憶の集積と交信の果てに生じたものか…。
(続きます) (フル・サークル)
- (続き)
しかし、Mシリーズのオリジナルであるマリアが生まれて来た時から祝福されていた事にその答えの一端がある様にも思えました。
カオスは全てをマリアに捧げる意思を初めから持っていた事、戻って来たカオスは彼女を「娘」とも呼びました…
そして彼女は設定されたプログラムではなく自らの意思で人を守り、彼を求め、その答えを得たのでしょう。
彼女は道具として生きる為に道具として生まれたのではありません。
「共にある」為に生まれた「魂あるもの」なのです。
清々しさの残る読後感でした。2周年、おめでとうございます。 (フル・サークル)
- 斑駒さん
はじめまして 最近こちらにお邪魔させていただいています
リキと申します
まずは『マリアのあんてな』2周年おめでとうございます
若カオスの「そんなことより」発言には私も「むむ!!!」
ときましたが、全編読ませて頂き
自分がすごく優しい顔しているのに気づきました
マリア 良かったね (リキ)
- ご無沙汰を致しておりますが、2周年おめでとうございます。
数百年の時を経て、人工霊魂から自我を得、そして生きとし生けるものとしての魂を手に入れたマリア。
自らが破壊されたと思った場所を天国として誤認するところは、彼女が無意識のうちに「生」と「死」の概念を受け入れている象徴と言えるでしょう。
そして、単なるコピーではなく、個々の自我のようなものを持ち始めたMシリーズもしかり。
機械生命体の揺籃期のエピソードとしても思いを馳せられる、実に興味深いお話でした。 (赤蛇)
- ああ、良い話だなあ。じんわりと目にお水が満たされて来ています。(うう・・・。)
何とも心に染み渡るようなラストでした。
色々と皆様が語っておられるので、私本人が言うべき言葉もそんなにありませんが、読み終わった後に残るこの暖かいものは何でしょう・・・。(ほかほか。)
そして最後に・・・遅れまして二周年おめでとうございます。
しんばるでした。 (cymbal)
- 遅れましたが、HAPPY BIRTHDAY!!!!これからもがんばってください!! (Pr.K)
- フル・サークルさん。
まとめてコメントするお願いが却ってご迷惑だったみたいですいません。でも自分でも各話にはある程度の独立性と完結性を持たせたつもりだったので、それぞれにコメンとしてもらえてすごく嬉しかったです。
しかもそのそれぞれが意図した部分や書きたかった部分を汲んでいただけていて、誕生日にこれ以上嬉しいプレゼントはありません。本当にありがとうございます。
特に、マリアが『独り』であったことを実感していただけたあたりなど、筆者冥利に尽きます。実は、つい投稿直前までのこのお話のタイトルは『孤独編』だったぐらいなのです(笑) (斑駒)
- 一方で、Mシリーズの造反理由や、人間とMシリーズのこれからなど、自分でも少し気になっていた未消化部分も指摘していただけて、参考になりました。
ぜひとも今後に生かしたい所存です。
最後に、お祝いありがとうございました。
リキさん。
はじめまして。マリあんはサポートサイトという微妙な立場ですけど、こちらの過去ログの検索などもできますので、今後ともよろしくおねがいします(宣伝風爆)
今回のお話を読んで、なんかこー、感覚的に「ほぅ」っとしていただけたみたいで嬉かったです。
コメント&お祝いありがとうございました。 (斑駒)
- 赤蛇さん。
こちらもご無沙汰しちゃって恐縮でした。
マリアの生と『天国』というキーワードの繋がりについては私も思い至りませんでしたが(爆) Mシリーズの自立と個性を感じていただけたようで、嬉しいです。
ありがとうございました。
cymbalさん。
実は、お話を書き始めるようになってから、『誰も死なないけれど読者が心を動かされて涙するような話』を書くのが夢でしたが。いま、その夢がかなったような気がします。
じんわりとして、暖かいものを感じていただける。感覚的ですけど、すごく嬉しくて素敵な感想でした。
どうもありがとうございます。
Pr.kさん。
はじめまして。ありがとうございます。頑張れる限り生ぬるく頑張っていこうと思います(笑) (斑駒)
- シリアスな展開に驚きながらも、マリアのしゃっくり一つによって、本作が『魂の機械』である事に得心(笑)
「いつも共に在れ」というカオスの命令。「私はいつでもおまえと共にある」という若カオスの一言。
片方だけでは従属と依存ですが、この二つは対となった時に、独立と共生という大きな意味を持つものへと変化したのでしょうか。
それによってマリアの「答え」もまた、同じ文面でも全く異なる重みを持つ、完成されたものとなった様に感じました。
マリアとカオスに、彼女らの様な関係を築きつつあるMシリーズと人間達の未来に、幸多かれ。
最後になりましたが、『マリアのあんてな』開設2周年、おめでとうございます。
そして、これからも、よろしくお願いしますm(_ _)m (dry)
- ご無沙汰しておりました。マリあん二周年、おめでとうございますm(_ _)m←挨拶
まさにフチさんが描いてきた『魂の機械』の総決算(といっても、まだ続くでしょうし、続いてもらわなきゃ困りますが(笑))とでもいうべきストーリーでしたね。いやはや、凄まじいストーリーでした。以前フチさんが書かれた『永遠編』よりも更に深いところにテーマを置き、マリアの人格としての独立を書ききった今作は、まさに最高にして屈指のストーリー作品であると言っても過言ではないでしょう。……また、これだけのストーリーをわずか四投稿に纏める文筆能力も流石としか言い様がありません。
まだまだ書きたいことはあるのですが、もうそろそろ文字数が尽きてしまいます。マリアを含めたMシリーズと人類が創り出してゆく未来に祝福を…… (ロックンロール)
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