〜『キツネと羽根と混沌と』 第2話後編 〜
投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 6/12)
―――――・・。
「・・・・横島?」
階段を下へと進むタマモが、不意に後方を振り向いた。
理由は自分でも分からない。
ただなんとなく・・・たった今、自分の探していた相手が・・・
その人の声が、聞こえたきがして・・・・
「?ねーさま?」
手をつなぎながら歩いていたスズノが・・・・怪訝そうにこちらを見上げてくる。
「・・ね、スズノ・・今・・・・」
首をかしげ、タマモが疑問を言葉にしようとして・・・・しかし、その声は一瞬の後・・・・・
「!?」
急激に目の前へ広がる・・炎と爆風によって阻まれてしまう。
廃屋中に走る、凄まじい衝撃。
柱が・・壁が・・床が・・・次々と崩れ落ちていくその様を・・2人は、唖然としたまま見つめ続け・・
「こ・・これっていった・・・」
「・・だぁあああああ!!!何ぼ〜っとしてんだよ!!逃げるぞお前ら!!」
・・・!?
突然、腕を引き寄せられる。聞き覚えのある声に振り向いたタマモが目にしたのは・・・
「・・よ・・横島・・」
何故か・・・服をボロボロにして突っ立っている横島の姿で・・・・
「いつの間にそこに・・・それよりもどういうことか説明してよ。」
「逃げてきたのはたった今だけど・・って、んなことはどうでもいいんだってば!もうすぐデカい爆発が・・・」
・・・と、横島が言いかけた・・その時。
「・・・げ。」
「ちょ・・ちょっと・・・」
廊下に火の粉が吹き抜けて・・・・
先ほどよりも・・さらに数倍。とんでもない規模と熱量を持った炎が、部屋全体を覆いつくす。
・・・・。
シャレになっていなかった。
これでは守るどころか・・まるっきり自分は疫病神だ。さんざんタンカをきった挙句これでは・・正直、格好が悪すぎる。
「・・・・・。」
瞬間、急に横島が神妙な顔で腕を組み・・・・それから・・・・
「お前ら2人・・・脱げ!!!!」
叫んだ。もうこれ以上ないくらい思いっきり。
「・・・・・・。」
それにタマモは半眼になって・・・
「・・・煙で頭でもやられたの?」
ため息をつきながら、そうつぶやく。
「オレは本気だ!!いや、ロリコンじゃないけど・・。この際、なりふり構っていられるか!!
お前らのその貧相なスタイルでも無いよりはマシだろ!!オレの煩悩を掻き立てるために協力しろ!!」
「・・?私が服を脱げば全員助かるのか?」
「だまされないで、スズノ。そいつはスキを見せた途端、息を荒げて大海原を駆け巡るこの世の変態の筆頭に・・・」
「挙げられねえよっ!?」
こんな・・まるで緊張感のない会話。
状況をわきまえない3人の様子に・・・前話から23kbほど出番の無かったハウスダストが、唯一、顔を引きつらせ・・・
「き・・貴様ら・・そんなことやってる場合か?火の手がそこまで迫ってるんだぞ?」
・・彼が一番まともだった。
「・・?なんだ?いたのかよ、お前。」
「第一話のappendix.1-3からずっと捕縛されて床に転がされていたわ!!」
脱力気味に声を漏らす横島へ、ハウスダストは大声を張り上げ・・・
「ふむ。それで?少しは反省した?もう人間を襲ったりしない?」
「は・・反省した。人ももう襲わん。だから・・・頼むから真面目に脱出方法を・・・」
からかうように微笑みタマモに、呻くようにそう頷き・・・・・
「・・もう、他人の下着をのぞいたりしないか?」
「あ・・あの時は悪かった!もうしない!」
少し怒った顔をするスズノに対して、ペコペコと平謝りに謝って・・・・
・・と、そこで・・・
「・・どうやら本気で改心するつもりみたいね。そろそろ許してあげたら?」
舌をペロリと出しながら、タマモが2人に向かって言い出した。
「は?」
訳も分からず、完全に動きを止めたハウスダストのすぐそばで・・・・
「・・うん。少し可哀想になってきた・・・」
「だな。そろそろ頃合か・・頼むわ、スズノ」
2人も、その提案に同意して・・・
「な・・何?貴様らなにを・・・」
「・・大丈夫。それより下がって。そこにいると巻き込まれるぞ?」
言いながら、スズノが炎の中央へと進み出る。そのまま、間髪入れずに片手を上げて・・・
「えい。」
簡単な掛け声とともに、軽い調子で腕を振り下ろした。
大した抵抗も感じぬかのように・・あくまでいつものポーカーフェイスのまま・・
・・だが・・・
「?」
その直後、信じられないことが起こった。炎が・・・消えたのだ。
スズノが一睨みをきかせるだけで・・炎はまるでうそのように・・初めからそんなものなど存在しなかったかのように・・
あっという間に消えてしまい・・・・
スズノを除く全員が・・改めて彼女の圧倒的な力を思い知らされる。
・・・・。
・・・・・・・。
「・・・って、ちょっと待て!小娘・・・そんな真似ができるならなんで初めに言わなかった!?」
かなり興奮気味に詰め寄ってくるハウスダストに対して、スズノはわずかにたじろいで・・・
「?し・・しかし・・こうでもしないとお前は反省しないと、さっき横島が小声で・・」
「お・・おのれ横島忠夫ぉおおお!!!謀ったな!!!」
「いや・・激戦の後だったから・・お前と闘うのが面倒くてさ・・ってわけで約束守れよ?これにて依頼完了〜」
「ブホァ!?だ・・・だまされたぁあああああああ!!!」
あたりの炎が消失し・・廃屋が完全に焼け落ちた・・・そんな夕刻の山の奥。
手をヒラヒラさせる横島の前で、住処を奪われた哀れな魔族の、悲痛な叫びが轟いたのだが・・・・
(・・・口約束なんて破ってもバレやしないのに・・・)
一連のやりとりを眺め、タマモは呆れたようにそんなことを思うのだった。
◇
〜appendix.2 『喜劇(ファルス)』
空。
雲に覆われた暗い空。
瓦礫の中に埋もれながら、ユミールは一人空を見上げた。
「♪〜♪〜」
腐りかけた灰色の翼に軽く触れ・・上機嫌そうに・・・・
少女は歌を歌い続ける。
「・・どうだった?彼は・・」
不意に感じた背後からの気配。ユミールは、微笑みながら振り返り・・・・
「来てたんだ、お兄ちゃん。面白い人だったよ、すっごく・・」
言葉通り、本当に面白そうに・・言う。
ユミールの右腕は爆発に巻き込まれ・・跡形も残らず消失していた。
戦闘から十数分・・・・その間、治癒が行われ、もうほとんどの箇所は復元しかけているが・・・・
正直、これには驚かされた。
「凄いよ・・横島君は・・。私のハウリングが人間に押し負けたのは・・これが初めて。」
立ち上がる。
足元に転がる・・おそらくは不発であった一つの文殊を手に取り・・覗き込む。
「・・何も書いてない・・。お兄ちゃんは横島君が何をしたか・・分かる?」
不思議そうに尋ねるユミールへ・・蒼髪の少年は目を閉じて・・・・
「・・さぁ?どうなんだろうね?」
やはり遠くを・・常人では確認できない・・ずっと遠くを視界に映す。
視線の先・・・そこでは何やら、GSと妖狐2匹というアンバランスな3人組みが・・
わいわいと仲良さげにじゃれあっていて・・・・
「・・・。」
彼は何も言わず・・ただ3人の様子を見つめ続けていた。
―――――・・。
(・・・・。)
数時間後。がたがたと揺れながら道を走る、空席だらけのバスの中・・。
タマモは口数少なく窓を見つめる、横島の様子に目を奪われていた。
露骨に声をかけるのも、少し悪い気がして・・・ちらちらと横目で窺っていると・・・・
「?何だ?何か用か?まな板ギツネ初号機。」
「・・勝手に失礼なあだ名をつけないで。」
ヘラヘラと笑う横島と途端、不機嫌になるタマモ。
どうでもいいが初号機がいるということは当然、弐号機もいるわけで・・・・
「・・・・・はむ。」
当の弐号機は横で平然と油揚げを頬張っていたりして・・。いや、本当にどうでもいいのだが・・・
・・・。
「・・どうかしたの?さっきから気味が悪いくらい静かだけど。」
「・・・・。」
さり気なくこちらを気遣ってくるタマモの声に・・横島は思わず声を失った。
まるで自分が考えていたことが・・・その不安が目の前の少女に見透かされたような・・・そんな気がして・・
淡い光が硝子に遷る。
「・・・・。」
「な・・なに?私・・なにか変なこと言った?」
例えそれが単なる錯覚であったとしても・・
『それ』は彼が最も・・・一番に恐れていること。
―――――・・誰も守れないよ、横島君。
灰色の言葉が脳裏によぎる。その声が・・・嘲笑うかのように、心の奥へと突き刺さる。
・・・誰も守れない・・。
たった一言。
だがもしも・・・・
もしもそれが・・・・・・本当に・・
・・真実だとしたら・・・・
「・・何、考えてんだか・・・オレは・・」
有り得ない。
そんな馬鹿な話が有ってたまるものか。あんなヘマは2度としない・・。もう誰も・・失ったりしない・・。
・・・。
「横島?」
「・・・ん?」
のぞきこんでくるタマモの顔に・・・横島は弱々しげに微笑んだ。
そして・・・自分へと言い聞かせるように・・・・
「・・心配すんな。・・何でもねえよ。」
もう一度だけ、光の差し込む窓の外へと目を向けたのだった。
〜続きます〜
〜おまけ〜
――カオス宅――
「理想的だ!!理想の新居だ!!!」
「な・・何じゃお主は・・・何故、人の寝床にうずくまっておる!?」
「ブホヒャヘッ!?我はチリとホコリから生まれし妖 ハウスダスト!!
じじい!!悪いがこの素晴らしい住処を我に明け渡してもらおうか!?」
「・・な・・何を言うか、気色悪い!!この変態め・・このヨーロッパの魔王ドクター・カオスが冥府へ・・」
「?ドクター・カオス・お友達・ですか?」
「「どこをどうすればそう見える!?」」
・・・。
その後、さまざまなやり取りを経て、カオス家に奇妙な同居人がまた一人増えることになるのだが・・
どうでもいいので描写は割愛する(笑)
〜あとがき〜
ハウスダストは多分、もう出てきません(爆)
こんにちは〜かぜあめです。長くてごめんなさい〜
うう・・・もうユミールさん・・心配したとおり大暴走です。
しまいには変な呪文まで唱えだしました(核爆)
キツネシリーズのメインテーマっぽい会話が出てくる箇所が多々見られる今回のお話ですが・・
戦闘シーンは成功したのか失敗したのか・・好きなのですが書くとどうにも敗北ばかりで・・・(泣
次回、第3話からようやく話が明るくなります。ユミールさよなら。ドゥルジさまこんにちは。という感じで。
学校が舞台のお話ですね。タマモとドゥルジさまの横島争奪戦が本格的に始まる勢いです。
それにしても書きたいバトルがたくさんありますね。スズノV.S.ドゥルジさまとか・・スズノV.S.ユミールとか・・
って・・なんでスズノばっかり(笑)
というわけで、今回はこのあたりで・・・それでは第3話でお会いしましょう。
今までの
コメント:
- 文殊六つか・・・・・横島くんも強くなったものです(しみじみ
ハウスダストがもの凄くいい味出してますね。なんとかまたおまけの所で出番があることを心から願います。
それにしても惜しい。もう少しで二人のヌードが見れたものを・・・。せめてスズノだけでも・・・・実に惜しい。
次回も楽しみにしております。頑張って下さい (殿下)
- 取り敢えず、“文珠”です(最悪な挨拶)。
教会の二人が、渋くて格好良ろしい。コカの娘は、恐いですな・・・。でも、この横島とコカの娘のバトルは、結構見応えのあるもので・・・。狐シリーズのバトルの中でも、自分的にかなり好きな方です。・・・回収される時には、伏線忘れてそうですが。
変な人は少年漫画の王道ですが、こう言う方向で変な人はGSにはいなかった気がする、コカの娘。別のタイプの変態も見たいなあ・・・。て言うか、だからホントの兄貴でもないのに、「おにいちゃん」はやめい!せめて、「〜おにいちゃん」て呼べよ!・・・実は、本名が「蒼髪の少年」なのではないでしょうね・・・?(笑)
日常編と言う事で、シロとかおキヌちゃんとかも期待してます。最終的に横タマをくっつけるなら、彼女達をどうするかは避けられない命題でしょうから・・・。 (竹)
- 文殊を六つを使った技が、物凄く気になります!!!ホント何なんでしょーか??でもユミールさんの呪文はカナリ、カッコ良かったですよ!!なんか凄く神秘的でしたー♪!!でも最近、ホント横島の前に現れる敵は、強さの格が違いますよね!!ふつーに考えても今の横島では蒼髪の少年の少年、ドゥルジさん、は、言うまでも無くユミールにも勝てないですよね!!?恐らく不死王にも勝てない・・・これは、横島も本格的に強くならないとマジでヤバイですね!!横島の苦悩が解る気がします!!★ (GTY)
- >(・・・・どうだ・・?)
ここでシャ●少佐と某・白い悪魔を連想してしまいました。
「連邦のモビ●スーツは化け物か!?」
……さて、ユミール大爆走でしたね。ホントにホントにとんでもないのばっかり次々出てきます。
横島クンはタマモを守り抜くことができるのでしょうか? (林原悠)
- うおっっっしゃあーーーー!!!!!
ついに…ついにドゥルジ様とタマモの横島争奪戦が拝めるんですねーーー!!!?
…………とまあ、今回の感想を飛ばして絶叫してしまいすみません…(汗)
あー、敢えて言わせてもらうのならば、やはり注目すべきは横島の文殊を六個も使った謎の攻撃でしょう!
あのユミールの右腕を吹き飛ばすなど、一体何したんでしょうか彼は?
それもドゥルジ様の事も含めて楽しみにしてますのでこれからも頑張って下さい! (超毒舌者)
- いやぁ、ユミールってば、素敵に無邪気に無茶苦茶しますねぇw
しっかり、生き残る横島もまたたいしたものです。文珠6個って
なんか凄い事してるんでしょうねぇ。
タマモとドゥルジ横島争奪戦。またタマモで萌えられるかと思うと
楽しみです。 (R/Y)
- いやぁ、ユミールってば、素敵に無邪気に無茶苦茶しますねぇw
しっかり、生き残る横島もまたたいしたものです。文珠6個って
なんか凄い事してるんでしょうねぇ。
タマモとドゥルジ横島争奪戦。またタマモで萌えられるかと思うと
楽しみです。 (R/Y)
- ユミールも強いですが横島もだんだんと化け物じみてきて素敵(笑
まあ、その辺はさておき、ユミールの言葉に横島が悩んでいるようですが、
どうなるか今後を期待しています。
次もがんばってください。 (青い猫又)
- 西条の語る「神」とは神族の事でもあの最高指導者の事でもないようですね・・・。
そして、楽しそうに横島を揺さぶり、希望を奪おうとするユミールが素敵でした(笑)。圧倒的な能力の攻撃より、その無邪気な言葉の方にこそ凄まじい殺気が宿っている様にも思えます。
あと、煩悩を炸裂させようとしてかなり失礼な言動の横島より常識的なハウスダストも素敵です。新居が見つかって良かった良かった(ぉ)。 (フル・サークル)
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