ザ・グレート・展開予測ショー

魔王と戦士 〜回想録〜2


投稿者名:純米酒
投稿日時:(04/ 6/ 9)

「それってどういうことよーーーー!」
「ど、どういうことなんですかぁーーー!」
「それは愛の告白と受け取っていいんですね、小竜姫様ぁーーー!」
「先生が・・・どうなるのでござるか?」
「油揚げ・・・・・・」
絶叫、的外れな返答、事の重大さが理解できない呑気な声

しばらくは誰も何も言う事が出来なった
静寂の中、タマモがカップうどんにお湯を注ぐ音だけが聞こえる

いち早く立ち直った美神が当然の疑問を小竜姫に投げかける、
「え、ちょっとなんで?なんでそんな話が持ち上がったの?」

「殿下による直接の御指名と老師からの推薦です」

「あのー、殿下というと・・・天竜童子様のことですか?」
正気に戻ったおキヌが小竜姫に問いかける

「ええ、そうです。あの事件以来、殿下は横島さんと俗界に大変興味を持たれまして・・・その後の皆さんの様子などを見聞きしていたんですよ」
小竜姫は懐かしむように話す
「そして、あのアシュタロスの一件ですね、横島さんの活躍と潜在能力に老師が推薦を出してくださいました」

どこか嬉しそうな小竜姫に、頭では理解していても納得できない美神は更に詰め寄る
「殿下と老師の方はわかったけど・・・小竜姫様はどうなの?コレに管理人が務まるとおもってるの?」

壁に向かい、なにやらブツブツと独り言を続ける横島を指差す
横島の頭の中はすでに煩悩で一杯なのだろう、一連のやり取りは耳に入っていないようだ
隣にいる話に退屈したシロが、散歩に誘おうと必死にじゃれついているのもお構いなしだ

「そうですねぇ・・・今すぐは無理でしょうけれど150〜160年修行してもらえれば立派に務まると思いますよ」

「ちょ、ちょっと待ってください、横島さんは人間なんですよ!160年も生きて居られる訳ないじゃないですか」
小竜姫の口からあっさりと出た言葉にうろたえるおキヌだが、小竜姫に代わって美神が答える

「まさか不老不死の秘術を使うの?今までの歴史上成功したと言えるのはドクターカオスだけっていう危険な術じゃない」
胡散臭そうに小竜姫を見つめる
実際カオスも完全に成功した訳ではないのだ、年を経るにつれ肉体に衰えが見られる事を、過去に跳んだ事のある美神は知っている

「その辺りは心配しなくても大丈夫です!!神界、魔界の技術をもってすれば万に一つの失敗もありません!」
自信に満ちた笑顔で美神、おキヌを見つめ返す
こうも自信にあふれる対応を取られると後が続かなかった

(まぁ横島君が成長したのは認めるし、口約束とはいえ竜神王の王子と家臣になるという約束をとり付けたのも事実だし
 文珠の能力者を抱き込もうとするにしては手が込み過ぎているわ・・・まさか)
美神の脳裏に嫌な予想が湧き上がる

認めたくない、考えられない、ありえない

そう自分に言い聞かせても不安はなかなか収まらない
(小竜姫様が横島君に惚れてる?まさか、そんな事あるわけ無いじゃない馬鹿馬鹿しい!)

「でもどうして小竜姫さまが管理人を辞めて横島さんが新しく管理人になる必要があるんですか?」
「えっ!?いやそのぉ・・・」

辺りに微妙な雰囲気が漂う
美神が頭の中で無理やり結論をだしたものの、おキヌの至極まっとうな質問にうろたえる小竜姫の反応をみて
自分の結論が間違ったものと思い知らされる

事務所内に漂い始めた不穏な空気に人工幽霊一号は結界の出力を上げる。これから起こるであろう惨事を予測しているのだろ
う、この辺りは学習の賜物か

「そ、それは老師も引退したいとおっしゃってるので後任を探していて・・・」
「ゲームばっかりやってて、もうすでに半分引退してるようなものじゃない」
「あ、そーいえばパピリオが寂しがっていたんですよ!だからですねぇ・・・」
「へー・・・修行者のワガママが神界の人事に影響をあたえるんだぁ・・・」
美神の追撃を、汗をダラダラと流しながら必死の弁明で説明する小竜姫だが、墓穴を掘っているだけである

小竜姫だけでも妙神山の仕事は十分こなせているという状態である、むしろ本人が「暇だ」と口にしていたこともある
魔界からの交換留学生の指導、監視もかねたパピリオの修行、そして修行を望むGSの相手。それ位である
パピリオも確かに寂しがっているだろうがこれも決定的な理由には程遠い

(言えない、言えないわ・・・私の夢が『妙神山の管理人のお嫁さん』になる事だなんて!
 『管理人のお嫁さん』になりたかったのに『管理人』をやってるのが嫌だなんて言えないわ!」
本音が声に出ているの気が付かない小竜姫、横島の返答も的外れではなかったようだ

予想外の事実に凍りつき、目の前の現実に嫉妬する美神、おキヌ、シロ
耳に飛び込んできた言葉に歓喜するものの、殺気と嫉妬の炎に怯える横島
胸の内の秘めたる思いをさらけ出してしまい、恥らう小竜姫
大好物を目の前にして、忍耐の時間が過ぎることしか頭にないタマモ


本日二度目の絶叫はたった一人の声で奏でられた

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未だに鮮明に記憶されている過去の出来事に身震いをすると羊羹を口に運ぶ横島
何を考えていたのかハッキリと理解した小竜姫は隣に座っている夫の手に自分の手を重ね、いたわる様な目で最愛の夫を見つめる

「あの時は美神さんもおキヌちゃんもシロちゃんも凄かったですねぇ」
横島が記憶する限りでは、いや誰が見ても大惨事としか言えない一件を笑って済ませられるのは
経過した年月がそうさせるのか、はたまた小竜姫が俗に言う『勝ち組』という立場だからだろうか
だがそれは幸せを実感しているからこその発言だったのかもしれない

「そうじゃのう、小僧が行方をくらました後はもっと凄かったぞ。不用意に事務所に近づいた西条が瀕死で帰ってきたときは
家賃のとりたてより怖かったわい」
カオスが笑いながら話に乗ってくる

「もうあんな目にあうのはコリゴリやーーー!」
こちらはまだ傷が癒えていないようである、涙ながらに訴える

「そういう割には、浮気癖が治っとらんようだったのう。竜神王の城では女官を片っ端からナンパしておったそうじゃな?」
「あっあれはだな、向こうから声をかけてきたんだ、俺から声かけてないぞっ!」
「本当かのう・・・?まぁ娘が出来てからは節操が無い行動父親らしくなったという事か・・・」
カオスと横島のやり取りに目を細めて笑っていた小竜姫だが、不意に通信鬼が自分に向って呼び出しをかけてることに気が付く
「もしもし?こちら小竜姫ですが・・・なにかあったの?」
今日は雑務も修行の申し込みも何も無いはずだ。まさか事件でも?と全員が不安になる
「あぁ小竜姫さまですか?よかった、大変な事が起こった、すぐに帰ってきてください!」
不安を煽るような声に一同の緊張が高まる


「蛍ちゃんとパピリオが派手に喧嘩を始めた、私の力では止められません!!頼む早く帰ってきてください!」
返ってきた声は切迫していても内容が内容であった、カオス、横島、小竜姫が派手にコケる
耳を凝らせば霊波の爆ぜる音にまじって罵り合いが聞こえる

「何やってんだか・・・」
ため息交じりで呟いた横島だがどこか嬉しそうである、その表情はまぎれもない父親のもであった

(ホゥ・・・案外まじめに父親をやっておるではないか・・・)

「じゃぁカオス、今日はこれで失礼するよ。暇があったら妙神山にもきてくれ」
右手で文珠を取り出し「転」「移」と念を込める側ら、左手はしっかりと小竜姫の腰を抱いている
小竜姫も両手を横島の首に回し体を密着させる

「達者でな小僧・・・」
言い終わると同時に目の前に居た二人の姿が消える
「ふふ・・・久しぶりに楽しかったわい。さてマリア、アルバイトにいく準備を頼む」
「イエス・ドクターカオス」




一方、爆音と罵声が飛び交う妙神山では・・・

「パパは今日私と寝るのーーーーーー!あんたなんかに譲るもんですか!」
「ポチの隣はパピリオのもでちゅ!蛍ちゃんはペチャパイ同士、小竜姫の隣にでもいるといいでちゅ!!」

「あぁ・・・また建て直しか・・・姉上・・・助けてください・・・」

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