ザ・グレート・展開予測ショー

タイムムービー(前編)


投稿者名:SooMighty
投稿日時:(04/ 6/ 8)

未来へ進んでこれから起こりうる事を把握したい。

過去へ戻って自分が起こした過ちを消去したい。


誰しもがそんな単純ながら純粋な夢を見た事があるだろう。



だけど、それは果たして本当に事実なのだろうか?


本当に、・・・本当に時の流れってやつが後悔や古傷を忘れさせてくれるのだろうか?








written by SooMighty




タイムムービー(前編)









やたら広い個室に一人の男が横になっていた。

「う・・・ん、ここは?」

男の目が覚めた。
ただ見覚えの無い場所にいきなり放り込まれ戸惑っていた。

「俺は一体なんでこんな所にいるんだ? 確か妙な爆発に巻き込まれて・・・」

そう彼・・・横島忠雄はゴーストスイパーとしての仕事、つまり悪霊を除霊している
所、いきなり謎の爆発に巻き込まれたのだ。

「たくっ! なんだってんだ! 札や霊力が暴走したわけでもないのに、あんな
 事が起こるなんて。」

とある女性の下で丁稚をやっていた・・・ってのも過去の話で、今は1個の事務所を
持つ所長にまで成り上がった。

一流と呼んでも差し支えのないレベルになっていた。


そんな彼でも今回の『事故』は予想しうる範疇に無かった。
まあ当然の話だろう。
なんせ悪霊と対峙した瞬間に起きた出来事なんだから。

悪霊を見つけただけで爆発が起きる・・・そんな怪奇現象などどんな
有能なゴーストスイパーにしろ理解も納得もできる筈が無い。


「とんだ災難だぜ。楽に終わらして酒を煽るつもりがこれだからな。
 ・・・まあいいや、とりあえずこの訳のわからん所
 から抜け出す事を考えねぇと。」


ここで文句を垂れ流してても何の解決にならない事に気づいた彼は
すぐさま思考を切り替えた。

前代未聞の事柄に遭遇したとはいえ、それにいつまでも固執していては
ゴーストスイパーなんて危険な仕事はやる資格が無い。
持ち前の経験と頭の回転の速さ生かし、この空間が一体何なのかを分析する事にした。


それにしてもこの部屋には特徴すべきものが何も無かった。
しいて言えば異様に広いってぐらいだ。

何も無いってわけでは無い。
一般住宅にありそうな、時計やら戸棚やらの小物は置いてある。
冷蔵庫、キッチン等も見える。生活臭が感じられるのだ。

ただ広い場所にそんな物が数個チョコンと置かれているのが変なのだ。

「いやな空気はしないけど・・・不気味には変わりねぇよな。」

周りの壁やらなんやらを調べても特に異変は無い。どこにでありそうな
素材を使った壁だ。ここに置いてある生活用品もこれまたどこにでも売ってそうな物ばかりだ。
よって脱出するきっかけも見つからなかった。
怪しいと思える物も場所も見当たらないのだから。

「参ったな、誰か助けを呼ぶのにも、携帯は圏外になってるし、
 つうかこんな場所で携帯が使える筈も無いよな。」

とりあえず横島は近くに置いてあった椅子に座り休憩する事にした。

「なんでこんな事になったんだろうな・・・、別に何処で死ぬにしろ
 覚悟はできてるつもりだけど・・・こんな所に閉じ込められて
 ジワジワ死んでいくのはちょっとな、嫌かな。」


悪霊祓いなんて危険でヤクザな仕事をしている横島だ。
当然死との危険性もある程度は覚悟している。

しかし、少しでもその死の存在が見えてくると我が身が可愛くなってしまうものだ。
元々彼は自分の身を可愛がる人種だ。
いくら肉体的に強くなってもそうは変わるもんじゃあない。
昔の臆病さはさすがに面影も残していないけど。



「大丈夫ですよ。別に殺すつもりはありませんから。」

ふと声が聞こえてきた。
いや部屋に響いたと言った方が正しいか。
わりとハスキーな感じの声だ。

「誰だ! 誰かいるのか!?」

すぐさま立ち上がり戦闘態勢に入った。

「嫌だなぁ、そんなに警戒しないでよ。
 さっきも言いましたよね? 殺すつもりは無いって。
 それどころか戦闘する意志すら無いですから。」

間もなく1番近くに扉が開いた。
いつか見た、彼が丁稚時代に見た死神と似た姿をした者が姿を現した。

「あんたは・・・死神か? にしちゃあ随分威厳がないが。」

横島は本音をそいつにぶつけた。
威厳が感じられなくとも死神のファッションをしていたらさすがに警戒してしまう。

「死神? はは僕はそんなに大それた存在じゃあないですよ。ただの下級妖怪です。」

近くで聴く声はもっとハスキーだった。
とりあえず敵意は感じ取れない事だけはわかったので戦闘態勢は解いた。

「その下級妖怪がなんの用だ? できれば元の居場所に帰りたいんだが。」

この妖怪がここに連れてきたってのは直感ですぐに理解できた。
害は無いとわかったがこんな事をされて黙っている道理も無い。

「まあそう邪険にしないでくださいよ。これから面白い事が始まるんですから。」

笑顔を絶やさずにその下級妖怪は言った。

「面白い事だと?」

横島は訝しげにそう呟いた。
いきなりわけのわからないとこに連れ出され、しかも怪しい妖怪に
面白い事なんて言われても素直に納得できる人間なんかいないだろう。

「あ、警戒してますね。大丈夫ですよ。何度も言ってますが戦闘の意志は
 無いですから。」

「ああ、それはわかってる。あんたの雰囲気見て戦闘は全くできそうには見えないしな。」

そうこの妖怪からは霊力があまり感じられなかった。
だから会って間もない怪しい妖怪相手でも警戒を解いたのだ。

「とりあえずこれからあなたに見せたいものがあるんですよ。細かい事は
 後で教えるし、ちゃんと元の世界にも返しますから見て頂けます?」

「ああ・・・わかったよ。ただ俺はあんたのせいで途中で仕事を降りちまったんだ。
 その埋め合わせはきっちりしてくれよな。」

「はい、それはもう保証しますよ。」

下級妖怪はニッコリと微笑んだ。
その屈託の無い笑みに横島も幾分か気が楽になった。
少なくとも多少は心を許した。

「じゃあとりあえず僕についてきてください。ここの部屋じゃあ
 できないんで。」

そう言って妖怪は30メートル程先にある扉に向かって歩き始めた。
横島もそれに続き、ついていった。

「なんだまだ部屋があるのか。」
扉を見れば他にも部屋がある。それは一目瞭然の事だが敢えて知らん顔を
して聞いてみた。

「ここは僕の住処なんですよ。今の部屋にはあなたに見せたいものは
 ないんで。」

「そうか。てか生活用品が置いてあるのはなんとなくわかったけど、なんで
 こんなに不自然に広いんだ?」

横島は1番疑問に思っている事を尋ねた。

「あなたもそこを聞きますか。なんでかなー この広さにオシャレを
 感じません?」

「なにはどうあれ普通の人間はそうは感じないな。最も俺は普通の
 人間じゃあねぇから、誰もそう感じないってのがたった今証明されたな。」

意地悪そうにそう言い放った。
下級妖怪も困った様な顔で

「はは、お客さん中々厳しい事をおっしゃる。」

とか言いながらも妖怪は余り困ったような素振りを見せなかった。
ちなみに今は扉を開けて下へ続く階段を歩いている最中だ。

「まあ、そんな事はどうでもいいや。あんた名前はなんて言うんだ?」

今更ながらお互いの名前を知らない事に気づいた。
どうやらお互いにそういう事にはこだわらないタイプだ。

「僕? うーん名前なんて無いんですよね。自分がいつ生まれたかっての
 もわかってないですから。下級妖怪とでも呼んでください。」

「・・・それはいいずらいから妖怪ってこれから呼ばしてもらうぞ。」
彼は面倒臭い事が嫌いな男だった。
だからといって妖怪って呼び方もどうかと思うが・・・

「お好きな呼び方で結構ですよ。あなたはなんて名前で?」

「俺は横島忠雄ってんだ。横島って呼んでくれ、妖怪に忠雄なんて
 親しげに呼ばれたくないからな。」

はき捨てるようにいい放った。
美女妖怪ならともかく、こんな死神もどきにフレンドリーに接しられても困る
というのが紛れも無い彼の本心だ。

「ズケズケ本音をいう人ですね。まあ僕は構わないですけど。
 じゃあ横島さん、そろそろ着きますよ。そこの扉を開けた所ですので。」

妖怪はそういいながら鉄製の扉を開けた。







その部屋は横島が思っていたような広さではなかった。
でっきりさっきの部屋と同じように不自然な空間の場所へ出るものだとばかり
思っていた。

予想とは違い、その部屋は狭く殺風景だった。
ただ異様に目立つものが置いてあった。





30インチものテレビが。






「おいおい、こりゃまた随分おかしい部屋の構成だな。」

誰にいうのでもなく横島の口からそんな言葉が自然と漏れた。

「ここには不要な物は置きたくないんですよ。まあなんとなくでやっている
 事なんですけどね。理由はありません。」

「そうか。・・・でこのテレビで何を見せてくれるんだ?」

もう大方このテレビで何か見せてくれるってのは予想がついた。
というよりかはこの状況ではそうとしか考えられないが。

「ふふ、そうですね・・・ここで見せるのはあなたの過去、そして未来です。」

「! はは、そりゃまた随分スケールのでかい話で。」

やや半信半疑だった。
それもそうだろう。ここへ来ていきなりそれじゃあ。

「その顔、信じてないですね。でもすぐに考えが変わりますよ。」

妖怪はいたずらをするような顔つきでテレビの電源をつけた。

「まあとりあえずは最近の出来事から見て頂きますね。」

「・・・」
横島はもはや押し黙るしかなかった。
なんせいま映っている映像では2年前・・・かつての同僚だった
氷室キヌとの結婚式が行われているからだ。

と同時に少しパニックに陥った。
この急展開は一体なんなんだ・・・と内心では焦っていた。

「おキヌ・・・」
それだけ呟いた。
いやそれ以上の言葉出せないといったほうが正確か。
彼女との思い出は色々あるが、今はあまり思い出したくない。


別居中だからだ。
苦い思い出のが強いのだ。



今映っている結婚式での二人はなんの不安も無い顔でお互いを見つめあっていた。
そして数秒後には誓いの口付けをしていた。
周りの人たちも二人を心から祝福してくれている。
実際はこの時周りの人間がどう思っていたかなんてわかりようもないが
少なくとも横島の目にはそう映った。


この時はどんな困難も二人でいれば乗り越えられると思っていた。

人生は困難。現実は甘くない。



二人ともその事は十分に覚悟していた。



していた筈だった。



いつのまにかテレビは二人が喧嘩して言い合っている所に切り替わっていた。

「もう私耐えられない・・・やっぱりこのままあなたと続けていくのは自信がないです。」

「だから謝ってるだろ!? 俺が悪かったて!」

「いい悪いの問題じゃないのよ。あなたの目に今私は映ってるの? 映ってないでしょ!?
 もう私は疲れたのよ。」

「あんなん軽い冗談だって前も説明したろ!? なんべん言わせるんだよ!」



そんな3流ドラマみたいなのが淡々と流れてくる。


「浮気が原因で別れたんですね。奥さんとは。」
不意に妖怪が横島にそう尋ねてきた。

「ああ。」
視線はテレビに向けたままその一言だけ無愛想に返した。

「こういうのとは自分は全く縁が無いと思ってたのにな。」
自嘲気味に笑いながらそう言った。
女だけには優しくする。
甘っちょろい誓いだけど本当にこの誓いだけは守っていく『義務』
すらあると思っていたし、自信もあったのだ。

「でもな、今更こんな事いうのもなんだけどな、別に他の女とは本気
 じゃあない、ましてや肉体関係なんかないし・・・いやキスですらした事はないんだ。
 今となっては愚かな言い訳に過ぎないけどな。それに・・・」

「それに? なんです?」
続きが気になったのか、妖怪は先を促した。

「暮らし始めてから最初の方は、浮気ってのも変だが・・・
 そういう事は公認だったんだ。私を1番に見てくれればいい、
 女性に優しい忠雄さんだからそれも仕方ないって言ってくれたんだ。
 若さからきたほんの悪ふざけのつもりだったんだ。」

自分でいって吐き気がしたが、別々の道を選ぶのはまだ速すぎる。
横島は今でもそう思っていた。別れてから2年が過ぎても。


「初めはおキヌさんも覚悟していたんですよ。あなたのそういう所もひっくるめて
 好きだったのも事実です。でも結婚して彼女は変わってしまったんです。
 あなたが思っているほど女性ってのは包容力があるわけでも、ましてや強くも無い
 んですよ。」

妖怪は初めて真面目な顔をしてそう言った。

「・・・そういうもんか。」

「そういうもんです。」



テレビには荷物をもった氷室キヌが電車にのるシーンが映し出されていた。
この時、この駅には横島は居合わせてなかった。
つまりこの場面を見るのは初めてだったりする。

なんの反応も見せずにただ下へと視線を移した。

「じゃあもうちょい前の過去を見てみましょうか。」
そんな横島を大して気にもかけずに話しかけた。

「・・・ああ。」

「気分が悪いなら言ってください。休憩しますから。」
少しは心配したのか、気遣いを見せる。

「いや大丈夫だ。それに自分の過去を振り返るなんて滅多にできない体験
 だしな。」
やや覇気の無い声だが、それでも明確な意志は伝わる声色だ。

「そうですか。じゃあいきますよ。」

そういって妖怪がチャンネルらしきボタンを押すと映像が切り替わった。


横島が映っていた。しかもバンダナをまだしている時代だ。

服はなぜだか着てなかった。というより水着姿だった。
そして若い頃の氷室キヌやその僚友一文字魔理と弓かおり等の
懐かしい顔があった。
みんなまだ若々しくどこか垢抜けない感じが見えた。

「ん〜〜、これはかなり昔だな。確か六道女学園の臨海学校の時か?」

「そうです。」

「懐かしいな。あまりこの頃の事はもう覚えてないんだよね。俺が高3の時だっけ?」

「高2です・・・」

そんなやりとりをしている間に横島が周りの女子高生の水着姿を写真に
収める為に奔走しているシーンが映っていた。

「この頃から随分お盛んですな。」
苦笑いする妖怪。

「うーん、自分で見てもちょっとビックリするな・・・」
自分で自分に呆れるなんて馬鹿馬鹿しいが、この姿を見たら
そうなりざるを得ない。
そんな考えが駆け巡る。

「あ、殴られてる。」
亜麻色の髪をした女性・・・美神令子に殴られていた。
殴られていてもカメラを手放しそうも無い気合が伝わってきた。
それがいいのか悪いのかはわからないが。

「まあ、この状況でこんな事やってたら当然だけどな。」
こんな事を自分の部下がやってたら俺だって同じ事やるわ。
なるほど、当時は殴られた事を理不尽なんて思ったけど至極当然の
事だったわけね。

横島は心の中でそんな事を喋っていた。

ラストシーンは美神令子に蹴落とされ、横島が深海まで潜り海坊主を消し去る。

「あの頃の俺・・・不死身か・・・」

「妖怪の僕もびっくりですよ。これ。なんであなた生きてるんです?」
心底不思議でたまらないって顔で横島の顔を見つめる妖怪。

「知るか!」
不貞腐れながらそう叫んだ。

「てかこの頃の横島さんって悲惨ですね。まるで奴隷・・・」

「言うな! 俺が1番わかっているんだから!」





そう惨めで悲惨なはずなのに・・・




今の横島の方が地位も実力もファッションも勝っているのに、
この頃の横島のが輝いて見えてしまう。
若かりし頃の自分に嫉妬してしまう。
今の安定した暮らしに不満なんか無いが、やっぱり輝いていた過去を
羨望の眼差しで見てしまう。


少なくとも現在進行形の自分よりは過去の自分のが人生を楽しんでいた。
そう確信していた。

また、この頃の自分はいつまでもこんな風に人生を楽しんでいける
と思っていた。

『自分に正直で、好き勝手に、はみ出していようが、世間に後ろ指
 指されようが、常に冒険気分で世間を走っていける。』

そんな理想像を描いていた。

いつからだろうか・・・そんな理想を理想と思えなくなったのは。
自分の事務所を持ち、経営に失敗できなくなった頃か?
おキヌと結婚して、短いながらも家庭を持った頃か?

それともその両方か? 両方なんだろうな・・・


脳細胞が色んな思いを次々浮かべて、そして消えていった。







「なあ。」

「はい? なんでしょう?」
突然話を振られたにも関わらず少しも驚いた様子を見せない妖怪。

「結局、人生ってさあどんな形であれ、おもしろおかしく過ごした奴が勝者
 なのかな?」

「それは・・・価値観次第としか言えませんね。
 月並みな言葉で申し訳ないんですが。」

「そうか、そうだよな。」
複雑な顔をする横島。
彼自身も、こればかりは誰もわからないとわかっているのだ。
それでも聞かずにはいられない自分がおかしかった。

今言った妖怪の言った事だっていくつもある答えのたった1つに
過ぎない。

それすらわかってる。だけどそれを聞いて多少なりとも気が楽になる
お手軽な自分がまたおかしかった。











しばらくすると今度は触覚の生えた女性が映像化された。

「ル・・・ルシオラ!」

横島は今までで1番大きいリアクションを見せた。
だが動揺しながらもすぐに落ち着きを取り戻した。

「・・・あいつが映るのも考えてみたら当然か・・・過去の出来事を
 流しているんだから。」

独り言をいう横島に対して妖怪は沈黙していた。


この大戦の出来事が流れている間、二人ともずっと押し黙っていた。
美神令子がルシオラに対する解決策を出すまで。


そこまで進んでテレビは真っ暗になった。


妖怪がようやく口を開いた。

「少し休憩にしましょう。」
そういって部屋の明かりをつけた。


「ふう。少し疲れたな。」

「でも見応えあるでしょ?」
相変わらずの無邪気な笑顔でそう横島に聞いてくる。

「まあ・・・な。」
やや複雑そうに答える。
あの大戦からかなりの月日が過ぎた今でも横島にとってルシオラ
の事は思う事があるのだろう。

「後、なんか質問あったら聞いてください。多分大体の事は
 答えられると思うので。」
自信満々って感じだ。

「そうか、それはともかくとしてさあ、この時の俺ってやっぱり
 悔しかったんだよな。ヘラヘラ笑ってたけどやっぱり途方も無く悔しかった。
 自分はやるだけの事はやったって納得している部分もあったけど、
 全部が全部そういうわけにもいかんし。」

笑いながらそんな台詞を吐く横島。

「んでさあこっそり文殊で時間移動して、ルシオラの事
 助けてやろうって密かに思ってたんだけど、時間の作用
 って奴? まあ論理的な事はよく知らないけどそいつが働いて
 結局は大して代わり映えの無い未来を歩んじまうってのを思い出したんだよ。」

言葉を続ける横島。

「それは僕も耳にした事ありますね。」

「それ考えるとさあ、時間が経てば痛みを忘れられるっていう名文句は嘘っぱち
 だよな。」
どこか楽しげに喋る。顔もいたずら小僧のそれに近かった。

「んーまあ確かに言われてみればそうですね。やっぱそう都合よくもいかないですよね。」
妖怪も楽しそうに答えた。

「ところでさっき質問に答えるっていったよな?」

「え? あ、はい。」

「もしもだよ。あの時俺が・・・美神さんの案に納得しないで、・・・ルシオラの
 霊基構造の欠片をくまなく探してたら・・・ルシオラは復活させれたのかな?」
途切れ途切れに恐る恐る聞いてみた。

「それは・・・」

「待った!!  ・・・いやゴメン。 やっぱ答えなくていいや。」

答えようとした妖怪を遮った。
知りたいって気持ちも強かったが今更それを知ってもどうなるわけでもない。

それに・・・怖かった。
何より真実を知ってしまうのが怖かった。


「変わりにこの質問に答えてくれ。ルシオラは・・・幸せだったんだろうか?」

「・・・ええ間違いなく彼女は幸せでした。」
今まで1番いい笑顔で妖怪は答えた。

「そうか・・・それならこの件はこれで良しとするか。」
彼も今までで1番いい笑顔でそう言った。


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