ザ・グレート・展開予測ショー

魔王と戦士 〜回想録〜


投稿者名:純米酒
投稿日時:(04/ 6/ 8)

「いやー、ひさしぶりじゃのぅ小僧。何年ぶりになるかのう・・・」
「155年と・4ヶ月・22日ぶりです・ドクターカオス。」

「マリアは155年たっても変わらないなー。いや、肌触りが変わったんだっけ、あったかいな〜、や〜らかいな〜」
「何をしてるんです!何を!!」

マリアの腕に頬を擦り付けトリップする男に、情け容赦ない鉄拳が飛んでくる

懲りない男である

何度も目にしたなつかしい光景に、『ヨーロッパの魔王』ドクターカオスは笑い声をあげる

「相変わらずで安心したわい。マリア、お茶かなんか持ってきてくれんか」
「イエス・ドクターカオス」

台所に向うマリアの背に向って、すまなそうな表情で頭を下げる女性には一対の角が生えていた
『元』妙神山管理人 小竜姫である
小竜姫は床に顔をめり込ませた愛弟子の一人であり、『現』妙神山管理人にして『天竜の戦士』 横島忠夫に目をやりながら呟く

「もう・・・そういうことするのは私だけにしてくださいね」
「へ?何か言いました小竜姫様?」
「なんでもありません」

顔面からの流血をそのままに立ち上がる横島と、耳まで赤くなっている小竜姫

「そんなところで漫才やっとらんで上がれ、土産は持ってきたんじゃろうな?」
「相変わらず貧乏なのか、お互いかわんねーなー」
「何を言っとる、小僧の肩書きはずいぶんと変わったではないか。まぁ性格はそのままで安心したがのう」
「ほっとけ」

二人が軽口を叩き合ってる間に、急須と湯のみを携えたマリアが戻ってくる
ちゃぶ台には土産の高級羊羹が鎮座していた

「しかし、不思議なものよ・・・まさか小僧が竜神王の側近になるなんて」
楊枝に突き刺した大きめの羊羹を片手にお茶をすするカオス

「ああ、俺だって未だに信じられねーよ」
空になった湯のみに視線を落とし、ぎこちないな笑顔を作る横島

あのときの事を思い出しているのであろうと、察した小竜姫は横島を見つめながら微笑む
(ふふ・・・私は殿下、いえ竜神王に感謝しているんですよ、横島さん)



『あのとき』


そう
神界、魔界を混乱させた大戦から1年余りが過ぎたある日

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

いつものように事務所に向っていた横島は、駐車場に止めてある車を目にすると
中に居るであろう人物の名を叫ぶ、どうやら二人の鬼門は眼中にないようだ
「小竜姫様あぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・」
韋駄天も真っ青な速さで事務所へ駆け込む、叫びながらの全力疾走にも関わらず息一つ乱れていない

これも彼特有の煩悩の賜物であろうか

勢いに任せて扉を開けると、そこには期待通りの人物が目に飛び込んできた

「あぁ・・・小竜姫様、相変わらずお美しい・・・」
「あら、ありがとう、でも前もそんなこと言ってませんでした?」

目の前の小竜姫しか目に入っていないのか、自分の行動を受け流せない嫉妬深い
人物が居ることを横島は忘れてしまっていた

頬杖をつき、不機嫌な表情を隠さない美神
運んでいるティーカップが、音を立てるくらいワナワナと身を震わせ怒りをあらわにするおキヌ
本能か、はたまた野生の勘か 目の前の来客に低い唸り声をあげるシロ
おそらく寝起きだろうと思われる半眼の表情で、「油揚げ・・・」と呟き フラフラと歩き回るタマモ

「横島くん・・・あんたねぇ、雇い主を無視するなんて良い度胸してるじゃない」
怒気、殺気が渾然一体となり地獄から湧き上がるような声に、横島が我にに返る

「すすすすすいません、おはようございます美神さん。今日もいい天気ですね〜」
冷や汗を滝のように流しながら、どもりつつも挨拶をする

「で?小竜姫様もなんの用事ですか?」
神を恐れぬとはこの事であろうか、およそ神様に対しての発言ではない
しかも来客でもあるのだ、経営者としても頭を傾げたくなる発言だが
そこは『地球が滅んでも、自分ひとりは生き残る』と高言してはばからない
あの『美神 令子』である

小竜姫も別段気にはしていないようだ。来訪の目的を話し始める
「そうですね、今回のお願いなんですが・・・多分今回で美神さんたちにお願いす
るのは最後になると思います」

『最後』という言葉を耳にし、幾分真剣な表情になる美神
先ほどの不機嫌な態度は消え、身を乗り出して小竜姫の言葉に耳を傾ける

「横島さんに妙神山の管理人になってもらいたいと思うんですよ」
小竜姫の口から発せられた意外な言葉に場が凍りついた

美神、おキヌ、当の横島も驚愕を隠せない
事情をよく理解できないシロは、?マークがいつもより多く浮かんでいるようである
そしてあくまでマイペースなタマモ


「それってどういうことよーーーー!」
「ど、どういうことなんですかぁーーー!」
「それは愛の告白と受け取っていいんですね、小竜姫様ぁーーー!」
「先生が・・・どうなるのでござるか?」
「油揚げ・・・・・・」
各人各様、叫び声をあげる
事情を理解していないシロは呑気なものである
タマモにいたっては小竜姫の言葉は右から左へと流れていたようだ



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