ザ・グレート・展開予測ショー

百貨店パーティー☆1F


投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(04/ 6/ 7)


「 実を申しますと私―――犬を切るのは初めてなんですの。 ああ・・・楽しみですわ・・・! 」

ナース服を着て、手術用のメスを手にして怪しく笑う乱破の忍、氷雅(ひょうが)

《 赤城家の番犬として、貴様だけは絶対に許さないであります!! 》

一度死んでよみがえった、軍用サイボーグ犬、零式(ゼロ)

「 ――――――! 」

氷雅の弟であり、背が極端に低い無口な銀髪の少年、妖岩(ようがん)

「 ・・・あんたも充分非常識よ(汗) 」

ゼロの飼い主である、普通の女子高生、千鶴(ちづる)



彼らがもし出会ったら、そしてすでに出会っていたら……そんな彼らの、出会いとその後のお話です。


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【1】氷雅作業中

とあるマンションの一室にある【伊能家】。 極々普通の家庭に、フツーでない姉弟がいた。

「 ふんふんふ〜ん♪ 」

部屋にこもり、鼻歌まじりで“何か”をしている氷雅。

「 ……… 」

ふすま1枚向こうにある隣のダイニングキッチンでは、伊能家の親子と妖岩が朝食をとっていた。
父と母、そしてメガネをかけている見た目の●太くんっぽい少年が、小学5年生の長男【せいこう】。
彼こそ氷雅と妖岩がつかえる“主(あるじ)”である。

「 ……氷雅さんなにやってるんだ? 」
がらっ
「 若…… 」

ふすまを10センチだけ開け、顔を半分覗かせる氷雅。 彼女はあやしく笑いながら―――

うふふふふ★
「 若、私がいいと言うまで決してこのふすまを開けて覗いてはなりませぬ。 」
「 ツルの恩返しかい(汗) 」 

   ・
   ・
   ・

「 じゃ いってきまーす! 」
「 ………… 」

ランドセルを背負ったせいこうは、護衛の少年忍者、妖岩と共に小学校へと向かった。

……そしてその日の昼過ぎ―――ふすまの向こうでなにやら作業をしていた氷雅は……

「 ―――うふ♪ 完成。 」



【2】ゼロ休暇中

―――ところかわって赤城家。 庭には休暇中のゼロがいた。

《 ふあああ〜〜〜 千鶴どのー早く帰ってこないでありますかな〜〜〜 》

庭に置かれたクッションをベット代わりにし、ぐで〜〜〜と仰向けになっていた。

「 ただいまー 」 ぴくっ 《 ! 》

すぐさま起き上がり、玄関へと向かう。

びしっ!
《 赤城家の番犬ゼロ! 本日も何事もなく無事・赤城家を守りきりました―――! 》

2本足で立ち、前足で敬礼するゼロ。 

「 ごくろうさま。 私このまま買い物行くけど、あんたもいっしょに来ない? 」
《 お供するであります! 》

ニヤッ‥ 少しだけ、千鶴の口元がゆるむ。



―――てくてくと住宅街を歩く、ゼロと制服姿のままの千鶴。

「 ……ねえ、あんたいったいどーやって話せるようになったわけ? 」
《 言語機能についてでありますか? 》
「 てゆーよりー、誰にそういう機能をつけてもらったの? 」
《 本部の研究員たちでありますが。 》

ぴたっ‥‥千鶴は立ち止まった。

「 本部って? 」
《 防衛隊のことであります。
  これはもともと、とある研究所で進められた研究成果であり、生物と機械、
  それぞれの優秀な研究員たちによってサイボーグ犬は誕生したのであります! 》
「 へえ〜…… 」
《 なかでも自分は開発初期の頃に完成したものでありますから、
  最も多くの現場を経験してきた、優秀なサイボーグ犬のなのであります! 》
ニヤッ‥
「 それは興味深いわね……もっと聞かせてくれない? 」



【3】俺の彼女が

―――別の場所……そこに“千鶴”と千鶴の彼氏、中島が歩いていた。

はっはっはっはっ!
「 赤城ー よかったら俺んちこねえ?
  ウ ウチの家族、今日明日旅行いってて誰もいないんだよな! 」

いきなり耳とシッポをはやし、息づかいの荒い中島犬。
明らかに煩悩ムキ出しの彼に怪訝そうにする千鶴であったが……
千鶴は少しうつむいて顔を赤らめると―――

「 うん、ちょっとだけなら…… 」
「 マ マジっ!? うおおおおよっしゃー!!!! 」

感動と喜びで涙を流す中島。
まったくなに考えてんだか……千鶴はそう思い、やっぱやめようかなーと思っていたその時!


ばったり!


住宅街の交差点を曲がろうとした千鶴と中島は、向かいから来た千鶴とゼロに対面した。

「 えっ?えっ? 」    ……驚き戸惑う(中島といた)千鶴。
「 ……… 」    ……表情薄い半目の(ゼロといた)千鶴。
《 ち、千鶴どのが2人!? 》    ……驚き戸惑うゼロ。
「 俺の………俺の彼女がドッペルゲンガー!? 」    ……ご乱心中島。

「 あ、あんた誰よ! 」
「「 うふふふふ…… 」」

ゼロといた千鶴は、力を抜いたかのようにガクッとうつむく。
そして背後からフッと現れたのは、忍者服を着た10代後半の女性。
以前にしゃべる犬・ゼロに興味を持ち、ゼロを解剖しようとしていた氷雅であった。

「 あんたこの前の……!? 」
《 貴様、敵性女子ナースだったでありますか! 》
「 ……ってゆーかナニ!?(汗) 」

事情を知らない中島は混乱中。
ゼロはあわてて、体内に内臓された装置で2人の千鶴の体温を調べた。
すると、今までいっしょにいた千鶴からは、人としての体温は見受けられなかった。

《 この千鶴どの、ニセモノであります!! 》
「 うふふっ いかがかしら? 私の自信作“あやつり影武者人形”の出来具合は。
  以前乱破の里から送られたものを使い、千鶴さんバージョンに作り直したのですわ♪ 」

カクカクッと、千鶴(人形)を動かしながら、操りの糸がつながった棒を見せる氷雅。
千鶴(本物)やゼロはあ然としていた。

「 おかげであなたのこと、たーっぷり知ることが出来ましたわ。 これで私たちお友達ね♪ 」

ゼロに向かって、にこっと微笑む氷雅を見た千鶴は―――

「 ……! ゼロ、あんたこの人になにしゃべったの!? 」
《 なにって防衛隊のこととか研究所のこととか……
  他には爆弾の作り方 地下ルートの販売組織 某国要人の裏事情――― 》
「 そんなの私が聞くわけないでしょ! 国家機密レベルの情報をペラペラしゃべるなっ!! 」

確かに普通の女子高生の会話ではない。
氷雅の巧みな話術ゆえのことなのか、ゼロは本来秘密にするべきはずのことまでぶちまけていた。

「 千鶴さん、あなたのことも聞いてましてよ。 」
「 ……なにを? 」
「 ゴローのお嫁さんになると言ってた時のこととか……
  小1の時、おやつのプリンをお母さまが食べてしまったのがきっかけで、
  ゼロと家出して公園で泣いてたのを
  近所の人が見つけて家まで送ってもらった時のこととか――― 」
ぎゅ―――っ!
「 あんた私が封印したい過去をいまさら蒸し返すと思うわけ!? 」
《 も 申し訳ないであります〜〜〜! 》

顔を真っ赤にしながらゼロの耳をひっぱる千鶴。

「 てゆーか思いだした! あんたあのとき自分だけ先に家に帰ったでしょ! 」
《 じ 自分はママどのにむかえに来させようと――― 》
「 ウソ言いなさい! 私が帰ったとき、あんたのんびり晩ごはん食べてたよね!? 」

過去の記憶が蘇える千鶴。 その一方で中島は深く沈んでいた。

ず〜〜〜ん
「 赤城〜誰だよゴローって〜〜〜(暗) 」
「 子供の頃の話だってば! そんなことよりあなた誰!?
  ゼロのこと聞いていったいどーするつもりなの!? 」
「 私は乱破(らっぱ)の氷雅。 とある方につかえる忍者の末裔ですわ。 」
《 ナースではなかったでありますか!? 》

ゼロは先日、ナース服姿の氷雅にひどい目にあっており、その時から勘違いしていた。

「 やっぱり忍者! ……まあそんな気はしてたけど。 」

ゼロが帰ってきてからというもの、千鶴は非常識な世界に多少なりと慣れつつあったようだ。

( でもこの人が仕える、あるお方っていったい……(汗) )

千鶴はチョンマゲでひげを生やし、日の丸の扇を持ったおっさんを想像したが、現代にそんな男はいない。
するとそこに―――


「 あれ氷雅さんじゃない? 」
「 あーっ! それって確かあやつり影武者人形!? また悪さしてるなー! 」
「 ……… 」

突然やってきたのはせいこうと妖岩。
そして髪を三つ編みにして、耳元で輪っかのように巻いている少女が、せいこうの同級生【香山夏子】。
せいこうと香山はランドセルを背負っていることから、彼らも学校帰りのようである。

「 若! 」

氷雅はせいこうに近づくと、彼の肩を抱いて―――

「 この方が私の主(あるじ)ですわ♪ 」

よろっ‥‥ イメージとかけ離れた主の姿に、思わず倒れそうになる千鶴。 

「 今日の所は楽しい話がたっぷりできたことですし、そろそろおいとましましょうか。
  そのうちゆっくりとあなたとの戦いのお相手、してあげますわ♪ 」
《 そうはいかないであります! 》

去ろうとする氷雅を呼び止めるゼロ。

《 秘密をここまで知られてしまったからには、タダで帰すわけにはいかないであります!
  こうなったら貴様に記憶抹消の処置を――― 》 「 ちょっとちょっとゼロ! 」

ゼロを呼び止める千鶴。

《 な、なんでありますか千鶴どの。 》
「 あれ…… 」

千鶴の指差す先にいたのは、あ然としているせいこうと香山。
彼らはゼロが話せることは知らなかった……

が〜〜〜ん!
《 しまったであります―――!!(泣) 》
「 もう遅いわよ! あんたって犬は!! 」
「 おほほほほほほほ♪ わたくしは何も申してありませんことよ♪ 」

楽しそうに笑う氷雅。 そして千鶴は、すぐさませいこうと香山の前に来て手を合わせると―――

「 お願い! このことみんなには秘密にしておいてほしいの! 」 



【4】少年少女たち

千鶴・ゼロ・中島、せいこう・香山・妖岩・氷雅の6人と1匹は近くの公園に場所を変え、
千鶴はせいこうと香山にかいつまんで事情を話した。

「 ―――というわけでみんなに知られたらまずいのよ〜! 」
「 そういうことなら僕らもしゃべりませんよ。 な、香山。 」

うなづく香山。 そしてせいこうはジト目で氷雅をにらむと……

「 それにうちの氷雅さんがものすごーく迷惑かけたみたいだし。 」
「 そんな、若! それでは私だけが悪者みたいじゃないですか〜〜〜! 」
「 みたいじゃなくてそうなんだよ! 」

あからさまなウソ泣きの氷雅に、おもいっきり怒鳴るせいこう。

「 もう千鶴お姉ちゃんやゼロに迷惑かけちゃダメだからな! 」
「 わ わかりましたわ……
( ……でも今回はかなりの収穫ですわ。 防衛隊に軍事機密……
  若に天下をとってもらうためにも、まずはお国の情報収集を――― )……うふ♪ 」

「「 …………(汗) 」」

影でクスクス笑う氷雅に、言い知れぬ不安を抱く千鶴とせいこう。

「 ねえ もしよかったら、これからあたしんちのシロといっしょに遊んでくれない?
  あたしもピレネー犬の仔犬を飼ってるんだけど、シロのお友達探してた所なのよねー 」

ゼロの頭を撫でながら話しかける香山。
香山の言う『シロ』とは、某オオカミ少女のことではなく、
以前ダンボールで捨てられていたのを妖岩が拾い、香山が飼うようになった白い仔犬のことである。

びしっ!
《 もちろんであります!
  民間犬とふれあうことは、軍犬である自分には滅多にないことでありますから! 》

敬礼するゼロ。 そして千鶴も頭を下げ、香山に目線を合わせると―――

「 夏子ちゃん、私もいいかな? 」
「 もちろんお姉ちゃんも来てよ! うちのシロ紹介するから! 」

香山も嬉しそうに了承する。 だが中島は―――

「 あ 赤城ー、俺んち来るっていう約束は…… 」
「 あ……ごめん、また今度でいいかな? ゼロだけじゃ不安だし…… 」


が〜〜〜〜〜ん!!!!!!!!


おもしろい顔をしたまま、心の中で何かが崩れた中島。

《 勝った――― 》
( ふ〜ん この子がゼロの宿敵、千鶴さんの彼氏ね〜♪ )

満面の笑みを浮かべるゼロ、先ほどとは違う方向に興味をもちだした氷雅。
そんな姉を、弟の妖岩は不安そうに見上げていた……



……その日の夜。

ずるずるずる〜〜〜っ
「 はあ〜っ バカ犬に負けた…… 」

自宅で1人、寂しそうにカップラーメンを食べている中島の姿があった……

「 ヂグジョオオ〜〜〜〜〜ッ!!!!! 」

泣くな中島! 日が悪かっただけだ!
彼女はキミのコト、決して嫌ってはいないはず! 落ちついていこう、健全な男子高校生!

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