ザ・グレート・展開予測ショー

お月様とお散歩


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(04/ 6/ 6)

奥多摩にアジトを構えた三人娘といえば。
当然例の蟲娘を指す。
あの頃は。
丁度初夏がはじまるかどうかのよい天気であった。
「確か梅雨入りが発令されたとおもったんだがなぁ」
まだ雨雲はここまで来ないのか、ここ三日間は雲ひとつ無い快晴である。
文句はないが、愚痴の一つもでるべスパである。
ま、そんな事おかまいなしのオシャマちゃんもいる訳で。
「ポチー・ゲームやるでちよー」
「おぅ。望むところ!」
横島も内偵とはいえ、馴染んでいた頃である。
「こらっパピリオ、ずーっとゲームやってたら駄目でしょ」
「でもルシオラちゃん、寝るには早すぎでちょ?暇でちゅ」
確かに梅雨入りの前は日も高くすごしやすい。ついつい夜更かしもしてしまおうと言う物だ。
「じゃあさ、お散歩いきましょか?いい月夜よ」
「えっ?いいんでちゅか?」
目をらんらんと輝かせている。パピリオにとっては小さな冒険に等しいのか。
「えぇ、横島、べスパあんたたちはどーする?」
「ん?私か。いやちょっとドグラ様に相談があってな、遠慮するよ。ポチは?」
幸い入浴もまだ、食事はすんで、こちらも暇を感じつつあったので、
「じゃ、お付き合いしますよ。女の子のボディーガードっすね」
三人娘に笑いが起こる。
「くくく。私達、人間に守られるほど弱くは無いわよ」
「でちゅよーだ。生意気いうんじゃありまちぇん。ポチ!」
あはは、と横島本人もつられて笑う始末である。
「でも、そーいってくれると、うれしいよ、ヨコシマ」
すいと、顔を近くに寄せるルシオラに繭を潜めたべスパがいたか。
玄関にてサンダルを履き外へ出た三人。
「あれー、涼しいでちゅね」
山間の事空気が冷気を保っているという所か。
都会と比べて清んでるのもそう感じる一員やもしらぬ。
こうなると、パピリオはお子様モード全開である。
「はやく、くるでちゅー」
遠い間隔で立つ電灯を目印に下ったり上ったりする三人。
時折車が来ることもあるが、幸い事故に繋がるような事は無い。
「こらー、走ると怪我するわよ。もぉ。ヨコシマもなんか言ってよ」
「あぁ、迷子になるから、ゆっくり行こうぜー」
声をかけるが、
「なーに、いってるでちゅかーだっ、子供は風の子、元気が一番でちゅよ」
「ったく、都合のいい時だけ子供になりやがって」
ぽそりと言った一言が。
「うん。そうなのよね。私も『姉』って言われてるけどほとんど同じなのよね・・」
はっ、と口を手で押さえた横島。
「ご、ゴメンルシオラ。俺そういう意味じゃないから」
両手を合わせて謝罪を述べる。
「でもほら、精神年齢はぜんぜん違うだろ?ルシオラはこんなに」
「こんなに?」
横島の目を覗き込む形で身を屈める。手は後ろに組んで。
「び、美人さんじゃないか」
「もぉ〜!口がうまいんだからっ!」
ぽんと頭を叩くが力の加減を知らないのか、それとも恋する乙女の証拠か。
つんのめる横島である。
「いたたたた!ちょっとは優しくしてくれよぉ」
情けない声を出す横島である。
「あはは。ゴメンゴメン」
よいしょっとばかりに横島の手をひっぱったルシオラであった。
さて、
夜の散歩の事三人ともなんとなく目的地はあったのであろうか。
比較的見晴らしいのよい所にある、通なら知ってるであろう食事処を目指していた。
「でも夜じゃあな。特に何も見れないだろうね」
「そうね、あ!でもあそこ自動販売機があったから明るいから」
少しは景色を眺めることが出来るかも、という期待は持てる。
「わたち、先にいってるでちゅよ?いいでちゅか?」
夜の世界で軽く走りたいと思う子供の気持ちを察したのか、
「えぇ、いいわよ。待っててね、あそうだ」
そういって財布を渡し、
「何か飲み物かっておいてよ、いい?任せるから」
ルシオラが笑顔で答える。
「うん!いいでちゅよ!じゃあ言ってるでちゅ」
たっと駆け出そうとしたかと思ったら一度こちらを振り返って。
「ゆーっくり来てもいいでちゅよー。お二人さん。ひゅーひゅー」
口笛はまだ吹けないので声に出した。
「ば、ばかっ何言ってるのよ!」
顔が真っ赤なルシオラの一言、説得力無しである。
横島も頭を軽く掻き毟って答えでずか。
「まったくもー。誰に似たのかしら?」
そう言って横島を再度見る。
「えっと、こんな事してみてもいいのかな?」
横島、手を腰にあて、肘を突き出す。
「うん」
素直に絡めたルシオラである。
夜にはよる特有の音がある。短いであろう、そして大変であろうこれからを少しだけ
忘れさせる音となったか。
ようやく二人の目に自動販売機の光が差し込んできた。
「ここまでね」
「あぁ」
どちらとなく離れた二人。そしてちゃんとパピリオもそこで座っていたが、
難しい顔をしている。
「どうしたの?パピリオ」
「あのね、ルシオラちゃん。お金が三百円と五千円札でちたよ」
三つ買えないと言う事か。
「あらー。でどうしたの?」
「うん。わたち、どーしても蜂蜜レモン飲みたかったからかったでちゅ、あとは」
500MLの麦茶を買ったという。
「一緒に飲む?」
500ML缶を開けながらルシオラが問う。
「それって間接キッス?」
「私とじゃ嫌かな?」
「ぜ、全然、えっと最初に飲んでよ。ルシオラ」
「ううん。ヨコシマが先よ」
じゃあ、と開いた缶を持つ横島。どのくらい残せばいいか考えている。
その隣では、おいしそうに蜂蜜レモンを飲んでいるパピリオがいる。
雨雲らしき物が月明かりを通して見受けられた。
「明日は雨かな?」
ぽつりと、ルシオラがつぶやいた。

FIN

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