出発前夜〜少年の想い〜
投稿者名:浪速のペガサス
投稿日時:(04/ 6/ 1)
ふと掃除をしようと思った。
なんっつーか、いっつもおキヌちゃんだけにさせるのもアレだし。
なんとなくそんな気分だったし。
そこら中片付けて、埃まみれのところ見つけては汚ぇなって思ったり。
なくしたものが見つかったりして一人で楽しみながらやってた。
そんな時だ。タンスの奥の小さな隙間に妙なものを見つけた。
やっとの事で指を伸ばしてそれをとると意外なものだった。
ずっと、どこかにやったと思ってた。
なくしたとき、コレが見つからなくてわんわん泣いたのも覚えてる。
それは写真。俺と銀ちゃんと、そして夏子と一緒に写った写真。
そして俺はいろいろな事を思い出した。
とりわけ、出発前夜に考えてた事。
俺の意識は、引越し前夜のあの日に戻っていた。
―――――出発前夜〜少年の想い〜―――――
明日はとうとう出発の日だ
(クソ厳しいオカンのせいで無理やり)入念に準備したから万全
おかげで俺は、最後の夜だっつーのに何もする事がない
仕方がないから布団に入って、ラジオなんか聞いて
調子に乗って、調子外れの口笛吹いて
お気に入りの服も、俺の宝物のペガサスも入れた
そして、三人で撮った写真も
俺と銀ちゃんと夏子
三人で肩組んで、にかって笑って
まさか俺も銀ちゃんも、ここ離れるなんて思わんかったから
写真とってて、ホンマ、良かったわ
明日みんなに会おう。暫らくは会うことすら出来ないから
明日あいつにあったらスカートめくって、喧嘩しよう
暫らくは、会えないから…
喧嘩も、出来なくなるから…
明日、長い時間をかけてチョットだけ夢に見た街に行く
チョットだけやぞ?関西人に東京なんて場所は敵地なんやからな
……知ってる奴らは、みんないない
俺、一人ぼっちや
大丈夫かな?
元気に、やっていけるかな?
俺の場所は何処なんやろな?
小さい頃から親父の仕事で転校ばっかしで
自分の場所って、わからへんわ
アカン、寒くなってきたから布団に潜るわ
―…一人ぼっちは、恐いなぁ…―
向こうついて、落ち着いたら手紙でも書くか
全然、ガラやないけど
あっちの写真をとって送ってみるのもおもしろいかもしれへんな
もしも書いたら、なんていわれるかなぁ?
明日、あいつらに会ったらなんていおうかな?
じゃあな、とかありがとう、とか言うのは簡単だけど
何かちょっと違う感じもする
何か、違う、わ
明日は出発の日
恐がってなんか、無い
嘘や
本当は恐いんや
誰もいなくて、恐いんや
でも頑張って耐えるわ、俺
頑張って、頑張って、頑張って
それでもダメな時は空を見るわ
この写真見て、空を見て、ここを思い出して
ワンワン泣きながら口笛吹くわ
そうや…俺の居場所はここや
今までイッパイ転校したけど、言葉まで覚えたのはここだけや
ここが俺の場所なんや
遠くにいったって変わらへん
だから、多分大丈夫
―…一人ぼっちは、恐くない…―
そや!俺の場所はここや!!
じじいになったってこの場所はかわらへん!
これから先、一人になっても大丈夫!
うん!大丈夫や!!
―一人ぼっちは、恐くない!―
えぇい!こんな布団邪魔や!跳ね起きちゃるわ!
明日はみんなに笑顔見せて、いつもみたいに喧嘩して!
そんでさよならするんや!
―一人ぼっちは、恐くない!!!―
その後学校に行っていつもみたいに学校に行っていつものように馬鹿をして。
そんで元気にバイバイ、サンキューってあいつらに言ってやった。
少なくともそこに悲壮感は無かった、と思う。
東京に着いて、しばらくは手紙を書こう書こうと思ってた。
でも生来の面倒くさがりがあって。
いつまでも書かないでいたら写真を無くして。
それが決定的になった。
出発前夜に布団の中で考えた事。
唯の強がりだったかもしれない。
ごまかしだったのかもしれない。
でも、その時感じた想いは確かで。
凄く、純粋だったと思う。
自分で言うのもなんだけど、な。
なんだか、懐かしくなってきたな。
久しぶりに電話でもしてみるか。
手紙でも書くか。
電話、つながればいいけどな。
手紙、届くといいけどな。
みんな、元気かな?
俺は、元気だぞ。
今までの
コメント:
- 突発的に思いついたネタです。
実際俺は自分がどこかに行くということは経験した事が無いので、忠夫君の気持ちは俺にはわかりません。ですが、別離の辛さと自分の場所の確認、そして頑張ろうとする気持ちはわかります。これを読んでくださったみなさんはどうでしょう?
では、久しぶりの独白SSでした。失礼しますm( )m
補足
ちなみに「。」がついてるのは青年横島、何も無いのは忠夫君です。っていらないか(^^; (浪速のペガサス)
- 良い作品だけど、展開予測じゃないって・・・ (Pr.K)
- 転校の経験は無いのですが、実際体験したら不安なものなのでしょうね。
まあ時と場合によっては期待もあるでしょうが。(新しい出会いもあるでしょうし。)
さてあんま関係無い話は置いといて・・・って他に書く事もあんま無いんですが(笑)
えー、大事な思い出のヒトコマという事で普通に良いんじゃないでしょうか。
ちゅー訳で賛成と。しんばるでした。 (cymbal)
- はじめましてMOと申します。
普段は読み手に徹してますが今回はちょっと気になったので一言コメントを・・・
この作品の元ネタって「BUMP OF CHICKEN」の「バイバイサンキュー」ですよね?
曲を聴いてて突発的に思いついた作品なんでしょうが、引用するならするで
補足コメントいれておいたほうがいいんではないでしょうか?
そういう理由で反対にさせて頂きます。
えらそうでごめんなさい(^^; (MO)
- まずはじめに謝罪させていただきます。
MOさんのコメントにもありましたが、このSSには元ネタが存在しています。ご指摘の通り「BUMP OF CHICKEN」の「バイバイ、サンキュー」と言う曲です。指摘されてから改めて、まずはじめに断りを一言でも添えるべきだったなと後悔しました。今回、全面的に私自身のミスです。返す言葉なんてあろうはずもありません。甘んじてどのような言葉でもうけるつもりです。これを読んでくださった皆さん、そしてGTYを利用していらっしゃる皆さん、チャットにてお褒めの言葉をかけてくださった皆さん。謝罪させていただきます。
大変失礼しました。ごめんなさい、すみませんでした。 (浪速のペガサス)
- 別れを「二度と逢えないもの」と捉える事を嫌う、原作での彼の根源がここに描き出されている様に感じられました。
私は転校や引っ越しを繰り返して逆に表面的には「自分の場所」へのこだわりが薄れているクチですが、彼の不安感はよく分かる気がします。
この空虚への恐怖は彼の煩悩っぷりのルーツでもあるかもしれないと考えると、ますます興味深いです。
でも最後の日、いつもの様に過ごそうと考えたのは彼の場合、そこを自分の場所だと思えたからなのでしょうね。 (フル・サークル)
- はじめに、このSSはコメントを返さないようにしようと思いましたが、事情を知っていたにも関わらずまどかさん(フル・サークルさん)がコメントを入れてくださったので私用と思います。ご了承ください。そしてありがとうございました。
◇Pr.Kさんへ
コメントありがとうございます。良い作品とのご評価ありがとうございます。ちなみにこのSS、一応展開予想です。俺の中では、「原作に置ける語られなかった部分」というものも十分に展開予想だと考えております。しかし考え方は人それぞれ。貴方がそう思われないのならおれの力量不足でしょう。難しいです。ありがとうございました (浪速のペガサス)
- ◇cymbalさんへ
俺は実際別れが分からないのでどうかいてもうそっぽくなってしまい正直、どうだろうな〜とか思ってました。賛成票ありがとうございます。でも残された人の気持ちならば分かります。それをSSに今度はしてみようかなぁとかも思ってます。
◇MOさんへ
ご注意ありがとうございました。むしろ俺のほうが大変迷惑な事をしてしまい、申し訳ないです。反対票とコメント、ありがとうございました。それと、他の方の作品にも貴方なりの良作が見つかればそのときはまた是非コメントを。 (浪速のペガサス)
- ◇フル・サークルさんへ
まどかさん、事情を知りつつもコメントをありがとうございます。本当に、申し訳ないです。相変わらずまどかさんはコメントが深くて、作者自身が気づかなかった部分を指摘くださって感謝です。
貴方は転校族でしたか…。だとしたら彼の気持ちなんかもきっとよく分かると思います。しかし彼は以外に自分の場所にはこだわってますね。ワルキューレの時、様々な別れの時、彼はかたくなに拒んでいましたしね。ありがとうございました。
皆さんへの駄文(答えてくださらずともOKです):まどかさんの言う空虚への恐怖としての煩悩、そう考えると彼の霊力の源はやはり「温かい思い」なのでしょうか?どうおもいます?皆さんは (浪速のペガサス)
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