ザ・グレート・展開予測ショー

フォールン  ― 01 ―


投稿者名:フル・サークル
投稿日時:(04/ 5/26)




 ――東京都内を外れ、山の中に伸びるその一本道をしばらく進むと脇に件の廃虚ホテルが見える。

 曰く業績不振を苦にした経営者の一家が無理心中した。曰く客が変死した。曰く昔の処刑場跡に建てられた・・・通りがかると時折窓から、人影が見える・・・入ってみた者の何人かが取り憑かれて精神に異常をきたした―――どこにでもある様な怪談の舞台。人の近寄らない、奇妙な雰囲気に満ちた建物だった。

 しかし、訪れる者が全くない訳ではない。客室には流れて来たホームレスや近くの街で遊ぶプチ家出の中高生が入れ代り立ち代りで泊まり込み、一家の大広間ではその道を集会ルートにしている暴走族が毎週の様にピットインして落書きとバカ騒ぎとを繰り返していた。
 彼らは廊下を徘徊する二体、三体・・・十体以上のこの世のものではない存在も気に留めたりはしなかった。
 ありふれた怪談のありふれた実態。このホテルに近頃、また新たに噂が流れていた。

 ―――「本当に誰も近寄らなくなってしまったらしい。」と。

 ホームレスも家出人も一人残らず去り、暴走族はその道を丸ごと集会ルートから外してしまったと言う。
 もうダメだ、マジであそこはアブネェよ。誰かがそうこぼしていた。

 通りがかり、ある筈のない影が目撃される数も増えた・・・目撃される件数がではない。一度に目撃されるその「何か」の数が、だ。
 ・・・「ほぼ全ての窓から奇怪な顔がこちらを睨み付けていた」と言う目撃談が出るに至り、知っている者は誰もその道を通らなくなってしまった。

 ここまで来ると、あまりどこにでもある様な話ではない。












     ・

     ・

     ・

 またあの夢を見た。幸せな夢。

 ・・・幸せの、夢。


 特に大した事が起きたりするような夢じゃない。
 その中で俺はまだ学生だったり、現在の様に仕事してたりする。
 そして普通に学校に行ったり、職場に行ったりして・・・普通に帰って来る。
 普通に、その中でいつも通り過ごすんだ。
 休みの日なんかもあって・・・


 ただ一つだけ、現実と決定的に違う部分がある。

 現実には存在しない、存在しなかった部分がある。


 起きる直前くらいにこれは夢だなと気付くんだけど、その時の気分ったらないな。
 それはない事で、なかった事なんだと気付く訳なんだから・・・


 ありえなかった日々の夢。
 「それは、どこにもない」と。


 それがない現実に帰って来る目覚め、決まっていつも俺は・・・・

     ・

     ・

     ・







    ――――――――――――――

     ―― F A L L E N ――

    ――――――――――――――








ザアァ―――――――ッ。

・・・じりっ・・・・・・じりじりっ・・・。

 壁を這う者あり。赤レンガ、窓枠、雨どいに指や爪先を掛け、巧みに慣れた動作でよじ登る。

「ふふふふ・・・っ。少年法が適用されなくなったから何だと言うのだ・・・俺を誰だと思っている?」

 説明の必要も無いだろうが、この男の名は横島忠夫――今年で21歳になる。

「幾つになろうと男のロマンに変わりは無い・・・そこに壁があれば、登り・・・。」

 皆の知るより4年が経ち、少しばかり背が伸び顔立ちも大人びていたが、何かに取り憑かれた様なアホぶりはあまり変わってないかもしれない。
 目的の階まで登り切った彼は頭上の窓から漏れるシャワー音に耳を澄ませる。

「そこに裸のねーちゃんがいれば・・・いればっっ!美神さんのあのちちとしりとふとももがっ・・・シャワーの湯でほんのり赤い、すべすべの肌があっ、そこにあるならばあああっ!!」

―――がらっ。

「横島クン、今日ね、そのお肌の為にって、イイモノ買って来たのよ。」

 隠れて覗くにはあまりにもでか過ぎる声で演説していた横島。その頭上の窓から明るい色の髪をなびかせた女性が身を乗り出し、彼に語りかける。この赤レンガの建物の主、ゴーストスイーパー・美神令子。
 彼女は横島の予想通りに上気した肌をバスタオルで包み、にっこりと微笑んでいる。右手に持ったプラスチックの容器を彼に見せた。

「これ、何だと思う?」

「・・・何で、ございませうか・・・?」

「ボディーローション。オランダ直輸入で最後に流す前、塗るんだって。香りも上品で、本当に、すべすべーってなるのよ。あとに残ったりもしないし、すべすべーって・・・。」

 説明しながら美神は、そのローションをゆっくりと真下の壁に垂らして行く。広がって落ちる液体が横島の手元へ到達するのにさほど時間はかからなかった。

つるっ・・・・・・つるつるつるつるつるっ!

「い。。¥&@++%∀;Σ#!!!」 じたじたばたばた・・・・!

 とてもすべりの良くなった壁の表面で、横島は必死に何度も両手足を振り回したが――そこまで残れるってのもなかなか超人だが――努力も虚しく、這い登って来た姿勢のまま一直線に落ちて行った・・・。



   ― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ―



「あ・・・あのクソ女があ・・・っ!最近やる事がどんどん殺人的になって来てるぞーっ!?」

「横島さんが悪いんじゃないですかっ。」

 呆れた顔をしながらもおキヌは、横島の手足や顔に包帯を巻いてあげている。

「そりゃそうなんだけどさ・・・。」

「女の人にとって、そんな風に身体や一人でいる所を覗かれるってのは、とても嫌な気分にさせられる事なんですから・・・男の人にとってもそれは同じだと思いますよ?・・・はい、顔を上げて下さい。」

 言われるまま上を向いた横島の顔をおキヌの両手が包み込む。その周りがふわっと光を放った。

「顔の傷と足首の捻挫にはヒーリング掛けますね・・・私もこうやっていつまでも横島さんの傍にいられないんです・・・だから、自分で無茶しない様に注意して・・・」

「そうか・・・そう言えばおキヌちゃん、もうすぐなんだ・・・。」

「・・・・・・はい。」

「何か、寂しいかも・・・。」

「そう思うんだったら・・・きちんと、つかまえてて下さい・・・。」

 顔を包む手のひら、僅かに力がこもるのを感じた。

「ダメだよ・・・おキヌちゃんの選んだ道じゃないか。・・・俺も、おキヌちゃんにはもっと広い世界へ出て、もっと沢山の人と出会って・・・そーゆーのが似合うと思うし、それに・・・。」

 横島の言葉が途切れた。しばらく黙り込んでいた彼は話を続ける事なく、彼女に足首の方のヒーリングを頼む。

「それに・・・何ですか?」


バタンッ!!

「―――ただいまでござるっ!」

「・・・毎日毎日、何でアンタは仕事帰りにそう元気なのよ・・・?」

「ふっ、拙者、なまけものの女狐なんかとはきたえ方が違うのでござる。」

「パワーの問題じゃないでしょ?・・・気疲れするのよ、あそこにいると。」

「そんなものか?良く分からぬでござるな・・・そんな事よりせんせえっ!散歩の時間でござるっっ!!」

 シロに勢い良く飛び付かれた横島はおキヌに足首を握られたまま椅子から転げ落ちた。

――ぐき。

「え゛Дφ^^〜あ@<±・・・!!」

「よっ、横島さんっ!?」

「せんせえーっ、せんせえーっ、行くでござるよぅ。」 ぱたぱたぱた・・・

「ばっ、ばか犬・・・これから散歩じゃねえ。仕事に出るんだよこっちは・・・それに、見て分かんねーか?俺のこの状態が・・・。」

「―――その通りよシロ。・・・横島クン、準備出来た?」

 シャワーを終えて居間に現れた美神。いつもの格好に加え神通棍や精霊石装備のホルダー、普段より物々しい感じがする。

「あ、美神さん・・・いやあ〜まだ少し足の痛みが・・・。」

「大丈夫。足なんかいくら痛くたって死にはしないから。さっさと用意した札持っていらっしゃい。・・・あと、タマモも来て。今回の相手は火に弱いらしいのよ。」

「ちょっと待ってよ!何で私?今、向こうから帰って来たばかり・・・」

「―――タマモ、・・・行 ・ く ・ わ ・ よ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・ハイ。」



   ― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ―



――――シュッ!ブオオオオッ!!

「カビィィッ!カビカビカビィッッ!!」

 周りを狐火に巻かれて毒々しく多彩な色の不定形妖怪が苦悶の声を上げる。
 データに未だ名前のない妖怪で、この季節に現われ食品や衣類に黴を生やして回っているらしいって事だけを事前に何とか調べ上げた。
 某大手調味料メーカーからの依頼で、倉庫内の商品に損害を与えるそいつの退治に来た美神達だった。
 積まれたダンボール箱は勿論の事、鉄の柱や壁にまでそいつと同じ様な色とりどりの黴で覆われている。

「――ただでさえジメジメしてうっとおしいこの時期を、更に不快にさせてんじゃないわよっ!!」

「カビビビビイッ!!」

 カビ妖怪の体内から胞子の塊が狐火に向かって撃ち込まれた。

ドゴォッ!!

 衝撃波と共に胞子が四散し、その後に炎は残らなかった。胞子はタマモの足元でも炸裂し、床のコンクリートを弾き飛ばす。

「爆破消火・・・!?何でカビ妖怪なんかにこんな知識や能力があるのよ?」

「アシュタロス事件の影響がまだ残ってるんだわ・・・コスモプロセッサによって全世界で復活し、活性化した配下は消えたけど、その時に吹き荒れた霊力でああ言った分不相応の力を持つザコ妖怪が多く出て来たのよ。」

「アシュタロス・・・?コスモ・・・プロセッサ?」

「詳しい話は後よ!」


ドシュッ、ドシュッ、ドシュッ―――ドガアッ!!

「カビカビィッ!!カビイイイッ!!」


「胞子だけじゃなく、奴の接近にも気を付けて!全身カビだらけにされるわよ!」

 美神は警告するが、前線のタマモは敵の予期せぬ攻撃を躱すので精一杯だった。ほぼ霧状の相手に神通棍の攻撃も結界での包囲も効果を期待出来ない。


――――ヒュウウウウウッ!!


 風を切り裂く音。カビ妖怪後ろの空間に横島の姿があった・・・天井からのロープで逆さ吊りにされた状態で。


――『固』!!


 投げつけた文珠が発動して、不定形の敵は凝固し、収縮した。

「ギャビイイイッ!?」

「しつこい油汚れとカビは、“固めてポイ”よっっ!!」

 美神の一閃した神通棍は霊力の鞭となってカビ妖怪の全身に巻き付く。そのまま敵を舞い上げて横島のいる方向へ飛ばした―――彼の続けて構えた封霊札に一直線に吸い込まれて行く・・・。



   ― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ―



「ね?あれなら足が痛くたって充分役に立てるでしょ?」

「ね、じゃないわーーっ!!だったら何で足を縛っての逆さバンジーなんすかっ!?痛みで気絶するかと思いましたよ!」

「でも気絶しなかったんだから良いじゃない。男の子が細かい事気にしちゃダメよ?」

「細かくないっ!ついでに、未だにこうやって吊られたまま話してるって辺りも全然細かくないっ!」

「・・・でも、こんな時痛みとか関係なく自分の仕事をきちんと全うしているのを見ると実感しちゃうわ・・・横島クンも、一人前のプロになったんだって。」

「美神さん・・・。」

「頼もしくもあるけど、何だか、複雑な気分ね・・・。」

「とりあえず・・・降ろして下さい・・・。」



   ― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ―



「あ・・・・。」

 帰りの車の中、タマモが不意に声を上げた。助手席の横島が振り返るとタマモは、東の空を口を微かに開けたまま見つめていた。横島も彼女の見ているものに視線を向ける。

「ああ、朝焼けか・・・。」

 オープンカーの上では朝独特の匂いとひんやりした空気が強く肌に当たる。そして白んだ空の向こうに水平線から昇る太陽を見渡せた。

「何だよタマモ、見るの初めてか?」

「バカ犬と違って、普段早起きじゃないから・・・。海に行った時も、それどころじゃなかったし。」

「そっか。」

 二人はそのまま海にゆっくり浮かび上がる光球を眺める。ジャンクション手前で車のウィンカーが左に点滅する頃には朝焼けではない、普通の青空と太陽とに様相を変えていた。

「日が出る前から少しずつ明るくなるのね・・・沈む時は一瞬で暗くなるのに。」

「気のせいだよ。沈む時も出る時も似た様なものさ。時間の感じ方が違うだけ・・・。」

 タマモの呟きに答える横島。運転席の美神が彼をちらっと見てからハンドルを切った。



   ― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ―



 事務所に帰り着くと玄関の前に立つ者がいた。車を止めて美神がその人物へ呼び掛ける。

「ママ・・・!?」

「――おはよう、令子。でも、これから寝る所だったみたいね?」

 美神令子の母で、オカルトGメン日本支部のトップでもある美神美智恵。良く見ると彼女の傍らに4才になる娘、ひのめもいた。

「おあよ・・れーこおねーちゃ・・」

「ひのめを幼稚園に連れて行く途中で寄ってみたのよ。二つ三つ話したい事があって・・・少し、いいかしら?」

「う、うん・・・。」

 コブラを車庫に入れると、5人は建物の中へ入った。美神母娘の後ろでタマモが横島にこっそり耳打ちする。

「また、あの話よ・・・何か、進んじゃってるみたいね・・・。」

 横島は返答しない。少し首を傾げた程度のリアクションでそのまま歩いて行く。タマモは彼の態度にちょっと顔をしかめ、眉根を寄せた。



   ― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ―



 応接室のソファーに座り、美智恵はコーヒーの準備をしている娘へ第一の用件を切り出した。

「・・・先週も一緒にお食事、行ったんですってね。先方から私に、重ねてお礼の言葉が来たわよ。」

「うん・・・。色々と話が弾んじゃって。同業者じゃないけど、オカルトアイテムの国内・海外流通を広くやってる人だから、やっぱり互いに分かる所があるみたい。」

 差し出されたカップを受け取り、一口飲んでから美智恵は言葉を続ける。

「・・・・・・無理に気を使う必要はないのよ?元々、“せめて話だけでも”と頼まれて持って来た縁談だし、そうでなくたって見合い結婚で家柄を結ぶなんて事に興味を持つ家風でもないわ。」

「分かってるわよ。でも、私も・・・」

 美神は口ごもった。美智恵は続きをうながす事もなく二口目のコーヒーを飲む。娘の言いたい事は何となく分かっていた。

 高校を卒業してすぐ独り立ちし、自分の事務所を構え、第一線――国内トップクラスのGSとして――を何年もしのいで来た彼女も24才―もうすぐ25才になる。相も変わらぬ容貌は勿論の事、実年齢で見ても、仕事の順調さで見ても、決して結婚を焦る様な時期でも生き方でもない筈だ。
 しかし、だからこそ根拠のない焦燥感が重く感じられる時期でもある。――母親の美智恵が18才で伴侶と出会い、自分を産んだと言う事実も影響しているのかもしれない。

 仕事を退き、家庭に入るつもりなど毛頭ないだろう。彼女が求めているのは自分を所有する“夫”ではなくて対等、あるいはより自分主体な関係でのパートナーだ。
 求める理想を手に入れるには、計算高くなる必要がある。――結婚を「望まれる時」と「望む時」との間で自分の価値を慎重に測っての駆け引きを。

 彼女にとっては、その駆け引きに敏感になり始める時期でもあっただろう。

 美智恵は小さくため息をついた。娘の理想――と、なりうる――パートナー、そう言われて思い浮かぶのは、彼女のすぐ傍にいる、彼女を長く支えて来た青年の顔。

 ・・・あの子じゃ、だめなのかしらね・・・?

 結婚の二文字を前に娘は本質よりも、巷での理想像――経済力や社会的地位、現時点での成熟度など――に目を奪われている様にも見えた。そして、“彼”自身にも問題がない訳ではない・・・。敢えてそれらの思いは口にせず、質問を変えてみる。

「それで、どうだったの?相手は・・・良い感じの方?」

「うーーん、まだ分からないわよ。でもね、彼、仕事柄なのかGSにも理解のある人でね、結婚・・・したとしての話よ?・・・した後も続けるのに賛成してくれるって言うし。前の金成木のボンボンとは大違い・・・」

「気を付けなさい、令子。結婚前にそう言う男は、決して少なくないんだからね?」


 ノックの音がしてドアが開き、横島が入って来た。

「装備の片付け、終わったっすよ・・・お茶菓子、持って来ましょうか?」

「いいえお構いなく。もうすぐ話も終わるわ。」

 美智恵は言いながら彼を意味ありげに見る。美神がそれを断つ様に言葉を掛けた。

「横島クン、それじゃいつも通り使用済み封霊札の処理もお願い。赤いラベルのケースに入れてね。それが終わったら今日はもう上がっていいわよ。お疲れさん。」

「・・・お疲れ様っす。」

「今日明日と休みで良いわ。タマモも今日は休んで良いってママが言ってたから伝えといて。・・・足、大事にね。」

「ハイ。」

――――バタン。 遠ざかる足音。

「装備の整理に、お札の処分か・・・随分と頼りにしてるみたいね?」

「そんなんじゃないわ。雑用は丁稚の基本よ。」

「・・・雑用?ああ言った作業はGSの・・・一人前のGSの基本でしょ?唐巣先生はそう教えてた筈だし、あんただって少し前まで他人に任せず自分一人でやってたじゃない。」

 美神は言葉を詰まらせながら微妙にうつむく。コーヒーを飲み干して美智恵が再び話し始めた。

「あんたも眠いだろうし、その話は後にして手短かに、もう一つの用件に移るわね。・・・仕事の話よ。オカルトGメンからGS美神事務所への業務委託依頼。」



   ― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ―



 美智恵から渡された書類に目を通しながら美神は呟く。

「潰れたホテルだの病院だの・・・そんな所に幽霊が溜まるなんて、良くある話じゃない?確かにGメンの仕事でもないだろーけどさあ、手に余してこっちに持って来る様な仕事でもないんじゃない?」

「良く読みなさい。・・・証言を元にするとかなりの霊や・・・妖怪もいるらしいのよ。負の霊力・瘴気も内部では相当量の筈。しかもこのホテルがそうなったのはここ一・二年の話で原因も不明・・・大掛かりな対策を取る必要があると思うわ。それに、入念な調査も。」

「で、私達はその事前調査だけをすればいいのね?」

「ええ、Gメンも人手不足なのよ・・・調査に多くの人員は回せないし、かと言って捜査員一人二人で行かせるのも危険だわ・・・」

 美智恵はそこで言葉を切り、躊躇いながら続けた。

「小さいながらも、異界空間や・・・“魔界”への通路となってしまう可能性があるのよ。勿論、これが何者かによる人為的な現象である可能性もね。」

 「魔界」と聞いて、美神が思いっきり息を呑んだ。

「――――そこまでの・・・話なのっ!?」

「可能性よ。・・・だからって無視は出来ないでしょ?今回土地所有者や付近住民からの依頼ではなく、当局からあそこを放置していた所有者に了承を取って行なう形なの。・・・でも、当然あんたへの報酬は支払うわよ。返事も実際の作業も急ぐ必要はないわ。後で連絡ちょうだい。」





   ― ・ ― 次回に続く ― ・ ―

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa