ザ・グレート・展開予測ショー

〜 『キツネと姉妹と約束と 最終話』 〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 5/18)



太陽が天頂に届くころ。
横島が、その墓標の持つ違和感に気づいたのは・・・本当に偶然のことだった。

「?なぁ・・スズノ・・この墓って・・」

石の前にたたずみ、微動だにしないスズノへと首をかしげ・・横島が彼女を覗きこむ。


「・・!?わっ!ど・・・どーしたのだ?横島・・」

「ん・・なんかさ、ここだけ・・名前が書いてないんだなぁと思って・・」

飛び上がらんばかりに驚く少女に苦笑して、背後に控えていたタマモへ向かって手招きする。
こちらの方は・・先ほどの自分の所業が恥ずかしくなり・・今頃になって頬を赤く染めていたりして・・

「・・・・。」

何も言わず、スズノのとなりへと駆け寄ってくる。

・・・。

2人に向かって笑いかけたあと、スズノは寂しげに口を開いて・・・

「・・ここに眠っている子には・・名前が無いんだ・・。だから、墓石には何も記されていない。」

ひざまづくように、地面へと座り込み、そうして・・そっと、石肌に向かって語りかける。

「・・・本当は・・私が考えた名前があるのだけれど・・でも、もしかしたら可笑しな名前かもしれないし・・
 刻んでいいのか自身がない・・。」

ポツリポツリと・・・途切れ途切れの言葉が響く。
それに横島が屈みこんで・・・・

「・・どんな・・名前なんだ?」

「・・え?」

彼の言葉へ・・スズノはためらうような、戸惑うような・・そんな表情を見せる。

「別に・・隠すようなことではないけれど・・でも、美智恵にも教えていないんだぞ?」

「そこをなんとか!頼むよ。」

両手を合わせて、お願いのポーズをとる横島。対して彼女の方は・・迷うようにそわそわしながら・・一言。


「・・・植物の・・・名前」

「いや、それじゃ分からんから。」

半眼になった横島は・・切り札とばかりにタマモへと振り向き・・・

「ほれほれ〜。お前のねーさまも知りたいってさ〜」

「?・・な・・ちょっと横島・・。私はスズノが教えたくないなら別に・・・む!?・・んぐ!?」

非難めいた文句を漏らそうとするタマモの口を、素早く横島の右手が塞ぎ・・・

「大丈夫だから言ってみろって。逆にすげえいい名前だったら、内緒にするのが勿体ないだろ?」

左手を、スズノの頭の上に置いた。

「・・・・。」

諭すような言葉に、スズノは相変わらずムスッとしたような表情を浮かべていたが・・・

「〜〜〜〜」

やがて・・・・・


「ね・・・ねーさまには教える!でも、横島はしつこいから・・絶対教えない!」

「あ〜〜〜!?汚ねぇぞ!!なんだそれ!?なんでそういう展開になるんだよ!」

「う・・だ・・だめだ!とにかくだめ!私は・・何もしゃべらない」

「うわ・・マジで気になってきた・・。ほんと頼むからさ」

「だめなものはだめだ!」


「・・・・・。」

けんけんがくがくの言い合いの中、
数分間呼吸を塞がれたタマモが・・顔を真っ赤にして昏倒したのは・・・そのすぐ後のことだったりする。


                         ◇

「・・・。」

「わ・・悪かったって・・キツネうどんでも何でも後でおごってやるから・・そんなに拗ねんなよ。」

不機嫌そうな顔。
さっきとはまた違った意味で無口になっているタマモを前に・・・横島が顔を引きつらせる。

今、彼らは山の入り口に2人きり。
最後のあいさつをしてくるというスズノの帰りを待ちながら・・・なんとも言えない気まずい時間を過ごしている。
焦りながら、あれこれと話しかけてくる横島に・・タマモは少しだけ苦笑して・・・

「・・ところで横島?さっきスズノが言ってた・・墓石の子のほんとの名前・・知りたくない?」

「へ?なんだ怒ってないのか・・ってそれより・・。何?教えてくれんのか?どんな名前なんだ?」

そんなことを言いながら、目を輝かせて詰め寄ってくる横島へと・・・


「教えない。」

当てつけとばかりに・・タマモは無慈悲にそう告げたのだ。

「う・・・うう・・」
瞬間、横島は・・燃え尽きたボロ雑巾のように・・・その場に崩れ落ちたりして・・・

・・・・。

「・・ヒントだけ、教えたあげようか?」

「はぁ?ヒント?」

「・・昔、その子と遊んだとき・・ヒラヒラ空を舞って綺麗だったんだって・・」


―――――・・。


森林の墓地。傾きかけた日の光がたゆたう中で・・・
スズノは、いつまでも親友の墓標の前にたたずんでいた。

『きっと気に入ってくれる』

名前を耳元にささやいた時、姉がそう教えてくれたから・・。自分も・・きっときれいな名前だと思うから・・。
スズノは・・その名前を石に刻もうか刻むまいか・・・かれこれ一時間ほど悩み続けていた。

「来年の秋も・・見に行こうって約束したのに・・結局、無理になってしまったな・・」

それでも自分は覚えている。

この名前を伝えたとき・・・彼女は確かに・・・・

――――ありがとう・・と。

そう言って・・・・・


だから、スズノはもう何も言わなかった。微笑みを浮かべたまま、小さく腕を空に踊らせ・・・
その・・・たった一文字の言葉を・・丁寧に石の表面へと彫りこんでゆく。

「今度の秋には・・・ちゃんと来れると思う。でも・・しばらくの間はお別れだ。」

そういえば・・あの時、彼女はこうも言った。

あたたかい笑顔と・・感謝の言葉の後に・・・・・・・

『幸せになって』


スズノは軽やかに体を翻すと、勢いよく山を下っていく。
帰ろう・・大切な人たちが待っている・・・・自分の家へと・・。

山の中腹で・・スズノは一度・・ただ一度だけ振り向いた。
そして・・わずかに茜色に染まり始めた・・透き通る空を見つめながら・・・・


「・・楓・・。私・・幸せになるから・・・」


そう・・・つぶいやたのだった。

                
                         ◇




〜  Epilogue  〜



どこまで行っても終わることがない。
どこまで行っても途切れることがない。

誰かが気づく。
『それ』が確実に存在していることを・・・・誰かが気づく。







「横島!早く」

「うん・・私たちをキツネうどんが待っているぞ。」


「・・・・そう思うんなら荷物持つの手伝え、てめぇら!!!!」






どこまで行っても先が見えない。
どこまで行っても連鎖していく。

誰も・・『それ』に気づきたいとは思わなかった。
一度気づけば飲み込まれると・・・・心のどこかで知っていたから。






「西条先輩・・ひどい顔ですよ。また徹夜ですか?」

「ははっ・・。最近、色々とゴタゴタしてたからね。・・とりあえず、コーヒーを一杯もらおうかな?」





何も変わらない・・。祈るようにそうつぶやいても・・・
不意に思い知らされる。もう逃げ場なんて、どこにも在りはしないのだ、と。





「あ。そういえば・・昨日初めてお店に来てくれた女の子が・・先輩にこれを渡して欲しいって。」

「?女の子・・誰だい?」

「さぁ・・・先輩には女の子の知り合いなんてごまんといますし・・ともかく、どうぞ。コーヒーと素敵な贈り物です。」

「・・・なんだか、言い方にとげがあるね・・。まぁ、それはそれとして・・・・」


・・・・。


「なんだろう?これは・・・・」

「?綺麗ですよね」

「ああ・・だけどどうして僕に・・・灰色の・・・羽根?」







無数の喜び、無数の悲しみ、そして・・・無数の苦痛。

その中心で誰かが言った。


『巡ってゆく』・・と。



―――――・・。



――― もうすぐだよ・・。もうすぐ逢える・・。やっと一緒に遊べるね?タマモちゃん。


「!?」

・・・。


不意に・・・何かに呼び止めらたような気がして・・
タマモは、ハッとして周囲を見渡した。

感じたのは一瞬。しかし、その声はあまりにも柔らかで・・・・


街路樹の並ぶ小道。
茜色のアスファルト。

そこは・・・いつもの街と、何も変わらないように見えた。


「・・・気の・・せい?」

サラサラと・・・。風に流れる髪を押さえて・・・

・・すると、タマモの頬をくすぐるように・・・何かが空を横切っていく。
それは・・・・・


「?灰色の・・・・羽根?」

夕陽にきらきらと輝くその羽根は美しく・・しかし、その美しさ故に、何かが壊れていた。

「・・・・。」

前触れもなく全身を覆う・・身を引き裂くような悪寒。

どうしたのだろう?・・どうして・・・こんなに・・・・

・・。


「タマモ?・・具合でも悪いのか?」

となりを歩いていた横島の・・心配げな視線に首を振り・・・

彼女は・・・・・

大丈夫、と・・・・。


そう・・・・答えたのだった。




―――――・・。


終わることが無い。途切れることも無い。

『それ』がどこから始まったのか・・・誰も知らない。


だからこそ、巡ってゆくのだ。



だからこそ・・・・




その歯車は・・・廻ってゆく・・・・。




〜おしまい〜



『あとがき』


だから終わってねええええええええええ!!!(笑)>オレ
あ・・小竜姫さまとパピの再登場は、日常編に中盤です、ファンの方、本当に申し訳ありません〜
それにしてもようやくこの『姉妹』も完結(?)いたしました。
長かった・・・どう考えても、前2作の4〜5倍はありますよね・・・。
う〜ん・・伏線の暴風雨が巻き起こってます。『キツネと花と不死王と』のラスボスがすでに出てきてますし。
楓にしたって、まだ色々・・・。あと、『姉妹』でタマモの記憶が断片的に戻ったようなのでそれに関しても色々(笑


あ・・・あと。昨日、『日常編』の下書きを妹に提出したのですが・・思いっきりボツをくらいました(泣

敗因は・・なんというか新キャラのユミール(笑)
百合のかおりを漂わせる美少女なのですがその・・タマモとの絡みが・・・なんというか・・


『ユミールがタマモの唇を無理やり奪う』→『そのままタマモの身動きを封じつつ、ディープキスに突入』


みたいな流れにしたら、もう・・妹どころか、アドバイザー全員から大ブーイングで(笑
やれ『タマモのあえぎ声がエロい』とか、『表現がなんか18禁チック』とか・・・・
と、いうわけであえなく改訂となりました(爆

連載ではちゃんと健全なお話を投稿しますので、ご安心くださいませ〜〜

それでは最後にコメントをくださった方へのお礼コーナーです〜。
1話目から登場順(?)に・・・


竹さん、GTYさん、青い猫又さん、林原さん、ヒロさん、えび団子さん、紅蓮さん、洞の中のフクロウさん、脇役好きさん

ヴァージニアさん、お茶会さん、まっつんさん、殿下さん、白黒ネコさん、MAGIふぁさん、

takaさん、ウィークリーさん、昴さん、飛翠さん、ハサウェイさん、TRYさん、ポトフさん、将さん、Pr.Kさん

リセットさん、カジカジさん、R/Yさん、mikiさん、超毒舌者さん

はぁ・・はぁ・・はぁ・・(笑)(これで全員・・ですよね?何度も確かめたのですが・・抜けがあったらお知らせくださいませ〜)
いやはや・・なんというか本当に、本当に・・どうもありがとうございました〜〜
感謝してもしきれないどころの騒ぎではないです〜。
中には、ほとんど毎回感想を書いてくださった方や、『ウェディング』から読んでくれてる方もいらっしゃるみたいで・・
重ね重ねありがとうございます。あ・・あと、こっそり見守ってくださった方も・・真にありがとうございました〜

スズノやドゥルジがレギュラーに加わり、キツネシリーズはこれからますます盛り上がっていくと思いますので・・
どうぞこれからもよろしくお願いします〜
さてさて、次はどんな横タマを書けるのか・・・・・自分でも楽しみです〜それでは〜

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