ザ・グレート・展開予測ショー

〜 『キツネと姉妹と約束と エピローグその3』 〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 5/18)



知る人も無い闇の中・・・
         
    触れた指先に感じたのは・・温もりだった。   



                    ◇




「横島、ねーさま、こっち!」

薄い日差し。
まだ太陽が顔を出したばかりの・・霧がかる山道。かつて『死』が溢れていたその場所に・・涼やかな声が鳴り響く。
朝露に濡れた深緑と、少し遠くで手を振るスズノを見つめると・・・・

「・・・元気だなぁ、アイツ。」

横島忠夫がつぶやいた。
寝ぼけ眼に、二日酔いでガンガンと痛む頭を押さえながら・・ヨロヨロとした調子で歩を進めて・・・・

「・・・・。」

そのとなり。
距離にして2、3歩ほど離れた位置で・・タマモが静かに坂を上っている。
流れる風と、木々の薫りに・・・彼女は少し目を細めた。

・・・・。

「・・やっぱ・・嬉しいもんなのかな・・言ってみりゃあ、久々の再会なわけだし・・・」

ポソリとした横島の声。
曖昧に視線を逸らしながら、タマモはもう一度、スズノへと目を向ける。

パタパタと駆けていく銀髪の少女。彼女にとって・・やはりここは思い出の場所に違いないのだ。


――――・・。


「2人とも?早くしないと日が暮れてしまうぞ?」

「・・・。」

「・・・。」


大きな声で呼びかけてくるスズノのしぐさに・・ 2人はそろって苦笑した。

「・・少し・・急ぐ?」

「・・・だな。」

顔を見合わせた後、早足で階段を駆け上がる。


(・・・18年ぶりの墓参り・・か )


そう・・・思い出の場所には違いない・・。
それが例え彼女にとって・・・・血塗られた、悲しい思い出であったとしても・・・・



〜 『 キツネと姉妹と約束と 最終話 』 〜



事務所での酒宴が締めくくられたその翌朝。

横島はタマモとスズノを連れ立って、3人でその山を訪れていた。
都心少し離れた位置にある、小高い山岳。Gメンによって封鎖された今となっては・・名を知る者など、どこにも居ない。

唯一、確かなこと。

それは、木漏れ日に輝く淡い葉影が・・一夜にして鮮血に彩られたこと。
その土に・・未だ多くの命が眠っていること。

・・・・そして・・・・・・


――――・・。


「・・・・・。」

小川のそばに並んだ、数十にも及ぶ石の群れ。
深緑の墓地にたたずむスズノの姿は・・・・何故かひどく小さく見えた。

無言のまま、吸い寄せられるように墓石を見つめ、石の一つ一つ・・そこに刻まれた名前の一つ一つを・・・
・・いとおしむように手で触れていく。


「・・・ここは・・・美智恵に頼んで作ってもらった場所なんだ・・。」

少し上ずった声で、少女がつぶやく。

「・・昔・・みんなでよく集会を開いた広場で・・だから、ここにみんな一緒にいれば・・寂しくないと思って・・」

「・・・・。」

震える肩に近づきながら、横島は墓標の前で手を合わせた。
一夜にして失われてしまった、たくさんの命。その想いも・・悲しみも・・今は、この物言わぬ石の下に沈んでいる。

「・・全員の名前を覚えてたのか・・・すごいな、スズノは・・」

頭を撫でながらそう言ってくる横島へと、スズノは微笑み・・・

「みんな・・・・友達だから・・」

それだけをつぶやいて、また次の墓石へと腕を伸ばしていく。
5つ目、6つ目・・・・・それぞれに交わした言葉や、思い出を噛みしめるように・・静かにスズノは目を閉じて・・・・


・・・・。


「・・・実感が・・・湧かない・・。こんな・・無機質な石の中に・・・」

「・・・タマモ?」

墓標へとかがみこみ・・・悲しげに目を伏せるタマモに、横島は軽く目を瞠った。
単に、感情を吐露する彼女の様子が珍しかった・・というのが理由の一つ。そして、もう一つは・・・・


「・・・・そっか。お前も・・前は追い立てられてたんだよな・・人間に。」

「・・・・・。」


人間なんて嫌い。

出会ったばかりの彼女は・・・あの時確かにそう言って・・・・

「・・・・この子・・・最後の瞬間に、どんなことを考えてたんだろう・・。」

そして、今の彼女は・・こうやって表情の見えない瞳で、供えられた花を見つめている。
今の彼女は・・・・


・・・。


「・・・・タマモはさ」


「・・・・?」


不意の言葉。タマモは不思議そうに顔を上げた。
小さな声に、一瞬、聞き間違えかと疑ったが・・・風に乗せた音律は、やはり横島が紡いだもので・・・

「・・何?」

「お前は・・今、どう思ってる?オレたちのこと。やっぱり、まだ好きになれないか?」

少し聞きづらそうに・・しかしそれでも・・彼は真っ直ぐこちらを見据えて・・・

「―――・・それは・・横島たち個人に対してって意味じゃなくて・・・」

「ん・・。もっとデカイくくりで・・・なんつーか、人間一般に対してって感じかな?」

言って、横島は肩をすくめる。それにタマモは・・しばらくキョトンとしたまま言葉を失って・・・


「・・・・・。」


やがて、赤い瞳が彼を見つめる。

――――・・。


「・・・・横島は、知ってる?」


「・・・・?」


少女はまるで囁くように・・・・


「・・・生きながら自分の心臓を貫かれる感覚。身を灼かれながら・・刃に首を落とされる感覚。
 何も分からないまま、たった一人で・・夜闇に震えなければいけない・・感覚。」


「・・・・。」


「・・・私は・・・知ってる。」


身を抱くように・・タマモは自らの肩へと手をやった。
白い布地に隠されたその内に潜むのは・・未だ跡を残す、人の手によって刻まれた一筋の銃痕。

「・・・私は人間が嫌いだった。ずっと・・何百年も・・私を闇の中に閉じ込めたから・・」

闇は暗い・・。闇は寒い・・。

泣き叫んでも、泣き叫んでも・・・誰もこちらを向いてなどくれないのだ。
果てのない黒のなかで・・・・少女はいつも泣いていた。

灯りを求めて・・・求め続けて、手を伸ばす・・・・。


・・・・。


「・・・だけど・・そんな私を助けてくれたのも・・・・」


つぶやきながら、彼女は青年のそばへと歩み寄る。
・・・手を、差し伸べる。


「・・・・・やっぱり、人間だった。」

知る人も無い闇の中・・・目の前の光に感じたのは・・・息が詰まるくらいの優しさで・・・・


「・・・だから・・分からない。」


触れた掌は・・・温かかった。
あの日、自分を守ってくれた手・・・・はじめて感じた人の温もり・・。


「私には・・何も分からないけど・・・・」


それでも・・・・・


「・・横島の手は・・・温かいよ?」


「・・・・。」


そのまま、何も言わず寄り添ってくるタマモの掌を・・横島は、やはり何も言わず、ただ握り返したのだった。

    

                       ◇



〜appendix.19 『死色のページェント』


人を包むのが闇ならば・・
それは何よりも「闇」と形容するにふさわしく、また、それ以外の形容が全くと言っていいほど当てはまらない。

そのおびただしいまでの『死』を前にして、メドーサは大きく息を飲んだ。

自分の周りを取り囲む・・無数の骸骨。
とうの昔に、皮膚は削げ落ち、むき出しになった白骨が・・カタカタと、奇妙な音を響かせる。

これが人というくびきを捨て、永遠の命を求めたものの末路だと・・・
そう考えると、恐怖よりもまず、同情の方が先立ってしまう。そう・・このような姿になろうとも、彼らは未だ生きているのだ。


「イマ・・何ト言ッタ・・?」

間を置いた後、がい骨の一人が、威圧するような声を上げる。

「・・別に、理解に苦しむようなことは言ってないだろ?うちのボスがね、あんたたちと手を組みたいっていうから・・。
 こうして、あたしが出向いたんだけど?」

言いながら、メドーサは辺りを見渡した。
塗りたくられたような黒の中・・その中央には、天にも届くほどに、巨大なオブジェが横たわっている。

儀式用の霊塔にも見えたが・・・それが玉座だと気づくのに、さして時間はかからなかった。

ここは王の間なのだ。
死を放棄することを望んだ、異端の魔族――――アンデットの頂点に君臨する・・不死王の玉座。

同族からも忌み嫌われる・・・しかし、地上に住まう魔族の中では、確実に最大の規模を誇る夜魔の軍勢。


「無礼ナ!コノ場ニオワス方を、一体誰ト・・・・・」

アンデットの一人が激昂するが・・しかし、次の瞬間・・・・・


「・・・な!?」

驚愕の声を上げたのは・・・メドーサの方だった。
自分へと掴みかかろうとする、白骨の兵の頭部に・・・突如として、ひびが割れ・・・

「ヒッ!?オ待チ下サイ・・・!私ハタダ・・・・・・」

・・いや、頭部だけではない。
彼の体のいたる所が・・次々と不協和音を立てながら、きしみを上げ・・・・・


「ヒィ・・・――――ッ!!!!」

悲鳴を上げる暇もなく・・彼はメドーサの目の前で・・あっけなく爆砕した。

・・沈黙の後、天空から堕ちる声が一つ。


『愚か者・・。妾(わらわ)の眠りを妨げるでない・・耳障りな・・』

それは・・ひどく、しわがれた声だった。
他者の心理を・・ただ無闇に不安へとかきたてるような・・・昏い声音。

広間を支配する『不死王』の絶大な妖気に・・メドーサは静かに身をすくめた。

(・・噂に違わぬ化け物ぶりだね・・。コイツは・・下手をするとドゥルジやアシュ様よりも・・・)

・・内心の動揺を隠すように・・彼女は唇を吊り上げる。

『そなたか・・?ドゥルジと申す魔神よりの使者というのは・・なかなかに若く美しい娘じゃ・・』

シルエットに包まれ、視認することのできない闇の奥から・・・不浄の王が笑みを浮かべる。
舐めまわすようにこちらへと向けられた・・・不快な微笑だ。

「・・若返ったのはつい最近なんだけどね・・。それより、ちょっとひどいんじゃないか?
 今の奴・・始末されるような真似をした風には見えなかったよ?」

多少、抗議の意味もこめて睨みつけるメドーサに・・・
声は・・さらりと言い放った。本当に、何の感慨も抱かぬように・・ただ一言。


『・・気にすることはない。ただの戯れじゃ。』

「・・・・・っ!」

全身の毛が逆立った。
恐怖によるものだけではない・・・激しい怒り。
こんな化け物を敵に回すのは・・確かに得策ではない・・・それは分かる・・。

・・・しかし・・・・

(・・反吐が出るね・・・)

こんな・・同族の生命ですら玩具のように握りつぶす輩を、味方に引き入れるなど・・、正直、御免こうむりたかった。


―――いかなる譲歩をしようと、彼女たちとの争いは避けねばなりません。無論、貴方に被害が及ばなかった場合限定の話ですが・・

出立の際、自分へと向けられたドゥルジの言葉が頭をよぎる。


―――不死王の軍勢は・・その強さと特異性により・・有史以来、あらゆる勢力とのつながりを絶ち、独立を保ってきました。 
   味方に引き込めれば、大きな戦力となることは間違いありませんが・・逆に敵に回せば・・・

・・・。

(・・・こちらも甚大な被害を受ける・・か)

血が昇った頭を軽く振り、メドーサは軽く姿勢を正した。
ここで自分が判断を誤れば、すべて終わり・・・・不死王とドゥルジの軍勢は真っ向から激突することになる。


「・・それで?私たちと同盟を結ぶわけにはいかないかい?そっちの都合が悪いなら、相互不可侵を約束してくれるだけでいいんだけど。」

・・本音を言わせてもらえるなら、ぜひとも後者を選択してほしいものなのだが・・・

『・・・条件に・・よるな・・・』

上機嫌そうに、しわがれ声がそう口にして・・・
メドーサは、その反応へ、いぶかしむように眉を寄せた。

別に歓迎できない類の応対ではないが・・・それにしても食いつきが良すぎる。
これが本当に、数千年間、他種族との接触を拒んできた王の言葉だろうか?


『そなたの主・・ドゥルジとやらはたいそう美しい少女だと聞くが・・』


「・・は?」

唐突な問いかけ。
一瞬、意味が分からない、といった顔をするメドーサに・・・不死王は続ける。

『・・・・生娘か?』

「・・・・あんた・・・突然何を言って・・・・」

『ドゥルジは生娘か?・・と問うておる。』

有無を言わさぬ王の言葉に・・メドーサは呆然として、固まっていた。

何だ・・コイツ・・。本当に・・何を言っている?

いや、確かにドゥルジは生娘だが・・・

なにせ、数万年を生きておいて・・男の手すらも握ったことのないという超がつくほどの奥手である。

口癖は「殿方と話すよりも、こうして兵法書を紐解いているほうが気楽です」
その言葉を聞いた瞬間、自分は「馬鹿か?」とつっこんだのだが・・・とまぁ、そんなことはどうでもいい。

それよりも今、重要なことは・・・

「・・んなこと知って・・一体どうするつもりさ?」

どの道、ろくな理由ではないと分かってはいたが・・・ストレートに疑問をぶつけてみる。

しかし、対する王の返答は・・彼女の想像を絶するものだった。


『血だ・・・』

声が響く。

『妾の生を保つには・・生娘の血が必要なのじゃ・・。
 ドゥルジとそなた・・2人の血を浴びるほどに飲ませてくれるというなら・・・貴様ら全員、「加えてやっても」よいぞ?』

「・・・?」

『我ら・・・アンデットの軍勢に・・・・』

言葉を失うメドーサへと・・けたたましい哄笑が降りかかる。
それは・・狂人の咆哮だった。精神を直接揺さぶるような・・死色の咆哮。

・・自分たちは勘違いをしていた。目の前の・・この存在に対して交渉など端から成立するはずがない。
コイツは・・・危険だ。
自分よりも・・・魔神たちよりも・・もっと概念的な意味で『闇』に近い・・。

邪悪な異形。


「・・・なるほどね・・ようやく分かったよ・・。」

メドーサは低く、つぶやいた。

『ほう?』


「あんたとは・・天地が引っくり返ろうと・・上手くやれそうもないってことがね!!」

叫びながら、彼女は虚空から一本の刺叉を取り出し・・・・加速する。

信じられないほどに速い突進。
輝くメドーサの全身から発せられたのは・・超加速を扱う者のみが放つことを許される・・眩い閃光。

一足跳びで距離をつめると、彼女は玉座へと剣撃を振りかざす。


『・・その程度で妾を仕留められるとでも・・・』


「思ってないさ。私一人なら、ね。」


瞬間だった。

「彼女」が現れた場所は・・・やはり虚空。
まるで始めからその場に居たかのように・・・少女は悠然と微笑んで・・・・

「・・・メドーサには・・指一本たりとも触れさせませんよ?」

・・紅い髪が揺れる。

同時に、空間を引き裂くほどの強大な冷気が・・・不死王の玉座を、瞬く間に氷の彫像へと変えていく。
着地から間を置かず、ドゥルジは小さく口を開いた。

「・・やはり、交渉は無理でしたか・・。残念です、不死王殿。」

緊張を解かずに前方を見据える。
彼女には分かっていた。この程度で息の根を止められるほど・・不浄の王は甘い相手ではない。
目の前の敵は、この世でもっとも不死に近き者。地上の闇を手中にする、正真正銘の魔王なのだ。

『くくっ・・そなたがドゥルジか・・。まったく油断ならぬ・・よもや、この場に潜んでいようとは・・・』

予想通り、数秒後、氷柱は一撃のもとに両断され・・そして・・・影の奥から、ヴェールが覗く。
鈍色のヴェール・・。全身を布と包帯で覆う不死王の素顔を確認することは・・メドーサにもドゥルジにも不可能だった・

『それでどうする?今、ここで闘り合うということで言いのかな?』

興味深げに尋ねる異形へと・・・

「・・いえ。今日は貴方の姿を拝見しにきただけですので・・。今の一撃は・・ちょっとしたプレゼントだとでも思ってくださいな。」

答えながら、ドゥルジは素早く空間に指を走らせ・・自らとメドーサの周りに無数の魔方陣を展開していく。

転移結界。
奇襲に成果がないと分かれば・・こんなところに長居は無用だ。

「うちの大将は手強いよ?覚悟しとくんだね、不死王さん。」

挑発するようなメドーサの声が・・・最後だった。広間一体に、暴風のような大気の流れが巻き起こり・・・


『・・・・・。』

2人の魔族の気配は・・まるで幻のようにかき消えていた。

・・・・。

「・・!王・・!ゴ無事デスカ!?スグニ侵入者ノ排除ヲ・・・・」

『・・・よい。』

慌てふためく白骨の兵士を手で制し・・・不死王は愉快そうに喉を鳴らした。

『面白いではないか・・・。単身、我が根城の乗り込んでくるその度胸。妾を出し抜くその知略・・実に面白い。』

さらに興味が惹かれるのは・・・悠久の刻を生き抜いてなお、衰えることを知らないあの若さ。
ドゥルジの魔血は自分にとって・・・さぞかし甘い甘露となろう・・・。

『ホホホホッ・・。久し振りに・・妾も退屈せずに済みそうじゃ・・』

生きとし生けるものは・・・全て彼女の前にかしづく定め・・・。
冥府の律すらも従える闇の王は・・・・鋭くその目を細めたのだ・・・・。


―――――・・。

「先に仕掛けたあたしが言うのもなんなんだけどさ・・、これで良かったのかねぇ・・実際のところ。」

夜天の下。
中空を舞いながら、バツが悪そうに問いかけるメドーサへ・・・しかし、ドゥルジは小さく首をふった。

「貴方が気に病む必要はありませんよ。あらかじめ伝えておいたでしょう?
 こちら側に被害が及ぶようなら、譲歩する必要は全くない・・と。敵対者は滅するのみです。」

ニコニコと・・・。
相変わらず、満面の笑顔で恐いことを言う。

魔方陣に腰掛け、『茶道のすすめ』なる書物を眺めている魔神の姿に・・メドーサは思いっきり頭を抱えた。

あの不死王を滅するとは・・・また、大きく出たものだ。しかもこの余裕・・一体、彼女の精神はどんな構造をしているのだろう?

まぁこの少女が・・・内に湛える絶対的なカリスマと、何よりも他を圧倒するその知性によって、数々の危機をねじ伏せてきたことも・・
それはそれで、事実ではあるのだが・・

「『混沌』と相対する前に・・小事が一つ増えただけのこと。あの者たちは、おそらく今回の件にも介入してくるでしょう。」

少し沈んだ声のドゥルジに・・・メドーサはため息をつきながら、頬をかいて・・

「・・前々から聞こうと思ってたんだけど・・その混沌ってのは何なんだい?いまいち、説明に要領が得ないんだよねぇ・・。」

そう言って、首をひねる友人へと、魔神はかすかに苦笑した。
彼女の言うことはもっともだ。自分ですら正体を把握しきっているわけではないのだから・・当然といえば当然の話なのだが・・

「・・私たちとは・・・全く別の生き物ですよ・・・。今はそれだけしかお教えできません。」

悲しげに・・言い聞かせるように瞳を落とすドゥルジの横顔に・・
メドーサは・・・もう一度だけため息をついたのだった。


〜後編へ続きます〜

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