ザ・グレート・展開予測ショー

まるで与えられた罪科 bQ


投稿者名:ガンヤク
投稿日時:(04/ 5/15)



まだ未発達な心を勢いに乗せて、そう思ってしまった。
彼女の好意は、今まで自分に与えられたものの中で、一番自分に都合よく出来ていたものだと思う。
彼には忘れられない存在がある。







魔族として生まれた


彼女達は魔族として、一年間という期限付きの命をもらって産み落とされた。
必要は力で、長く生きるための命は必要とされなかった。
彼女達はその短い命を、主のために尽くそうとする。主の願いは結晶と世界だった。
その願いをかなえるべく、彼女達は動き始める。願いの邪魔になるものを退けながら。
同じ主から生まれたことで姉妹となった。

一番上は蛍の化身、ルシオラ。
二番目は蜂の化身、べスパ。
三番目は蝶の化身、パピリオ。
短い命の中、それぞれ彼女達は自分の存在を求めた。
三番目は小さい身体に、見た目と同じような内面だった。言えば子供である。
彼女は三姉妹のうち、一番幼さに素直であった。自分より寿命の長いペットを求め、その記憶に自分を残そうとしたのである。一年たてば跡形も残らず消えてしまう自分を知っていた彼女は、そうした形で自分を残そうとした。そして自分の成長できない体に比べ、成長できる者達の成長を喜んだ。純粋に喜んだ。
二番目は成人した体に、好戦的な性格を持っていた。そして主に対する忠誠は三姉妹のうち一番硬かった。
彼女は主に対する忠誠で、自分の存在を求めたのだ。彼女の中では主が一番だった。そして忠誠以外にも、彼女は主に対して感情を持っていた。だから彼女は自分の持つ短い時間、主に尽くすことを願った。それが彼女の望みであった。
一番目…彼女は儚い恋に、自分を残そうとした。


ルシオラは他の二人と違い、初めは自分の存在を求めるものを持っていなかった。最初はべスパと同じく、使命を全うする事に存在を求めていたのかもしれないが、べスパほどではなかった。二人が求めるそれぞれの存在を見ながら、自分はどこに求めたらいいのかを迷っていたのかもしれない。

しかし彼女は、自分の好きな夕焼けを一人の男と見た。

ある日偶然、短い時間夜と昼の境に輝く夕日を見て、短い時間ならば自分もこうして光り輝きたいと、何処かで自分と夕焼けを重ね合わせた。夕焼けの見れる場所に足を運ぶようになったのは無意識。後いくつ見れるのだろうと、計算を始める頭に苦笑いしながらも、夕日を見れることで何かを満たしていた。
ルシオラはその夕焼けを誰かと見ることは無かった。妹達とはそれぞれ思い方が違う。自分の思いを一人で考えたかったのだ。
だからあの日は只の偶然でしかない。
彼女が夕日を見に来ると一人の男がいた。その男は自分の一番下のパピリオが、自分のことを残そうと連れてきた人間だった。おそらくパピリオが作ったのであろう変な服を着て、洗濯をしていた。その姿が面白く、そして妹の作った服を着てくれたことに感謝の気持ちを感じた。パピリオは自分をこの人間の中に残すことが出来ている。
思わず笑った。
「なーに?その変な格好?!」
笑ったことを格好のせいにした。中では嬉しさで笑っていた。
もうすぐ日が沈む。
通常空間に戻るときを狙ってきたこの場所に人がいたことは無く、偶然とはいえど誰かと初めて見る夕焼けに、いつもと違う光が見えた。
だからかもしれない。何も知らない人間に思わず自分たちの事を喋っていた。
喋ったところでどうにもならない。只の自己満足だろうとは思っても、パピリオのことでの感謝の気持ちを言いたかった。
パピリオの動物が好きな理由、その理由が自分達の一年間だけという寿命にある事、パピリオが人間であるポチに自分の思い出を残したいと思っている事、そして感謝の言葉。
思えばルシオラは短い時間に色々と喋ってしまっていた。
日が沈んだ空を見て、ルシオラは男を置いてそこを去る。
ルシオラにとってこの日の夕焼けは、一人ではなく他の人と始めてみた夕焼けであったが、只それだけであった。



「夕焼け…すきだっていったろ」

「一緒に見ちまったから…あれが最後じゃ、悲しいよ」



その言葉を聞くまでは。

砲撃に巻き込まれそうになり、危うくなった身を迷いながら助けた人間はいった。
無意識的に伸ばした手を、せっかくのチャンスであるにもかかわらず、迷いながらも離さなかった。
身近に感じる砲撃の衝撃に、足をつかむ力が離れたが最後、この身も終わるのだと思った。敵である確率が高いこの人間の男に、手を離さないという期待を持つのはおかしい。しかし今はそれにすがるしか自分が助かる術は無く、迷う男の顔を見ながら思う。
手を離すのだろうかと。
砲撃に飲み込まれる自分を脳裏に描き、ぞっとする。
目の前に迷う男の表情に、不安を覚える。
自分は何かこの世に残せたものはあるのか…

結局…手の力は緩まることなく、砲撃の過ぎるまでその力は込められたままだった。
機体に再び下ろされた身体に、自分は終わらなかったことを知らされた。

ルシオラは迷った男に対して、馬鹿ではないかと思った。
迷ったのは少なからず足をつかんだことを後悔したからだろう。でなければあそこで足を離すか離さないかを迷う必要はない。この男は敵だ。しかし足を離さなかったのだ。
「おまえ…もしかしてバカなの?」
砲撃がさって沈黙した時間に、声が出たのはルシオラのほうがさきだった。
男はまだ、砲撃が去ってからもまだ迷っている様子で、複雑な心境でいた。
ルシオラは敵であるにもかかわらず、男が自分を助けた意図がわからない。恩でも着せようという気なのか、それとも他に何かあるのかと、冷静に自分の中で考えがめぐる。
しかしその考えは簡単に壊されることになる。
男の自分を助けた理由は…夕焼けだった。


ルシオラは思った。
この男は優しい。
自分がなんとも思っていなかったあの夕焼けを見た日を、この男は気にかけていた。
自分でさえ些細なことにしようと思い、深く沈めていた短い時間のことと…夕焼けを見ることが最後になってしまうのが悲しいと、敵であるのに思ってくれていた。
敵であるのに見殺しに出来ないほど…

ルシオラは感じた。
自分の中で夕焼けが大きく変わった。一人で見るものではない、一緒に見たい存在が出来た。自分の求める存在のあり方が出来た。自分の存在を残したいものが出来た。
自分の中で、この男は今一番になった。

本当に短かった。
それは一目惚れと言う訳ではない、よく相手のことを知ったわけでもない。
男がひどく優しいことを知ったとたん。なんでもなかったものが恋になった。
自分のなかの短縮された時間が、恋を瞬時に作り上げた。
しかし嘘の恋ではない。

この気持ちは本物だった。

名前を聞いて呼んでみる。
買い物に誘って、夕焼けを見ようとする。
男の思い出に残ろうとする…
最後を覚悟しても、結ばれて終わるのならば、すべてを捨て去ることもいとわない。
一度、もう駄目だと思ったとき…砲撃に巻き込まれようとした時…自分には何も残したものが無かった。それをひどく後悔した。
もうあんな後悔はしたくない。
自分は見つけた、存在を残したいと思ったものを…

もう迷うことは無い







彼には忘れられない存在がある。
それはすべてを捧げて自分を好きだといってくれた魔族のこと。
そして自分のために消えていった魔族のこと…
今でも思い出すあの最後の光のこと…
自分の中にある微かな魂のこと。










青年にとって、その存在は…

初めて好意を表してくれた存在がある。
身の衝動に駆られ、それに答えようとして、今までしたことが無かった努力をして、自分の命まで放り出して、守りたかった存在になった。
答えようとした。
必死に自分なりに答えようとした。
彼女から与えられる好意を、嬉しく思った。
自分を好きでいてくれている。
自分のために命を捨てても思い出が欲しいといった。
それに答えるようにして、自分も命を張った。
同じように。

彼女のために。

横島忠夫と言う自分を…
好きになることに何のメリットももたない自分に対して、好きだといってくれる彼女…
今までそう思ってくれる存在を求めていたのかもしれない…
自分を好きだといってくれる、自分のために尽くしてくれる。
そんな自分に都合のいい…そんな存在を…

求めて…それになってくれたのはルシオラだった。


「…おまえもバカだな…こんなやつ好きになって…どこがよかったんだ?自慢じゃないが顔も地位も並以下で、いい所なんか一つも無いやつなんだぞ?勉強も駄目で、女にももてない、いつも下っ端っていう身分扱いで、中身エロイし、欲望に忠実だし…自分で言ってて悲しくなるくらいなんだぞ?!
美神さんにはいつも殴られてるし、おキヌちゃんにまで時々軽蔑の眼を向けられるくらいで、霊力があるっていっても、そんなに強いほうじゃない…
なぁ…本当に何がよくて好きになったんだよ、マジで!
俺結構自分の事わかってるっていうかさ、ありえないことっちゅうか…

なぁ…教えてくれよ…

俺のどこがよかったんだ?
お前を見殺しにするようなやつだぞ?
好きって言ってくれた女に、そんなふうに返すような男なんだ!!
どこにもいいところなんてない!!
駄目なことばかりで…何の役にも立たない!!
お前ぐらい可愛かったら、俺でなくてももっといい男捕まえられたはずだ

何で…俺だったんだ?

…………

…………

…………

…ほんとはさ…俺がお前を好きになったのって…恋とか感じたのって…お前と出会って、お前が俺のこと好きって言ってくれて、命懸けてくれて…んで、アシュタロスと戦って…お前が消えて…最後の最後に…お前が…復活できなくて…消えた…時…で…本当…遅かったんだよ

最低だろ?
お前があれだけ俺に尽くしてくれたっていうのに、俺は…まだお前に恋してなかった…
体だけが目当て、そんなふうだったんだ…
命かけたっていっても、お前と同じじゃなくて、自分のためだったってことだよな?
お前みたいに、俺の事好きだからって…
ためはって、同じようにお前に返してたようで、何にも返しちゃいなかった…

お前に何もしてやれ無かったよ

でも…お前のこと、最後の最後で…やっと好きになって…でも遅くて…
もうお前はいないし…
どうしたらいいんだろうな?
今はもう好きなんだ!
ちゃんとお前の事好きで、愛してるとかも…嘘なしで言える!

なのにもうお前はいない!!

自分がいやなんだ…遅すぎで…いなくなって好きになるなんて…
こんな…こんなことって無いよな?
嘘だよな…?

…………

…………

…………

もう…こんな思いしたくない」


すべての想いは幼さから…
未発達な心から…



NEXT…

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