ザ・グレート・展開予測ショー

傷ばかりの天使!!(その33)


投稿者名:TAITAN
投稿日時:(04/ 5/14)

バタッ
黒い甲冑を身につけたような体をした魔神ヴァルシオンは片膝をつく。
『ば、馬鹿な。我が、老いた人間に敗れるとは・・・。』
「これが伝説の魔神の力か、他愛もない。」
血がついた長剣を持った、年老いたバルドルフはヴァルシオンに近付く。
「さぁ、もらおうか。貴様の力と永遠の若さを。」
『・・・・ふふふふ、いいだろう。だが、強大な力を持っていても、いつかは超される運命にあることを忘れるな・・・・・。ぐぅっ・・・。』
ドサッ・・・
地面に倒れるヴァルシオン。
そして、二度と起き上がることはなかった。
「フン、何を言うか。絶対的な力を得た私に勝てる者など、この世には存在せん。永久にな。」
屍となったヴァルシオンを見ながら、バルドルフは言った。
その時、バルドルフの周りを覆うように、黒いオーラが出現する。
ヴォォォォォ!!
バルドルフの周りを、黒いオーラが包む。
「フハハハハハハハハ!!見ておれ、メタリアの一族よ!!この魔神の力を扱えるようになった私が、世界に君臨する日を!!」
魔神の力により若返ったバルドルフは、ずっと笑い続けていた。





「ドクター・カオス、教えて。魔神ヴァルシオンって一体どういう魔神なの?」
美神は、ドクター・カオスに聞いた。
「・・・・・・。」
カオスは、近くにあった岩に腰を下ろす。
「ヴァルシオンのことについては、あ奴がよく知っているじゃろう。」
「?」
美神は後ろを見る。
すると、ダンテに薬を飲ませている魔鈴の姿があった。
「特殊な傷薬を飲ませました。これで傷はすぐに治るはずです。」
「魔鈴!なぜあんたがここに?」
「・・・・・。」
魔鈴は立ち上がり、美神の近くにやって来る。
「・・・・西条先輩は?」
「横島クンと一緒に戦っているわ。」
「そうですか・・・。」
「・・・魔鈴、あなた知っているの?魔神ヴァルシオンのことを。」
「えぇ。」
「教えて頂戴。ヴァルシオンのことを。」
少し黙った後、魔鈴は口を開いた。
「魔神ヴァルシオンは、天地創造の時代に誕生した神です。」
「神?魔神じゃないの?」
「最初は神だったんです。しかし、あまりにも強大な力のため、神界はヴァルシオンを魔神と決め、この地上界に追放したんです。
その後、ヴァルシオンは姿をくらまし、二度と人間界に姿を現すことはありませんでした。」
「・・・・・・。」
「それがまさか、倒されているなんて・・・。」
「人は、怒りや憎しみで信じられない力を出すものじゃ。」
カオスが言った。
「わしも長い間いろんな連中を見てきた。もちろん、そんな連中もな。」
「カオス・・・。」
美神は城の方を見た。
今だに、魔障壁が城の周りを覆っている。
「横島クン、西条さん・・・・。」





ギンッ!ガンッ!
「くっ!!」
「どうした?貴様らの力はその程度か?」
ドーム内に金属音が響き渡る。
人を見下すような目で、バルドルフは2人を見る。
「所詮、貴様らなんぞに、この私が敗れるわけがない。」
「こ、この化け物めっ!!」
横島は霊波刀で、西条はジャスティスで、バルドルフを斬ろうとする。
しかし、バルドルフはその2人の攻撃を、1本の"短剣"で防いでいた。
薄笑いを浮かべながら、軽々と。
「ふんっ。」
ヒュッ!
バルドルフは、横島の腹に膝蹴りを入れる。
ドゴォッ!!
「ぐぼっ!」
体が「く」の字に曲がり、横島は吐血する。
「横島クン!!」
「余所見はせんほうがいいぞ。」
ズバァッ!!
「ぐあぁ!!」
バルドルフは、空いた手に長剣を握り、西条を斬った。
「向こうへ行ってろ。」
そう言って、バルドルフは斬って体勢が崩れそうになっている西条の胸に蹴りをいれる。
ゲシッ!!
「がっ!!」
その蹴りの衝撃は凄く、西条は向こうの壁まで吹き飛ばされる。
ドガッ!!
「がぁっ!!」
壁にぶつかった衝撃が、体全体へと広がり、西条は地面に倒れる。
「脆いな、貴様達人間どもは。」
向こうで倒れた西条を見て、バルドルフは言う。
「ぐ、ぐぐ・・・。」
なんとか起き上がろうとする横島。
「・・・・・。」
バルドルフは、立ち上がろうとする横島の頭を掴む。
ギリギリ・・・・
「がああああああああ・・・・!」
まるで頭を万力で挟んだかのような激痛が、横島を襲う。
そしてバルドルフは、西条の方を向く。
「ぐ、ぐぐ・・・。」
なんとか立ち上がる西条。
その西条に向かって、バルドルフは掴んでいた横島を投げた。
「受け取れ。」
ヴォンッ!!
「!!」
ドゴォッ!!
「ぐあっ!」
「がはっ!」
衝突した2人は、大きく地面に倒れる。
バタッ!
「ぐ、ぐぐ・・・、も、文珠・・・・。」
横島は、力を振り絞って"治"の文珠を2個作り出す。
そして1個を自分に、もう1個を西条に使った。
「く・・・・。」
文珠によって傷は治った2人だが、体の内部にはまだ痛みが残っていた。





「ちっ、しぶとい輩だ。」
軽く舌打ちをするバルドルフ。
「た、立てるか、西条。」
「あ、あぁ、なんとか・・・・。」
なんとか立ち上がる横島と西条。
「・・・勝てると思うか?」
横島が呟く。
「・・・・・今の状況だと、確実に負ける。」
西条が言った。
「・・・・・くそ。」
横島は、小さな声で呟いた。





「どうした、もうかかってこないのか?」
バルドルフが言った。
「それとも、その命を捨てる覚悟が出来たのか?あのギルファのようにな。」
「!」
西条の表情が変わる。
「あ奴め、この私を倒せるように貴様を戦いの中で鍛えようとしおった。」
バルドルフは、向こうにいる西条を指差す。
「だが、その考えは失敗だったようだな。貴様など、私の足元にも及ばん。」
バルドルフは薄笑いを浮かべる。
「貴様みたいな屑を強くしようと考えたとは、馬鹿な奴だ。」
「なんだと・・・。」
西条の表情が、怒りに変わっていく。
「西条、落ち着け!アイツの誘いにのるな!」
なんとか西条を止めようとする横島。
しかし、西条にその言葉は聞こえていなかった。
「あのギルファを、あの騎士を侮辱するとは・・・・!」
「侮辱して何が悪い?自分の思ったことを言っただけだ。」
「もう一度、ギルファを侮辱してみろ。すぐに貴様を斬り捨ててくれる!」
「ふんっ、ならば聞かせてやろう。」
バルドルフは言った。

「奴の死は"無駄死"にだったということだ。」

ブチッ!!
「貴様ーーーーーーーーーー!!!!!」
とてつもない速さで駆け出す西条。
そして、
ジャキンッ!!
2人の影が交差する。
「なるほど・・・・。」
バルドルフは言った。
「奴の死も無駄死にではなかったようだ。訂正しよう。」
そして、バルドルフはニヤリと笑う。
「だが、その鈍らは使い物になるまい。」
ピシッ!
バルドルフそう言った瞬間、西条の持っていたジャスティスにひびが入る。
そして、
バキッ!
「!!」
霊剣ジャスティスは折れ、折れた刃が、地面に落ちた。
「あ、ああ・・・・。」
その場に両膝をつく。
その西条に向かって、バルドルフは剣を振り上げる。
「西条、あぶねぇ!!」
大声で叫ぶ横島。しかし、西条には聞こえていなかった。
「ちっ!」
横島は"加""速"の文珠を作り、西条を助けに行く。
「死ね。」
バルドルフは剣を振り下ろす。
ブオンッ!
しかし、バルドルフの剣は空を切っただけであった。
バルドルフが向こうに目を向けると、西条を抱えた横島の姿があった。
横島は、西条を地面に下ろす。
「おい、しっかりしろ西条!!」
「・・・・・・もう駄目だ。」
西条は呟いた。
「奴には勝てない。実力が違いすぎる・・・・。」
「何言ってるんだ、西条!!」
横島が叫ぶ。
「もう終わりだ。僕達は、ここで死んでしまうんだ・・・・。」





ドバキィッ!!
次の瞬間、横島は西条を殴っていた。
「何ふざけたこと言ってやがる!!」
横島は怒鳴った。
「たかが剣が折れたぐらいで戦いを捨てるのか!?ふざけるんじゃねぇ!!」
横島は、西条の襟を掴む。
「いいか!?美神さんはな、テメェのことを昔"白馬の王子様"と思っていたんだ!!
いつか自分を迎えに来てくれる王子様だと!
だがな、こんなところであきらめるテメェはもう王子でも何でもねぇ!ただの落ちこぼれだ!!」
横島は襟を掴んでいた手を放す。
「戦いたくないんだったら、それでもいい。」
横島は言った。
「俺はあきらめねぇ。奴を倒し、皆の所へ戻るんだ!」
横島は霊波刀を出し、バルドルフに向かって駆け出していく。
「・・・・・落ちこぼれか。」
西条は呟いた。





"ここであきらめるのか?"
「!?」
"ここで何もせず命が散るのを待つだけか?"
「ぎ、ギルファ!」
西条は、頭の中から聞こえてくる声の主の名前を叫んだ。
"君はそれほどまでに弱い人間ではない。君は言ったはずだ。
『人の喜ぶ顔が見たいからオカルトGメンに入った』と。
この世にはまだ、君が守るべき人が残っているはずだ。"
「守るべき人・・・・。」
その時、西条の頭にアリス王女の顔が浮かぶ。
「アリス王女・・・。」
"アリス王女は、君の無事を祈っている。城の外で、今も・・・・。"
「・・・・・・。」
"これを君にあげよう・・・。"
「?」
西条は、右手で握っていたジャスティスの柄を見る。
すると、その柄が徐々に変形し、1輪の白いバラになった。
そしてそのバラは、白い刃を持った剣へと変わる。
「これは・・・?」
"魔剣「ホワイトローズ」。私が唯一使いこなせなかった剣だ。
この剣は君にこそ相応しい・・・。"
西条はその剣を握る。
"頼む、守るべき人のために戦ってくれ。美しき騎士よ・・・。"
頭の中で聞こえていたギルファの声が止む。
「・・・・守るべき人のためにか。」
バキッ!
西条は、左拳で自分の顔を殴る。
「どうやら、少しおかしくなっていたみたいだな。」
そして西条は、ゆっくりと立ち上がり、バルドルフの方を見る。
横島が、バルドルフ相手に、必死に戦っている。
「守るべき人のために戦う、それが騎士の役目だ!」
ダッ!
西条は、バルドルフの所へと向かう。
「今行くぞ横島クン!君だけに、いい役どころをとられたくないからな!」


続く

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