ザ・グレート・展開予測ショー

まるで与えられた罪科 bP


投稿者名:ガンヤク
投稿日時:(04/ 5/ 9)

子供のころの記憶がだんだんと薄れていく時期は思春期。
新たなる感情の発達と広がりから違った見方の取れてくる時期に、子供のころの幼い感情など薄れてしまうことだろう。子供とは言えず、しかし大人ともいえないその時期は、未発達な身体を大きく動かすものでもある。このころから異性に関心を大きく示すようになる。関心はすぐに行動へ変わることだろう。それは健全なことである。不自然なことではない。
ある青年も例外ではない。異性に興味を持ち、そしてその存在を求めたことだろう。例外どころかその例としてはいい対象ではないだろうか?青年はその感情に素直だった。隠すことをしないのはきっと正直さというよりも素直な気持ちか…それだけ欲望に忠実だったということである。どこでも接触を好んだ。言葉を望んだ。歯止めの効かない感情を止めようとは思わなかった。そうしてその素直な欲望をそのままに…しかし成長につれてそれを少しずつでも落ち着けながら青年は成長していくはずだった。

そう、「はず」だった。





人がいない時だけ静まる一室に、一人の人間がいた。
その身体はその部屋にあるソファーに投げ出されているが、納まりきってはいない。背凭れに力なくかけられた腕があり、そして床についている手があった。そして足は肘掛の所に掛けられ床につこうとしている。仰向けられた胴体と頭以外が納まりきっていなかった。だらしなくも投げ出された身体は疲労を感じさせた。閉じた眼は今は開くことがない。上下する胸以外はぴくりとも動かなかった。
まだ成長途中なのだろう。その人間の腕には頼りなさを感じた。全体的にまだ青年に見える。容姿もまだ幼さを残し、目を閉じたことで更にそれを感じるものだろう。
実際彼はまだ若い。まだ青年だった。
青年の名前は横島忠生といった。

彼、横島が寝ているこの部屋は彼がバイトとして勤めている美神除霊事務所の応接室だ。
いつもならば彼だけでなく他のものもいるはずなのだが、今は彼だけだった。もしいたとすれば彼が寝ていることはない。安眠を妨害する者がいないからこそ彼は寝ていられた。何かで疲れきった身体を休めるために横島は眠っている。その眠りはたやすく覚めるものではないだろう。
その環境をも壊さないようにドアが開けられた。軋む音が少し響いただけだった。ドアを開けた人物は少し開けた隙間から中を見ると、ソファーに眼をとめる。人の姿があると確認したように目を細め、そして気配をたちながら横島の眠るソファーへと近付いて行った。寝ている横島をソファーの上から見下ろし、身を屈める。そうして顔を近づけたかと思えば、掌を横島の口に近づける。近づけば掌に寝息を感じ、何か安心したような表情を浮かべた。

「よかった…」

何に当てはまるかも解らない言葉を発する。
その声は潜められたもので横島に届いたかもわからない。
横島の寝息は規則正しく乱れることがなかった。
近づけた顔を離すことはせずに、手だけを退けて更に顔を近づけた。少し首を傾けがちに重ねれば、あるところが触れ合った。
触れ合うだけで何も感じられなかったが、それは肉体的だけかもしれない。ふっとかがめた身体を起こし、触れた部分を手で押さえた姿には精神…心の中ではもっと何か感じることがあったように見える。少し慌てた様子を見せると、足早にこの部屋を去っていった。
この部屋に来たときとは反対に、ドアが閉められる音が部屋全体に響いた。
走る足音が遠ざかっていく。


しばらくして…

投げ出されていたはずの手と腕が浮いた。
そしてそのまま眼を覆い隠す形に重なった。
先ほどまで少し開き寝息を立てていた口が結ばれる。一直線に結ばれた口は堅く閉ざされた。しかしすぐに緩んで言葉を吐いた。


「…何なんだよ…!?」


手で覆い隠された横島の表情を読み取ることは出来ない。

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