ザ・グレート・展開予測ショー

悪魔は神か?(6)


投稿者名:雪男
投稿日時:(00/ 3/23)

都庁地下司令室
「一応今回の霊障はこれで終結しました」美智恵がGSや政府関係者の前で宣言した。
悪霊を集めたのは舎人達・・・というより舎人達に悪霊が集まったのが原因なので
上皇が舎人達を叱り付けて一件落着してしまったのだ。
政府関係者の顔は一様に引き攣っている。
瀬戸大橋の修理費だけ巨額に上る。
更に瀬戸大橋ついでに瀬戸内海の水運の混乱に伴う経済損失が・・・考えたくも無い。
おまけに崇徳上皇が壊したのは瀬戸大橋だけではなかった。
地元坂出町には目もくれなかった代わり、
近くの高速道路、鉄道などは大きな被害を受けていた。
まさに大損害だった。
「終結したからには報酬を」カオスが地雷を踏んだ
「契約条項に従えば、
 “除霊に当然付属する以上の損害を出した場合。非依頼者側の負担”となる。
 損害賠償を請求しても良いんだがね」政府高官の返答は冷たかった
「まさか、瀬戸大橋の修理費を負担しろと」唐巣が恐る恐る確かめた
「諸君らに負担能力が無いのは解っている!
 だが報酬は前払いも含め、全て諦めて貰うぞ!!」
「更に今回の一件については他言無用だ。
 もしどこかから漏れた場合、契約条項に従い損害賠償を請求せざるを得ない。
 そうなれば諸君らは全員破産することになるな」別の高官が引き継いだ
「ちょっと待つワケ、私は除霊の準備をしただけで参加していない・・・」
「上皇を気絶させたのは、君の助手だと聞いているが」
「参加していないのなら、報酬を受け取る資格も無いだろう」
エミはタイガーを睨みつけた。
「俺は契約条項に従い報酬を受け取る資格があるはずだ」
雪之丞が発言した。
「除霊はおろか封印にすら成功していないではないか!」高官が上皇を指差した。
「上皇陛下に無礼を働くと何が起こるが解らんぜ」
雪之丞は高官が蒼褪めると話を続けた
「俺の契約内容は、“依頼者の指示に従うこと”だけで成否は関係ない。
 とはいえ素直に払う気になれないだろうから駄目押ししておくか。
 指示と関係ないから追加料金をいただくぜ。
 ・・・上皇陛下、この国の状況についての知っているか?」
「舎人どもが時々知らせに来る位でおじゃるな」
「核兵器、細菌兵器、化学兵器、原子力発電についてはどうだ?」
「核兵器は“ぴかどん”のことであろう?
 細菌兵器は“ぺすと”や“ちふす”があると聞いておじゃる。
 化学兵器は“塩がす”や“辛子がす”でおじゃるな?
 発電は水を使うと聞いておじゃるが?」
「核兵器は“ぴかどん”より更に強力なものや、簡単に使えるものがあるぜ。
 細菌兵器や化学兵器も同じだ。
 それに原子力発電所は場合によって核兵器より更に恐ろしい武器になる。
 何より戦争でもないのにそいつを日本に使う国や組織があるんだぜ」
「戦でもないのにでおじゃるか?」
「あぁ最近も地下鉄・・上皇陛下がいた場所のような所で人の大勢いるとこ・・で
 “サリンガス”が撒かれて大勢死んだ」
「それは本当でおじゃるか?・・・そなたは嘘を吐いていない様でおじゃるな」
「あぁ。ついでに事故で誰かが兵器を使ったのと同じ状態になったこともある。
 今の所、被害は小規模に収まってはいるが今後はわからん。
 日本人を誘拐して喜ぶ国まである。朝鮮の北半分のことだがな」
 雪之丞は“誘拐”の下りで上皇の瞳に憎悪が浮かぶのを確認して続けた
「このままでは日本人が居なくなってしまうかもしれん。
 いいのか?」
「朕がこの国を支配する限りそのようなことは許さないでおじゃる
 日ノ本で“ぴかどん”を使おうとした日がそのもの達の命日でおじゃる」
「日本に“ぴかどん”だけ打ち込む手もあるぜ、朝鮮やもっと遠くから」
「“報復兵器”でおじゃるか、それは面倒でおじゃるな」
「それに既に誘拐された奴らはどうする。洗脳された奴とか」
「うーむ。?洗脳?洗脳とは何でおじゃる」
「洗脳というのは、そいつに自分の都合のいい事をやらせるためにえーと」
「“傀儡(くぐつ)”の術でおじゃるか」
「ああ。だがちょっと違う。
 本人は洗脳された事に気付いた上で、術者の望み道りに動く。
 傍目には正常にしか見えない」
「凄い術でおじゃるな。ひょっとしてあの者がそうでおじゃるか」
上皇は高官の一人を指差した
「いいがかりだ!」高官は反論するが、回りの高官には納得できる所があるらしい。
「どうして、そう思うんだ?」
「あのものには何者かの影が憑いておじゃる」
「あんた達にも思い当たる節があるんだな」
「彼は駐中国大使として赴任したことがある。北京大使館は・・」
高官は言葉を濁したが、アジアの外交関係に詳しい雪之丞にはそれ以上必要なかった。
「術を解けるか?」雪之丞は上皇に聞いた。
「無理でおじゃるな。朕には出来ないでおじゃる」
上皇の目がルビーの様に煌めくと洗脳された(らしい)高官は掻き消すように消えた
「何をやったんだ!」
「少し早いようでおじゃるが、一つ道を進ませたでおじゃる」上皇は平然と答えた。
「まさか、これからもその調子で全員始末するつもりじゃ」雪之丞は愕然とした。
「結局彼はどこに送られたのかね」状況を理解できなかった高官が質問する。
「(やはりそうか。大使館と通産も確認しろ急げ!)」高官の一人が慌てて電話を掛ける。
「平坂に送られたよう様だな」雪之丞が苦虫を噛み殺したような表情で答える。
「平坂?平坂とはどこだ?」
「(・・・北京大使館が通信途絶?回線は正常?通産もダメ?)」
慌てて電話を掛けた高官が放心したように電話を見詰める。
「なんだどうしたんだ」高官同士の話し合いが聞こえる
「中国関係セクションの人間が殆ど“消えた”そうだ」
「全員同時にやられたのか!」
「結局どこに送られたんだ?」
「殺されたんだよ。それだけは確かだ」
「“一つ道を進ませる”って言うのは殺すと言う意味だからな」
「一瞬で全員か!」
「凄まじい霊力だな」
「死体さえ残さないとは」
「北京大使館もか?」
「回線が無事で通信途絶ならそうだろうな」
「上皇の霊力は国内限定じゃなかったのか?」
「政府以外は大丈夫なのか?新聞社とか?」
「すぐ確認する」
「通産までとは意外だな」
「同じじゃないのか?あの国が発展するとは信じられん」
「・・・上皇陛下、もうすこし手加減しては頂けませんか?」唐巣が恐る恐る嘆願した
「あの者達は既に屍となっておじゃる。屍が動いておるだけでおじゃる。
 平坂に送るは慈悲でおじゃる。
 攫われた者達は外国(とつくに)に居るのではどうにも成らないでおじゃるな。
 今後人を攫い、外国に行かむとした者は舎人達が相手をするでおじゃる。
 “報復兵器は”烏どもに相手をさせるでおじゃる
 もちろん手を貸したもの、朕の邪魔をしたものも平坂に行かせるでおじゃる
 それでよいでおじゃるな?」
上皇は高官達を見回した。面白いくらいそろった動作で一斉に頷く。
広い室内に電話の声が虚しく響いた。
「では、朕は烏どもに指示を出しに行くでおじゃる。
 カオス卿、所用によりお相手できぬが、いつでも訪ねてくだされ。
 朕は退屈しておるでな」
上皇は掻き消すように消えた。
「ほんの一部でさえ、ここの結界は全く役に立たないのね」
美智恵の呟きがやけに大きく聞こえた。

(死ぬ・・もう死ぬ・・目が霞んで・・事務所はもうすぐの筈なのに・・周りが見えない・・・
 ・・・都内で遭難するなんて・・・腹が減って死にそうだ・・・ああ・・・事務所だ!!!)
夜半過ぎだが遙か彼方に事務所が見える。横島は事務所に突進した。
「うおおお!メシ!メシ!チーズ!鮭!卵!牛乳!
 もし飯が炊いてなかったら代わりにおキヌちゃんを食っちゃる!!」
ドアに飛びつく、開かない。
「開けろ!!人工幽霊一号!!横島だ!横島なんだ!!」ドアが蝶番ごと取れた。真っ暗だ。
「食いものー!!」横島は台所に飛び込むと冷蔵庫に体当たりした。
目から火花が出る。気にしていられない。すぐ開ける。ハムの固まりに噛みつく。皮ごと噛み砕いた。
チーズと鮭を手に持つと振り返る。
「でんきがまー!!」奇声をあげ、炊飯ジャーに飛びつく。
鮭を持った左手で器用に蓋を開けると、右手のシャモジで飯を掻き込む。鮭に囓り付く。
チーズをほおばる。後から近づく人影に気付かなかった。

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