ザ・グレート・展開予測ショー

〜 『キツネと姉妹と約束と エピローグその1』 〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 5/ 8)




輪が・・・巡っていく・・・・。






























           


                     


                       




〜appendix.17 『プロローグ』



夢を見る。

もう何度目か分からないそれは・・悪夢ではなく、幻夢でもない。

どこへとも知れず、連鎖していくそれは・・光でもなく、闇でもない。

例えば、海をたゆたう藻屑のように・・・・ユラリユラリと揺れ続け・・・・

例えば、鏡に映る水面をすくうかのように・・・・すべて無意味・・・・すべて意味無・・。

それは・・・・色を持たない者が見る、色の無い夢・・・。


色の無い・・・世界。





―――――・・。


「探しモノは見つかったの?」

その声からは感情の断片すらも読み取れない。

視界を覆う色の混在。故に、その色は『色彩』を持ち得ない。
白や黒・・・・おおよそ、輝きと呼ばれるものを全て飲み込む・・・。

・・・混沌。

そんな虚無の世界の一端に、蒼い影がたたずんでいた。
どこまでも澄んだ蒼瞑・・・・・しかし、そのどこかに虚無と同質の狂気が垣間見えるのは・・・果たして錯覚なのだろうか?

「・・見つかったよ。多分ね。」

蒼髪の少年は・・背後からの問いに薄く目を細める。それはひどく楽しげな声音だった。


「いいなぁ・・・。ずるいよ、私も外で遊びたいのに・・・」

問いかけの主は拗ねたように頬を膨らませ・・・

人影は年のころで言うなら13、4歳の・・少女。
血色の良い肌とは対照的に、それ以外の・・彼女の全てを包む灰、灰、灰。
髪も、瞳も、爪も・・・・背に負う腐りかけた翼までもが・・完全な灰。

美しい・・だが、年に不相応な・・・まるで幼児のようなあどけなさを持った・・そんな少女だった。


「久しぶりだね、ユミール。・・元気そうで安心したよ。」

穏やかに笑う蒼髪の少年に、ユミールと呼ばれた少女は元気よく頷き・・・

「うん!ユミールはいっつも元気だよ!お兄ちゃんも元気そうでよかった〜」

唄うように笑う。・・笑い続ける。

「そう・・君は外に出たいんだね・・。じゃあ、今度は一緒に行ってみようか?」

つぶやく少年。
しかし、彼女はその提案に頭を振り・・・

「いやだよ〜お兄ちゃん・・なんだか恐いんだもん。」

一転して不機嫌そうな顔をするユミールに、蒼い影は苦笑する。

「恐い?どうして?」

「お兄ちゃん・・何を考えてるか分からないから。ユミールもよく同じことを言われるけど・・お兄ちゃんはもっともっとも〜っと・・」


・・・そして静寂。


「・・・知りたいなぁ・・一体、お兄ちゃんはどんなことを考えてるの?」

焦点の合わない視線。
狂気を含む微笑とともに、少女は少年に顔を寄せる。

・・・しかし・・・・


「・・・さぁ?」

彼はそれを・・・緩やかな声で受け流しながら・・・
遠く・・ずっと遠くへ視線を送った。
・・・・淡い、虚無の海へと・・・・・。

「あ〜!また、そうやってごまかして〜〜教えてよ。お兄ちゃん!ねぇ〜教えて・・・」

・・・。

「?」

その瞬間。

文句を垂れようとするユミールの瞳が・・少年と同じく、水面の一点へと吸い寄せられ・・・

・・・・。


「・・・綺麗な子・・・」

彼女は恍惚のうちで、そう口にした。

ぼやけた焦点が、水鏡に映る、一人の少女の映像に実を結ぶ。
虚ろな瞳が・・・金色のやわらかな光を放つ髪を・・・白磁のような肌を、深く捉え・・・・

綺麗・・・綺麗・・・・きれい・・・・

まだ幼さの残るあの顔立ち。ルビーのように儚い・・赤い瞳。

「・・・・きれい・・・・・」

うわ言の後、ユミールは何かを読み取るように目を凝らして・・・

「ふぅん・・タマモちゃんって言うんだ・・。」

ニコニコとやはり嗤う。彼女はそれしか表情を知らない。

「決めた!やっぱり、次は私も行くよ。お兄ちゃんとは別々にだけど・・・あの子に会ってくる。」

待ち遠しそうに目を輝かせ・・少女が空へと浮かび上がる。
鼻歌を歌う彼女の顔は・・・・本当にとても無邪気で・・・・・


「『また』壊すの?ユミール」


「アハハッ。タマモちゃんがいけないんだよ〜あんなに可愛いんだもん。メチャクチャにしたくなっちゃうよ〜」

・・だがその双眸に宿るのは・・はっきりと顕になった欲情の炎。

「今度はどんな風にしよう・・。お兄ちゃんはどうすれば壊れると思う?
 すごく悲しい思いさせればいいかな?生きているのが嫌になるぐらい、痛い思いをさせるのもいいし・・
 何も知らなそうだから・・気持ちイイことをして遊ぶのも楽しそう・・・」

指折り指折り・・・まるで童遊びの種を選ぶかのごとく・・ユミールは空間に身を躍らせる。


「・・遊ぶのもいいけど・・忘れないでね?ユミール。君が下界に降りるということは・・」

「『お父さん』と西条さんにも・・当然会えるよね?それに私を殺したあの人とも・・う〜んそれも楽しみ〜」

言って、彼女は自らの翼を撫で上げる。愛しそうに・・・憐れむように・・

それは少女が翼人であることの・・唯一の証明。
・・父との絆。

「うふふ・・。それにしてもワクワクするなぁ・・タマモちゃん・・早く逢いたい・・・」

「・・・・。」

ヒラヒラと・・。
虚空に羽根が舞い落ちていった。





                   ◇




『気になるアイツのハートをゲッツ (σ゚э゚)σ!!☆告白スポットベストセレクション50』


・・・。

いかにもといえば、いかにもなタイトル。山積みにされた同名の本。
需要と供給の関係が、正しい形で成立しているのか・・・?
一瞬、そんな思いとらわれるが・・・

「・・・・。」

呆れたそぶりを見せつつも、少女はその実、興味深そうに・・次々とページをめくってゆく。
時折、『へぇ・・』や『ほぉ・・・』などと、感嘆の息をもらしながら・・
文章で書かれた状況を自分に当てはめ、心の中でシュミレートする。

陽光に透ける金色のポニーテール。彼女の白い頬には心なしか朱が差しているようで・・・

・・・・。

「・・・・・・。」


・・・・。

―――――・・。


「お買い上げありがとうございました〜」


数分後、何故か・・・本を片手に店を出て行く自分がいたりする。
いや、シュミレーションが意外にも結構楽しかった、という理由もあるのだが・・・
彼女の本能が、今後の戦略には絶対のこの本が必要だと・・そう、告げたわけで・・・(多分)

「・・・今度・・少し試してみようかな・・」

街を歩きながら、彼女がポソリと口にした・・・その時。

「?何を?」

「!!!!!!!?」

不意に声がかけられる。
あまりのことに、尾と耳が狐に戻ってしまったのはご愛嬌だ。
まぁ、『告白スポットベストセレクション』を買った矢先にそのターゲットと出くわせば、これも当然の反応と言えるのだが・・

「よ・・・横島!?な・・ど・・どうしてここに・・・」

「・・買出しに付き合えっていったのはお前だろーが・・。それよりなんだ?なんでそんなに驚いてんだよ?」

「・・べ・・別に・・?」

ため息を吐く横島は・・・
ごまかしながら、そそくさと本の包みを後ろに隠すタマモを見て・・

・・・。

「・・エロ本でも買ったのか?」

「買うわけないでしょ!あんたじゃないんだから!」

・・・そんなこんなで・・いつも通りのやりとりをする彼らの空気は、今日も今日とてやはり平和だ。


「・・こほん。それよりちゃんと揚げ物屋には行ってきた?私の他にスズノも居るんだから、油揚げはいくつあっても足りないわよ?」

「いや、そのことについては何度もつっこんでるんだが・・
 いくらスズノの歓迎会だからって、普通、油揚げ買うのに10万もつぎ込むか?
 そして、それを2つ返事で承諾して費用を出す西条の姿勢にも、何かもの凄い疑問を感じるんだが・・・」


半眼。
ここ最近で一番の半眼。
2回計画して、2回とも失敗したスズノの歓迎会をもう一度開こうと・・仲間うちでそう決まったのはつい一昨日のことだ。

「しかし、意外だよな〜。どうしてあの西条が会費を全額引き受けるなんて言い出すかね〜」

他人が費用を負担するとなれば、美神にも気兼ねなく、盛大に会を開くことができる・・。
それは大いに結構なことなのだが・・・

「・・西条さんもスズノには甘いから・・」

肩をすくめるタマモの様子に・・少し笑う。実際、スズノに一番甘いのは彼女自身だというのに・・・


「・・なに?人の顔を見て、ニヤニヤしないでよ・・。」

「へいへい・・・」

気だるげに一つのびをして、2人は事務所への道に足を向けるのだった。

  
                             ◇


『はぁ?パーティー?』

「えぇ・・今日の昼休み、学校の後輩に参加しないか、と誘われたのですが・・」

とあるマンションの一室で・・少女が一つ呟いた。

驚くほどに紅い髪と雪のように白い肌・・。
制服姿で仮の自宅へと帰宅したドゥルジ・・・もとい、神薙 美冬は、現在、エプロンを身につけ夕食の準備に取り掛かっている。
コトコトと音を立てるキッチンの鍋を見つめながら、右手に持った電話の受話器へと目をやって・・・

『それで?どうするのさ?せっかく誘われたのに断る気かい?』

どこか冷やかすような電話越しの声。
どうやら・・自分と後輩について、何か致命的な誤解をしているようだ。

普段から自分を唐変木あつかいしている『彼女』のことだ。おそらく、からかうための格好のネタを見つけたつもりでいるのだろう。


「・・妙な勘繰りはおやめなさい、メドーサ。私と彼は断じてそのような関係ではありません。」

会話を打ち切るように、強い調子で言い放ってみるが・・・

『ほ〜・・「彼」ときたか・・』

「・・・・・・。」

無駄な足掻きだとすぐわかった。
こういう時は彼女の言うことを続けざまに聞き流すに限る・・・。経験則からそれを悟り、美冬は軽く頭を抱えた。

『いや・・でも本当に・・ドゥルジが自分から男の話を持ち出すなんて珍しいねぇ。行ってくればいいじゃないか。 
 人界での暮らしは気に入ってるんだろ?』

笑いをかみ殺しながら言うメドーサに、美冬は小さく首をふる。そして・・少し真剣味をおびた表情になって・・

「・・いいえ、いくらなんでもそれは・・。第一、そこまで人間たちと馴れ合うつもりは・・・」

『そんなこと言ってると、その後輩とか言う奴・・他の女に奪られるよ?」

「・・・・人の話を聞いていましたか?メドーサ」

2人の口から漏れる口調には、気兼ねや遠慮というものが全くと言っていいほど感じられない。
彼女たちの結びつきには、単に主従を超えた何かがある・・このやりとりだけで、それが窺い知れた。

『・・冗談はさておき・・嫌じゃないんなら行ってきなよ。妙神山のこともあって・・あんた最近、へこんでたじゃないか。
 気分転換には丁度いい・・』

「・・・メドーサ・・」

気遣いの言葉に・・不覚にも少し、じんときてしまった美冬が・・思いっきり固まったのはその1秒後。


『せっかくだし、料理でも作っていってやれば?あんたが得意だって分かればきっとポイント高いよ?』

「・・ですから・・再三、誤解だと申し上げているでしょう!!」

部屋に怒声が鳴り響いた。




〜後編に続きます〜

『あとがき その1』

今回のお話は・・『聖痕』のエピローグを読まないとちょっと意味が分からないかもしれません。

エピローグなのにプロローグ!!エピローグなのに新キャラ出現!!(爆
うんうん、この手の敵キャラはかなり自分的にお気に入りなので感無量です〜
しかも色々と(笑)危険な発言を口走ってます、ユミールさん。
ポイントは『灰色』・・。巨人さんとお揃いですね〜

今回ばらしてしまいましたが、蒼髪の少年は実は『混沌』と繋がりのあるキャラクターなんです。

しかし・・気持ちイイことって・・い・・いや、あれですよきっと、『肩たたき』とかですよ!(違

あと妹につっこまれたんですが、蒼髪の少年とユミールに血の繋がりはありません。
彼女はとある理由で年上の男性を「お兄ちゃん」と呼ぶのが好きなようです。

あ・・あと・・ヒロさん。メドーサが再登場しました〜(笑
どうでしょうか?プロであるヒロさんから見て、何か違和感はないでしょうか?(汗

というわけで、後編をどうぞ。

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