ザ・グレート・展開予測ショー

悪魔は神か?(5)


投稿者名:雪男
投稿日時:(00/ 3/23)

「まったく美神さんは!俺だけ置いて帰っちまうなんて!!
美神さんだけならともかくおキヌちゃんまで。
 いつもなら手紙くらい残してくれるのに・・・・
 まさか風呂を覗こうとしたのがばれてたとか・・・・
 違うんだおキヌちゃん!!
 覗きたいとは本気で思ったけど止めにしたんだ!!
 それとも下着を手にとって見たことかな?
 脱衣所にビデオカメラを(動かしたまま)置き忘れたことかな?」
北風が冷たい。
長野は松代から東京までヒッチハイクと無断乗車で帰ってきたものの、
財布はすっからかん。
虎の子の千円札1枚だけというありさま。しかもこの金を使うわけには行かない。
千円で次の給料日までの十日間を過ごさねばならないのだ。
(心が寒い、懐が寒い、北風が寒い。俺が何したって言うんだ!!)横島の心の叫び。
横島の苦境は本人の所為ではなく、
筆者の所為なので手加減してやろうと思っていたが・・・台詞を聞いて気が変わった。
手前は絶対許さない。
(あと事務所まで20キロくらいか、散歩なら20分ぐらいだが歩くと遠いな。
 アパートは更に遠いし、帰っても食うものがな。
 小鳩ちゃんに何時もいつもタカル訳にも行かないし
 おキヌちゃんが居れば何か食わしてくれるだろう。
 鮭の切り身に熱いお茶、もちろん銀シャリ・・・
 納豆もいいけど匂いがな・・・
 今なら何でも食える気がするが、それこそ厄珍の料理でも・・・)
新宿駅までつけば後は山の手線内を突っ切るだけだから簡単だが、新宿駅は遠い。
さすがに東京都区内ではヒッチハイクするわけにも行かない。
電車が使えない以上歩くしかない。
(何時もなら女が気になるところだが、さすがの俺も今度ばかりはやばい。
 ちっとも目に入らんしな)
横島は女が目に付かないのではなくそもそもこの辺りにはいない事に気付かなかった。
甲州街道沿いにビルが無いどころか畑が広がっているのに気付かないのか?お前は。

「で、これが上皇なワケ」エミが頭を押さえて質問した
「本物なのかしら?」美智恵も頭を抱える
日本の大魔王、怨霊の王、大魔縁、大天狗等の称号を持ち、
小竜姫に“魔神”のお墨付きを貰った怨霊が、
高々見習いGSに叩きのめされたとあっては当然の反応だろう
ここは地上に設けられた臨時指揮所、その強力な結界の中で
上皇は眠りについていた。・・・気絶の方が実態に近いが
「本物かどうかは私も自信が無い、
 どうやら知り合いらしいDrカオスに聞くしかないと思う」と唐巣
「そのカオスは?」
「完全に伸びていますね」ピートがカオスの目を開けた
「タイガー、バケツに水汲んできて」とエミ
「チョット可愛そうですね」
「ピート、貴方のやさしさは解るわ。
 でも、これは人の命に係わる事件よ。今は一刻を争うの」エミが猫を被って言った
「そうですね」
「エミさん、酌んできましたケン」
「そっ、カオスにぶっ掛けて」
ザバッ
「うわ!!」
「目が覚めたみたいね」
「何をするんじゃ!」
「カオスあの男、本物の崇徳上皇なワケ」
「あやつか・・まあ本物といえば本物じゃな」
 カオスは美智恵から渡されたタオルで体を拭きながら答えた
「詳しく説明して頂けますよね」美智恵が確認した
「うむ、もう700年も前の話じゃ。
 世話になっていた姫が死んで暇になったので知り合い・・・
 あんたの娘のことじゃ・・・の国を見てやろうと思っての、この国に来たのじゃ
 そして面白い怨霊に出会った。
 普通怨霊というのは恨みを晴らすため何か悪さを企てるものじゃが、
 この怨霊は国を守ろうとしておった。
 そこまではわかったのじゃガ、発狂している上、
 当時のワシは日本語が良くわからん。
 そこで体を一つ作って憑依させた。
 それからしばらくは一緒に暮らし、色々やったのじゃよ。
 別れ際にワシはマリアに準じた体を作って贈り
 ・・・最初の体は死体から作ったので損傷が酷くてな・・・
 奴は財宝をくれた。
 こやつの体はワシがやった体とは違うが、
 体の作り方を奴に教えたので新たに作った体だと思う。
 奴は空を飛ぶ下僕を作って喜んでいたからな」
「“空を飛ぶ下僕”っていうのは“烏天狗”のことでしょうか?」と唐巣
「ワシは烏天狗を知らんからな・・・じゃが確かに烏と人の死骸のゴーレムじゃった」
「・・・日本人で死骸からゴーレムを作るなんて・・・」と美智恵
「人の死骸のゴーレムの作り方はワシが日本の僧侶に聞いたのじゃぞ」
「“羅生門”の時代だからね」唐巣は溜息をついた。
「狂気もカオスさんが直したのですか?」と美智恵
「いや、それは違う。
 はっきりとした理由はわからんが最初の体に憑依させたときには治っておった。
 おそらく容量的に一部しか憑依できないため、正常な様に見えるのじゃろう」
「ワシには意味が解らんのじゃがノー」とタイガー
「うむ!小僧。
 事故で大破した車を考えるが良い。
 全体としては“壊れている”ワケじゃが、
 タイヤとかハンドルとか一部だけ見れば正常か或いは多少歪んだ形で残っておる。
 人の精神も同じ事よ。
 全体として狂っていても一部だけ見ればそれほどおかしくは無い物なのじゃ」
「ジャガ発狂して死んだのに、正常な部分がそれほど多いかノー」
「いや話を聞く限り“崇徳上皇”は“完全に”狂った訳では無い。
 もし“完全に”狂ったのなら呪詛など出来よう筈も無いからの。
 精神崩壊を起こして、何も出来なくなるものじゃ」
「でっ、結局封印するのかしないのか」雪之丞が決断を迫った
「こやつをどうやっても封印したことにはならんぞ」カオスが答えた
「どうゆー事だ?」
「ここにいるのは奴の精神のほんの一部なのじゃ。
 大部分は墓で眠りについている・・・筈じゃ」
「何ですって!!」美智恵は驚愕した。それでは政府の資料と全く違う。
「知らんかったのか。
 奴は移し身(うつしみ)を使って動いている。移し身を使う間、本体は眠る」
「・・・移し身を使う間本体が眠るのなら、今本体は・・・」唐巣が呟いた
「当然起きているだろうな」カオスが平然と答えた
「本体はどこだ!!」唐巣は血相を変えた
「墓だと言っとるじゃろうが!!」カオスも負けじと怒鳴り返す
「崇徳上皇の陵墓はどこだ!!」
「確か四国の坂出町だったと思うわ」美智恵が答える
「地図をくれ!!・・・・せとおーはしのねもとー!!
いったいなんて所に作るんだ!!」
「すぐに上皇を起こすのよ!」美智恵が叫ぶ
「遅かったみたいだぜ」雪之丞がTVを指差した
ブラウン管の中で瀬戸大橋が崩れ落ちた。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa