ザ・グレート・展開予測ショー

蛍のダンスは月夜を刻む


投稿者名:来栖川のえる
投稿日時:(04/ 5/ 3)

半袖の自分に吹く風が肌寒く感じ始めた季節、彼女はいた――――――

学校からのいつもの帰り道、彼女と腕を組んで歩いた。
そのときの彼女のぬくもりは、今でも残っているようで――――――

彼女と軽い口付けを交わした。東京タワーの上で。
その時の、情熱的に燃える夕焼けは、今でも目に焼きついている―――――


「ただいま」
自宅の扉を、開ける。
(・・・一度だけ、彼女が俺のこと待っててくれたなー・・)
『待ってたのよ!』と言って俺に抱きついてきた彼女。
一緒に住みたかったんだけど、彼女は『時間はいくらでもあるから・・』って言って結局美神さんの事務所に住むことになったりして。



彼女は、もういない。



俺は暗い部屋の電気をつけずに、敷きっぱなしの布団の上に寝転んだ。

昼は、みんながいる。学校も友達がいるからなんだかんだで楽しいし、仕事のほうも、美神さんやおキヌちゃんのおかげで、辛い気持ちも紛らわせられる。

・・・・・・でも、夜は・・・・・



彼女は、幸せだっただろうか?

いつもの、問い。

俺のようないいかげんな男といて、本当に幸せだっただろうか?

いつもの、問い。


・・・・美神さんは、彼女は俺といたことが幸せだったのだろう、と言っていた。



・・・・・・・・・本当に?



・・・・俺は、寝るためにまぶたを閉じた。






コンコン

窓をたたく音で、目を覚ます。
「・・・けて、ヨコシマ」
「・・・・・・・ん〜?」
寝ぼけ眼をこすりながら、窓の外を見る。
(・・・・・・・・・)
そこには、いないはずの人がいた。
「・・・・・・・・・・・ルシオラッ!」
彼女の姿が月夜に照らされて、宙に浮いている。
「開けて、ヨコシマ」
彼女は俺に手を振って、少し微笑む。

「ルシオラ、本当にお前なのか・・・・?」
部屋に入れた彼女に、俺は当然の疑問をぶつける。
――――――もしかしたら、ベスパの言っていた蘇生が突然成功したのかもしれないとか、そんな希望を胸に抱きながら―――――

でも。

「んー・・・・。残念だけど、厳密に言うと、少し違うわね。
・・・・私は、未来から来たの」
「・・・・・・・・!」
「・・・・・・あなたの、子供なのよ。・・・・・・・がっかりした?父さん・・・」
そういって、少しだけ寂しそうな顔を向ける彼女。
「・・・・・・・・・・・・そっか」
・・・・・・俺は、他に何もいえなかった。こんな状況なのに、俺は何故か妙に納得している部分があった。
―――――彼女にもう一度会えたら、色々話そうと思っていたのにな―――――

少しの、沈黙。

やがて彼女が口を開いた。
「もう一度、このころのヨコシマに会いたくなっちゃって・・・・。
・・・・・・未練がましい女だ、なんて言わないでね・・」
「そんなこと・・思わないさ・・・」

また途切れる、会話。
お互い言いたいことは山ほどあるのに・・・・・・・・
ただ、みつめあうだけ。

「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・



「ヨコシマ・・・・・・」
「・・・・ん?」
「・・・・・・・・・・私がいなくなって、さびしい?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・当たり前だろ・・・・・」
「・・・そっか・・」
そう言うと、彼女は突然俺を抱きしめた。
「わ!ル・・・ルシオラッ・・・!?///」
「あったかいね・・・ヨコシマ・・・・」
硬直する俺。
「・・・・・・・私、ヨコシマを元気付けに来たのよ」
「・・・・・え?」
「・・・・・・・・・・・私のせいで、寂しい思いしてるなんて、ヤじゃない・・v」
そう言って、少しおどけてみせる彼女。
俺はというと、彼女のぬくもりに、心臓バクバク。
「ねぇ・・・・・・・・ヨコシマ」
「・・・・・ん?」
「私ね、今幸せなの・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「ヨコシマと一緒になるっていう、一番の願いはかなわなかったけれど・・・。ヨコシマの子供として産まれて、またヨコシマにあえて。美神さんも優しいし。毎日が、楽しいのよ・・・・。幸せ、なのよ・・・」
「・・・・・そっか」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・」

みつめあう、二人。
そして――――――

「・・・・ん・・・ふ・・」
唇が触れ合うだけの、軽い口付け。
「・・・・・・・・ぷは・・」
・・・唇を離すと、銀色の糸がひいた・・・・。





「・・・・・・・もう、行くね」
そう言うと、彼女は立ち上がる。
「もう行くのか?まだ、いても・・・・・・」
「・・・・・・・・・だめよ。それでは、何も変われないわ・・・・・」
「・・・・・・・・」
彼女の、透き通るような白い肌が、窓から差し込む蒼い月光に照らされ、宝石のように見える。
「・・・・・・・・・そんな顔しないで、ヨコシマ」
困ったような笑顔を向けるルシオラ。
「・・・・・・大切なのは、二人幸せになることなのよ・・・。
私達が、この広い地球で二人、出会えたことは幸せだったわ・・・。
でも、その幸せのせいで、別れの悲しみを増幅させては駄目よ、ヨコシマ・・・・・・・・・」
「・・・・・そうか。そうかもな・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・幸せになってね、ヨコシマ・・・・」
そう言った彼女は、俺には少し悲しそうな顔をしているように見えた。


キィィィン

ポケットに入っていた数個の文殊が彼女の手のひらで作動し始め、彼女の姿が光に包まれる。






「また何年か後に、よろしくね、パパ・・・・・・・・・」


バシュゥゥゥゥ



・・一瞬、まばゆい光が散ったかと思うと、彼女の姿は消えていた。


「・・・・・・・・・ルシオラ・・・・・」
彼女は、本当に・・・・・・・・・・



最後の台詞を言った彼女の瞳から、一筋の雫が流れたようにも見えた――――――――



冷たい夜風に吹かれ、カーテンがなびく。
開いた窓から見える、丸い月。
凍えそうな色をたずさえた月光が、部屋に差し込んでいた――――――







一緒に夕陽を見たね、ヨコシマ・・・・・


昼と夜の一瞬のすきま―――――――


短い間しか見れないから・・・








        きれい















きっと、明日からは変われる。









どうも。のえるです。
また書いちゃいました。ルシオラ。
いやさ、アシュ編終わって次の話からなんかすっごい普通のドタバタ劇やってなんか火遊びしてるじゃないですか?それって横島君的にはどうなのかなー・・って思って。だからこんな話が入ってもいいんじゃないかな、みたいな。
まあ自分で書いといてなんですが、こんな話はいってたらあの漫画ここまではまんなかったかも。蛇足(笑)?
一応、「補完」ということで・・・・。

人は皆「ハッピーエンドで終わらなければいけない」と、かのヨハン事件で有名な(あれは実話らしい)アンナ・リーベルト氏は言っていましたが、では、この二人のお話はハッピーエンドか?これは二つに分かれるのではないでしょうか。
無論、最高に幸せだったとは言いがたいですが、まあ未来には会えるわけですし、横島には今、彼を囲んでくれる仲のいい人たちもいます。幸せだともいえるのではないか。
しかし、恋人として会うことがもう適わないのも事実。恋愛対象として深く愛している人が父親だというのは、ルシオラ的にはどうなのでしょうか。横島だって、やりきれない気持ちもあるでしょう。
「最後の台詞を言った彼女の瞳から、一筋の雫が流れたようにも見えた――――――――」
この一行は、一応三つの意味にとれるやうにしてます。
ルシオラは確かに幸せではあるのだが、やはり心の奥の部分が悲しみをたたえてしまい流した涙。
または、横島にあえたことがうれしくて流した涙。
または、せっかく会えた横島と分かれるのがつらく流した涙。

・・・と言っても、ほぼ一つに絞れてしまうでしょうけど。皆さんが感じた「涙」が、多分僕が一番これだろ!と思っている涙。です。
人は悲しみを消すことはできないでしょう。でも、それによって他の喜びをも目をつぶる必要はないんです。アナタは、幸せなんだよ・・。
・・と、ルシオラは言いたかったのかも。

長々と失礼しました。
もう、5時か・・


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